前作のヒットはまぐれではなかった。BON JOVI - NEW JERSEY

前作SLIPPERY WHEN WET(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)が残した影響





アメリカだけで1200万枚、全世界で見ると2800万枚売れたと言われるSLIPPERY WHEN WET(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)
このアルバムは様々な分野で良かれ悪しかれ多大な影響を及ぼしました。

 

ライナーノーツで伊藤政則氏はこのように述べています。

ボン・ジョヴィの空前の成功を契機とするハード・ロック・ブームは、アメリカのチャートに如実に表れ、一時期はアルバムBEST10の半分以上がハード・ロック系のアーティストによって独占されるという、歴史上類を見ない現象が勃発した。
そして、あの権威あるグラミー賞に新たにヘヴィ・メタル部門が設立され、ボン・ジョヴィ効果の偉大さを、満天下に知らしめることになった。

まあ、多少のリップサービスは含まれてるかとは思いますが、このような流れを作った要因の一つであることは間違いないでしょう。
確かに、雨後のたけのこのように数多くのハードロックバンドが世に出てきましたが、そのきっかけの一つはボン・ジョヴィの成功に違いありません。

 

これまで一部のコアなファンのみのためのハードロックやヘヴィメタル、というジャンルだったのが、一気に市民権を得ることが出来たのはやはり彼らの楽曲やアルバムがNo.1ヒットとなったことに起因するといっても過言ではないでしょう。

 

当時、FMではケイシー・ケイサムというDJによる、アメリカンTOP40というカウントダウン番組が流行っていてよく聴いていました。
その中で、ボン・ジョヴィの確か、リヴィン・オン・ア・プレイヤーが全米No.1になったときに、ケイシーは彼らのことを、アメリカン・ヘヴィメタル・バンド、と紹介したのを鮮明に覚えています。

 

僕は、おいおい、ボン・ジョヴィはヘヴィメタじゃないぞ、と思いました。
しかしよく考えてみると、ポップスを愛する一般リスナーからすると、ハードロックとヘヴィメタルはほぼ同じで、彼らからは縁遠いジャンルであります。
そんな中で、ボン・ジョヴィはNo.1を取ってしまったのです。
まさに、一般のリスナーにハードロックやヘヴィメタルを聴くきっかけを与えるだけのインパクトは十分にあったと言えるでしょう。

 

このように確かに同種のバンド輩出に先駆けて先陣を切ったバンドの一つがボン・ジョヴィということで間違いありません。
またこれだけ売れると、のアルバムにかかるプレッシャーは半端なかったのも間違いないでしょう。
ボン・ジョヴィはアルバムリリースに伴って行なった長期のライヴツアーが終わるとすぐにレコーディングに取り掛かりました。
なぜなら、彼らは自分たちが一発屋ではないことを証明したかったからです。

 

しかしそれは容易ではありませんでした。
アルバム製作に取り掛かってすぐに、ハイレベルなプレッシャーを感じ始めます。
wikiによると、後にJon Bon Jovi (ジョン・ボン・ジョヴィ)は言っています。

俺はもう一度それ(素晴らしい楽曲を作ること)をやりたかった。
金のためではない、金なら十分に手に入れた。
そうではなく、我々が成し遂げたことを再びやるあの素晴らしい感覚のためだ。
でも、「禁じられた愛」をもう一度書くことができないほんとの恐れがあった

こうした言葉の中に、プレッシャーと戦う相当な苦悩を感じることができます。
そんな中でジョンとRichie Sambora(リッチー・サンボラ)は共に数曲を書きます。
が、納得できない。
ジョンは「禁じられた愛」と同じほど成功し得る曲を書くことを望んでいたのです。
それで、後に再びデズモンド・チャイルドやホリー・ナイトといった外部ライターと共に楽曲を作ることにしました。
結局それによってまた素晴らしい楽曲たちが生まれるのでした。
もちろん外部ライターによらずとも結果的には多くの優れた楽曲が生まれたのでしたが、産みの苦しみから逃れるためのきっかけとしてプロのライターの手を必要としたのです。

 

再びプロデューサーに、彼らの飛躍を助けたBruce Fairbairn(ブルース・フェアバーン)を迎え、ニューアルバムを完成させます。

 

今日は、1988年リリースの、BON JOVIの4thアルバム、NEW JERSEY(ニュー・ジャージー)をご紹介したいと思います。

NEW JERSEY(ニュー・ジャージー)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、LAY YOUR HANDS ON ME(レイ・ユア・ハンズ・オン・ミー)。

 

この曲は彼らの強い自信を表すかのような強力なドラムと叫びで始まります。
ドラムのリズムにエレキがからみ、シンセが入るとすぐにジョンが静かにサビのコーラスを歌い始める。
アルバムの一曲にふさわしいハードロックとなっています。
この楽曲はジョンとリッチーの共作です。
前作の呪縛はすっかり解けていますね。
むしろ自信あふれる、勢いのあるキャッチーなハードロックを作って見せました。

 

この曲はアルバムからの4枚目のシングルで、ビルボード誌シングルチャート第7位をマークしました。

 

2曲目は、BAD MEDICINE(バッド・メディシン)。

 

前のアルバムから2年、ついに先行シングルとして新しい曲がやってきました。
誰もが待ち望んでいたでしょう
しかし、最初に聴いたときは、マジでこれが最初のシングルかと驚かされましたね。

 

そして、それとともに驚かされたのが、あっさり全米No.1を獲得したのです。
もはや、ボン・ジョヴィの勢いに圧倒される結果となったのです。
多分、何をシングルとしても、まずは間違いなくNo.1をとれたでしょう、それほどボン・ジョヴィ旋風は吹き荒れていたのです。

 

こういうふうに言うと、この曲がつまらない曲ように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。
聴けば聴くほどリアル・バッド・メディシンのようにじわじわと癖になって頭から離れません
クレジットをみれば、この曲はデズモンド・チャイルドとの共作となっています。
この、耳について離れないメロディはやはり職人技でもあったのです。
また、David Bryan(デヴィッド・ブライアン)による、イントロや途中で幾度も現れるシンセも、シンプルなのにすごく効果的になってます。
加えてジョンの途中で息が上がりそうなくらい搾り出すヴォーカルもとても魅力的だ。

 

最初の印象は勢いだけでチャートを上ったと思いましたが、よくよく聴くと、じわじわと気に入るためのいろんな仕掛けがあることがわかってきました。
結果として、あの大成功の後に続く第一弾としては最高の出来だったと言わざるをえません。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートでNo.1を獲得しました。

 

3曲目はBORN TO BE MY BABY(ボーン・トゥ・ビー・マイ・ベイビー)。

 

これもデズモンド・チャイルドとの共作となっています。
いかにもボン・ジョヴィいうキャッチーな楽曲です。
前作の大ヒットの流れなら、これがファーストシングルになっても良かったのではと思える快作だ。
あまりにもキャッチーで売れ線過ぎるのかも知れないが、僕は大好きですね。

 

しかし、もともとこの曲はアコースティックアレンジでレコーディングされていたらしいです。
プロデューサーのブルース・フェアバーンはよりハードなロックに再録音するようメンバーを説得し、その結果がこのアルバムヴァージョンとなっています。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第3位を記録しました。
ジョンは、もしオリジナルの形で(つまりアコースティックな形)でリリースされていたら、No.1をとっていたのと言っています。
いずれにしてもアルバムを代表するいい楽曲であることに違いはありません。

 

4曲目はLIVING IN SIN(リヴィング・イン・シン)。

 

これは静かに始まるパワーバラードとなっています。
この曲は、スローテンポでゆっくりと始まるのですが、次第に力強さを増して行きます。
ただのバラードでは終わりません。
ジョンのヴォーカルだけでなく、リッチーのギターソロも熱いものとなっています。
重厚なバラードですね。

 

この曲はアルバムからの5枚目のシングルとしてリリースされており、第9位をマークしています。

 

5曲目はBLOOD ON BLOOD(ブラッド・オンブラッド)。

 

映画スタンド・バイ・ミーにインスパイアされたジョンがリッチーとデズモンドと共に書き上げたロックソングです。
アメリカンなノリの爽快なハードロックとなっています。
3人の血の契りを交わした友とのずっと続く絆を歌い上げた曲だ。
友の二人は一人は弁護士、一人はまじない師。
そして俺はというと長髪のロックンロールバンドのシンガーさ、と歌う。
でも電話があったら真夜中でもそばに行くよ、と。
どれだけ成功しても人としては変わらない、というジョン流のメッセージソングのようです。
このような友情を題材にした楽曲は、ボン・ジョヴィの人気の一つの要因だと言えるでしょう。

 

6曲目はHOMEBOUND TRAIN(ホームバウンド・トレイン)。

 

土のにおいがするようなハードロックです。
ヘヴィなのにキャッチー
ギターのリフがかっこよすぎます。
加えて間奏ではハーモニカとオルガンの掛け合いが楽しめます。
この辺がこのアルバムで取り入れられた新しい試みと言えるでしょう。
またギターソロもリッチーはかなり渋いハードなソロを弾きまくっています。

 

7曲目はWILD IS THE WIND(ワイルド・イズ・ザ・ウィンド)。

 

イントロにフラメンコギターを取り入れており、新しい風が吹き込まれています。
この曲はデズモンドに加えて、ダイアン・ウォーレンも作曲に加わっています。
ダイアンといえば、エアロスミスの「ミス・ア・シング」やスターシップの「愛はとまらない」など数多くのヒット作を手掛けたソングライターだ。
プロの手によって、この曲もとてもシリアスな雰囲気をたたえながらも非常にキャッチーなロックとして完成しています。

 

8曲目はRIDE COWBOY RIDE(ライド・カウボーイ・ライド)。

 

この曲は短いモノラルの歌です。
ジョンと、コーラスのリッチーの2人がアコギのみで歌っています。
ジョンの声はいいのはわかっているが、リッチーのハモリ、とコーラスが最高だ。
そしてこの曲は次の曲へのイントロダクションとなっています。

 

9曲目はSTICK TO YOUR GUNS(スティック・トゥ・ユア・ガンズ)。

 

前のイントロを受けて楽曲がスタートします。
この曲にはホリー・ナイトが参加していますね。
ゆったりしたテンポに乗せて、太いロックが演奏されています。

Stick to your guns   
Ain’t nobody gonna hurt you,baby
You can go for the trigger
But only if you have to

とても好きな歌詞だ。
トリガーに手をかけるのは、本当にしなきゃいけないときだけだよ、と歌っている。
暴力的な音楽も多い中で、この一言があるだけで全然違うと思いますね。
若者からの絶大な人気を得て影響力のある彼らがこのように歌うことはとても素敵だと思います。

 

10曲目はI’LL BE THERE FOR YOU(アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー)。

 

素晴らしいパワーバラードです。
この歌も力強い歌ですね。
この歌の最高の特徴はジョンとリッチーの歌ではないでしょうか。
全編にわたってジョンのヴォーカルとリッチーのコーラス、ハモリが超気持ちいいです
またブルージーなエレキのフレーズが散りばめられて曲を彩っています。

 

このバラードは3rdシングルとしてカットされ、アルバムから2曲目のNo.1を記録しています

 

11曲目は99 IN THE SHADE(99イン・ザ・シェイド)。

 

99と言えば、ロックバルーンが思い出されるが、これは全く無縁で日陰でも99度(華氏)の熱さだっていう意味です。
バンドの乗ってる感があふれる楽しい曲ですね。

 

そしてラストはLOVE FOR SALE(ラヴ・フォー・セール)。

 

ちょっといい意味で気を抜いた楽曲です。
リラックスして音楽を楽しんでいる感じが伝わってきます。
ギターはアコースティックだが結構早弾きしまくっていますね。
それに合わせて、ジョンのハーモニカもいい感じで吹きまくっています。
こうしてとても和やかにアルバムは終了します。

 

まとめとおすすめポイント

前作の大ヒットの余韻覚めやらぬ中1988年にリリースされたボン・ジョヴィの4thアルバムNEW JERSEY(ニュー・ジャージー)はビルボード誌アルバムチャートで4週連続第1位を獲得しました。
そして、アメリカだけで700万枚売り上げ、全世界では1800万枚以上が売れたと言われています。

 

大ヒット作の後のプレッシャーはあったようだが、彼らは見事に克服してみせました
成功の要因としては、外部ライターの導入、ヒット請負人のプロデューサーの起用、また引き続きの精力的なツアーなどがあげられるでしょう。
そういう点では世界的なブレイクとなった前作と同様です。
ほかに違うところがあるとすれば、今作はいろんなチャレンジを含めていることがあげられます。
ハーモニカ、フラメンコギター、オルガン、チェロ、ホーンセクションなど、いろんな楽器を加えることで楽曲の魅力が増しています。
また、ドラムがより際立っているので、いっそうヘヴィなロックンロールを聞かせてくれているとも思えますね。
それと、巷で好評のリッチーの声が前作よりいっそうフィーチャーされたのも良かったのではないでしょうか。

 

このように圧力を撥ね退けたボン・ジョヴィは、一回り大きくなりました。

 

決して前作の大成功がまぐれでなかったことを実力で示したのです。

 

そして、そのセールスは、確かに彼らの実力が本物であることを示しています。

 

熱いアメリカンロックンロールを好む全ての人におすすめしたいアルバムになっています。

チャート、セールス資料

1988年リリース

アーティスト:BON JOVI(ボン・ジョヴィ)

4thアルバム、NEW JERSEY(ニュー・ジャージー)

ビルボード誌アルバムチャート4週連続No.1 全米だけで700万枚、世界中では1800万枚

1stシングル BAD MEDICINE(バッド・メディシン) ビルボード誌シングルチャートNo.1 同誌Mainstream Rockチャート第3位

2ndシングル BORN TO BE MY BABY(ボーン・トゥ・ビー・マイ・ベイビー) シングルチャート第3位、 Mainstream Rockチャート第7位

3rdシングル I’LL BE THERE FOR YOU(アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー) シングルチャートNo.1、Mainstream Rockチャート第5位

4thシングル LAY YOUR HANDS ON ME(レイ・ユア・ハンズ・オン・ミー) シングルチャート第7位、Mainstream Rockチャート第20位

5thシングル LIVING IN SIN(リヴィング・イン・シン) シングルチャート第9位、Mainstream Rockチャート第37位

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