フリートウッドマックの歌姫の1st ソロアルバム STEVIE NICKS - BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)

STEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)のFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)での華麗なキャリア





1975年、BUCKINGHAM NICKS(バッキンガム・ニックス)というデュオで、恋人のLindsey Buckingham(リンジー・バッキンガム)と共に活動していたスティーヴィー。
プロデューサーのKeith Olsen(キース・オールセン)とのひょんなつながりで、バンドのフロントマンを探していたFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)へ二人そろって加入することになります。

 

まだ、1枚しかアルバムを出していない、完全な新人状態で、1967年から活動しており既に9枚のアルバムを出していた歴史あるバンドに入ったわけだが、その加入はフリートウッド・マックを第一線に引き上げる化学反応を見せるのである。

 

1975年、フリートウッド・マックの10thアルバム、FLEETWOOD MAC(邦題:ファンタスティック・マック)はビルボード誌アルバムチャートで念願のNo.1を達成。
売り上げはアメリカで500万枚を記録。

 

1977年リリースの11thアルバム、RUMOURS(噂)はビルボード誌のアルバムチャートで31週連続でNo.1という大記録を達成。
売り上げはアメリカだけで2000万枚を超え、世界中では4000万枚を越えるモンスターヒットとなりました。

 

1979年リリースの12枚目のスタジオアルバム、TUSK(牙(タスク))はビルボード誌アルバムチャートで第4位
アメリカでのセールスは200万枚、世界中でも400万枚と、前作よりは落ちるものの、大ヒットにはなっています。

 

このように、スティーヴィーらが参加した後、フリートウッド・マックは世界的なヒットを連発するのです。

 

マックの魅力の一つに、スティーヴィー、リンジー、そして、元々バンドにいたChristine McVie(クリスティン・マクヴィー)という3人の素晴らしいコンポーザー&ヴォーカリストがいることが挙げられます。
この3人の作り出す魅力がウィキぺディアではこのように述べられています。

安定したピアノプレイと穏やかで安心感を醸し出す暖かい歌声のクリスティン、絵になる二枚目ギタリストでありポップで張りのある声を持つシンガーでもあるリンジー可憐な容姿と野性的なダミ声かつ哀愁味を帯びた個性派シンガーのスティーヴィーという三者三様のボーカルが醸し出すバラエティとハーモニーは、レコードでもライブでもバンドの大きな魅力となった。

これは確かにバンドに素晴らしい恩恵をもたらしました。
しかし、3人のあふれ出る才能を一枚のアルバムに収めるのは、容易なことではありません
12枚目のアルバム「牙(タスク)」では2枚組にすることによって、十分に3人のクリエイティヴィティを発揮できるスペースを作りましたが、それは逆にセールスダウンになってしまいました。

 

そうなると、個々のメンバーが、あふれ出る才能を、別の形で世に出したいと思うのも無理はないと言えるでしょう。

 

1978年までに、スティーヴィーには、バンドに提供できる楽曲の数の制約により(前述のとおり3人も優れたコンポーザーがいるので)かなりの発表できない楽曲のストックがたまっていました。
それで、アルバム「牙(タスク)」のレコーディングセッションや、リリース後のツアーの合間を縫ってソロプロジェクト用の楽曲のデモを作成していきます。
そしてModern Recordsというレーベルを設立、彼女のソロ作品のリリースに備えます。

 

その頃、バンド外の活動もぼちぼち行なってもいます。

 

1978年にはKenny Loggins(ケニー・ロギンス)とのデュエットシングル、Whenever I Call You “Friend ”(二人の誓い)をリリース。
爽やかなポップソングのこの曲は、シングルチャートで第5位を記録しています。
また1979年には、John Stewart(ジョン・スチュアート)のシングル、Goldに参加、これも全米第5位を記録しています。

 

1981年には、Tom Petty and the Heartbreakers(トム・ペティ・アンド・ザ・ハートブレーカーズ)の アルバムHard Promisesの2曲に参加し、そのツアーに時折参加もしています。

 

そして、ついに約2年をかけて、プロデューサーJimmy Iovine(ジミー・アイオヴィン)、トム・ペティと共に、彼女のキャリア初のソロアルバムを完成させます。

 

今日は1981年リリースの、スティーヴィー・ニックスの1stソロアルバム、BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)をご紹介します。

BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)の楽曲紹介

1曲目はBELLA DONNA(麗しのベラ・ドンナ)。

 

ピアノで優しく始まるアルバムタイトルソングです。
さすがに満を持して出したデビューソロアルバムの一曲目でタイトルソングだけに気合の入った名曲です。
プロのミュージシャンで固めたバックの演奏は、聴き応えたっぷりですね。
特に、このアルバム全体でほとんどのギターを担当しているのがWaddy Wachtel(ワディ・ワクテル)というギタリストで、楽曲に彩りを与える点で大きな役割を果たしています。

 

でも、何と言っても、あのフリートウッド・マックの歌姫、スティーヴィーのヴォーカルをたっぷり楽しめるとは何と素晴らしいことではないでしょうか。
マックのアルバムでは、単純計算で3分の1しか彼女のリードヴォーカルは聴けなかったわけですからね。
彼女の自由奔放に歌う、あの魅力的な、また惑溺性のあるヴォーカルをたっぷりと堪能できます。

 

惑溺性といえば、このタイトルのベラ・ドンナというのは、毒にも薬にもなりうる、西欧で自生する多年草のことだそうです。
ウィキぺディアでは

全草に毒を含むが、根茎と根が特に毒性が強い。
実は甘いといわれるが、猛毒を含んでいるため絶対に食してはいけない
用法・用量を守って使用すれば有用であ(る)。

また別の植物索引では

ベラドンナの種小名 belladonna は、「美しい婦人」を意味する、bella (美しい)+ donna (貴婦人に対する敬称)からつけられています。

とあります。
まさに小悪魔のような魅力のある彼女を表すのに、ピッタリな名前のアルバムタイトルとなっていますね。

 

彼女の魅力満載のアルバムは、素晴らしい名曲からスタートします。

 

2曲目はKIND OF WOMAN(カインド・オブ・ウーマン)

 

憂いのあるヴォーカルが印象的なスローな楽曲です。
これもワディのギタープレイが引き立ててますね。
ソロは、非常に楽曲の雰囲気を見事に表現しています。
スティーヴィーの語りかけるような、そして時に張り上げるダミ声がいいですね。

 

3曲目はSTOP DRAGGIN’ MY HEART AROUND(嘆きの天使)。

 

アルバムの中で、この曲だけはスティーヴィーが作っていません。
トム・ペティ・アンド・ザ・ハートブレーカーズのトム・ペティとギタリストのMike Campbell(マイク・キャンベル)による楽曲となっています。
そして、演奏も彼らとのものとなっています。

 

トム・ペティ・アンド・ザ・ハートブレーカーズと言えば、アメリカ南部代表のロックンロールバンドですが、スティーヴィーとの相性は抜群です。
スティーヴィーの声が独特であるのと同様、トムの声も、かなり個性的です。
この二人の組み合わせは、非常にうまく合ってますね。
南部ロックの泥臭い感じも、スティーヴィーのダミ声と見事にはまってます。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第3位、同誌Mainstream Rockチャートでは第2位となる大ヒットを記録しました。

 

4曲目はTHINK ABOUT IT(シンク・アバウト・イット)。

 

この曲は、フリートウッド・マックのサウンドっぽい楽曲です。
軽快なメロディと、ドラムの音が、マックサウンドと非常に近いです。
こういう爽やかな楽曲にも、いつものダミ声というスティーヴィーのオリジナリティが加わってとてもいい曲になっていますね。
フリートウッド・マックでスティーヴィーのリード曲をもっと聴きたいと思う人にはぴったりの楽曲と思います。

 

5曲目はAFTER THE GLITTER FADES( アフター・ザ・グリッター・フェイズ)。

 

ピアノのイントロが美しい楽曲です。
そこに割って入るスティーヴィーのヴォーカル。
決して場の雰囲気を壊すことはありません。
むしろ、彼女の世界に一気に楽曲を引き戻す感じです。

 

楽曲自体は、ゆったりと牧歌的なカントリーソングのような感じです。
スティーヴィーのダミ声のバックでいろんな楽器がキラキラと輝いて聞こえます。
そのギャップがまた、ファンにはたまらないと思います。

 

この曲は4thシングルとしてカットされ、第32位となっています。

 

6曲目はEDGE OF SEVENTEEN(エッジ・オブ・セブンティーン)。

 

やはりこの曲はイントロのギターフレーズがすごく印象的だ。
あの16分のミュートサウンドは、恐らく翌年のSURVIVOR(サバイバー)のEye of the Tigerにインスピレーションを与えたと思われます。
このリフの上にスティーヴィーの声とコーラスが乗っていきます。
その後ベースが加わり、次第にピアノが加わり、最後にドラムが入って、力強いバンドサウンドへ。
この流れがすごくかっこいいです。
ロックなサウンドで、力強く奔放に歌い上げるスティーヴィーも非常に魅力的に思えます。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第11位、Mainstream Rockチャートでは第4位のヒットとなっています。

 

7曲目はHOW STILL MY LOVE(ハウ・スティル・マイ・ラヴ)。

 

ベース音から始まる、静かな楽曲です。
しかし、途中からは少し力強さを増します。
中間部でスティーヴィーのヴォーカルと、それに呼応するエレキギターの音色が交互に主張しあうところが盛り上がって良いです。

 

8曲目はLEATHER AND LACE(レザー・アンド・レース)。

 

超、素敵な楽曲ですね。
イントロのアコギのストロークが非常に繊細で美しいです。
そこにスティーヴィーのこれまた魅力的なヴォーカルがメロディを歌い上げます。
キラキラした装飾音もいいですね。
アコースティックな素晴らしい楽曲ですね。
そして、目玉は2番から入ってくるDon Henley(ドン・ヘンリー)のヴォーカルだ。
どのタイミングかわかりませんが、スティーヴィーとドンは恋愛関係にあり、ドンの子を妊娠、中絶したという壮絶な人生を送っているスティーヴィー。
この曲は恐らく、二人の破局よりも前の作品と考えられます。
で、二人のヴォーカルは息もピッタリです。
2回目のサビではばっちり二人でハモっています。
美しいコーラスですね。
リンジーとスティーヴィーのハモリも美しいですが、ドンとのハモリも負けず劣らず素敵です。

 

トムとのデュエットは、土臭くてかっこいいサウンドでしたが、このドンとのデュエットは、都会の洗練を感じさせる美しいサウンドになりました。

 

この曲は2ndシングルとしてリリースされ、第6位を記録しています。

 

9曲目はOUTSIDE THE RAIN(雨に濡れて)。

 

この曲のバックはザ・ハートブレーカーズのメンバーによるものです。
ロック色の強い楽曲でありながらも、コーラスなどによってスティーヴィーのポップスに仕上がっています
演奏はギターのバッキングが目立っています。
この曲ではスティーヴィーはピアノをプレイしているようです。

 

ラスト10曲目は、THE HIGHWAYMAN(ザ・ハイウェイマン)。

 

ギターに元EAGLES(イーグルス)のDon Felder(ドン・フェルダー)が参加しています。
そして、再びドン・ヘンリーがバックヴォーカルで参加しています。
ラストはゆったりとしたバラードで終わります。

まとめとおすすめポイント

1981年リリースの、STEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)の1stソロアルバム、BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)は、ビルボード誌アルバムチャートで、No.1を獲得します。
そして、アメリカでは400万枚のセールスを記録しています。

 

やはり、あのフリートウッド・マックの歌姫の初のソロアルバム、ということで、期待度が高かったと思われます。
それに対して、その期待を裏切らない、素晴らしいアルバムを作ってきました。

 

イーグルスが解散してドン・ヘンリーがソロアルバムを作ったとき、豪華なミュージシャンが結集しました。
同じようにフリートウッド・マック(解散はしてませんが)の歌姫がソロアルバムを作るということで、やはり良いミュージシャンが集まったと思います。
彼女の作る楽曲、メロディもいいのですが、それに加えてアレンジもとてもいいです。
アメリカンロック的なものから、カントリーソングもありますし、ピアノ主体の美しいバラードもあります。
素晴らしい演奏があって、その上にあの魅力的なスティーヴィーのヴォーカルが乗れば、もう言うことはないでしょう。
1981年リリースということで、まだ、80年代サウンドの過剰なシンセなどはまだない時代、演奏で勝負のとてもいいアルバムになったと思います。

 

加えて、男性ヴォーカルとのデュエットが一つのウリにもなっています。
シングルカットされた2曲はいずれも大ヒットしています。
どちらもハーモニーが美しく、妖艶な彼女の独壇場といったところでしょうか。

 

フリートウッド・マックでは、3者3様の個性のぶつかり合いの中でスティーヴィーは輝きを放っていますが、こうして、全く自由になっても変わらず輝き続けていてとてもうれしいですね。
そして、相変わらず恋多き女でもあり、トム、ドン、ギタリストのワディとも浮名を流したようです。
マックのときもそうですが、そうした関係さえ、彼女にとって芸の肥やしになっているようです。

 

何はともあれ、僕にとっても妖精な彼女のこのデビューアルバムは、本当に素晴らしい作品です。
もちろん、あのダミ声が受け入れられない人には、ちょっと無理かもしれませんが、これが癖になったら、こんなに素敵な声はありません

 

オリジナリティあふれる、スティーヴィーのヴォーカルが堪能できる、優れたポップアルバム、おすすめです。

チャート、セールス資料

1981年リリース

アーティスト:STEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)

1stアルバム、BELLA DONNA( 麗しのベラ・ドンナ)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで400万枚のセールス

1stシングル STOP DRAGGIN’ MY HEART AROUND(嘆きの天使) ビルボード誌シングルチャート第3位、同誌Mainstream Rockチャート第2位

2ndシングル LEATHER AND LACE(レザー・アンド・レース) シングルチャート第6位、Mainstream Rockチャート第26位、Adult Contemporaryチャート第10位

3rdシングル EDGE OF SEVENTEEN(エッジ・オブ・セブンティーン)  シングルチャート第11位、Mainstream Rockチャート第4位

4thシングル AFTER THE GLITTER FADES( アフター・ザ・グリッター・フェイズ) シングルチャート第32位 Adult Contemporaryチャート第36位