デビュー時からほぼ完成形  HUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)- HUEY LEWIS AND THE NEWS(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)

ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース結成





僕がHUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)の音楽にドはまりしたのは、1983年リリースの3rdアルバム、SPORTS(スポーツ)の頃ですね。
アルバムはNo.1、ヒット曲も連発、完全にアメリカンロックバンドとして人気を確立していると感じてました。

 

そんなヒューイ・ルイス&ザ・ニュースも、歴史を振り返れば、実は下積みの長いプレイヤーたちの集まりだったのです。

 

ヴォーカルのHUEY LEWIS(ヒューイ・ルイス)は、1971年に、キーボードのSean Hopper(ショーン・ホッパー)と共に、Clover(クローバー)に加入してます。
クローバーは元々サンフランシスコのベイエリアで活動していたカントリーロックバンドでしたが、途中でイギリスに渡って活動していました。
このバンドに2人が加入してから、3rdアルバム、4thアルバムをRobert John “Mutt” Lange(ロバート・ジョン・“マット”・ランジ)のプロデュースで制作しています。
こんなところで早くも“マット”・ランジとの縁があったのですね。

 

このバンドのアルバムやシングルは、商業的な成功を収めることはありませんでしたが、Thin Lizzy(シン・リジィ)、Lynyrd Skynyrdレーナード・スキナード)といったバンドのサポートでツアーを回ってます。
ショーン・ホッパーはクローバーのメンバーとして、
Elvis Costello(エルヴィス・コステロ)の1stアルバムのバックバンドとして参加し、ヒューイ・ルイスはハーモニカでシン・リジィの楽曲に参加したりしてます。

 

1970年代の終わりには、クローバーは再びアメリカ、サンフランシスコ・ベイエリアに戻って活動を始めます。
そして同時期にベイエリアで活動していた、Soundhole(サウンドホール)というバンドがあります。
このバンドもクローバーと似た感じで、独自の成功というよりも、バックバンド的な活動を地道に続けていました。

 

そしてヒューイ・ルイスはクローバーを離れ、1978年にHuey Lewis & The American Express(ヒューイ・ルイス&ザ・アメリカン・エキスプレス)という名前の自分のバンドを結成します。
そこには、クローバーで一緒だったショーン・ホッパーと共に、元サウンドホールの、Bill Gibson(ビル・ギブソン)、Johnny Colla(ジョニー・コーラ)、Mario Cipollina(マリオ・シポリナ)が含まれています。
つまりはほぼほぼクローバーとサウンドホールのそれぞれの残党が合体したようなものですね。
このバンドで、新たにバンド活動を続けていきます。
途中、アメリカン・エキスプレスのアーティスト名でシングルを1枚リリースしていますが、相変わらず全く売れることはありませんでした。

 

1979年にはリードギタリスト、Chris Hayes(クリス・ヘイズ)がバンドに加入しています。
もうすでに、下積みを続けているおっさんたちの中で弱冠22歳ほどの若者が、フレッシュな空気を持ち込みました。
それと共にクリサリスレコードに移籍し、そこでデモテープが評価され、ついにアルバムリリースの契約を獲得します。

 

ところが、レーベル側は、彼等のバンド名に難色を示します。
あの大きなカード会社アメックスと同名な訳で、商標権侵害で訴えられるのを恐れたわけですね。
ここで、バンドはその名前を、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースに変更することになったのです。

 

約10年ほどの下積みを経て、ヒューイ・ルイスはついに念願の自身のバンドでのデビューを果たすことになりました。
彼も約30歳になり、デビューには遅咲きではありましたが、ここにきてやっと成功への第一歩を踏み出すことになりました。

 

では今日は、1980年リリースのHUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)の1stセルフタイトルアルバム、HUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)をご紹介します。

HUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、SOME OF MY LIES ARE TRUE (SOONER OR LATER)(スーナー・オア・レイター)。

 

これは、まさにヒューイ・ルイス節そのものの軽快なロックンロールですね。
軽快にすっ飛ばしているドラムスに、グルーヴィーなベースライン。
適度に絡んでくるキーボードサウンド、軽めで効果的なギターリフ。
派手ではありませんが、軽妙なバンドサウンドがここちよいです。

 

そしてやはり特筆すべきは、ヒューイの、後にpure golden voice”と言われるヴォーカルと、メンバーによる爽やかなコーラス
ここが、かなり大きな魅力になっていると思いますね。
アメリカンロックンロールの王道に、見事なコーラスワークが絡まって、とっても爽快な楽曲になっています。
これは、後々の彼等の作品にほぼ一貫している特長ですよね。
デビュー時点で、すでにほぼほぼ完成形のサウンドを聴かせてくれてると思います。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされましたが、まったくチャートには無縁で終わってしまいました。
今聞いても、非常に楽しめる楽曲なのに、かなり渋いデビューとなってしまいましたね。

 

2曲目は、DON’T MAKE ME DO IT(ドント・メイク・ミー・ドゥ・イット)。

 

クラップを混ぜて、これまた軽快なイントロから始まるポップロックです。
これはシングルカットできるクオリティがあると思いますね。

 

前曲と同様ヒューイのヴォーカルと、メンバーのコーラスとの掛け合いが絶妙に爽やかです。
クリス・ヘイズのギターソロも、気持ちのよいメロディを奏でてます。
ささやかなキーボードの音色もまた気持ちがよいです。

 

これまた、ヒューイ・ルイス節としてはすでにかなりの完成度を誇る作品だと思います。
後々のヒット曲と遜色ない楽曲ではないでしょうか。

 

3曲目は、STOP TRYING(ストップ・トライング)。

 

静かなフェードインから始まりますが、これも軽快なロックソングです。
サビのコーラス、キーボードの心地よさ、バンドの完成したサウンドなど、軽快で心地よい楽曲です。

 

4曲目は、NOW HERE’S YOU(君がいるから)。

 

これも、典型的なヒューイサウンドです。
この曲のイントロには、サックスが心地よく響いています。
アルバムでは初登場の音ですが、このサックスも、後々のヒューイサウンドの個性の一つになりますが、最初っからいい存在感を放ってましたね。
サックスはジョニー・コーラによるプレイだと思いますが、イントロもソロもアウトロも、軽快に楽曲を盛り上げています。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされましたが、これまたチャートインしていません。

 

5曲目は、I WANT YOU(アイ・ウォント・ユー)。

 

これは彼等の前身バンドの一つサウンドホールのメンバー、Brian Marnellによる楽曲です。
この曲以外は、ほぼバンドメンバー全員で作曲しています。

 

イントロ、ABメロ、サビともに爽やかな楽曲です。
心地よさを音にさせたら、抜群のバンドですね。

 

大サビでは、ちょっとテンションが変わって、ヒューイの叫びと共にちょっとシリアスモードになります。
が、ほぼほぼ曲全体では、爽快サウンドが維持されてます。

 

6曲目は、DON’T EVER TELL ME THAT YOU LOVE ME(うちあけないで!)。

 

ここで、軽めの疾走ロックンロール曲の登場です。
全体がシンプルな楽器で構成されてるので、全ての音がはっきり聞こえて、とてもバンド感を感じられます。
ベース音と軽妙なドラムスをを中心とする、ドライヴ感がたまりません。
そして、その周辺で彩りを加えるキーボードにギターリフ。
ヒューイの熱いヴォーカルにメンバーの爽やかなコーラス。
全てがバランスの取れたノリノリのロックンロールです。

 

7曲目は、HEARTS(ハーツ)。

 

頭打ちのリズムでのイントロとサビが、これまた軽快です。
これも派手ではありませんが、やはりプレイヤーみんなが経験者ということで、ちょうど良い技量を披露していますね。
気持ちよく楽しめる、これまた佳曲となっています。
軽快なドラムの連打で終わるエンディングもとても良いです。

 

8曲目は、TROUBLE IN PARADISE(トラブル・イン・パラダイス)。

 

これはかなりの名曲ですね。
アルバムを聞く前から、ラジオで聴いてお気に入りだった曲でもあります。
シングル化はされてませんが、このキャッチーな楽曲は、とても馴染み深く、後々のライヴの定番曲にもなっているようです。

 

爽やかなキーボード、軽やかなサクソフォンの響きで始まる、ヒューイ節全開の良曲です。
間奏のサックスソロ、アウトロのギターソロなど聴き所も満載。
お得意のヴォーカル&コーラスハーモニーも完璧。

 

ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの魅力がたっぷり詰まった楽曲になっています。

 

9曲目は、WHO CARES?(フリーウェイ55)。

 

邦題は曲中の歌詞から取られているようです。
イメージとしては高速道路を突っ走っている感じでしょうか。
ぐいぐいと突き進むようなベースラインが非常に特徴的です。

 

ヒューイもまくしたてるように勢いよく歌っていきます。
サックス、ギターが狂気の高速走行を上手い具合に表現していると思います。

 

もともとのバンド名、アメリカン・エキスプレス(字義的にはアメリカの急行列車)のイメージにピッタリな、豪快なノリのロックンロールになっています。

 

ラスト10曲目は、IF YOU REALLY LOVE ME YOU’LL LET ME(恋はこれっきり)。

 

最後はさらに加速しています。
キーボードの8分の連打と、ロックンロールギターリフ、ヒューイのハーモニカプレイが、疾走感をたっぷり醸しだしています。
ギターソロも、軽快高速プレイで快走しています。

 

わずか2分足らずの楽曲で、勢いよくまくしたててアルバムは幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1980年リリースのHUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)の1stセルフタイトルアルバム、HUEY LEWIS AND THE NEWS( ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)は、ビルボード誌アルバムチャートで、第203位を記録しています。
また、売上も伸びず、商業的には失敗作とみなされてしまってます。

 

何が驚きって、ビルボードのアルバムチャートってTOP200と思っていましたが、203位、っていう数字が出るんですね。
完全に圏外ですが、それでも一応順位はついてます

 

アルバムはBill Schnee(ビル・シュネー)というプロデューサーのもと、約3週間でレコーディングされています。
前10曲、トータル32分弱のコンパクトな作品です。
しかし、今聞き返しても、なぜこれが売れなかったんだろう、と逆に驚きですね。
シングルカットされた2曲も、結構彼ららしいいい曲ですし、アルバム中には他にも、後のバンドの方向性とぴったりはまった良曲がつまっています。
まあ、何かが足りなかったんでしょう。

 

1980年と言えば、MTVの登場前ですが、シングルのスーナー・オア・レイターはPVが作成されています。
ところが、やっぱり30歳前後のおっさんたちのプレイは、華々しく登場してきた多くのバンドに比べるとインパクトに欠ける感じは否めませんw
逆にシュールな感じの演出で僕は好きですが、ヒットにはつながりませんでした。

 

楽曲はとても良かったのですが、全米に火がつくまでには至らなかったのですね。

 

ところが、彼等のホームであるベイエリアではそこそこ人気を博して、ファンの心を掴んだようです。
やはりアメリカは市場が大きすぎて、一気に全米制覇するには、何らかの大きなきっかけが必要なようです。
今回はそんなきっかけは生まれず、チャート的には埋もれてしまいました。

 

とは言え、アルバムの内容は非常に充実していると僕は思います。
今聞き返しても、後のヒット作とは遜色のない楽曲が揃っています。
このデビュー時点で、ほぼほぼ彼等の作風、個性は完成していたように感じられますね。

 

軽快なアメリカンロックの王道を、軽やかなサックスやキーボード、心地よいギターソロなどで彩るバンドサウンドは完全に確立されています。
そしてなんと言っても、ヒューイの抜群のヴォーカルとメンバーによる絶妙なコーラスワーク
とても爽やかな風を吹き込んでくれる、心地よいアルバムだと僕は思っています。

 

後のキャリアにつながる、優れた楽曲で構成されたコンパクトなこのアルバムは、彼等の原点でもあり、やりたかったことのそのままでもあると思います。
とても埋もれさせるにはもったいないこのデビューアルバム、一聴の価値ありです。

チャート、セールス資料

1980年リリース

アーティスト:HUEY LEWIS & THE NEWS(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)

1stアルバム、HUEY LEWIS & THE NEWS(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)

ビルボード誌アルバムチャート第203位

1stシングル SOME OF MY LIES ARE TRUE (SOONER OR LATER)(スーナー・オア・レイター) ビルボード誌シングルチャート チャートインせず

2ndシングル NOW HERE’S YOU(君がいるから) チャートインせず