サントラブームに乗っかって、充実の楽曲群 VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)(SOUNDTRACK)

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80年代を語る上で外せない要素はたくさんありますが、その中でもけっこう上位に来るのは映画のサウンドトラック(略してサントラ)の大ヒットと言えるでしょう。
もともとサントラとは、映画のBGM集、もしくはそれプラス主題歌くらいのものだったはずです。
しかし、様々なアーティストのポップスやロックを集めたオムニバスの形でリリースされていく動きが超加速したのが80年代です。

 

とりわけ、フラッシュダンスやフットルースといった例からわかるように、サントラからの大ヒット曲によって映画の宣伝にもなり、サントラも売れる、という音楽業界に新たな収入源を作り出したのがサントラブームですね。
そんな大量に生み出されたサントラの一つが、この映画、VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)のサントラです。
このアルバムには、先行のヒットサントラに負けず劣らず、当時流行のヒットミュージシャンが勢ぞろいすることになりました。

 

僕はこの映画は見ていないけど、サントラは聴いた、という人間です。
当時は、必ずしも映画を見ることなく、音楽作品にはまった人たちも多かったのではないでしょうか。
映画自体が名作なのかB級なのかは、未見なので、もはやわかりませんが、サントラはA級だったと僕は思っています。

 

では、今日は1985年の映画、VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)のサウンドトラックをご紹介したいと思います。

VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、JOURNEY(ジャーニー)のONLY THE YOUNG(オンリー・ザ・ヤング)。

 

ちょうど1983年に僕はフロンティアーズに出会い、エスケイプを聞きまくり、スティーヴ・ペリーのソロ作ストリート・トークを楽しんで、ジャーニーの次のアルバムを今か今かと待っていた時期に出た楽曲です。
待ち望んでいた次回作が、サントラからの先行シングルということで、ちょっと戸惑いました。
その上、この曲は、スティーヴ、ニール、ジョナサンの共作で、既に前年のパティ・スマイス率いるスキャンダルのアルバムに楽曲提供されていたものでした。

 

つまりは完全なる新作ではなかったわけですが、その頃の僕のジャーニーへの想いは半端なかったので、セルフカヴァーとはいえ、大喜びしてしまいました。
スキャンダルヴァージョンも決して悪くありませんが、やはり本家本元のジャーニーによる演奏、歌唱となると一味違います。
あの、スティーヴの伸びやかなヴォーカルが、久々に全身に満ちた気がしましたね。
またニールのギターソロも、メロディ重視で心地よいサウンドを奏でてます。
爽快そのものの楽曲だと思いますね。

 

もともとフロンティアーズに収録予定でしたが、最終的にバック・トークとトラブルド・チャイルドに負けて外された楽曲だったようです。
これは正解だったと思います。
この2曲はフロンティアーズのハードな世界観にはやはり欠かせないと思いますね。
もしオンリー・ザ・ヤングが収録されていたら、ポップすぎて、アルバム全体のまとまり感、バンド感が薄らいでいたとも思えます。

 

しかし、こんな青春映画にはピッタリな爽快ポップロックソングではないでしょうか。
青春モノのサントラにはピッタリのオープニングになったと思います。

 

この曲はアルバムの確か先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第9位、同誌Mainstream Rockチャートで第3位を記録しています。

 

2曲目は、JOHN WAITE(ジョン・ウェイト)のCHANGE(チェンジ)。

 

この曲は、あのホリー・ナイト作曲のキャッチーなロックソングです。
元々ホリー・ナイトが自分のいたSpider(スパイダー)というバンドの2ndアルバムに収録されていた曲です。
その曲を、ベイビーズを脱退したジョン・ウェイトがソロ1作目の1982年のアルバム、IGNITIONでカヴァーした、ということになります。
この時は、アルバムからの先行シングルとしてリリースされましたが、ビルボード誌Mainstream Rockチャートで第16位にとどまってます。

 

その後1984年にジョンは、あのミッシング・ユーの大ヒットによって、一躍トップソロアーティストの仲間入りを果たしました。
2ndアルバム、No Brakesも大ヒット。
そして、今回のサントラへの楽曲提供ということになりました。

 

リック・スプリングスフィールドを思わせる、軽快でキャッチーなロックはこれまた爽快で青春モノにぴったりですね。
ツボを得たメロディは、さすがホリー・ナイトです。
また、ジョンのヴォーカルもいい味出してます。

 

この曲は恐らく3rdシングルとしてカットされ、今回はついにシングルチャート入り、第54位を記録しています。

 

3曲目は、THE STYLE COUNCIL(ザ・スタイル・カウンシル)のSHOUT TO THE TOP(シャウト・トゥ・ザ・トップ)。

 

これはイギリスのポップロックバンド、ザ・スタイル・カウンシルの7枚目のシングルとして、1984年に全英第7位を記録した楽曲になります。

 

ポール・ウェラー率いるこのバンドの音は、当時非常に斬新に感じました。
音使いがとても洗練されていて、ストレートなロック中心に聴いていた僕にとっては、すごくお洒落に感じました。
イントロのストリングスのヒット音によって、一瞬で引きこまれる強烈な印象を与えてますし、それに絡む軽やかなピアノもとても効果的です。
また、途中で出てくるストリングスの美しい旋律も、楽曲をお洒落に彩っています。

 

いやいや、これも名曲と言ってよいでしょう。

 

4曲目は、MADONNA(マドンナ)のGAMBLER(ギャンブラー)。

 

この曲は、マドンナがこのサントラに提供した2曲のうちの一曲で、マドンナ自身が作曲した曲になります。
もう1曲をレコーディングした後に、女の子の視点で書かれたこの曲が映画のオープニングショットにピッタリだ、ということで、サントラに加えられることになりました。
そして、プロデュースは当時の恋人でもあった、ジョン・”ジェリービーン”・ベニテスに頼んでいます。

 

この曲は多くの国でシングルカットされて大ヒットとなっていますが、アメリカではリリースされませんでした。
タイミング的には、彼女の2ndアルバムのライク・ア・ヴァージンが大ヒット中ですね。
アルバムの売上がこっちのヒットで削がれると考えたレコード会社が、アメリカでのシングルカットをやめさせたようです。
まあ、こっちを出そうが出すまいが、当時のマドンナの勢いからすると、あっちもこっちも売れてたのではないかと思われますけどねw

 

この曲はマドンナお得意のシンセダンスポップになってます。
ジェリービーンの方のプロデュースもお手の物でしょう。
映画では、人気急上昇中のマドンナがカメオ出演していて、ナイトクラブでのシーンでこの曲を歌ってます。
映画のヒットにしっかり貢献してる楽曲だと思います。

 

5曲目は、DON HENLEY(ドン・ヘンリー)のSHE’S ON THE ZOOM(シーズ・オン・ザ・ズーム)。

 

こちらは言わずと知れた、元イーグルスのドラマー兼ヴォーカルのドン・ヘンリーです。
ノリのいいロックナンバーを披露しておられます。

 

ちょうど、彼の2ndソロアルバム、ビルディング・ザ・パーフェクト・ビーストを大ヒットさせた後のタイミングですね。
ソロ活動もノッテきたタイミングでのサントラへの参加です。
いかにもアメリカの青春映画の途中で流れそうなイケイケのロックンロールとなっています。

 

ちなみに、途中で盛り上げてる女の子の声は、ゴーゴーズのベリンダ・カーライルと、ゴーゴーズを脱退したばかりのジェーン・ウィードリンです。
さすが大御所、共演希望のアーティストはいくらでもいたようですね。
今回は、サントラへ新曲の提供ということになりました。

 

6曲目は、DIO(ディオ)のHUNGRY FOR HEAVEN(ハングリー・フォー・ヘヴン)。

 

元ブラック・サバス、元レインボウといった肩書きを持つヘヴィメタルヴォーカリスト、ロニー・ジェイムス・ディオ率いるディオの登場です。
ロニーは後のメタル版アフリカ飢餓救済チャリティ・プロジェクトなどを企画するなど、メタル界の重鎮の一人ですが、けっこうポップなハードロックを聴かせてくれてます。

 

この曲はディオの1985年リリースの3rdアルバム、セイクレッド・ハートに収録の楽曲です。
アルバムからの2ndシングルとしてカットされ、アメリカではビルボード誌Mainstream Rockチャートで第30位を記録していました。

 

その楽曲をサントラに提供したということですが、多少オリジナルとはヴァージョンが変わっているようです。
また、この時点のディオのギタリストは、現デフ・レパードのヴィヴィアン・キャンベルですね。
ギターソロで、かなりけばけばしくかっこいいプレイを見せてくれてます。

 

7曲目は、RED RIDER(レッド・ライダー)のLUNATIC FRINGE(ルナティック・フリンジ)。

 

レッド・ライナーというバンドは、日本で恐らく紹介されていないカナダのバンドのようですね。
この曲は、1981年の彼等の2ndアルバムのうちの1曲で、ビルボード誌Mainstream Rockチャートで第11位を記録しています。

 

独特の世界観のある曲です。
幻想的な導入部から始まるのは、ちょっと南部ロックっぽい楽曲です。
ヴォーカルのトム・コクランは、ちょっとデフ・レパードのジョー・エリオットのような声質ですね。
途中で、シンセによる不思議な音色が異世界感を出しています。
また、ギターソロはスティールギターが使われており、その辺はやはりアーシーな雰囲気もあります。

 

救急車が横切ったり、など、なかなかシュールで不思議な世界が繰り広げられています。

 

8曲目は、SAMMY HAGAR(サミー・ヘイガー)のI’LL FALL IN LOVE AGAIN(フォール・イン・ラヴ)。

 

元モントローズのギタリスト兼ヴォーカリストで、ヴォイス・オブ・アメリカとも言われる、サミーの登場です。

 

この曲は、1982年の彼の6thソロアルバム、Standing Hamptonに収録の楽曲で、シングルチャート第43位、Mainstream Rockチャートで第2位を記録しています。

アメリカンロックの王道ともいえる、ミディアムテンポの良曲です。

 

爽やかで、心地よいロックサウンドで、これも青春映画にぴったりだと思います。(この映画見てないけど・・・)

 

ちなみに、サミーはあのフットルースにも楽曲提供していて、ヴァン・ヘイレンに入るまではあのサントラ男、ケニー・ロギンスのような立ち位置にいたような感じがしてます。

 

9曲目は、FOREIGNER(フォリナー)のHOT BLOODED(ホット・ブラッディッド)。

 

これは、1978年リリースの彼等の2ndアルバムのダブル・ヴィジョンのオープニングを飾っている曲です。
先行シングルとしてもリリースされていて、シングルチャートで第3位を記録している熱い名曲です。

 

ちょうど、このサントラの前年に5thアルバム、プロヴォカトゥールが大ヒットし、アイ・ウォナ・ノウでアメリカンチャートを制した後の楽曲提供となりました。
もちろん、直近の楽曲を提供しても良かったとは思いますが、この熱い熱い初期の名曲を持ってきたところが心憎いですね。
やはり青春映画には、こんな熱量のあるロックがはまると思います。
ちょいと古めではありますが、なかなかいいバランスでアルバム中に鎮座していると思います。

 

ラスト10曲目は、MADONNA(マドンナ)のCRAZY FOR YOU(クレイジー・フォー・ユー)。

 

マドンナ2曲目のこの曲は、大本命と言ってもいい超絶バラード作品です。

 

この映画のプロデューサーの二人が、新進気鋭の彼女に目をつけたのが始まりのようです。
元々脚本になかったナイトクラブのシーンを付け加え、彼女が歌で映画に参加することにもなりました。

 

この曲もジョン・”ジェリービーン”・ベニテスがプロデュースを行なっていますが、最初は疑心暗鬼だったようです。
ダンスポップ曲に関しては彼女が一躍時の人になっていたわけですが、こんなバラードを歌いこなせるだろうか、ってのが不安だったわけです。
しかし、このチャレンジにより、自身のシンガーとしての才能を証明したがっていたマドンナが、結局は見事に不安を打ち破り、期待に応えた形になりました。

 

そして出来上がった楽曲は、最高度に洗練されたものになってたと思いますね。
ゆったりとした流れの中で、スネアドラムの音が曲をシャープに引き締めています。
シンセも、80年代の流行どおり楽曲を美しく彩っています。
そして、マドンナのヴォーカルも美しいメロディを優しく歌い上げています。
見事に80年代を代表する美しいバラードの1曲になったと思います。

 

シングルカットされたこの曲は、ビルボード誌シングルチャートでNo.1、同誌Adult Contemporaryチャートで第2位を記録しています。
シングルチャートでは、ちょうどあのウィ・アー・ザ・ワールドが連続でNo.1に君臨していたときで、3週にわたって第2位に甘んじてます。
しかし、4週目についにNo.1をもぎとって見せました。
あのビッグアーティスト集団を押しのけてのNo.1奪取は、当時のマドンナがいかにホットだったかを見事に表わしていますね。

 

この曲は、グラミー賞 最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされましたが、惜しくもホイットニー・ヒューストンの「すべてをあなたに」に賞は取られてしまいました。
しかし、この年を、そして80年代を代表する1曲であることは間違いないでしょう。

まとめとおすすめポイント

1985年の映画、VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)のサウンドトラックは、ビルボード誌アルバムチャートで第11位を記録しています。
フットルースなどに比べると意外にチャートアクションは思わしくはなかったようです。

 

チャートはどうあれ、当時話題のアーティストがぎっしり詰まったこのアルバムはインパクトは大きかったと思いますね。
まあ、全部が新曲ではなかったとは言え、次から次へと繰り出される名曲の数々は、確かに時代のニーズに合っていたと思われます。
また、ほとんどの楽曲が、映画の中のシーンで効果的に用いられているようです。
単なる寄せ集めの楽曲、というのではなく、映画作品の一部として溶け込んでいる楽曲たち、という手法のサントラでもありますね。

 

この映画は、アメリカの典型的な青春モノだっただけに、アメリカンロックが非常によく合いますね。
アルバム全体にディオが入ったりと、ロック系が強いのも特徴の一つだと思います。
そして、単なるロックではなく、青春を感じさせるロック曲ばかりですね。

 

何より、今をときめいていたマドンナが2曲も新曲で参加したというのが最大の話題だったと思います。
おまけに映画中にカメオ出演まで果たしてます。
そんな話題だけでも、映画館に足を運んだ人は多かったのではないでしょうか。
加えて、クレイジー・フォー・ユーの出色の出来と、その大ヒットは映画の最大級の宣伝になったに違いありません。

 

映画の内容はともかくも、サントラは超A級というモノがあふれてた時代に、まさにその法則にのっかった典型的な洋楽オムニバスサウンドトラックとなっています。
豪華アーティストの共演で、非常に楽しめる一枚となっていると思います。
エイティーズサウンドのつまったこのアルバムは、サントラブームの中でも一際光り輝いていると僕は思っています。

チャート、セールス資料

1985年リリース

映画サウンドトラック

タイトル VISION QUEST(ビジョン・クエスト/青春の賭け)

ビルボード誌アルバムチャート第11位

シングルカット順は確定できませんでしたが、恐らくこの順だったと思われます。

1stシングル JOURNEY(ジャーニー):ONLY THE YOUNG(オンリー・ザ・ヤング) ビルボード誌シングルチャート第9位、同誌Mainstream Rockチャート第3位

2ndシングル MADONNA(マドンナ):CRAZY FOR YOU(クレイジー・フォー・ユー) シングルチャートNo.1、Adult Contemporaryチャート第2位

3rdシングル JOHN WAITE(ジョン・ウェイト):CHANGE(チェンジ) シングルチャート第54位