イングヴェイ初期三部作の締めくくり YNGWIE J. MALMSTEEN - TRILOGY

TRILOGY制作まで





1stのRISING FORCE(ライジング・フォース)、2ndのMARCHING OUT(マーチング・アウト)とアルバムを出すごとにギタリストの評価は上がっていったYNGWIE J. MALMSTEEN(イングヴェイ・J・マルムスティーン)。
1985年の「Guitar Player」誌の人気投票でベストロックギタリストとして選出されている。

 

また2作目リリース後の世界ツアーのハイライトとして、1985年8月31日にカリフォルニアのオークランドコロシアムで開かれた、野外フェスティバル、Day On The Green(デイ・オン・ザ・グリーン) に出演。
SCORPIONS(スコーピオンズ)、RATT(ラット)、Y&TMETALLICA(メタリカ)など、そうそうたるバンドに混じって65000人のオーディエンスの前で、プレイを強く印象付けた。

 

この野外フェスのころからヴォーカルはJeff Scott Soto(ジェフ・スコット・ソート)から、Mark Boals(マーク・ボールズ)に代わっている。

 

そしてベーシストもクビにした状態で、3rdアルバムの制作に取り掛かるのである。
ベースは自分で弾いているそうだ。

 

1986年10月、アルバムTRILOGY(トリロジー)がリリースされる。
トリロジーとは三部作、の意で、ライジング・フォース、マーチング・アウト、そしてその三部作を締めくくる作品という意味が込められている。

 

キャリア前半の集大成とも呼べるこのアルバムを紹介してみたい。

 

1986年リリースのYNGWIE J. MALMSTEEN(イングヴェイ・J・マルムスティーン)の3rdアルバム、TRILOGY(トリロジー)をご紹介します。

TRILOGY(トリロジー)の楽曲紹介

アルバムのオープニングを飾るのは、YOU DON’T REMEMBER, I’LL NEVER FORGET(ユー・ドント・リメンバー)。

 

前作以上に、キャッチーな歌メロを作ってきた。
今回は全曲、イングヴェイの作詞作曲であるが、このアルバムではそのコンポーザーとしての能力を見せ付けるものとなっている。

 

ちょっとシンセの音が、ちゃちな感じがしてしまうが、王道のハードロックである。
今回からマーク・ボールズにヴォーカルが変わっているが、ジェフよりも高音がきれいに出ていてハードロック向きの声だと感じられる。
非常にキャッチーで、シングルとしてもカットされ、スマッシュヒットとなっている。

 

しかし、やはり注目はイングヴェイのギタープレイである。
歌メロのバックでは、手堅いギターリフを弾いており、結構抑えることによって楽曲を優先している感じがある。
しかし、ソロはそうではない。

 

ゆったりしたメロディから入るソロだが、ただ弾きまくるのではなく、展開がよく考えられている様子だ。
やはり初期のイングヴェイは手癖に逃げることなく、充実した内容のソロがプレイされている。
この時期のプレイをいまだに好む人が多いのも十分に理解できる。

 

2曲目はLIAR(ライアー)。

 

疾走感あふれるハードロックソングだ。
イントロのギターリフはシンプルだが、印象度抜群である。
マークも見事に歌いきってますね。

 

そしてギターソロ前の3連高速スウィープは、やはりクラシカルで印象的である。
同じようなフレーズを使っても、曲のどこにどのように配置するかで印象が変わるのが素晴らしいです。
加えてスウィープの粒のきれいさはずば抜けてますね。
その後、超高速で弾きまくってます。
キーボードとのバトルのようにもなっててかっこいいです。
そしてアウトロで弾きまくるイングヴェイのプレイも非常にいいです。

 

3曲目はQUEEN IN LOVE(クイーン・イン・ラヴ)。

 

定番のミドルテンポのハードロックだ。
これも歌メロ重視の楽曲になっている。
ギターリフは、イングヴェイにしては普通かな、という感じです。

 

しかし、やはりギターソロはすばらしいです。
ソロスタートはゆったりとビブラートを効かせたロングトーンです。
この辺の感情の込め方もイングヴェイはうまいと思いますね。
速弾きはいつものように水晶のようにきれいに弾きまくってくれてます。

 

4曲目はCRYING(クライング)。

 

アルバム中2曲あるインストゥルメンタルのうちの一曲だ。

 

前半はアコギにて、泣きのメロディを弾きまくってます。
繊細なメロディをクラシカルに表現してます。
こういう曲を聴くと、ただ単に速いだけ、という批判が的外れであることを証明できるのではないかと思いますね。

 

しかし、後半のエレキが入ってからもまたまた良い。
速いだけでなく泣いてます。

 

アコギとエレキの2種類の哀愁漂う名インストです。

 

5曲目はFURY(フュリー)。

 

疾走系のヘヴィロックだ。
ヘヴィだが、キャッチーな歌メロで非常に心地よい。
ギターソロもたっぷり楽しめます。
ラストもイングヴェイが弾きまくって、かっこよく曲は終わります。

 

6曲目はFIRE(ファイヤー)。

 

ポップなメジャー曲のようで、マイナー調でもある、どっちの要素も入ってる不思議な感じの曲だ。
この曲もギターソロは秀逸だ。
何と1分近くも弾き続けるのだが、展開がよく作りこまれていて、かなりな名演に入ると思われます。

 

7曲目はMAGIC MIRROR(マジック・ミラー)。

すごく速いわけではないが、疾走感は確実にある楽曲だ。
ブリッジの速弾きがかっこよく決まっている。

 

ギターソロ前とエンディングに使われているクラシカルフレーズが、超かっこいい。
ソロは短くコンパクトだが、アウトロでも弾きまくってるので、トータルではイングヴェイの標準の長さかも。

 

8曲目はDARK AGES(ダーク・エイジズ)。

 

スロー&ヘヴィな楽曲をマークが見事に歌い上げていると思います。
アルバム中一番地味な存在かも知れませんが、ラストのあの名曲の橋渡し的にはいい仕事をしている楽曲だと思われます。
エンディングのシンセの中世的な響きが、ラストの衝撃に向かって盛り立てます

 

そしてそのラストのインストゥルメンタル、TRILOGY SUITE OP: 5(トリロジー・スーツ Op:5)。

 

第一楽章の構成は当時出てきたイングヴェイクローンたちを一蹴したとも言われる究極の出来となっている。
速さ、メロディ、テクニック、構成、全てで他を凌駕していた。

 

イントロの切り裂くような速弾きフレーズの滑らかさ。
それから3連符をうまく用いたスピーディなプレイは途中で速弾きベースとのユニゾン。
そして2弦スウィープを使った3連プレイではシンセとのユニゾン。
その後、シンセと速弾き対決。
それから元のテーマに戻って、第一楽章は終わる。

 

もう、スリリングとしか言いようがない、超絶にかっこいいプレイだ。
テクニック的には、今のギターキッズからすると基本プレイとなってしまったが、当時これを聴いたら度肝を抜かれたに違いない
いや、今聞いてもこの構成力は大きな力を持って心に響いてくる。

 

この第一楽章部分は、アルバムのハイライトとして非常に人気の高い部分だ。

 

そして続いてナイロン弦ガットギターによるアコースティックパートの第2楽章だ。
ここから先を蛇足と見る人も少なくないが、僕は決してそうは思っていない。
やはり、ブラック・スターでもわかるように、アコースティックを弾かせても彼のセンスは十分に垣間見れる

 

短い2楽章を挟んで、再びエレキが入ってきてハードなパートの第三楽章だ。
ここでもギターリフは非常にかっこよく決まっている
少し単調な部分が続くが、そこを越えるとまたいいフレーズを弾きまくっている。
ナイロン弦ギターでの速弾きも途中混じったり、シンセの速弾きも混じったりバラエティに富んでいる。

 

しかし、エレキギターの際立ったフレーズが少ないのが不人気の理由かもしれない。
でも僕は全体の構成を考えると、やはりこの曲は全体を聴いてこそ、と思います。

 

第一楽章が跳びぬけて良すぎるのも、後半が弱く聴こえる原因の一つかもしれません。
まあ、あとは好みの問題かもしれませんが、第一楽章はやはり全ての人におすすめできるイングヴェイの代表プレイであることは間違いないでしょう。

まとめとおすすめポイント

1986年リリースのYNGWIE J. MALMSTEEN(イングヴェイ・J・マルムスティーン)の3rdアルバム、TRILOGY(トリロジー)はビルボード誌アルバムチャートで第44位を記録してます。

 

初期のイングヴェイの3部作を締めくくるアルバムとして、非常にクオリティの高い作品となってます。
制作前にベーシストをクビにしたり、ヴォーカルを取り替えたり、とやりたい放題のイングヴェイですが、そのような醜聞を蹴散らす会心の作品となりました。

 

ただ速いだけのプレイはク○だと彼自身も語っていますが、そこにやはりメロディがあってこそ人の心を打つものだと思われます。
確かに初期のイングヴェイのプレイは非常にメロディアスで、非常に緻密に構築されており、多くの人に強烈な印象を与えています。

 

この作品も例外ではなく、楽曲のソロパートでの練り具合が非常によい出来だと感じられます。
ただ、速いだけでなく、楽曲にあった優れたプレイを数多く生み出していますね。

 

それと、この作品では前作よりもさらに歌もののクオリティが上がったとも思われます。
楽曲のキャッチーさの改善、それに加えて新ヴォーカルのマーク・ボールズがうまく歌い上げているところも、この作品のクオリティアップにつながっています。

 

本人も、結構この作品は気に入っているようです。
前作はバンドメンバーと共に作ろうとしましたが、今回は基本的に自分の好きなようにやれた、というのもあるでしょう。

 

いずれにしても、キレの一番よかった時代に残った傑作です。
ギターやるなら必聴のアルバムとなってます。

チャート、セールス資料

1986年リリース

アーティスト:YNGWIE J. MALMSTEEN(イングヴェイ・J・マルムスティーン)

3rdアルバム、TRILOGY(トリロジー) ビルボード誌アルバムチャート第44位

ヴォーカル:Mark Boals(マーク・ボールズ)




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