大ヒット後のソロ活動で息抜き JON BON JOVI - BLAZE OF GLORY

BON JOVI(ボン・ジョヴィ)大ブレイク後の流れ





1986年リリースの、ボン・ジョヴィの3rdアルバム、SLIPPERY WHEN WET(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)はビルボード誌アルバムチャートで8週連続の全米No.1を獲得。
売り上げは全米だけで1200万枚、世界中では2800万枚売れたと言われています。

 

また、1988年にリリースされたボン・ジョヴィの4thアルバムNEW JERSEY(ニュー・ジャージー)はビルボード誌アルバムチャートで4週連続No.1を獲得。
そして、アメリカだけで700万枚売り上げ、全世界では1800万枚以上が売れたと言われています。

 

完全に3rdアルバムでブレイクしてから、怒涛の快進撃が続きました。
1989年から1990年に及ぶニュー・ジャージーツアーでは、22以上の国々で、232以上のショーをこなしています。
その中には、1989年8月にソビエト連邦で行なわれた、Moscow Music Peace Festival(モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル)でのショーが含まれます。
そこではSkid RowCinderellaMötley CrüeScorpionsなどのバンドと共に、西側の代表としてソ連でのフェスを成功させています。
また、アルバム ニュー・ジャージーはソ連で初の公式にリリースされたアメリカのアルバムとなりました。

 

1989年9月には、Jon Bon Jovi (ジョン・ボン・ジョヴィ)とRichie Sambora(リッチー・サンボラ)の二人が1989年の MTV Video Music Awardsに参加。
そこで二人はアコギのみで、 ‘Livin’ On A Prayer’‘Wanted Dead Or Alive’の2曲を披露しています。
この時のパフォーマンスが非常に好評だったため、後にあの MTV Unplugged(MTVアンプラグド)という番組が出来るきっかけともなったのでした。

 

こんな当時の大人気を示す出来事もありましたが、ツアーに次ぐツアーはあまりにも過酷で、バンドの結束は失われてしまいます。
16ヶ月に及ぶツアーにより、メンバーは身体的に、精神的に、感情的に疲弊してしまったのです。
ツアーの最後あたりはもはや互いの顔を見るのもいやになってしまってます。
それで、ツアーファイナルの日が来ると、メンバーは挨拶することもなく、別々の自家用ジェットでそれぞれの自宅へと帰ってしまいました。
この先どうするのかの何のプランも話し合われることはなく、完全にボン・ジョヴィ、というバンドはシーンから姿を消してしまったのです。

 

バンドが事実上休止状態にある中で、1番に動き出したのがヴォーカルのジョンでした。
もともと、ニュー・ジャージーリリース前からソロアルバムの構想は持っていたようです。
動き出すきっかけとなったのは、彼の友達でもある、映画俳優のEmilio Estevez(エミリオ・エステベス)からの依頼でした。
次の映画作品のYoung Guns II(ヤングガン2)のサウンドトラックに、ボン・ジョヴィの “Wanted Dead or Alive” を入れたい、という申し出でした。
確かに、西部劇映画にぴったりの楽曲だと思いますね。

 

しかし、ジョンは歌の歌詞がその映画には合ってないと感じました。
でも、その映画のプロジェクトからインスパイアされて、その映画のために新しい曲を書こうと考えます。
それは、かの曲よりも、もっと映画の設定に合ったものとなりました。
ごくごく短い時間で書き上げられたその曲は、なんと全米No.1を獲得する大ヒットとなったのでした。

 

こうして、サントラ提供のために数曲作ると共に、彼のオリジナルソロアルバムが完成することになりました。
さすがに大人気バンドのヴォーカルのソロ作だけあって、数多くの有名アーティストが参加して彩りを添えています。
Jeff Beck (ジェフ・ベック)、Elton John(エルトン・ジョン)、ラットのRobbin Crosby(ロビン・クロスビー)などなど大物ミュージシャンが集結しています。
さすがボン・ジョヴィが大物バンドとして地位を確立していたことの証といえるでしょうね。

 

では、今日は、1990年リリースの、Jon Bon Jovi (ジョン・ボン・ジョヴィ)の1stソロアルバム、BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー)をご紹介します。

BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、BILLY GET YOUR GUNS(ビリー・ゲット・ユア・ガンズ)。

 

ボン・ジョヴィの作り出すポップなハードロックとはちょっと毛色の違うロックンロールからスタートです。
非常にアーシーで土の匂いがするような軽快なロックです。
スライドギターによるソロはジェフベックのプレイです。
泥臭くロックな音を聞かせてくれています。
とは言え、やはりジョンが歌えばボン・ジョヴィの音に近くなるのは間違いないですね。
ジョンのヴォーカルに、ゲストミュージシャンのプレイが加われば、良くも悪くもボン・ジョヴィ風です。

 

その辺は、バンドのヴォーカリストのソロ作品に良くありがちなので、まあ仕方ないでしょう。
でも、やはりジョンのソングライティング能力もしっかり感じられますね。
こんな軽快でキャッチーなメロディセンスは、さすがジョンだな、と思えます。

 

この曲は映画の、Young Guns II(ヤングガン2)のエンドロールで流れているだけあって、乾いたアメリカンロックの雰囲気をたたえています。
やはりジョンも両親はヨーロッパ系とはいえ、確かにアメリカ育ちなんだな、と感じさせられますね。

 

2曲目は、MIRACLE(ミラクル)。

 

これはゆったりとした、優しいメロディの名曲ですね。
やはり2曲目でこんなにゆったりした楽曲が来るところが、ボン・ジョヴィのアルバムとは大きく違うな、と感じられます。

 

ソフトな楽曲で、メロディがとてもきれいですね。
バンドとしての活動ではちょっと疲れてしまったとはいえ、ジョンの曲作りの才能はまだまだ全然いける、と感じられるいい曲です。
PVでは、ジェフ・ベックがギターソロを披露しています。
得意の指弾きで繰り出す柔らかい音を、丁寧にビブラートで揺らす作業がまさに職人業ですね。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第12位、同誌Mainstream Rockチャートで第20位を記録しました。

 

3曲目は、BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー)。

 

まさに、ジョンのソロ第一弾の楽曲ですね。
多くのファンは、本当はボン・ジョヴィのアルバムを待っていたに違いありませんが、そのフロントマンのジョンのソロも大きな期待を持って迎え入れたと思われます。

 

前述のとおり、この曲は、“Wanted Dead or Alive”に代わる楽曲としてジョンが映画のために作った曲です。
よって、こちらも荒野で歌うカウボーイっぽい雰囲気がにじみ出る、アコースティックでアーシーな名曲となりました。

 

当時は、ボン・ジョヴィの作品ではなかったので、ちょっと不満に思いながら聞いていましたが、改めて聞くとやはりいい曲ですね。
哀愁たっぷりのメロディを、力強く歌い上げるジョンは、やっぱり素晴らしいヴォーカリストになったな、と感慨深いです。
ちょっと寂しいのは、サビの裏のコーラスが、ボン・ジョヴィの作品であれば、間違いなくリッチーがかっこよくかぶせてたのにな、ってくらいでしょうか。
ギターソロは、ジェフ・ベックが円熟の音使いを披露してくれております。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートでNo.1、Mainstream RockチャートでもNo.1を記録しています。
そして、ゴールデングローブ賞主題歌賞を獲得しています。

 

やはり、ボン・ジョヴィの復活を待ち焦がれるファンたちによって強く後押しされた大ヒット曲になりました。

 

4曲目は、BLOOD MONEY(ブラッド・マネー)。

 

ハーモニカと、アコギのストローク、アコーディオンなどによる、アコースティックな演奏の上で歌い上げる小曲です。
こうして聞いていくと、やはりジョンのルーツは、アメリカの大地なんだな、って強く感じます。
シンプルでアーシー楽曲もとても似合いますね。
ジョンは、ハードロックアーティストとして成功しましたが、こういうアメリカンロックもやりたかったんでしょうね。
とても、切なく力強く歌い上げるジョンのヴォーカルがたまりません。

 

5曲目は、SANTA FE(サンタフェ)。

 

前曲のアコースティックな雰囲気からのストリングスのイントロへの変化がとてもいい流れになっています。
盛り上がるにつれて力を増していくジョンのヴォーカルがとてもかっこいいパワーバラードです。
なかなかにメロディアスでドラマティックな名曲を作ったと思います。

 

中盤のストリングスの裏でかすかに聞こえるギターソロはジョンのプレイですね。
ほんとにささやかに弾いています。

 

ストリングスが上手い具合に絡んで、心を揺さぶる素敵な楽曲だと思います。

 

6曲目は、JUSTICE IN THE BARREL(ジャスティス・イン・ザ・バレル)。

 

ドラマ性のあるイントロから始まっていきます。
そこで、披露されているジェフ・ベックのリードギターがかっこよく盛り上げています。

 

導入部が終わると、再び土臭いアメリカンロック曲になります。
この渋く内省的な雰囲気は、これまでのボン・ジョヴィにはあまり見られませんでしたね。
バンドの次の作品で見ることになる、こうした雰囲気は、ジョンの心のうちにあったものだということなんでしょう。

 

6分48秒の長い曲ですが、聞けば聞くほど味が出る曲ですね。
ジェフ・ベックのアコースティックソロと、エレキのソロの2種類の音を楽しめるところも豪華です。

 

7曲目は、NEVER SAY DIE(ネヴァー・セイ・ダイ)。

 

ここにきて、やっと、というか唯一のボン・ジョヴィらしい爽やかなロックンロールが登場です。
まさに、彼らのアルバムに入っていても何もおかしくない、みんな大好きボン・ジョヴィソングでしょう。

 

ギターソロはジェフ・ベックですが、アコギでラットのロビン・クロスビーが参加しています。
まあ、鉄板ともいうべき、お得意のポップなハードロック楽曲になっています。

 

8曲目は、YOU REALLY GOT ME NOW(ユー・リアリー・ゴット・ミー・ナウ)。

 

これは、昔の曲のカバーかと思えますが、ジョンの作った歌です。
録音も、60年代のロックっぽく録られていますね。

 

この曲にはピアノとヴォーカルに、リトル・リチャードが参加しています。
ジョンとの掛け合いが、とっても楽しそうですね。
これも、ジョンの古き良き時代のアメリカへの憧憬を感じさせてくれます。

 

9曲目は、BANG A DRUM(バング・ア・ドラム)。

 

これもまたアメリカを強く感じさせてくれる楽曲ですね。
ゆったりとしたロックのリズムに乗って、力強くメロディを口ずさんでいきます。

 

そして、途中から次第にゴスペル隊のコーラスが加わっていきます。
こういうの、結構なアメリカ人が好きですよね。
ジョンはカトリックの家庭で育ってますので、教会でゴスペルを聞いて育ったのかはわかりませんが、やはりアメリカ人として生まれてれば、耳にする機会は多かったことでしょう。
最後の方は少しづつアカペラになっていき、コーラスオンリーでフィニッシュのアレンジは秀逸だと思いますね。

 

アメリカンロックとゴスペルの融合した荘厳な楽曲になっています。

 

10曲目は、DYIN’ AIN’T MUCH OF A LIVIN’(ダイン・エイント・マッチ・オブ・ア・リヴィン)。

 

何か有名な曲に似てるようで思い出せない、素敵なメロディを持った曲です。
この曲では、ピアノと、コーラスで、エルトン・ジョンが参加しています。
まったくジャンルの違う大物ヴォーカリストと共演できるのも、ソロ作品だからこその醍醐味と言えるでしょう。

 

実質上は、この曲がアルバムのラストと言っていいでしょう。

 

11曲目は、GUANO CITY(グアノ・シティ)。

 

これは、蛇足おまけでしょう。
映画のサウンドトラックとしての存在感を示したかったのでしょうか。
まったくジョンとは無関係の、インストになっています。
まあ、いらないでしょう、これは。

まとめとおすすめポイント

1990年リリースの、Jon Bon Jovi (ジョン・ボン・ジョヴィ)の1stソロアルバム、BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー)は、ビルボード誌アルバムチャートで第3位、アメリカで200万枚のセールスを記録しました。

 

確かにボン・ジョヴィのフロントマンであるジョンのソロ作品は、ヒットしました。
シングルもNo.1になりましたし、いい曲もいっぱい入っています。

 

しかし、僕が思うに、やはりファンが待っていたのは、ジョンのソロ作ではなく、ボン・ジョヴィのニューアルバムだったに違いありません。
極論を言えば、ジョンが歌えば、まあどれもボン・ジョヴィソングになるのかもしれません。
ですが、やはり5人そろったバンドの絆を含めてファンは応援していたと思いますね。
特にファンサービス精神旺盛なこの5人は、ファンを喜ばせるため、世界中をツアーしたわけです。
結局それが、バンドの休止の原因になったのはとても残念なことですが、彼らには休息の時間が必要だったのです。

 

その休みの間に出されたジョンのこのソロアルバム。
ヴォーカリストが一緒とはいえ、やはり音楽性は母体のバンドとは大きく異なっていますね。
勢いや疾走感のあるハードロックにほどよいポップセンスを加えたボン・ジョヴィサウンドは、このソロ作ではあまり聞かれません
より、アーシーで内省的な、アメリカンロックアルバムになっていると思います。

 

ジョンはブルース・スプリングスティーンや、ジョン・クーガーなどのアメリカンロッカーにリスペクトを持っています。
それを考えると、確かにこのアルバムがそのような土の香りが多く香る作品になっている理由がわかる気がします。
ジョンは、いったんバンドを離れて、自分のルーツを見つめなおしたのでしょう。
そして、生まれてきたのが、この作品ということになります。

 

ボン・ジョヴィサウンドを期待して聴くと、ちょっと裏切られるかもしれません。
しかし、一人のロッカーの魂の叫びとして聞くと、非常に優れたアルバムに感じられます。
「ボン・ジョヴィ」というビッグになりすぎたバンドのしがらみからいったん外れ、心からあふれ出るものを形にしたこの作品は、ジョンそのものを表すパーソナルな作品になっていると言えるかもしれません。
そして、ここで作り上げた成果は、次のボン・ジョヴィのアルバムに持ち帰られ、再びシーンに返り咲くことにつながっていきます。

 

過酷なツアーにより自分を見失いかけたジョンが、自分を見つめなおしたこの作品は、やはり聞いておきたいアルバムの一つであると僕は思います。

チャート、セールス資料

1990年リリース

アーティスト:JON BON JOVI(ジョン・ボン・ジョヴィ)

1stアルバム、BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー)

ビルボード誌アルバムチャート第3位 アメリカで200万枚のセールス

1stシングル BLAZE OF GLORY(ブレイズ・オブ・グローリー) ビルボード誌シングルチャートNo.1 同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル MIRACLE(ミラクル) シングルチャート第12位、同誌Mainstream Rockチャート第20位