さらに磨きのかかったRATT ‘N’ ROLL(ラットンロール)  RATT - INVASION OF YOUR PRIVACY

前作からの流れ





1984年リリースの、RATT(ラット)のデビューアルバム、OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)は大ヒット。
ラットはいきなり、LAメタル、グラム・メタルの急先鋒の一つとして大きな注目を集めることになりました。

 

この大ヒットを受けて、世界ツアーを敢行。
ちょうど、同じ年にデビューしたBON JOVI(ボン・ジョヴィ)は、アメリカではブレイクとまで行かず、ラットのサポートアクトとしてツアーを回ります。
ボン・ジョヴィの1stアルバムも非常にいいアルバムでしたが、完全にラットに水を開けられた感じになってますね。
既にブレイクしていたMötley Crüe(モトリー・クルー)と共に、グラムメタルを盛り上げていってます。

 

ラットとこの時期のボン・ジョヴィの差は何だったのだろう、と考えて見ますが、やはりその時求められていたキャラクターの違いでしょうか。
ラット、モトリー・クルー、はどちらも、ワルそうでグラマラス、という見かけと共に、派手な音楽性。
こんなところが、一気に人気を高めた要因の一つかもしれません。

 

対してこの時期のボン・ジョヴィは、どちらかというと、地味(!?)で健全、音楽性もちょっと固い感じかなあ、と僕は考えます。
もちろん、それが彼らの持ち味で、僕は好きなんですが、当時あれだけグラムメタルが流行ったことを考えると、そこからはちょっとずれてたのかもしれません。
まあ、結局は3rdアルバムで一気に大逆転するわけですが、それまではボン・ジョヴィは辛抱の時が続き、ラットのサポートもやりながらコツコツまじめにライヴを続けたわけです。

 

数年後は大逆転されるなど、露知らず、ラットの快進撃は続きます。
ラットの持ち味は、やはりWarren DeMartini(ウォーレン・デ・マルティーニ)と、Robbin Crosby(ロビン・クロスビー)による華麗なツインギターが真っ先に上げられるでしょう。
特に弱冠18歳で加入したウォーレンの華麗なテクニカルギターは、耳を奪ってくれます。
ギターキッズのボーイズの大半は、彼らのギタープレイに釘付けです。

 

一方他のグラム・メタルバンド同様、ラットにも多くの黄色い声援が飛び交ってます。
やはり、ヴォーカルのStephen Pearcy(スティーヴン・パーシー)を初めとするバンドメンバーの色気に多くのガールズたちはクラクラだったようです。
特にウォーレンは、そのギタープレイだけでなく、若くてイケメン、という、「天は二物を与える」状態で両性から人気を獲得しています。

 

さて、前作の勢いそのまま、2ndアルバムが制作されます。
前作同様、Beau Hill(ボー・ヒル)のプロデュースにより、全10曲のアルバムが完成します。
僕の個人の意見ですが、ギタープレイがさらに円熟、また楽曲のクオリティもアップ、と前作を上回る素晴らしいRATT ‘N’ ROLL(ラットンロール)が詰まった素晴らしいアルバムが出来上がりました。

 

では、今日は1985年リリースの、RATT(ラット)の2ndアルバム、INVASION OF YOUR PRIVACY(インヴェイジョン・オブ・ユア・プライヴァシー)をご紹介します。

INVASION OF YOUR PRIVACY(インヴェイジョン・オブ・ユア・プライヴァシー)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、YOU’RE IN LOVE(ユア・イン・ラヴ)。

 

もう、イントロのギターリフの小気味良さといったら・・・。
この曲を特徴付けている、非常に気持ちいいリフです。
ウォーレンによるプレイのようですが、この比較的単純なプレイが、ここまで気持ちを高揚させてくれるとは素晴らしいです。
パワーコードとブリッジミュートのちょうどいい塩梅が、このプレイを昇華させているのでしょう。

 

楽曲も前作同様、ゴキゲンなラットンロールですね。
やはり彼らの魅力が1番伝わるのは、このくらいのミドルテンポのハードロックにおいて、と言えるでしょう。
このちょうどいい感じのリズムに、切れのよいギターリフが加わり、スティーヴンの邪なヴォーカルが加わったとき、ラットンロールの完成です。

 

また、ギターソロもウォーレンのようですが、これまた伸び伸びとプレイしてますね。
ところどころ入るブリッジやソロプレイも光ってます。
このアルバムでは、ウォーレンの成長がすごく目立ってる気がしてます。

 

ラットのアルバムのイントロとしては素晴らしいラットンロールを聞かせてくれました。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第89位、同誌Mainstream Rockチャートでは第34位を記録しています。

 

2曲目は、NEVER USE LOVE(ネヴァー・ユーズ・ラヴ )。

 

これまた、かっこいいギターリフがイントロから聞こえて来ます。
そして、ラットの得意なミドルテンポでグイグイくる曲調ですね。
バンドのまとまり感が、非常にいいですし、歌メロもキャッチーで、かなりかっこいい曲です。

 

ギターソロもたっぷりと、爽快に奏であげてます。
そのバックで聞こえるキレの良いリフとあいまって、強烈にかっこいいハードロックだと思います。

 

3曲目は、LAY IT DOWN(レイ・イット・ダウン)。

 

前の2曲のいい流れのそのままに、またまた素晴らしいラットンロール誕生です。
これはやはり、イントロのウォーレンのギターリフが、超絶にかっこよすぎますね。
この曲ではかなり凝ったリフが披露されてます。
16分のリズムのミュートも入っていて、非常に良く出来たリフですね。
当時のギターキッズなら誰もが弾きたがったであろう、名リフの誕生です。

 

そして、この曲はいつもとちょっとリズムの感じが違いますね。
タッタカ タッタカ・・・のリズムで、またいい感じのノリを生み出してます。
スティーヴンのヴォーカルも艶っぽいし、言うことありません。

 

ウォーレンのギターソロも、最高級の出来となってます。
ゆったり単音のロングトーンのビブラートからソロに入りますが、ユニゾンチョーキングをきっかけに少しずつ速弾きに変わります。
ラン奏法を経た後、ユニゾンチョーキングと速弾きフィンガリングとの組み合わせで印象的なソロが組みあがってます。
なかなか当時20代前半の若者が作ったとは思えない、良く出来た見事なソロだと思います。

 

このミドルテンポの、やばそうな雰囲気とフラッシーなギタープレイの融合こそ、ラットの真骨頂なのだと思いますね。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで第40位、Mainstream Rockチャートでは第11位を記録しています。

 

4曲目は、GIVE IT ALL(ギヴ・イット・オール)。

 

これまた、ギターリフがかっこよいです。
全編で、キラキラとリフが踊っています。
この曲も歌メロはキャッチーなので、シングルカットしてもいいくらいのポテンシャルはあるのではないでしょうか。
そして、ギターソロもきらびやかに、派手に弾きまくられてますね。

 

僕は、ロビンとウォーレンの音の違いははっきりはわからないのですが、恐らくこのソロはウォーレンのプレイで合ってるのではないでしょうか。
ロビンは、バッキングなどで縁の下の力持ち的な存在のようです。
しかし、それが、いっそうウォーレンの才能を引き出したのだと思えますね。
ロビンの方が4年ほど年上ですが、おいしいところを譲る度量の深さがあったようですね。
彼は、サイドギターに徹して、むしろ、コンポーザーとして大きくバンドに貢献しています。

 

5曲目は、CLOSER TO MY HEART(クローサー・トゥ・マイ・ハート)。

 

A面ラストの曲は、ギターアルペジオで始まるちょっと哀愁ある楽曲です。
なかなかいいメロディではないでしょうか。
また、ギターソロが、短いですが曲にピッタリの雰囲気のプレイが聴けます。

 

その後、サビの裏でずっとギターが楽曲を飾ってます。
この哀愁あるメロディアスな曲にぴったりのプレイ満載です。
もっと聴いていたい、と思わせなられながらフェイドアウトしていきます。

 

この曲では、他のラットンロールで聴けるギターとは一味違ったプレイを楽しめると思います。

 

6曲目は、BETWEEN THE EYES(ビトウィーン・ジ・アイズ)。

 

B面1曲目は、ちょっと重々しいどっしりとした楽曲になってます。
そんな中でも、ギターリフはやはり軽快です。
ギターソロはフラッシーで流麗な、いいプレイが聴けます。
ところどころ入るブリッジ部分でも華麗に弾きまくられてます。
あと、後半にはスパニッシュっぽいアコギの速弾きまで出てくる、ちょっと毛色の変わった曲ではあります。

 

7曲目は、WHAT YOU GIVE IS WHAT YOU GET(ホワット・ユー・ギヴ・イズ・ホワット・ユー・ゲット)。

 

ここでもソリッドでキレのあるリフスタートです。
そこにギターソロメロディが絡まり、ツインギターで始まるかっこよい曲です。
どっしりと、重めの曲ですが、歌メロは飽くまでキャッチーです。

 

楽曲的には普通の曲ですが、やはりギタープレイに耳を傾けると、いい曲だな、って感じます。
ソロも楽しめますし、アウトロまでギタープレイがしっかりと聴けます。
この辺が、ギター好きな人にはたまらないと思います。

 

8曲目は、GOT ME ON THE LINE(ガット・ミー・オン・ザ・ライン)。

 

ちょっと重めの2曲に続くこの曲では、軽快感が復活します。
冒頭の電話の音に驚かされ、そこから始まる楽曲はまさにラットンロールです。
ベースラインが、うねうねとグルーヴィーに聞こえて来ます。

 

歌メロはキャッチーで、いつものあのノリです。
曲全体を彩るツインのギターバッキングがいつもの小気味よさを出してていいですね。
ソロも軽快でメロディアス
彼ららしい、ロックが聴けます。

 

9曲目は、YOU SHOULD KNOW BY NOW(ユー・シュッド・ノウ)。

 

前曲が終わるや否や、ギターリフのイントロへ突入します。
いい流れですね。
この曲も引き続きラットンロールしてます。

 

サビのヴォーカル&コーラスが、爽やかにキマッテますね。
非常にキャッチーな楽曲です。

 

この曲ではギターソロが、他とは異なります。
恐らく、ソロの入りは二人で交代で弾いてますね。
そしてその後、ユニゾンでメロディアスにプレイしてます。
ツインギターならではのなかなかいい試みだと思います。
アウトロでも、ソロをたっぷり聴きながらフェイドアウトしていきます。

 

ラスト10曲目は、DANGEROUS BUT WORTH THE RISK(デンジャラス・バット・ワース)。

 

ちょっとした拍のトリックのあるイントロです。
キレのあるギターリフは健在です。
歌メロもキャッチーで、非常にいい曲だと思います。

 

ギターソロはコンパクトですが、なかなか良いプレイです。
その分、アウトロでサビの裏でずっとプレイし続けてフェイドアウトしていきます。

まとめとおすすめポイント

1985年リリースの、RATT(ラット)の2ndアルバム、INVASION OF YOUR PRIVACY(インヴェイジョン・オブ・ユア・プライヴァシー)はビルボード誌アルバムチャートで第7位、アメリカで200万枚を売り上げるヒットとなりました。
前作と比べて、チャートは同位、売り上げは100万枚減りましたが、まあなかなかのヒットと言えるのではないでしょうか。

 

HM/HR好きのファンからは、ラットがしっかりと受け入れられていることがわかります。
ですが、翌年、ボン・ジョヴィが3rdアルバム、SLIPPERY WHEN WET(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)をリリース、世界で2800万枚の大ヒットモンスターアルバムを生み出します。
一方、ラットはアルバムを出すごとに売り上げは減少していく感じで、同じ年にデビューしたこの両者は見事な大逆転を迎えることになりました。

 

ここで、考えることのできる、両者の大きな違いは何かというと、一般リスナーにどれだけ受け入れられたか、ということに尽きると思います。
ボン・ジョヴィは3rdアルバムから、全米No.1ヒットを2曲も出しています。
これは、狭いHM/HRの世界だけでなく、他の一般の音楽リスナーから大きな支持をもらった、ということになるでしょう。
これまで、ヘヴィメタル、ハードロックに関心のなかった多くの普通の人たちが、ボン・ジョヴィのヒット曲を口ずさんだのです。

 

一方、ラットは、前のアルバムのROUND AND ROUND(ラウンド・アンド・ラウンド)がシングルチャートで第12位を取ったのが最高で、あとは、大きなヒット曲は生んでいません。
ここが大きな分かれ目になったと僕は考えます。
確かに、ラットの音楽性はキャッチーで聴き易い、とHM/HR好きの僕は思うのですが、HM/HRを知らない人にとっては、ちょっと受け入れるには抵抗がある音楽であることは否めません。
ここが、ボン・ジョヴィとラットの運命の分かれ道だったのではないでしょうか。

 

ただ、ボン・ジョヴィがどうして一般に受けるヒットを出せたかというと、外部ライターを活用した、という点が大きく上がります。
その作戦によって、ヒット曲を量産することができました。
それがいいことなのか、どうなのか、という問題はここでは別問題としておきたいと思います。
ボン・ジョヴィはそうしたけど、ラットは自分たちで曲を作り続けた、という事実があるだけです。
まあ、考えてみると、ラットがデズモンド・チャイルドの作った曲をプレイするなんて、ちょっとおぞましくて考えられません

 

とにかく結果として、両者は真逆の道をたどっていくことになりました。

 

では、大ヒットにならなかったラットのこの作品は失敗作だったのか
この点に関しては、僕は大きな声で、否!と叫びたいと思います。
僕個人の意見では、前作を遥かに上回る非常にいい作品になったと考えています。

 

やはり、ウォーレンの成長によって、よりいっそうアルバム中のギタープレイが輝きを増しています。
また、スティーヴンの艶のあるヴォーカルも、安定してラットの世界を生み出しています。
また、曲も、十分に粒ぞろいでもあります。

 

このアルバムは、ボン・ジョヴィの3rdアルバムのように万人受けするものではありません
しかしHM/HRを愛する人たちにお勧めできるアルバムですね。
とりわけ、ギタープレイに関心のある人や、ギタリストにとっては、非常に聴き所満載のアルバムだとも思います。

 

ラットの最高傑作アルバムとも言えるこのアルバム、やはりこの時代、80年代を彩る素晴らしいアルバムの一つだと思えます。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:RATT(ラット)

2ndアルバム INVASION OF YOUR PRIVACY(インヴェイジョン・オブ・ユア・プライヴァシー)

ビルボード誌アルバムチャート第7位、アメリカで200万枚のセールス

1stシングル LAY IT DOWN(レイ・イット・ダウン) ビルボード誌シングルチャート第40位、同誌Mainstream Rockチャート第11位

2ndシングル YOU’RE IN LOVE(ユア・イン・ラヴ) ビルボード誌シングルチャート第89、Mainstream Rockチャート第34位