楽曲重視のバンド作品 YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE(イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース) - MARCHING OUT(マーチング・アウト)
MARCHING OUT制作まで
前作のソロデビューアルバム、RISING FORCE(ライジング・フォース)は、全8曲中6曲がインストゥルメンタルであるにも関わらず、大ヒット。
YNGWIE MALMSTEEN(イングヴェイ・マルムスティーン)はギタリストとしての名声と共に、商業的な成功も収めた。
しかし、そのソロアルバムはイントロダクションに過ぎなかった。
アルバム発表後、イングヴェイは自らのバンド、RISING FORCE(ライジング・フォース)を率いてワールドツアーへ。
最初の地となったのが1985年1月の日本公演で、全公演ソールドアウト、という盛り上がりを見せた。
もともとギターテクに非常に関心のある日本向けのアルバムだったわけだが、その戦略は見事に当たったのである。
そして、次のアルバムの制作にかかる。
前回はほぼインスト中心のソロプロジェクトといった風情であったが、今回は楽曲重視のバンドサウンドがアルバムの狙いとなった。
そのため、メンバーと共に生活し、曲もメンバーと共に作る、という、前回とは全く異なるアプローチがなされている。
これは、より充実したものを生み出そうという意気込みと、バンドという形態を強く意識していたことの表れのようだ。
インストよりも楽曲を重視したバンドサウンドが詰め込まれたアルバムはこうして出来上がった。
今日は1985年リリースの、YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE(イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース)の2ndアルバム、MARCHING OUT(マーチング・アウト)をご紹介したいと思います。
MARCHING OUT(マーチング・アウト)の楽曲紹介
オープニングは1分ほどのインスト、PRELUDE(プレリュード)。
で、ちょうど次の曲へのイントロと考えるのがよいかもしれない。
この曲にはさほど特筆すべきものはない。(←色を変えるほどのことでもない)
そしてここからだ。
2曲目I’LL SEE THE LIGHT,TONIGHT(アイル・シー・ザ・ライト・トゥナイト)。
切り裂くような16分のソリッドなギターリフで始まるこの楽曲は、見事にアルバム全体のイントロダクションとなっている。
ソロだけでない、リフのセンスもやはり一流だ。
非常に印象的でキャッチーなリフで曲全体をまとめ上げている。
様式美あふれるハードロックチューンである。
前回、多くの優れたインストの陰に隠れていたヴォーカル、Jeff Scott Soto(ジェフ・スコット・ソート)がかっこよく歌い上げている。
雄叫びもばっちりだ。
そしてやはりイングヴェイのソロプレイは要注目だろう。
ソロの前奏とも言える部分では、バロック調の響きを持つキメフレーズがキーボードとのユニゾンで踊っている。
そしてソロはやはり、高速フレーズをメロディアスに弾きまくっている。
やはり今でもこのプレイの輝きは色あせていない。
いまだにイングヴェイの代表曲の一つとして輝いている。
3曲目はDON’T LET IT END(ドント・レット・イット・エンド)。
切ない、哀愁を帯びたバラードのように始まる楽曲である。
途中からスピードが増し、硬派なロックへと様変わり。
ここからはゴリっとしたヘヴィなギターリフと、ジェフのヴォーカルが冴え渡っている。
ジェフの叫びと共に始まるイングヴェイのソロは相変わらず粒の揃った美しいものだ。
流れるようにメロディを奏でている。
途中から二本のギターのハモリになるが、このメロディも非常に美しい。
ドラマティックでかっこいいハードロックだ。
4曲目はDISCIPLES OF HELL(ディサイプルズ・オブ・ヘル)。
イントロのアコギのフレーズさえ速い。
その後、3連のリズムで極悪なギターリフが始まる。
ダークな雰囲気をかもし出しながら、様式美とも言えるハード、ヘヴィロックが繰り広げられる。
攻撃的な楽曲の雰囲気をジェフも極悪に歌い上げる。
ギターソロは、まずはクラシカルなキメフレーズ。
ちょうどFAR BEYOND THE SUNのラストのキメの大スウィープをテンポを落として3連のリズムに組み込んだものだ。
同じフレーズでも、速さや、用いる場所によってこんなに雰囲気が変わるのだ、と改めて彼のセンスに驚かされる。
また、それをハーモニック・マイナー・スケールのフレーズとあわせる事によって、全くワンパターンになっていない。
その後、インプロヴァイズ的なフレーズへ。
どれだけ速くても、きちんと楽曲のリズムの中に符割を落としこんでいる。
これは彼のずば抜けた才能の一つと言えよう。
5曲目はI AM A VIKING(アイ・アム・ア・ヴァイキング)。
北欧スウェーデン出身のイングヴェイのテーマソングのような楽曲である。
ゆったりとしたリズムだが、いきなりイントロのギターリフから超絶にかっこいい。
ジェフのヴォーカルも、アルバム中一番はまっているのではないか、と思われる。
メロディもダークなのにキャッチー、非常に聴き易いヘヴィロックソングだ。
そしてやはり特筆すべきはギターソロだろう。
通常リフでも、結構なスピードだが、ギターソロのスタートのフレーズはその1.5倍は速そうだ。
それも非常になめらかに奏でられている。
エコノミーピッキングをうまく使った超速フレーズであるが、僕が真似しても決してこんなに速く美しく弾くことは出来なかった。
その後の、曲の主旋律をなぞったフレーズはヴィヴラートたっぷりで泣きまくっているし、すさまじいフレーズがその後も続く。
インプロヴァイズ的に速いフレーズとクラシカルなフレーズが混在していて、飽きさせない。
イングヴェイを代表するソロの一つと言えよう。
アウトロのギタープレイも哀愁たっぷりで、おなかいっぱいである。
非常にヘヴィなのに美しい、素晴らしい楽曲である。
6曲目はOVERTURE 1383(序曲1383)、インストゥルメンタルの楽曲だ。
クラシカルで、叙情的な美しいインストである。
イントロはロックテイストでヘヴィなリフが聴かれるが、その後一転してエモーショナルなギタープレイへ。
スローで美しいメロディーの後、美しい速弾きへ。
7曲目はANGUISH AND FEAR(アングィッシュ・アンド・フィアー)。
前曲の静かな雰囲気からの楽曲ゆえ、激しいリフが際立つ。
疾走系の楽曲で、やはり特筆すべきはギターリフだろう。
このメロディアスで激しいリフ、なかなかこんな良リフは他では聴けないだろう。
イングヴェイの才能全開である。
ハードロックソングとしても良くできている。
そして、ギターソロはいきなり超絶なスピードで始まるが、キーボードプレイとの掛け合いになっている。
それぞれ疾走するリズムの中で、速弾きプレイを披露した後、ユニゾンプレイに突入して美しいフレーズを聴かせている。
いや、リフもソロも完璧だ。
非常にかっこいい、優れたハードロックである。
8曲目は、ON THE RUN AGAIN(オン・ザ・ラン・アゲイン)。
最初のギターリフがまたまた良い。
そしていきなり弾きまくるソロも最高だ。
ギター中心のまたも疾走系のハードロックだ。
この曲も歌メロがキャッチーでよろしい。
また、ギターソロも美しい音色で弾きまくっている。
ドラマティックで熱い楽曲である。
9曲目は、SOLDIER WITHOUT FAITH(ソルジャー・ウィズアウト・フェイス)。
少し長めのイントロのSEを経て、またも切れ味鋭いギターリフに、続いていきなりの速弾きギターソロ。
ダークな楽曲で、ジェフのヴォーカルが冴えている。
ヴォーカルの後ろのバッキングも迫力があり、きまっている。
長めのギターソロも緩急がついてとても美しい。
普通のバンドじゃこんなにたっぷりとギターソロを聴くことはないだろう。
やはりイングヴェイによるイングヴェイのためのバンドなのだ。
10曲目は、CAUGHT IN THE MIDDLE(コート・イン・ザ・ミドル)。
掻き裂くようなギターリフと疾走感あふれるリズムによるハードロックソングだ。
ギターソロは、非常に速い。
それとキーボードの速弾きプレイにも注目だ。
途中のテンポがスローダウンしたところでの泣きのギターにも注目しておきたい。
11曲目はアルバムラストのインストゥルメンタル、タイトルソングでもあるMARCHING OUT(マーチング・アウト)。
イントロが非常にかっこよいリフで始まるのだが、その後ゆったりとしたリズムで曲は展開する。
彼のプレイはただ速いだけではない、ということを証明するために作られた楽曲のように感じられる。
深いヴィヴラートによる、エモーショナルなプレイ、美しいギターの音色。
そして当然速い部分もあるが、粒の揃った流れるようなメロディ。
彼の別の側面をしっかりと見せ付けて、アルバムは幕を下ろす。
まとめとおすすめポイント
イングヴェイ初期三部作の2作目、1985年リリースの、YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE(イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース)の2ndアルバム、MARCHING OUT(マーチング・アウト)はビルボード誌アルバムチャートで第52位を記録。
本国スウェーデンのアルバムチャートでは第9位だ。
デビューアルバムは諸事情によりインスト中心のアルバムだったが、今回は彼がもともとやりたかったヘヴィメタルのバンドサウンドが特徴となっている。
オープニングがスピード感あふれるヘヴィロック、というのは当時のメタル界では鉄則のようなものだった。
その鉄則どおり、アイル・シー・ザ・ライト・トゥナイトでは見事な様式美のハードロックを聴かせてくれている。
アルバム全体を通しても、疾走曲は多いしジェフもハードな楽曲を見事に歌い上げている。
そしてただヘヴィなだけではない。
ヘヴィではありながらもツボを得たキャッチーな曲が満載であるのもこのアルバムの魅力の一つだ。
そして、やはり最大の注目を払うべきは、大将イングヴェイのギタープレイだろう。
アルカトラスや、1stソロアルバムで見せたプレイは、彼の才能を語るのには序章に過ぎなかった。
クラシカルなフレーズはまだまだ引き出しを多く持っていたし、バッキングやリフの多彩さ、かっこよさは様々な楽曲であふれ出ている。
そして言うまでもなく、ギターソロでの超絶に速く流麗なプレイは他の追随を許さない。
もちろん速さだけなら多くのギタリストたちが追いついてきてはいるが、やはり音の粒や流れるメロディは、この時点ではまだイングヴェイに大きな分があるといえるだろう。
クラシカルでスピーディなプレイで革命を起こしたギタリストはこのときまだわずか21歳。
将来を大きく嘱望されていたに違いない。
そして実際優れたプレイをこの後も見せ続けるのである。
ただ、一つ残念なことは、多くの人が指摘しているようにアルバムの音質が悪い。
こもったような音は、せっかくの楽曲のクオリティを幾らかスポイルしている。
しかし、それを差し引いても、このアルバムは非常に充実した内容になっている。
イングヴェイがやりたいようにやったバンドサウンドとそのメロディ、ぜひご堪能ください。
チャート、セールス資料
1985年リリース
アーティスト:YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE(イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース)
2ndアルバム、MARCHING OUT(マーチング・アウト)
ビルボード誌アルバムチャート第52位
ヴォーカル:Jeff Scott Soto(ジェフ・スコット・ソート)
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