とびきり軽快なRATT ‘N’ ROLL(ラットンロール) RATT - OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)

RATT(ラット)との出会い





HM/HR好きの僕にとって、80年代中期には、多くのグラム・メタルバンドに混ざってMötley Crüe(モトリー・クルー)が目に止まったわけですが、モトリーが目に入るということは、当然ながらRATT(ラット)も目に入らないわけはありませんでした。

 

LAメタルの双璧をなすとも言われるこの二つのバンドですが、もともとLAメタルってのは日本独自の呼び方で、世界標準ではグラム・メタル、もしくはヘア・メタルと呼ぶのが一般のようです。
サウンドはヘヴィメタル~ハードロックの合間ですが、主にこの呼び名はルックスがメインの呼び名です。
グラム・メタルはglamorous(グラマラス)メタルの略で、以前のグラム・ロックなどからの流れを汲む、主に外見に起因する呼び方です。
そして、多くは長髪をスプレーで膨らませていたので、ヘア・メタルとも言われてます。
しかし、当時のグラムメタルで、エリアをLAに絞れば、やはりモトリー・クルーとラットが双璧をなすというのは誇張ではないと言えるでしょう。

 

まあ、そんなバンドが、MTVなどで頻繁にPVがオンエアされてたので、目に留まらないわけはなかったわけです。
ROUND AND ROUND(ラウンド・アンド・ラウンド)はシングルヒットし、ネズミの出てくるコミカルなPVとともにオンエアされまくってました。
楽曲はツインギターを擁したバンドによる、軽快なロックンロールで、非常に聴き易いもので、一気に人気が高まっていきました。

RATT(ラット)とは

ラットはシンガーのStephen Pearcy(スティーヴン・パーシー)を中心に結成されます。
もともとスティーヴンは、1973年から幾つかのバンドを作って活動を行なっていました。
1976年にはMickey Rattという名前のバンドになってます。
この名前は当然Mickey Mouseにかけてつけた名前と思われますね。
mouseはハツカネズミ系のかわいいほうのネズミですが、ratは大型のネズミのほうで、あまり良いイメージはない方のネズミですね。
まあ、tを重ねてるので、RATTは正式にはネズミではないわけです。

 

Mickey Rattでは様々なメンバーチェンジが繰り返されますが、その中にはギタリストのJake E. Lee(ジェイク・E・リー)も含まれてます。
また、 別のギタリストRobbin Crosby(ロビン・クロスビー)もこのころバンドに入ってきてます。

 

1981年には、バンド名が短くされ、Rattになります。
その後ジェイクは別のバンドを作るためバンドを離れますが、 彼はWarren DeMartini(ウォーレン・デ・マルティーニ)を推薦。
弱冠18歳のウォーレンが正式メンバーになります。
そしてベースにJuan Croucier(フォアン・クルーシェ)、ドラムスにBobby Blotzer(ボビー・ブロッツァー)が加入し、5人バンドとして落ち着きます。

 

そしてついに、自主制作ですが、1983年にデビューEP、RATTをリリース。
30万枚を売り上げました。

 

このEPのヒットは大手のレーベル、Atlantic Recordsの目に留まり、ついに契約を勝ち取ります。
そして、早速、Beau Hill(ボー・ヒル)のプロデュースで、1stアルバムの制作にとりかかります。

 

では今日は、1984年リリースの、ラットのデビューアルバム、OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)をご紹介したいと思います。

OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、WANTED MAN(ウォンテッド・マン)。

 

まずは堂々たるハードロックです。
イントロのツインギターによる歯切れの良いギターリフがめっちゃかっこいいですね。
やはりこのバンドの最大の特徴は、ウォーレンと、KINGことロビンのツインギターということになるでしょう。
80年代のHM/HRらしい、凝ったギターリフを使いこなしてますね。
また、ギターソロも、アーミングをうまく使いながら、メロディを揺らしたり、ここぞというところは速弾きを披露と、二人が交代でかっこよくきめています。

 

そして、ラットの特徴のもう一つは、スティーヴンの個性的なヴォーカル、ということにもなるでしょう。
人によっては、受け付けにくそうな声ですが、いったんはまると非常にかっこよく聴こえますね。

 

1曲目は、典型的なラットンロールでスタートです。

 

この曲は2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第87位、同誌Mainstream Rockチャートで第38位を記録しました。

 

2曲目はYOU’RE IN TROUBLE(ユア・イン・トラブル)。

 

イントロはベース先行で妖しい雰囲気を振りまいています。
そこにギターのハーモニクスとアーミングかからむ瞬間がとてもいけてます。
またソリッドなギターリフが、相変わらずかっこいいです。
ギターソロもたっぷりとクールに奏であげてます。
これもラット節全開の爽快な曲になってます。
ラットはこのミドルテンポが1番似合っていると思えますね。

 

3曲目はROUND AND ROUND(ラウンド・アンド・ラウンド)。

 

イントロのギターリフが秀逸ですね。
すぐにもコピーしたくなる、キャッチーでかっこいいリフになってます。
歌メロもキャッチーで、当時の80年代らしい楽曲です。
癖のあるスティーヴンのヴォーカルもとてもいいです。
ウォーレンのギターソロも非常にかっこいいですし、後半の二人のギターメロのハモリもたまりませんね。
ツインギターの強みをたっぷりと生かした楽曲だと思います。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャートで第4位を記録しています。

 

4曲目はIN YOUR DIRECTION(イン・ユア・ディレクション)。

 

これまた、ギターリフが気持ちいいミドルテンポの楽曲です。
また、はねて弾きまくるギターソロも秀逸です。
若いウォーレンの勢いの現われた素晴らしいソロになってます。
歌メロはちょっと目立ちませんが、かっこいいロックンロールです。

 

5曲目はSHE WANTS MONEY(シー・ウォンツ・マネー)。

 

アルバム初の疾走ロックンロールです。
アップテンポでも、ラットンロールは変わりません。
ギターソロもコンパクトですが、非常にスマートにきめています。
サビメロもキャッチーで、軽快な楽曲です。

 

6曲目はLACK OF COMMUNICATION(ラック・オブ・コミュニケーション)。

 

切り裂くような、エッジの効いたギターリフが相変わらず秀逸です。
軽い変拍子も、大げさでなく、かっこよくきまってます。
ラットらしいロックンロールですね。
ギターソロが非常に短くコンパクトですが、インパクトはしっかり残ります。

 

7曲目はBACK FOR MORE(バック・フォー・モア)。

 

アコースティックなストロークに絡んでくるバンドサウンド。
そして、ヘヴィなギターリフが最後に加わります。

この冒頭のドラマティックなイントロが非常に印象的でかっこいいです。

 

歌メロがはじまると、少し哀愁の感じられる楽曲となります。
いつものラットの得意なミドルテンポで、なかなか重みのあるいい曲になってます。
ギターソロではたっぷりメロディアスに、テクニカルに弾きまくってます。

 

8曲目はTHE MORNING AFTER(モーニング・アフター)。

 

跳ねたギターリフが、バンドの勢いを出しているかのようなノリのいい曲です。
切れのよいリフは見事です。
と思ってたら、ギターソロがアグレッシヴで超絶にかっこいいです。
ソロの後半はツインギターでのハモリで、メロディアスに聞かせてくれます。

 

9曲目はI’M INSANE(狂気)。

 

疾走感のあるドライヴィングロックンロールです。
きっちりまとまったリフで、決めてますがギターソロはかなりはじけまくってます。
軽快に爽快に、ラットンロールを聴かせてくれます。

 

アルバムラストはSCENE OF THE CRIME(殺しの情景)。

 

アルバムの中では非常にポップでキャッチーな楽曲になっています。
イントロのギターメロなんかを聴くと、全く別のバンドと錯覚するような明るさがあります。
ただ、スティーヴンが歌い出すと、それだけでやはりラットンロールになりますね。

 

2本目のギターソロがキレがあってすばらしいですね。
ちょっと確認は出来ませんが、恐らく、こっちの方がウォーレンのプレイではないのかと思われます。

まとめとおすすめポイント

1984年リリースの、ラットのデビューアルバム、OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)はビルボード誌アルバムチャート第7位、アメリカだけで300万枚を売り上げました。

 

LAメタルの急先鋒として、見事なメジャーデビューを飾って見せたと思いますね。
ラットの魅力は、やはりまずスティーヴン・パーシーの独特のヴォーカルでしょう。
そんなにヴォーカルスタイルにヴァリエーションがあるわけではありませんが、あの声はラットの世界を見事に作り上げていると思いますね。

 

そして、もう一つあげられるのは、二人のギタリストの存在でしょう。
ロビンとウォーレンの二人のギタリストによって、LAメタルらしいかっこいいギターを披露しまくってます。
実際テクニカルなのはこの時まだ20歳そこそこのウォーレンですね。
甘いマスクと、キラキラ輝くようなテクニカルでスリリングなフレーズで、一躍ギターキッズの視線を奪っていきました。

 

一方ロビンはというと、結構オーソドックスなギタリストで、プレイ的にはウォーレンのような華のあるギタリストではありません。
しかし、ギタリストとして彼が一歩引いたおかげでウォーレンはその才能を開花させることができましたし、ツインギターという点で非常にバランスの良いプレイを楽曲に組み込むこともできました。
その上、ロビンはこのアルバムの10曲中7曲で作曲に関わっており、ラットの世界観を創り出す点で主要な役割も果たしているのです。

 

このようなミュージシャンシップによって、彼らの音楽はRATT ‘N’ ROLL(ラットンロール)という造語が出来るほど、親しまれました。
ラットがプレイするロックンロール、それはキャッチーで適度にポップなハードロックですが、LAメタルの一つの型として多くのリスナーの耳を奪ったのです。

 

唯一無二のラットのみが出せたラットンロールの原点となるアルバム、必聴盤だと思います。

チャート、セールス資料

1984年リリース

アーティスト:RATT(ラット)

デビューアルバム OUT OF THE CELLAR (情欲の炎)

ビルボード誌アルバムチャート第7位、アメリカで300万枚のセールス

1stシングル ROUND AND ROUND(ラウンド・アンド・ラウンド) ビルボード誌シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャート第4位

2ndシングル WANTED MAN(ウォンテッド・マン) ビルボード誌シングルチャート第87位、同誌Mainstream Rockチャート第38位