バンド名とは真逆な硬派ハードロック CINDERELLA - NIGHT SONGS

CINDERELLA(シンデレラ)との出会い





BON JOVI(ボン・ジョヴィ)が3rdアルバム、SLIPPERY WHEN WET(ワイルド・イン・ザ・ストリート)で1986年に世界的に大ブレイクを果たすのを目撃した僕は、ボン・ジョヴィの弟分バンドの触れ込みで宣伝されたCINDERELLA(シンデレラ)を見逃すはずはなかった。

 

ギターヴォーカル、Tom Keifer(トム・キーファー)率いる4人組バンド、シンデレラ。
何ゆえ、このバンド名を選んだのだ、と多少違和感を覚えたのが思い出される。
見た感じは、当時流行のヘアメタルバンド、そのまんまで、シンデレラ要素は皆無である。
シンデレラストーリーを目指したのかとも思えるが、どう見てもこの名前と見た目のギャップは激しすぎる。
きっとそのギャップの強烈なインパクトを狙ったのであろう

 

しかし、その名前の持つイメージとは全く異なり、非常に硬派でかっこいいハードロックを聴かせてくれるのである。

 

今日は1986年リリースのCINDERELLA(シンデレラ)デビューアルバム、NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)を紹介したいと思います。

NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)の楽曲紹介

最初にお伝えしたいのが、アルバム全曲がギタリストでヴォーカルでもあるトム・キーファーによるものだ、ということだ。
他のメンバーが陰が薄くて、リーダーであるトムのワンマンバンドのイメージが広がっているようだが、実質そういうことだったのだろうと思われます。

 

アルバムオープニングを飾るのは、NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)。

 

いきなりどっしりと重厚感あるミドルテンポのアルバムタイトルソングである。
何と言っても、強烈なトムのヴォーカル。
これまた唯一無二なヴォーカルだ、と驚かされた。
彼のしゃがれ声を絞り出す歌い方は、ジャニス・ジョプリンの影響を受けている。
それにしても、僕がこんな声で歌ったら、一曲ももたないと思われるが、トムはずっとこの歌い方なのだ。
驚異ののどの持ち主である。

 

そして、最初はなじみにくい声だが、やはり癖になってくるのである。
シンデレラのイメージとは真逆のヴォーカルに圧倒されるのである。
またトムとJeff LaBar(ジェフ・ラバー)という、ギタリストが二人というのは、やはりHM/HRにおいては、非常にメリットが大きい。
重厚なサウンドをギター二本で作り出している
重々しい楽曲の割りにキャッチーなメロディとなっていてアルバムのイントロダクションとして非常によい楽曲だ。

 

2曲目は軽快なハードロックソングSHAKE ME( シェイク・ミー)。

 

これはキャッチーなシングル向けの楽曲だ。
実際1stシングルとしてリリースされたが、ビルボードシングルチャートにはチャートインできなかった。
が、同誌、Mainstream Rockチャートでは第41位を獲得している。
またPVも当然作成されていて、基本ライヴシーンを中心にバンドが映し出されている。
MTV時代真っ盛りの時に、HM/HRファンの多くの心をつかんだに違いない。

 

ワイルドなロックンロールだが、そこにメタリックなバンドサウンドが絡んで、非常にかっこいい楽曲となってます。

 

3曲目はNOBODY’S FOOL(ノーバディーズ・フール)。

 

哀愁漂うバラードだが、ヘヴィなバンドサウンドに乗っているパワーバラードだ。
やはり、トムのヴォーカルが非常に印象深い。
どちらかというと、ありがちなバラードになるところだが、彼のヴォーカル力で優れたバラードに格上げされている。
やはり、あの独特のヴォーカルは非常に大きな強みとしてバンドを特徴付けている。
ギターソロは弾きまくるのではなく、叙情感たっぷりのきれいなメロディを奏でてます。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第13位、Mainstream Rockチャートでは第25位という初のヒット曲となった。

 

4曲目はNOTHIN’ FOR NOTHIN’(ナッシン・フォー・ナッシン)。

 

重厚感あるかっこいいハードロックチューンである。
ギターリフが、非常にかっこいい。
ノリがよく、トムのヴォーカルもぴったり楽曲に合っている。
どうしてもボン・ジョヴィと比べることになってしまうが、やはりジョンのヴォーカルがマイルドで、ボンジョヴィのほうが別に悪い意味ではなくポップに感じられてしまう。
その点、シンデレラはかなりソリッドなハードロックを楽しめる。

 

A面ラストはONCE AROUND THE RIDE(ワンス・アラウンド・ザ・ライド)。

 

疾走感もあり、ノリノリのロックンロールだ。
とてもシンプルだが、バンド感が半端ない。
ライヴでは、この基本のギターリフを弾きながら歌うトム、そしてそこにアーミングなど飛び道具を使ってジェフが弾きまくっている。
やはり歌いながらこれだけのリフを弾けてるのは、バンドとしての大きな強みである。

 

B面1曲目はHELL ON WHEELS(ヘル・オン・ホイールス)。

 

またもゴリゴリの疾走ソングだ。
シンプルにノレるかっこいい曲だ。

 

2曲目はSOMEBODY SAVE ME(サムバディ・セイヴ・ミー)。

 

ヘヴィなリフのロックンロールだ。
キャッチーだが、ポップではなくかなり硬質なロックを聴かせてくれる。

 

3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート、第66位、Mainstream Rockチャートでは第37位となった。

 

3曲目はアルバム中唯一の横ノリ曲、IN FROM THE OUTSIDE(イン・フロム・ジ・アウトサイド)。

 

3連のシャッフルのノリで、ブルージーな雰囲気も感じられる。
しかし、基本となる部分はハードなメタルブギーロックである。
僕はこの曲が一番、アルバムの中で気に入っていた。
ギターソロも3連のリズムに乗って気持ちよいメロディだ。

 

4曲目はPUSH, PUSH(プッシュ、プッシュ)。

 

これもタイトルどおり、押しまくるヘヴィロックだ。
パワフルな楽曲にトムのヴォーカルが映える楽曲だ。

 

アルバムラストはBACK HOME AGAIN(バック・ホーム・アゲイン)。

 

非常にヘヴィなリフがクールな、ラストにふさわしいハードロックだ。
結局B面はバラードなしの勢いで押しまくった形だ。

まとめとおすすめポイント

1986年リリースのCINDERELLA(シンデレラ)デビューアルバム、NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)はビルボード誌アルバムチャートで第3位を獲得、アメリカで300万枚を売り上げる大ヒット作品となった。

 

やはり、新人バンドのデビューアルバム、ということで勢いがすさまじい。
これは、ボン・ジョヴィの弟分という宣伝にも影響されたのではないだろうか。

 

確かに彼らを見出し、デビューのきっかけを与えてくれたのはボン・ジョヴィではあるが、その弟分という位置づけは、釈然としなかったに違いない。
なので、いけるなら兄貴分のボン・ジョヴィを食ってしまうほどのアルバムを作ろうと考えても不思議ではなかっただろう。

 

そのような思いがあったかどうかは定かではないが、それほどの熱さや勢いがパッケージされたアルバムになったと思う。
LAメタルのような陽気さより、硬派なゴリゴリのハードロックである。
このようなつくりは後のスキッド・ロウのデビューアルバムにも影響を与えたに違いない。
硬派で激しいメタリックな楽曲であふれているのだ。

 

しかし、この後、トムはブルースの影響を色濃く出していくようになる。
そこで、賛否は分かれるのだが、僕からするとどちらも魅力的だ。
ただ、このデビューアルバムの熱量が、ここがピークだったと思うとちょっともったいない気もする。
しばらくは、この熱く硬派なハードロックで攻めてもよかったのかなとも思います。

 

いずれにしても、シンデレラはボン・ジョヴィとは異なる硬派な路線を選び、大ヒットを記録した。
ワイルドで初々しいデビューの熱いエネルギーを収めたこのアルバム、おすすめです。

 

ちなみに日本盤にはイン・フロム・ジ・アウトサイドのライヴ・ヴァージョンが収められており、それも非常にかっこよくおすすめです。

チャート、セールス資料

1986年リリース

アーティスト:CINDERELLA(シンデレラ)

1stアルバム、NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)

ビルボード誌アルバムチャート第3位 アメリカで300万枚のセールス

1stシングル SHAKE ME( シェイク・ミー) ビルボード誌シングルチャート圏外、同誌Mainstream Rockチャート第41位

2ndシングル NOBODY’S FOOL(ノーバディーズ・フール) シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャート第25位

3rdシングル SOMEBODY SAVE ME(サムバディ・セイヴ・ミー) シングルチャート第66位、Mainstream Rockチャート第37位