聴いて楽しいハードポップ WARRANT - DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH(マネー・ゲーム)

WARRANT(ウォレント)との出会い





1980年代は様々なHM/HRのバンドが出てきました。
僕はヘヴィメタルというと、ちょっと引いてしまうのですが、ハードロックというと、それこそ大好物なジャンルだったものです。

 

LAを中心とする西海岸出身のバンドはそれこそ“大漁”のような勢いで世間にあふれていましたね。
そんな中出てきた、WARRANT(ウォレント)というバンドもその中の一つで、僕は興味を示し、聴くことにしました。

 

ウォレントはロサンゼルスを拠点とするグラム・メタルバンド、いわゆるヘアメタル、LAメタルという風にくくられます。
見かけも、まさに長髪にグラマラスな容貌、当時の流行のど真ん中です。

 

1984年にギタリストのErik Turner(エリック・ターナー)を中心に結成され、後にヴォーカルのJani Lane(ジェイニー・レイン)などが加わってます。
デビューアルバムは1989年になりますが、それまで、多くのメンバーチェンジを繰り返し、LAのクラブシーンなどでの下積みをしっかりと積んでいます。
超陽気なバンドのイメージとは裏腹に、結構苦労を重ねているようですね。

 

しかし、ついに念願かなって、コロムビアレコードと契約、デビューを果たすことになりました。

 

今日は、1989年リリースの、WARRANT(ウォレント)のデビューアルバム、DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH(マネー・ゲーム)を紹介したいと思います。

DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH(マネー・ゲーム)の楽曲紹介

このアルバムは全曲、ヴォーカルのジェイニー・レインによる作詞作曲です。
彼のコンポーザーとしてのセンスにも注目して欲しいと思います。

 

アルバムオープニングを飾るのは32 PENNIES(32ペニー)。

 

イントロのギターリフにドラムが絡むところから、お気に入りです。
ゆったりリズムのハードロックだが、完全にキャッチーなハードポップと言う方がぴったりかもしれません。
短い曲ですが、後半の疾走感あふれる部分は非常にかっこいいです。
ジェイニー・レインのヴォーカルも爽やかでとてもよろしいと思います。

 

2曲目はDOWN BOYS(ダウン・ボーイズ)。

 

非常にはつらつとした陽気なロックです。
キャッチーでノリがよく、爽快な楽曲となっています。

 

PVも作成されていますが、完全に80年代のヘアメタル、グラムメタルの紹介ビデオの様子ですね。
彼らの場合、容姿がよいために、当時は音楽性が過小評価されてしまったのですが、それを吹き飛ばすだけの明るさが見られて心地よいです。

 

この曲はアルバムの先行シングルとして発売され、ビルボード誌シングルチャートで第27位というなかなかのヒットとなりました。
またMainstream Rockチャートでは、第13位まで上がるヒットを記録しています。

 

3曲目は、BIG TALK(ビッグ・トーク)。

 

シャッフルのノリのある、超ハッピーなポップロックです。
キャッチーで爽やかで、メロディアス。
ジェイニーの優れた作曲センス炸裂となってますね。
また、ヴォーカルも爽快に歌い上げてて楽しめる楽曲です。

 

そして特にこの曲ではギターが非常に効果的に使われています。
イントロのドラムに絡んで入ってくるギターのディレイ音がなんとも気持ちいいです
またギターソロも、非常にメロディアスで、文句の付け所がありません。
超ハイテクギターかといえばそうではありませんが、楽曲を美しく楽しく彩る点ではピカ一のプレイを聴かせてくれています。

 

この非常に陽気なポップソングは、3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートでは第93位に終わりましたが、Mainstream Rockチャートでは第30位のヒットとなりました。

 

ちなみにこの曲のPVにはアルバムジャケットの超汚い金持ちのおっさんが出てきます。
内容は、まったく意味不明ですが、ライヴシーンは楽しめます。

 

4曲目はSOMETIMES SHE CRIES(サムタイムズ・シー・クライズ)。

 

アルバム初のバラードです。
ジェイニーはバラードを書かせても一流だったと言えるでしょう。
アルバム中のもう一曲の大ヒットHEAVEN負けず劣らずいい曲となっていますね。
まずイントロの3連符のギターソロが美しすぎます。
途中のアコースティックなギターリフもきれいですし、サビのコーラスも美しいです。
中盤のコーラスによる盛り上がりもいいし、ライトハンド奏法を含めたギターソロも美しい。
転調後の後半も非常に盛り上がっていく感じがグッド。
アウトロのギターもきれいに決まって言うことありません。

 

この曲はアルバムからの4thシングルで、シングルチャート第20位をマーク、Mainstream Rockチャートでは第11位まで上昇しました。

 

A面ラストはSO DAMN PRETTY (SHOULD BE AGAINST THE LAW)(So・ダム・プリティ)。

 

やっとハードロック来たー!って感じの爽快なロックチューンです。
ギターリフが非常にかっこよく疾走感を演出しています。
ジェイニーはハードロックも書けたし、歌えたということになりますね。
ギターソロもツインギターを生かした感じで、ギターバトルを繰り広げていて、なかなか良い曲です。

 

陽気というのかわからないが、カラっとした湿り気のない曲で、やはり西海岸の雰囲気が漂っています。
これもノリがよく聴いて楽しい一品となっております。

 

B面1曲目はD.R.F.S.R.(マネー・ゲーム (D.R.F.S.R.))。

 

これは物質主義について風刺した曲です。
ちょうど、アルバムジャケットのあの金持ちが対象となってるようです。
ゆったりとした曲だが、ギターソロのパートでスピードアップ
疾走感あるロックンロールに変化します。
そしてもう一度もとのメロディへ。

 

ジェイニーのイントロの叫び声が印象的だし、アウトロでも狂気の入った叫びがあり、なかなか聴かせてくれます。

 

ちなみに、タイトルはDirty Rotten Filthy Stinking Richの略語となっています。

Dirty=汚れた
Rotten=腐った、不潔な、悪臭を放つ
Filthy=汚い、下品な、みだらな
Stinking=くさい

といった形容のされた Rich(金持ち)といった意味ですね。
相当金持ちを悪く風刺した楽曲です。

 

2曲目はIN THE STICKS(イン・ザ・スティックス)。

 

イントロのギターリフとギターソロがクールです。
サビはやはりポップでキャッチーです。
ギターソロもメロディアスで良く出来てると思いますね。
最後もギターソロで決めてくれてます。

 

3曲目はHEAVEN(ヘヴン)。

 

これは80年代を代表する名バラードの一つと言えるでしょう。

 

イントロのアコースティックギターからかっこいいです。
盛り上がるにつれ次第にバンドサウンドになる、という曲は他にも腐るほどあるわけですが、やはり僕はどうしてもそういうのを好んでしまいます。

 

またこの曲も外注ではなくジェイニーの作品です。
こんな美しいメロディを80年代の末にまだ出せるのだ、と驚きを禁じえません。
彼のコンポーザーとしての能力はまさに開花したばかりなのででした。

 

ギターソロも、コーラスも全てが完璧にそろって、名曲が完成しました。
また歌詞も当時ほぼ覚えて歌ってたのを記憶しています。
素晴らしい歌詞世界までがジェイニーの才能なのです。
いいバンドに出会えたとつくづく感じてしまいます。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルで、シングルチャートで第2位を記録しています。
またMainstream Rockチャートでは第3位と大ヒットパワーバラードとなりました。

 

4曲目はRIDIN’ HIGH(ライディン・ハイ)。

 

ギターサウンドが重厚なロックソングです。
しかし、それでもジェイニーのヴォーカルが入ると爽やかで楽しげに聴こえてきます。
サビもキャッチーで陽気な雰囲気です。
ギターソロも結構派手にやってますし、アウトロのソロも非常にかっこいいです。
しかしそれ以上に、サビのヴォーカルとコーラスが目だってしまいます。
ギターは、楽曲を盛り上げるために少し抑えている感じがありますね。

 

アルバムラストはCOLD SWEAT(コールド・スウェット)。

 

疾走するほどではありませんが、ハードなギターサウンドです。
やはり陽気で楽しめる曲です。
この曲ではジェイニーのヴォーカル力にも注目できます。

 

ギターソロもなかなかな出来です。
アウトロでも弾きまくってばっちりラストを飾っています。

まとめとおすすめポイント

1989年リリースの、WARRANT(ウォレント)のデビューアルバム、DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH(マネー・ゲーム)は、ビルボード誌アルバムチャート第10位200万枚を売り上げました。

 

このバンドの成功の理由は、やはり、ジェイニーのキャッチーな曲作りの才能によるところが大きいのではないかと思います。
当時、雑誌の取材だったと思いますが、聴いて楽しめる曲を作りたいと彼は言っていました。
その点はアルバム全体を確かに貫いていると思いますね。

 

HM/HRの中ではやはりその激しい音楽性から攻撃的なものも多いですが、ウォレントからはそのような雰囲気は感じられません。
もちろん時にハードな楽曲もあるのはあるのですが、基本ハードロックの土台に積み上げた明るく陽気なメロディなのです。
もはやハードロック、というよりハードポップというほうが当たっているかもしれません。
ヘヴィロックを期待して聴くと、裏切られる可能性は高いでしょう。

 

なので、従来のHM/HRファンというより、一般のロックファンにアピールするのではないかと思います。
ヘヴンを初めとするヒット曲がそのことを示しているといえますね。

 

ロックファン、ポップスファンにも通用する、聴いて楽しいハードポップ作品をお楽しみください。
(ただ、アルバムジャケットが一般人をドン引きさせる可能性は非常に高いと思われます・・・w)

 

PS:この記事を執筆中、遅ればせながら、ヴォーカルのジェイニー・レインが2011年8月に亡くなった事を知りました。
こうして記事を書いていると、ほんとに彼の才能のすごさに改めて感心していた矢先だったので、非常に残念でなりません。
80年代活躍したアーティストがまた一人消えました。
時代の流れの残酷さが身にしみます。R.I.P.

チャート、セールス資料

1989年リリース

アーティスト:WARRANT(ウォレント)

1stアルバム、DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH(マネー・ゲーム)

ビルボード誌アルバムチャート第10位 アメリカで200万枚のセールス

1stシングル DOWN BOYS(ダウン・ボーイズ) ビルボード誌シングルチャート第27位、Mainstream Rockチャート第13位

2ndシングル HEAVEN(ヘヴン) シングルチャート第2位、Mainstream Rockチャート第3位

3rdシングル BIG TALK(ビッグ・トーク) シングルチャート第93位、Mainstream Rockチャート第30位

4thシングル SOMETIMES SHE CRIES(サムタイムズ・シー・クライズ) シングルチャート第20位、Mainstream Rockチャート第11位