80年代歌姫の第2弾ポップアルバム CYNDI LAUPER - TRUE COLORS

前作からの流れ





1983年リリースのCYNDI LAUPER(シンディ・ローパー)のデビューアルバム、SHE’S SO UNUSUAL(N.Y.ダンステリア)はビルボード誌シングルチャートで第4位、アメリカで600万枚を売る大ヒットとなりました。

 

遅咲きの歌姫でしたが、一気にスターダムにのし上がり、マドンナと共に80年代を代表する女性ヴォーカリストの仲間入りを果たしました。
奔放なキャラクターが先に目立ちますが、彼女の7色の声が人々の耳をひきつけたのは間違いないでしょう。

 

彼女はこのデビューアルバムで1985年グラミー賞最優秀新人賞を受賞。
また、グラミー賞最優秀アルバム賞グラミー賞 最優秀レコード賞グラミー賞 最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞(ハイ・スクールはダンステリア)、グラミー賞 最優秀楽曲賞(タイム・アフター・タイム)など、4部門でノミネートされるなど、一世を風靡しています。

 

また、Rolling Stone誌、Time誌、Newsweek誌、People誌の表紙を飾るなど、時代の生んだポップアーティストとして認知されていきます。

 

1985年には、アフリカ救済プロジェクトのUSA for Africa(USAフォー・アフリカ)に参加。
そのシングルWe Are the World(ウィ・アー・ザ・ワールド)では、個性的なヴォーカルで強烈な存在感を放っています。

 

そして同年には、映画The Goonies(グーニーズ)のサウンドトラックに楽曲提供。
The Goonies ‘R’ Good Enough(グーニーズはグッドイナフ)が主題歌としてシングルカットされます。
この曲はビルボード誌シングルチャートで、第10位を記録しています。
日本のオリコンのInternational Chartでは、No.1を獲得し、シンディの日本での人気ぶりが窺えます。

 

1986年には、グラミー賞 最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞と、最優秀長編ミュージックビデオ賞の2部門でのノミネートがなされています。

 

そして、ついに3年ぶりのアルバムが制作されます。
今回は前作以上に、シンディがアルバム制作に加わっています。
プロデューサーの一人としても名を連ね、楽曲の多くでの作曲に関与しています。

 

では、1986年にリリースされた、CYNDI LAUPER(シンディ・ローパー)の2ndアルバム、TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ)をご紹介したいと思います。

TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、CHANGE OF HEART(チェンジ・オブ・ハート)。

 

この曲は、シンディとEssra Mohawkというシンガーソングライターとの共作です。
少しヘヴィなドラムが、力強さと勢いを与えていますね。
バックコーラスにはThe Bangles(バングルス)が参加しています。
バングルスらしい爽やかなコーラスが聴けます。

 

しゃくり上げる声も健在で、良質のポップスになっていると思いますね。
カッティングギターがいいアクセントで全編を彩っています。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第3位、同誌Dance Club Songsチャートでは第4位を記録しています。

 

2曲目は、MAYBE HE’LL KNOW(メイビー・ヒール・ノウ)。

 

この曲は以前活動していたBlue Angel 時代の楽曲のリメイクになっています。
シンディと、John Turiとの共作です。

 

ドゥーワップ調の、古っぽいサウンドのノリのよい楽曲ですね。
シンセがキラキラと、全編を彩っていて、古い雰囲気なのに新しい感覚がつまっています。
コーラスにはBilly Joel(ビリー・ジョエル)も参加して盛り上げています。

 

シンディの伸びのあるヴォーカルも楽しめる良質の曲になっています。

 

この曲は5thシングルとしてカットされましたが、チャートインしていません。

 

3曲目は、BOY BLUE(ボーイ・ブルー)。

 

この曲はシンディと、Jeff BovaStephen Broughton Luntという二人との共作になっています。
内容は、エイズで亡くなってしまった友達について歌った歌です。

 

淡々としたポップスになっていますが、サビでのハイトーンヴォーカルが、とっても切なく聞こえます。
後半の叫びも、とても悲しみが伝わってきますね。
シングルとしてカットされ、その売り上げはエイズの研究機関に寄付されたそうです。

 

この曲は、4thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第71位を記録しています。

 

4曲目は、TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ)。

 

アルバムのタイトルトラックでもあるこの曲は、マドンナのライク・ア・ヴァージンの作者としても有名な、Tom Kellyと Billy Steinbergの二人組みによる楽曲です。

 

もともとBilly Steinbergが彼自身の母親について作った歌のようです。
そしてTom Kellyが最初の歌詞を書き換えています。
二人は当初、Anne Murray(アン・マレー)という女性シンガーにこの曲を差し出します。
しかし、アンはレコーディングを見送ったため、シンディの元にこの曲がやってきました。

 

デモの段階では、サイモン&ガーファンクルの 明日に架ける橋のような、ピアノメインのゴスペルバラードのようなものだったようです。
Billy Steinbergは、シンディは伝統的なアレンジを完全に取り除き、息を呑むようなアレンジを思いついた、と語っています。

 

そんな感じで出来上がったこの曲は、言うまでもなく、80年代を代表するバラードの一曲になったと思いますね。

 

パーカッションのささやかな音と、アコギのアルペジオで始まるイントロは秀逸ですね。
そして、優しく歌い始めるシンディ。
ヴォーカルの強弱の付け方がとてもよいです。
さすがに七色の声と言われるだけはありますね。

 

はじけたキャラクターの彼女が、タイム・アフター・タイムで見せた、ヴォーカリストとしての魅力の詰まった楽曲になっていると思います。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで2週連続No.1、Adult Contemporaryチャートでも第5位のヒットとなりました。
また、タイム・アフター・タイムと共に、後々多くのアーティストによってカバーされる、スタンダードな楽曲としても後世に残ることになりましたね。

 

また、この曲で、グラミー賞 最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされています。
PVは、MTV Video Music Award 最優秀女性ビデオ賞にノミネートされています。

 

5曲目は、CALM INSIDE THE STORM(嵐の中の静けさ)。

 

この曲は、シンディとRick Derringerというヴォーカリストとの共作となっています。

 

静かにイントロが始まりますが、歌メロがはじまると、ノリのよい楽曲になっていきます。
この曲も、50年代っぽい古さと新しさが混じった楽しい曲ですね。
恐らく、途中のカッティングギターは、Rick Derringerだと思われますが、ノリのよいビートを刻んでいます。

 

メロディもリズムも良く、とても聞き心地の良い良質なポップスになっていますね。

 

6曲目は、WHAT’S GOING ON(ホワッツ・ゴーイン・オン)。

 

この曲は言わずと知れた、偉大なシンガーMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)の1971年の代表曲のカバー曲です。

 

美しいシンセの柔らかい雰囲気の中でシンディが歌い始めます。
なかなかイントロは神々しい感じがあふれています。

 

オリジナルと比較する必要はありませんが、シンディは、完全にこの曲を自分のものにして歌い上げていると思えますね。
元々がいい曲ですが、いいアレンジに、彼女のハイトーンヴォイスとで、80年代に名曲を蘇らせています。

 

この曲は、3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第12位、Dance Club Songsチャートで第17位を記録しています。

 

7曲目は、IKO IKO(アイコ・アイコ)。

 

この曲は、アメリカ合衆国ニューオーリンズの代表的なフォークソングのカバー曲です。

 

かわいい曲ですね。
シンディのしゃくり声もぴったりはまって、陽気な楽しい曲に仕上がっています。
2分ほどの短い曲ですが、シンディ色に染めて、いい感じの曲になっています。

 

8曲目は、THE FARAWAY NEARBY(ザ・ファラウェイ・ニアバイ)。

 

この曲は、シンディと、Tom Grayというブルーグラスミュージシャンとの共作です。
これも、とってもかわいいポップスですね。
軽快で、メロディも柔らかい、良曲になっています。

 

9曲目は、911(911)。

 

シンディと、Stephen Broughton Luntとの共作作品です。
ちょっとロックっぽい楽曲です。
アメリカでの「Emergency telephone number」(緊急通報の番号)が911で、そこへの通報が曲の最後に入っていますね。

 

この曲で、グラミー賞 最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞にノミネートされています。

 

ラスト10曲目は、ONE TRACK MIND(ワン・トラック・マインド)。

 

シンディと数名のミュージシャンによる楽曲です。
これも、ちょっとドラムとベースが強調され、ロックっぽいアレンジです。
が、シンセもしっかり入っていて、80年代らしい楽曲でもあります。

 

ちょっと印象の弱い感じでアルバムは終わります。

まとめとおすすめポイント

1986年にリリースされた、CYNDI LAUPER(シンディ・ローパー)の2ndアルバム、TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ)は、ビルボード誌アルバムチャートで第4位、アメリカで200万枚を売り上げています。
世界では700万枚売れたと言われています。

 

チャートはデビュー作と同じ4位ですが、セールスが大幅にダウンしたのは否めません。
ちょうど数ヶ月前にマドンナの3rdアルバム、TRUE BLUE(トゥルー・ブルー)がリリースされ、同時期にスターダムにのし上がった二人の歌姫のトゥルー対決などと言われていました。
別に比較をする必要はないのですが、やはり、超大ヒットを記録したマドンナの3rdアルバムの陰で、ちょっと印象が薄まったのは仕方なかったかもしれませんね。

 

マドンナが積極的に作品作りに関わっていったように、今回、シンディも同じく作詞作曲プロデュースに大きく関わっています。
しかし、マドンナのほうが戦略的に一枚上手だったのかもしれません。
かなり論争になりうるネタを歌詞にぶっこんで来たマドンナのほうが、大きく話題をかっさらっていったような感じがします。

 

一方、シンディは、デビュー時はエキセントリックなキャラクターで一気にブレイクしましたが、今回はかなりおとなしい感じの良質のポップスがアルバムに収められています。
この戦略の最たるものが、先行シングルに超ナイスなバラード、トゥルー・カラーズを持ってきたところに見える気がします。
彼女は、前作ではバラード歌手として先入観を持たれるのを嫌って、タイム・アフター・タイムを1stではなく2ndシングルに持ってきました。
これは、とてもいい戦略だと僕は思いましたが、今回は逆の戦略を選んだようです。
確かにトゥルー・カラーズは先行シングルとして大ヒットするわけですが、その後に続くシングルが弱く感じられてしまいました。
加えて、アルバム全体も、前作で見せたハチャメチャなイメージの楽曲はほぼなくなり、一気に大人の良質なポップアルバムになっています。
この辺の、リスナーの彼女に求めるものと、彼女が提供したいものとに乖離が起きてしまったのが、セールスダウンの大きな原因となってしまったような気がします。

 

とはいえ、ポップアルバムとしての出来は、非常に高い優れたアルバムだと思います。
彼女の7色の声も堪能できますし、やはり良曲で満ちているのは間違いありません。
ちなみに、日本ではオリコン洋楽アルバムチャートで6週連続1位を記録し、来日効果もあって人気を高めていっていますね。

 

シンディのヴォーカリストとしての魅力という点では1stアルバムに引けを取らないこのアルバムは、エイティーズ好きなら聞いておいて損はないでしょう。

チャート、セールス資料

1986年リリース

アーティスト:CYNDI LAUPER(シンディ・ローパー)

2ndアルバム TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ)

ビルボード誌アルバムチャート第4位、アメリカで200万枚、世界で700万枚のセールス

1stシングル TRUE COLORS(トゥルー・カラーズ) ビルボード誌シングルチャート2週連続No.1、同誌Adult Contemporaryチャート第5位

2ndシングル CHANGE OF HEART(チェンジ・オブ・ハート) シングルチャート第3位、Dance Club Songsチャート第4位

3rdシングル WHAT’S GOING ON(ホワッツ・ゴーイン・オン) シングルチャート第12位、Dance Club Songsチャート第17位

4thシングル BOY BLUE(ボーイ・ブルー) シングルチャート第71位

5thシングル MAYBE HE’LL KNOW(メイビー・ヒール・ノウ) チャートインせず