またも3人のコンポーザーが生み出した絶品ポップアルバム FLEETWOOD MAC - MIRAGE(ミラージュ)
実験的過ぎた前作TUSK(牙(タスク))
1979年リリースの、FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の12枚目のアルバム、タスク(牙)は、大成功を収めたRUMOURS(噂 )の路線からかなり変化したアルバムになりました。
もちろん、センスの良いポップな楽曲も多数収められてますが、Lindsey Buckingham(リンジー・バッキンガム)主導で、かなりの実験的なアルバムとして発表されます。
そうした内容に加えて、2枚組という要素も加わって、前作ほどのセールスを記録することは出来ませんでした。
とは言っても、ビルボード誌アルバムチャート第4位、アメリカで200万枚、世界で400万枚のセールスは、決して悪いものではないと言えるでしょう。
世界で4000万枚を売り上げた前作と比べられたらたまったものではないですよね。
バンドは、アルバム「タスク」のプロモーションとして11ヶ月のワールドツアーを敢行します。
アメリカを始めとして、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ベルギー、ドイツ、オランダ、イギリス、そして日本でもライヴを行なっています。
そして、このワールドツアーを成功させた彼らは、1980年に2枚組の初のライヴアルバム、LIVE(邦題:フリートウッド・マック・ライヴ)を発表します。
メンバーのソロ活動
そしてこのタスクツアー終了後、バンドのメンバーはそれぞれソロ活動に勤しむことになります。
その中でも最も成功を収めたのは、歌姫、Stevie Nicks(スティーヴィー・ニックス)ということになるでしょう。
1981年には1stソロアルバム、BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)をリリース。
ビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得、アメリカだけで400万枚を売り上げました。
そして、ドラマーMick Fleetwood(ミック・フリートウッド)も同年に初のソロアルバムTHE VISITORをリリース。
ビルボード誌アルバムチャートで第43位を記録しています。
そしてもう一人、リンジーも同年に初のソロアルバムLAW AND ORDER(ロー・アンド・オーダー)をリリース。
ビルボード誌アルバムチャートで第32位を記録しています。
こうしてソロ活動が目立ってくると、当然のように解散説がどこからともなく湧き上がります。
しかし、幸いなことにバンドは再び結集し、新アルバムの作成にとりかかります。
今回は、従来のものに回帰したものを目指しています。
つまり、アルバム「噂」の路線です。
それを聞くだけで、期待が大きく高まりますが、実際素晴らしいアルバムを創り出してくれました。
今日は1982年リリースの、FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の13枚目のスタジオアルバム、MIRAGE(ミラージュ)をご紹介します。
MIRAGE(ミラージュ)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、LOVE IN STORE(ラヴ・イン・ストアー)。
これはChristine McVie(クリスティン・マクヴィー)による曲で、メインヴォーカルもクリスティンです。
この軽快な頭打ちのドラムのリズムがたまりません。
ドラムのミックとベースのJohn McVie(ジョン・マクヴィー)の安定したリズム隊が心地よいポップサウンドの土台を刻んでいます。
これぞフリートウッド・マックというサウンドです。
クリスティンの優しいヴォーカルがメロディアスに歌い上げるのが良いのは言うまでもありません。
そこに加わる、スティーヴィーとリンジーのバックコーラスがたまりませんね。
やっぱりこの三者、コンポーザーとしても一流ですが、ヴォーカリストとしても素晴らしいです。
そのうえ、リンジーのギターも、いろんな音色で楽曲を彩ってもいます。
やはり、この黄金期のメンバーは超素晴らしいです。
この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第22位、同誌Adult Contemporaryチャートでは第11位を記録しています。
2曲目はCAN’T GO BACK(キャント・ゴー・バック)。
これはリンジーによる楽曲で、彼がメインヴォーカルをとっています。
イントロのキーボードとギターのメロディが、とてもかわいいです。
そして、リズム隊が入ると、なかなか爽快なテンポのポップソングになっていきます。
前のアルバムで見せた、リンジーの狂気的な部分は影を潜めて、お洒落なポップスを歌ってます。
彼のヴォーカルも素敵ですし、サビのメンバーのコーラスもいけてます。
シンプルな楽曲ですが、フリートウッド・マックらしい素敵な楽曲です。
リラックスして楽しめますね。
3曲目はTHAT’S ALRIGHT(ザッツ・オール・ライト )。
この曲はスティーヴィーによる楽曲で、彼女がヴォーカルをとってます。
カントリー風味のゆったりしたリズムにのって、彼女が力まずに歌い上げています。
彼女のビブラートはいいですね。
今回は、ソロアルバムをヒットさせた後なので、精神的にも安定して臨めたのではないでしょうか。
まあ、コカイン中毒のリハビリは必要ではありましたが・・・。
ダミ声なのに柔らかい温かい楽曲になりました。
4曲目はBOOK OF LOVE(ブック・オブ・ラヴ)。
この曲はリンジー作で彼がメインで歌ってます。
アコギのストロークから始まり、ゆったりと進んでいく楽曲です。
リンジーの声に絡まるコーラスがとてもいいです。
サビでは、ちょっとリンジーの狂気な面も垣間見られますが、基本的にゆったりポップスです。
安定したバックの演奏の上で暴れるリンジーのヴォーカルがちょうど良いです。
そして、ギターソロでも激しく感情をぶつけてます。
でも、それもちょうどいい感じに収まっているのが、前作との違いということになるでしょう。
5曲目はGYPSY(愛のジプシー)。
スティーヴィー作で、彼女が歌ってます。
これは、たまらなくいい曲ですね。
これもフリートウッド・マックらしい素晴らしい演奏にスティーヴィーのヴォーカルが乗った、名曲になります。
イントロから安定感あるリズム隊の演奏の上に、クリスティンのちょうどいい、気持ちいいキーボードプレイが重なります。
やっぱり彼らはセンスがいいですね。
無駄にオーバープロデュースすることなく、シンプルに素晴らしい世界を作り上げてます。
そして、やはりスティーヴィーの作曲センスもいいですし、彼女の独特のヴォーカルも素晴らしいです。
もはや文句のつけようがありません。
PVでは、元恋人同士のスティーヴィーとリンジーが一緒にダンスしたり、元夫婦のクリスティンとジョンが乾杯したり、となかなか風刺が効いています。
そして、踊りながら歌うスティーヴィーが、美しすぎますね。
ところが、後々の裏話では、スティーヴィーはリンジーと一緒に踊るのがたまらなくいやだったみたいですし、何より彼女はコカイン中毒のリハビリから戻ったばかりで、撮影で疲れると、コカインが欲しくてたまらなかったようです。
あの素敵なPVからは想像もできない話です・・・。
また曲のラストではリンジーの得意のクリーンの速弾きギターが入ってきます。
これもまたフリートウッド・マックらしいですね。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第12位、同誌Mainstream Rockチャートでは第4位、同誌Adult Contemporaryチャートでは第9位を記録しています。
A面ラストの6曲目はONLY OVER YOU(オンリー・オーヴァー・ユー)。
この曲はクリスティン作で、彼女が歌ってます。
やはり彼女のヴォーカルは優しくていいですね。
母性を感じられる温かさがあると思います。
また、彼女の作るメロディもとがったところがなく、ただただ優しいです。
加えて、中盤からラストに向かって入ってくるリンジーのクリーンギターソロが、素敵過ぎます。
B面1曲目はEMPIRE STATE(エムパイア・ステート)。
リンジー作で彼が歌ってます。
これも彼らしい楽曲ですね。
イントロと後半でリンジーはlap harp(ラップハープ)という楽器をプレイしてますね。
ラップハープとはひざや机の上に乗せて弾けるハープのようです。
曲中でもきれいな音色が聞けますね。
アウトロではそのきれいな音色に対抗するかのように、歪んだギタープレイで彼の狂気の面を表しているように感じられます。
2曲目はSTRAIGHT BACK(ストレート・バック)。
これはスティーヴィー作で、彼女が歌ってます。
この曲は、1981年の冬に書かれた曲で、当時の恋人だったプロデューサーのJimmy Iovine(ジミー・アイオヴィン)との別れについて歌った歌だそうです。
恋多き女スティーヴィー、恋を糧にしてそれを歌にして彼女のキャリアを積み上げていってます。
それにしても、彼女は男運が悪いのか、一生を添い遂げる生涯のパートナーは見つからなかったのですね。
まあ、彼女のキャリアとしては、恋が多いほど素晴らしい曲が出来ていいのかもしれませんが。
まあ、出会う多くの男を魅了する魅力を持った、小悪魔ですからね、彼女は。
現代で言えば、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)が、その役を受け継いでる感じがあります。
でも、最終的には幸せになってほしいと思うのですが、どうなんでしょう。
もしかしたら、両者とも恋愛がないと生きられない症候群なのかもしれませんね。
3曲目はHOLD ME(ホールド・ミー)。
この曲はクリスティン作で、リンジーとクリスティンのデュエットソングになっています。
二人のデュエットもとてもはまってますね。
やっぱり音楽的にプロ同士という感じで素晴らしいものを創り出しています。
そしてこの曲はクリスティンの荒れた3年間についての歌のようです。
何に荒れていたかというと、ジョンと別れた後付き合っていた、The Beach Boys(ザ・ビーチ・ボーイズ)のDennis Wilson(デニス・ウィルソン)との関係です。
デニスはアルコール依存の問題を抱えていたため、結局別れてしまいます。
その間の苦悩の3年間が、この曲のテーマのようです。
元夫のジョンがバンド内にいるのに、こんな曲を作れるって、さすがフリートウッド・マックですね。
そんな暗い背景がありながらも、楽曲は素晴らしいポップソングになっています。
やはり、二人のデュエットが良すぎますね。
また、曲をかわいらしく彩るクリスティンのキーボード、アウトロでかっこよく弾きまくるリンジーのエレキギター。
非常に洗練されたセンスある楽曲になっています。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで何と7週連続で第4位、同誌Mainstream Rockチャートでは第3位、同誌Adult Contemporaryチャートでは第7位と好成績を収めています。
7週連続4位、ってのはその年を代表する楽曲たち、SURVIVOR(サバイバー)のEye of the Tiger(アイ・オブ・ザ・タイガー)や、 Steve Miller Band(スティーヴ・ミラー・バンド)のAbracadabra(アブラカダブラ)やTOTOのRossana(ロザーナ)などの強豪曲たちが入れ替わり立ち代りTOP3を独占していたためで、ずっと7週も足止めを食ったまま力尽きていったのでした。
4曲目はOH DIANE(オー・ダイアン)。
これはリンジー作、でリンジーが歌ってます。
非常に心地の良いポップスです。
彼自身の切れのよいギターバッキングに乗せて、低音の魅力で歌い上げます。
この曲に関しては、彼の狂気の面は全く見られません。
そうです、彼もこんな爽やかなポップスを作ることもできるのです。
古いアメリカンポピュラーソングのような趣のある名曲です。
この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、Adult Contemporaryチャートで第35位を記録しています。
5曲目はEYES OF THE WORLD(アイズ・オブ・ザ・ワールド)。
これもリンジー作、ヴォーカルです。
イントロでは、ベースラインとギターのミュート音が、カノンのコード進行のような感じで進んでいきます。
しかしふたを開けると、リンジー節全開でございます。
ここまで、我慢してきたのか、一気に爆発させてますね。
でも、前作のようではなく、やっぱりお洒落な感じはしっかり残ってます。
やはり彼のアコギの使い方が非常に素敵なのです。
キラキラした美しいコードストロークはたまりません。
また、指弾きで奏でられるギターメロも非常に美しいです。
そして、ラストではそこに加わる彼の特徴的な狂気の歪みプレイ。
ここにきて、一気に彼の世界を聞かせて、彼の存在は強くアピールされるのです。
アルバムラストはWISH YOU WERE HERE(面影を抱きしめて)。
ラストはクリスティンの作曲、ヴォーカルです。
安定の優しいメロディです。
やはり彼女がいるとしまりますね。
個人的にはスティーヴィーが1番好きなのですが、フリートウッド・マックにはクリスティンが絶対に必要だとも思ってます。
この存在感、安心感は、スティーヴィーのものとは種類が異なってます。
そして、ラストはリンジーがお洒落なギタープレイで幕を下ろします。
まとめとおすすめポイント
1982年リリースの、FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の13枚目のスタジオアルバム、MIRAGE(ミラージュ)はビルボード誌アルバムチャートで5週連続のNo.1を達成します。
そしてアメリカで200万枚の売り上げに達しています。
このアルバムは、前々作のRUMOURS(噂 )のような従来の楽曲へと戻して作られましたが、下手をすると、トータルでは「噂」以上の良曲が集まったのではないかとも思えます。
やはり、安定の3人のコンポーザーたち、リンジー、クリスティン、スティーヴィーがいい曲を書いて持ち寄ってますね。
この鉄壁の布陣でまずは素晴らしい楽曲が集まりました。
そして、演奏に関してもやはり歴史の長いプロ集団ですね。
ミックのドラム、ジョンのベースのこの二人のリズム隊の安定度は抜群です。
それに、クリスティンのキーボードがカラフルに楽曲を彩っています。
また、リンジーのギターも、変幻自在に、時にはきらびやかに、そして時には激しく楽曲を色づけています。
演奏陣の見事なプレイと、シンプルですが力の入ったサウンドプロダクションによって、シンセが席巻しつつある時代にあって、アナログな温かい楽曲たちを生み出しました。
そして、そのような楽曲で、最も目立つヴォーカル。
ここが、このバンドの最大の特徴であり、最大の強みと言えるでしょう。
リンジーとクリスティンとスティーヴィーのヴォーカル。
メインのときはもちろんのこと、互いのバックコーラスでも美しいハーモニーを響かせてくれます。
彼らの三者三様のヴォーカルが、素晴らしい楽曲たちを完成に導いたと思っています。
こんなバンドは他に見当たらないのではないでしょうか。
フリートウッド・マックは5人の個性の集合によって素晴らしいバンドとしての個性を生み出しました。
彼らの洗練されたお洒落なサウンドは、いまだに僕を惹きつけてやみません。
バンドの黄金期メンバーとして、優れたアルバムを残してくれました。
良質のポップソングを楽しみたい方には、噂と共にこのミラージュをぜひともおすすめしたいと思います。
チャート、セールス資料
1982年リリース
アーティスト:FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)
13thアルバム、MIRAGE(ミラージュ)
ビルボード誌アルバムチャート5週連続No.1 アメリカで200万枚のセールス
1stシングル HOLD ME(ホールド・ミー) ビルボード誌シングルチャート7週連続第4位、同誌Mainstream Rockチャート第3位、同誌Adult Contemporaryチャート第7位
2ndシングル GYPSY(愛のジプシー) シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャート第4位、Adult Contemporaryチャート第9位
3rdシングル LOVE IN STORE(ラヴ・イン・ストアー) シングルチャート第22位、同誌Adult Contemporaryチャート第11位
4thシングル OH DIANE(オー・ダイアン) Adult Contemporaryチャート第35位
最近フリートウッドマックをよく聴くんですが、きっかけはYoutubeで「Rumours Of Fleetwood Mac」(コピーバンド)を見てから。
加齢のせいかすごくぼけていて、最初コピーバンドと気がつかずに見ていました。
クリスティン・マクヴィー(ボーカル兼キーボード)役のお姉さんがかっこよくなおかつ歌もすごくうまい。
聞きほれて何回も視聴していたんですが、ある時ハッと気がつきました。
若すぎる… (;・∀・)
wikiで調べるとクリスティン・マクヴィーの生誕1943年7月12日(75歳)。
ガ━━Σ(o゚Д゚op)p━━ン!!
言い訳するとドラムを叩くミック役の人はそっくりさんだし、ギターのリンジーはくびになって別の人になっていることになっていることは知っていたし。
スティーヴィー・ニックスは前見たときと比べて痩せたなぁとか…。
まあ、とにかく演奏がたぶんオリジナルより上手い(歌い方までコピーっぽい)。
個人的にはクリスティン・マクヴィーが1番好きなのですが、フリートウッド・マックにはスティーヴィー・ニックスも絶対に必要だとも思ってます。(ここはサイト主さんと好みが違う)。
しかしながら当時のスティーヴィーのあの声と美貌と歌唱力は反則ですね。
私は、癒しのクリスティンおしにしておきます。
そんな訳で(意味不明)一番よく聴いたミラージュに書きこします。
satoshi4989さん、まいどありがとうございます。
早速YouTubeで「Rumours Of Fleetwood Mac」なるものを検索し、ライヴを幾つか見てみました。
これって、完全コピーじゃないですか!!
素晴らしすぎてはまりそうですww
さすがにスティーヴィーは本物とは違うのは外見ですぐにわかりましたが、声はあの僕の大好きなダミ声の完全再現ですね。
見事にそっくりです。
クリスティンも雰囲気出てますし、ミックは本物なのか!?と思ってしまうほどですね。
リンジー役もいい声ですし、リンジーっぽいギターをしっかり弾いてますね。
さすがにジョン役はだいぶ違いましたがw
それにしても、あの5人の音を見事に再現していて驚きました。
コピーバンドと呼ばれるバンドは世の中にたくさんありますが、これぞ完全コピーバンドの手本ではないか、と感じました。
クリスティンも75歳なのですね。
やはりスティーヴィーもクリスティンも、老いには勝てませんね。
でも、こうやってより若い世代が引き継いでくれるのは非常にうれしいですね。
いい音楽って永遠に残っていくのでしょうね。
僕はスティーヴィーの魅力にはまってましたが、やはり姉のようなクリスティンと、そして元恋人のリンジーとの関係性やケミストリーに惹かれてますね。
なので、ソロ作も大好きですが、やっぱりフリートウッド・マックというバンドが1番魅力に感じてます。(もちろんミックとジョンも含めてです)
この5人がバンドの最高のラインアップであったことは今でも信じて疑いません。
そのサウンドを現代に蘇らせたこのコピーバンドを教えてくれてほんとうにありがとうございました!
コメントありがとうございました!