洗練度を増しさらに独自のサウンドへ 傑作2ndアルバム THE POLICE – REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)

前作からの流れ





1978年リリースの、THE POLICE(ポリス)のデビューアルバム、OUTLANDOS D’AMOUR(アウトランドス・ダムール)はイギリスのアルバムチャートで第6位、アメリカビルボード誌アルバムチャートでは第23位を記録しています。
そしてアメリカでは100万枚を売り上げ、最終的には400万枚の売上が記録されています。

 

パンクロックブームに乗りながらも、レゲエ風味を織り込んだポリスの音は、独自の世界観をもったものとして評価されました。
シングルが立て続けにBBCにより放送禁止にされましたが、よくあることですが、それはさらに人々の関心を引いていったと思われますね。

 

母国イギリスでのそこそこの成功のお陰で、アメリカのニューヨークの有名なクラブでのギグをするチャンスを得ます。
その結果、アメリカでのデビューが決まったわけです。
1979年には機材をヴァンに詰め込んでの過酷な北米ツアーも敢行し、着実に世界制覇に向けて歩み続けています。

 

そして、前作の勢いのまま次のアルバムの制作に入ります。
事前のリハーサルもなく、4週でレコーディングをすませています。
この時点では全くプレッシャーなどなかったようですね。
3人の才能からあふれ出るままの勢いで制作されています。

 

レコード会社のA&Mは、有望なバンドにはより大きなスタジオと有名なプロデューサーをあてがう戦略をとっていましたが、ポリスはそれを望みませんでした。
小さなスタジオで、1stアルバムでエンジニアとして参加していたNigel Gray(ナイジェル・グレイ)と共同プロデュースを行なっています。
そして今回も予算は6000~9000ポンドといった、低予算でのレコーディングがなされています。
前作の売上から容易に捻出できる金額でまかなわれてるわけです。

 

こんな感じでレコーディングに取り組んでいるので、彼等の音楽性に関してレコード会社はまったくコントロールできない状況が保たれました。
要するに、今回も自分たちの好きなように好きな音楽を突き詰めていけたということです。

 

出来上がったアルバムに付けられたのは、“REGGATTA DE BLANC”というフランス語と英語の入り混じった言葉で、英語に翻訳すると “white reggae”、つまり白人によるレゲエを意味します。
つまり、今回も前作同様、ロックにレゲエ風味を融合させるという、彼等のユニークな作風が一層強調されたものとなっています。

 

では今日は、1979年リリースのTHE POLICE(ポリス)の2ndアルバム、REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)をご紹介します。

REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、MESSAGE IN A BOTTLE(孤独のメッセージ)。

 

スティング作曲の優れた名曲でアルバムスタートです。
イントロのAndy Summers(アンディ・サマーズ)のギターリフから、非常に洗練されたかっこよさが感じられます。
彼のギタープレイは、いつもながらさりげなくも曲の中心で楽曲に彩りを与えてていて素晴らしいですね。
前年にエドワード・ヴァン・ヘイレンがデビューしていて、ハイテクギタリストが山のように産出されてきた流れの中で、アンディのギターはオリジナリティを保ってて別の意味で鮮烈です。

 

また、ドラムのStewart Copeland(スチュワート・コープランド)のリズムもまた素晴らしいです。
的確でテクニカルなビートが楽曲を牽引しています。
曲の起伏に合わせて、緩急をつけたドラミングは職人技ですね。
また、ハイハットのコントロールも芸術を感じれるほどに光っています。

 

そしてSting(スティング)のベースも効いていて、独特のベースラインが曲を支えています。
また、彼のヴォーカルもやはり独特で、とても魅力的です。

 

曲展開も優れていて、最後には新たなメロディでのタイトルのリフレインが非常に印象的です。

 

低予算で作ってるのが効を奏してるのか、非常にシンプルな演奏で、3人のそれぞれのプレイヤーの音がはっきりと聴こえていて良いですね。
変に飾り立てるのではなく、3人の極限に削られた音数で、最高度の楽曲が組み立てられていると思います。

 

この曲はアルバムからの先行シングルとしてリリースされ、イギリスで初のNo.1シングルとなりました。
一方アメリカでは、ビルボード誌シングルチャートで第74位に終わっています。

 

2曲目は、REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)。

 

3人の共作でのインストゥルメンタルとなります。
インストと言っても、歌詞がないだけで、スティングのエスニックな雰囲気の咆哮はしっかりと録音されています。

 

イントロの絶妙なスチュワートのドラムプレイはやはり素晴らしいですね。
ハイハットのコントロールもすごいです。
また、曲の疾走感を演出する点でも彼のドラミング、おかず共に好演となっています。

 

アンディのギターも空間系のエフェクトで曲の隙間をきれいに埋めています。
スティングのベースもグルーヴ感たっぷりです。
3人のせめぎ合いとハイテンションなノリが絶妙な、クオリティ高いインストとなっています。

 

この曲は、1980年にグラミー賞 最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を見事受賞しています。

 

3曲目は、IT’S ALRIGHT FOR YOU(イッツ・オールライト・フォー・ユー)。

 

スティングとスチュワート共作の、非常にわかりやすくキャッチーなパンク風ロックです。

 

ポップな歌メロのせいか、やはり当時のパンクブームとは一線を画してる感じがします。
シャープで手数の多いドラミング、次第に厚みを帯びていくギタープレイも、やはりポリスのオリジナル楽曲に仕上がってますね。

 

4曲目は、BRING ON THE NIGHT(ブリング・オン・ザ・ナイト)。

 

スティング作曲の、これまたポリスらしいレゲエ風味の名曲です。

 

これもまずはスチュワートのハイハットプレイが耳を引きます。
そして、特筆すべきはAメロ入りとほぼ同時に始まるアンディのギターアルペジオですね。
クリーントーンでせわしなく紡がれる彼のアルペジオは最高峰のギタープレイになっていますね。
こんな音色も、まったくラフな他のパンクバンドとは異なる、ポリスならではの音の源となっていると思います。

 

サビでのレゲエタッチの展開が、このアルバムのタイトルの趣旨を色濃く反映しています。
ここでのアンディのクリーンカッティングもとても冴えてます。

 

間奏ではスティングのベースソロにアンディのギターソロフレーズが加わっていくところが印象的です。
アウトロでは、アンディがちょっと狂気も入ったソロをたっぷり聴かせてくれます。
彼の美しく繊細なプレイと狂気のプレイの同居感が、後にも続いていく彼の大きな個性の一つと言えると思います。

 

5曲目は、DEATHWISH(死の誘惑)。

 

この曲は3人の共作作品で、これも緩急自在で絶妙なポップロックになっています。

 

重めのベースのリズムにのって軽快な音できらびやかに飾ってるアンディのギタープレイがここでも光っています。
加えて、やはり緩急のついたスチュワートのドラムプレイも見逃せません。
ハイハットのオープンとクローズを切り替えながら、心地よく軽快なリズムをたたき出しています。
歌メロもいいですが、各プレイヤーの演奏でしっかり聴かせてくれる良曲になっています。

 

6曲目は、WALKING ON THE MOON(ウォーキング・オン・ザ・ムーン)。

 

スティング作曲の、これまた名曲です。

 

最初はもっとロックっぽい曲としてレコーディングされてたようですが、最終的にこの形になりました。
この変更は成功だったと思いますね。
ゆったりとしたレゲエのリズムにのってこそのこの楽曲で間違いないでしょう。

 

それにしてもこの曲もやはりプレイヤーの技量がたっぷりと詰まってますね。
まずは、アンディのギター。
空間系のエフェクトによる、低重力の月世界を響き渡るようなギターストロークが美しすぎますね。
また、レゲエのリズムの2、4拍目のカッティングの軽快さも見事です。
やはりアンディのギターテクは、独特でオリジナルな存在になってます。

 

また、スチュワートのハイハットコントロールもイントロから全開です。
特に間奏でのハイハットの複雑なリズムでの連打早叩きは必聴ですね。

 

スティングのハイトーンヴォイスも交えて、後々にまで残る名曲として誕生しました。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、イギリスで2曲連続のNo.1を獲得しました。

 

7曲目は、ON ANY OTHER DAY(オン・エニイ・アザー・デイ)。

 

この曲はスチュワート作曲で、リードヴォーカルも彼が担当しています。
とはいえ、バックコーラスでのスティングのハイトーンも光っています。

 

イントロのギターリフのブリッジミュート音とリズム感が、ベンチャーズっぽいです。
特筆すべきところはありませんが、3ピースバンドとして悪くはない標準的な楽曲だと思います。

 

8曲目は、THE BED’S TOO BIG WITHOUT YOU(ひとりぼっちの夜)。

 

スティング作曲のこの曲は、レゲエにニューウェイヴの感覚を混ぜ込んだ、これまたポリスオリジナルの楽曲ですね。

 

やはりそれぞれのプレイが際立って見事なアンサンブルになっていると思います。
スチュワートの跳ねたドラミングに、単なるレゲエリズムに収まらないアンディのアイディア豊かなギターフレーズ、スティングのベースラインもいい味を出してます。
それに加えて、悲しげな内容に沿ったスティングのヴォーカルも秀逸です。

 

レゲエポップとして絶妙に完成していると思います。

 

9曲目は、CONTACT(コンタクト)。

 

スチュワート作曲のこの曲は、またまた独自の世界を生み出しています。

 

浮遊感のあるアンディのギターフレーズが小気味良いです。
そして、思いっきり前に出ているスティングのベース音が強烈です。
ここではシンセベースを使って、かなり強い音で録音されてます。
そして後ろではやはりテクニカルにドラミングテクを駆使しているスチュワート。

 

またサビの疾走感、バンド感がたまらなく良いですね。
ささやかな短い曲ですが、ポリスの魅力の詰まった楽曲だと思います。

 

10曲目は、DOES EVERYONE STARE(ダズ・エブリワン・ステア)。

 

この曲はスチュワート作曲で、リードヴォーカルも半分担当しています。

 

アンディが全編ジャズっぽいピアノで曲を引っ張ってます。
かなり他の曲と比べると毛色の違った曲ですが、次第にバンドサウンドが加わっていくと、やはりポリスの音になって行きますね。

 

アルバム中では目立ちませんが、けっこうノリが軽快なサビは良いと思います。

 

ラスト11曲目は、NO TIME THIS TIME(ノー・タイム・ディス・タイム)。

 

スティング作曲の疾走感あふれるパンク風ロックでラストです。
スチュワートの軽快で勢いあるドラミングのイントロから痛快です。
彼のおかずもたっぷり収録されていて、とてもいいです。

 

3ピースバンドならではのシンプルでアップテンポな曲で勢いよくアルバムはエンディングを迎えます。

まとめとおすすめポイント

1979年リリースのTHE POLICE(ポリス)の2ndアルバム、REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)はイギリス、オーストラリア、フランス、オランダなどの国のアルバムチャートでNo.1を記録しています。
アメリカビルボード誌アルバムチャートでは第25位です。
アメリカでは最終的に400万枚を売上げています。

 

前作から比べると、着実に人気を確立していっています。
やはり、2曲の全英No.1ヒットを出すなど、確実に知名度を上げていっていますね。
しかし、アメリカではまだこのリリース時点では成功したとは言いがたい状況ではあります。
なかなか世界の壁は厚いです。

 

アルバムの内容は、前作からあまり間を空けずに制作されたにも関わらず、クオリティはアップしていると感じられます。
特に、今回は「ホワイト・レゲエ」を意味するアルバムタイトルを付けただけあって、前作で見せたロックとレゲエの融合がいっそう進み、さらなる高みに上がった気がします。
独自の解釈で加えられたレゲエの風味が、ポリスサウンドを、他とは全く異なるサウンドへと昇華させていっていますね。
もはや、デビュー時の、「パンクバンド」というブームに乗って出てきたバンド、という段階から既に卒業している感が満載です。

 

やはりそう感じさせるのが、3人のプレイヤーたちの技量ではないでしょうか。
スチュワートのたたき出すドラミングは、ゾクゾクするほどスリリングでバンドの一体感、疾走感に貢献しています。
またアンディの紡ぎ出すギタープレイは、非常に個性的で、新たなジャンルを生み出したと言っても良いほどの洗練具合を感じます。
そしてスティングのベースも、けっしてヴォーカルと兼務しているからと言ってシンプルに徹しているわけでなく、なかなかのグルーヴ感を随所で見せてくれてます。
何より、フロントマンである彼のハイトーンなヴォーカルも、このバンドを独特のものにしている大きな要素の一つであることは間違いありません。

 

3ピースバンドという、ロックバンド的には最小ユニットから紡ぎ出すポリスの音は、非常に密度の濃いものとなっています。
前作からそうでしたが、今回もやはりシンプルなのに緻密で洗練度が上がっていると思います。
史上最強の3ピースロックバンドへの道を、着実に歩み続けている感じを受けるアルバムと言えるのではないでしょうか。

 

前作から洗練度を増して、粒よりの楽曲でつまったこのアルバムは、彼等の残した作品群の中で、かなり評価の高いものとなっています。
3人のケミストリーによってあふれ出る、オリジナルなポリスサウンドの満ちた充実した楽曲たち。
確かにこのアルバムも聞き逃せない1枚になっていると思います。

チャート、セールス資料

1979年リリース

アーティスト:THE POLICE(ポリス)

2ndアルバム REGGATTA DE BLANC(白いレガッタ)

ビルボード誌アルバムチャート第25位 アメリカで最終的には400万枚のセールス

アメリカでのシングル MESSAGE IN A BOTTLE(孤独のメッセージ) ビルボード誌シングルチャート第74位