80年代を代表する極上のポップアルバム GEORGE MICHAEL - FAITH

初めに





2016年12月25日、一人の偉大なアーティストが亡くなった。
GEORGE MICHAEL(ジョージ・マイケル)、53歳の若さだった。

 

最近、80年代に一世を風靡したアーティストの訃報をしばしば聞くようになってきた。
ジョージ・マイケルもその一人だが、あまりにも早い死に戦慄が走った。
アラフィフの僕のわずか6歳年上の大スターがあっけなく命を失うのである。
明日は我が身かも、と気を引き締めながら、この訃報を受け止めた。

 

WHAM!時代のジョージ

1983年のWHAM!(ワム!)としてのデビューアルバムFANTASTIC(ファンタスティック)は繰り返し繰り返し聴いたアルバムだ。
WHAM RAP(ENJOY WHAT YOU DO)(ワム・ラップ)やCLUB TROPICANA(クラブ・トロピカーナ)などを初めとして、さわやかでノリがよくて踊れる楽しい楽曲であふれている。
この当時、アンドリュー・リッジリーの方がビジュアル担当で、ジョージは歌はうまいけど、ちょっと冴えないイケてない男ってイメージがあったと思う。
アルバムはアメリカでこそ、83位だったものの、本国イギリスではアルバムチャート第1位を獲得している。

 

ところが、翌年、1984年のアルバムMAKE IT BIG(メイク・イット・ビッグ)のころにはジョージが一気に垢抜けてて「アンドリューって必要?」って声も出始めたような逆転劇が起きてた。
やはり成功によりジョージは自信をつけ、それは容姿や振る舞いにも影響を与えたのだろう。
先行シングルWAKE ME UP BEFORE YOU GO-GO(ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ)は全英だけでなく全米でもNo.1になり、アメリカでも大ブレイクを果たすのである。
2ndのCARELESS WHISPER(ケアレス・ウィスパー)も全英、全米No.1
3rdのFREEDOM(フリーダム)は全英No.1、全米第3位
4thのEVERYTHING SHE WANTS(恋のかけひき)は全英第2位、全米No.1と、大ヒットを連発。
アルバムも全英、全米ともにNo.1を取って見せた。

 

そして人気絶頂の1986年、突然の解散
このようにジョージは一気にスターダムに上り詰めて、デュオとしてやれることをやり尽くしたということでいったん活動に終止符を打つことになる。
まあ、僕が思うに、もはやアンドリューの役割は必要ないと踏んだのではないだろうか。
大ヒット作品ケアレス・ウィスパーもWHAM!名義とは言え、実質はジョージのソロ作のようなものだから、一人でいける手ごたえを十分感じての解散だったと僕は推測している。

そして満を持してのソロ活動

ソロとしてのスタートはアレサ・フランクリンとのデュエット曲、I KNEW YOU WERE WAITING (FOR ME)(愛のおとずれ)。
全英、全米ともにNo.1という幸先の良いスタートとなった。
アレサと言えば、アメリカで「クイーン・オブ・ソウル」とも呼ばれる大物ソウルシンガーだ。
そんな彼女と互角に歌い合って、極上のポップスを作って見せたジョージの歌唱力は本物のようだ。
話題性だけでなく、実際に楽曲とパフォーマンスのよさで、ジョージの株は急上昇である。

 

そして、ついに本格的なソロ活動を開始する。
アルバムFAITH(フェイス)のリリースである。
1987年発売のこのアルバムは、世界的に大ヒットし、様々な記録を打ち立てることになるのである。

 

今日は1987年リリースの、GEORGE MICHAEL(ジョージ・マイケル)の1stソロアルバム、FAITH(フェイス)をご紹介します。

 

アルバムFAITH(フェイス)の楽曲紹介

オープニングを飾るのはFAITH(フェイス)。

 

パイプオルガンの荘厳なイントロから一転、アコギのストロークに変わり歌が始まる。
アコギとベースと、タンバリン、ハンドクラップ、パーカッションくらいの非常にシンプルな楽曲だ。
80年代のゴージャスなアレンジの流れに逆らうかのように、最小限のシンプルな音で最高の楽曲を作り出せて見せた。
シンプルなので、ジョージの歌の表現力が際立っている。

 

これは歌詞を覚えてしまうほど何度も聴いたり歌ったりした覚えがありますね。
何度聴いてもあきない、シンプルかつ優れた楽曲で、これも80年代を代表する楽曲の一つと数えられるでしょう。
実際、多くの人に愛され受け入れられたことをチャートも示しています。

 

この曲はアルバムの2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートでは4週連続No.1、同誌 Adult Contemporaryチャートで第5位、同誌Dance Club Songsチャートで第17位を記録しています。
同誌の1988年のシングル年間チャートでもNo.1を獲得しています。
80年代洋楽シーンは、このような最小限のアレンジの曲さえも受け入れてしまう懐の深さがあって、非常に好ましいですね。

 

2曲目はFATHER FIGURE(ファーザー・フィギュア)。

 

この曲も名曲になっています。
この曲は落ち着いたミディアムナンバーです
無駄のないアレンジでしっとりとした雰囲気を醸し出しています。
WHAM!の頃から歌はうまいと思っていたが、このアルバムでは、その頃とは違う大人のヴォーカリストとしての技術を聴かせてくれていますね。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートNo.1、 Adult Contemporaryチャートで第3位、Dance Club Songsチャートで第13位、 Hot R&B/Hip-Hop Songsで第6位を記録しています。
このチャートからわかるように、多方面で彼の楽曲が高く評価されていますね。

 

3曲目は、 I WANT YOUR SEX (Parts 1 & 2)。(アイ・ウォント・ユア・セックス)。

 

過激すぎる、ということで各地で放送禁止になった曲です。
「ほんっとにこの曲さえなければ、僕は自信を持ってこのアルバムを誰にでも紹介できるのに・・・。」
と思ったりもしますね。
それでも多くの人に支持されているんですよね、これは。



先行シングルという形になったこの曲は、シングルチャートで第2位、 Dance Club Songsチャートでも第2位を記録しています。
放送禁止という憂き目に遭いながらも、この成績とは、いかにジョージの人気が沸騰していたかの証ではないでしょうか。

 

4曲目はONE MORE TRY(ワン・モア・トライ)。

 

これまた、超美しいバラードですね。
これは6分近い楽曲ながら、飽きずに聴き続けられます。
曲調はシンプルで単調なのに、やはりジョージの歌い上げるヴォーカルが魅力たっぷりだ。
ほぼ演奏的には盛り上がりはないのにただジョージの歌唱力のみで6分聴かせてくれるのである。
これも80年代を代表する一曲と述べて差し支えないでしょう。

 

この曲は、4thシングルとしてカットされ、シングルチャートでNo.1、Adult ContemporaryチャートでもNo.1を獲得しています。

 

B面1曲目はHARD DAY(ハード・デイ)。

 

エレクトリックな楽曲でベース音の効いている、打ち込みでできたこれもよくできたダンスナンバーである。
アメリカでは12インチシングルとして発売されていて、ビルボード誌の Dance Club Songsチャートで最高位5位を記録している。
WHAM!時代のクラブ・トロピカーナとは対照的な、大人のダンスクラブソングだ。

 

2曲目はHAND TO MOUTH(ハンド・トゥ・マウス)。

 

これも少しシリアスでクールな打ち込み系ダンスナンバーだ。
少し抑え気味にクールに歌うジョージのヴォーカルも魅力である。

 

3曲目はLOOK AT YOUR HANDS(ルック・アット・ユア・ハンズ)。

 

ここでは、打ち込みから一転、バンドサウンドが聴ける。
今度はクール系でなくバンドの熱さも感じられます。
このようなバンドを従えたアレンジも素敵だ。
サックスやピアノも曲を盛り上げている。
その中でやはりジョージが楽曲にぴったり合ったヴォーカルを聴かせてくれてます。

 

4曲目はMONKEY(モンキー)。

 

そしてまた打ち込みのダンスソングです。
これがまたいい。
アレンジもいいが、サビのメロディも気持ちの良いダンスナンバーである。
このアルバムの中では一番いわゆるエイティーズサウンドに近いのではないでしょうか。
それでもジョージが歌うと、他とははっきり異なって聴こえる。
ジョージの個性的な声と、エレクトリックなアレンジが見事に融合した痛快なダンスナンバーだ。

 

この曲は5thシングルとしてリリースされ、シングルチャートでNo.1、Dance Club SongsチャートでもNo.1、 Hot R&B/Hip-Hop Songsチャートでも第8位を記録しています。

 

そしてラストを飾るのがKISSING A FOOL(キッシング・ア・フール)。

 

まったく雰囲気が変わって、ジャズっぽい楽曲になっていますが、これがまた名曲なのである。
ジャズのアレンジの上に乗るジョージがまた見事に歌いこなしているのである。
これも全くWHAM!時代では考えられなかった曲と言えるでしょう。
ジョージのヴォーカリストとしての才能を見せつけてくれる名バラードですね。

 

ちなみにこのアルバムのタイトルがFAITHに決まるまでの仮のタイトルはKISSING A FOOLだったそうだ。
僕的には、FAITHで良かったと思うが、それだけジョージがこの曲に思い入れを持っていたことを示すエピソードではないでしょうか。

 

この曲はアルバムからの最後の、6thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第5位、Adult ContemporaryチャートではNo.1を獲得しています。

まとめとおすすめポイント

1987年リリースの、GEORGE MICHAEL(ジョージ・マイケル)の1stソロアルバム、FAITH(フェイス)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1、アメリカで1000万枚、全世界で2500万枚以上を売り上げた大ヒットアルバムとなりました。

 

他にもこのアルバム関連ではいろんな記録を打ち立てています。
まずアルバムチャートでは、全米だけでなく、全英ともにNo.1を獲得。
アメリカのほうでは年間チャートもNo.1となってます。
また白人としては初TOP R&B/HIP-HOP ALBUMSチャートでNo.1を取る快挙も。
さらに1989年にはグラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。
また楽曲紹介でも述べたとおり、アルバムには6曲のTOP5入りしたシングルが含まれ、そのうち4曲は連続でNo.1というすさまじさである。
それで、一枚のアルバムから4枚のNo.1ヒットを飛ばした初の英国人男性ソロアーティストともなっている。

 

こうした記録づくしのアルバムだが、それらの記録にふさわしい内容が伴っていると僕は思っています。
WHAM!はノリがよくダンサブルでキャッチーでとてもいい曲を生み出したとは言え、振り返ると、ジョージのやりたかった一面に過ぎないことがわかります。
その成功を糧に、ジョージはさらに自分のルーツに向き合い、出せるものすべてを出した、それがこのアルバムではないでしょうか。
アイドル時代をいったん終わらせるため、 I WANT YOUR SEX という曲で世間を驚かせ、イメージをがらっと脱却して見せたのも、彼の頭の良さかもしれません。

 

そして作ったソロアルバム。
そこにはこれまでにないシンプルでR&Bテイストあふれるポップソングから、大人なダンスチューン、美しいバラード、エレクトリックな打ち込み曲、さらにはジャズ風のスタンダード曲まで、バラエティに富んだ楽曲が散りばめられています。
まさに彼のそのとき持っていた才能をすべてつぎ込んだのがこのデビューアルバムFAITHということになるでしょう。
なのでぜひ聴いてなければ、耳を傾けることを強くお勧めしたい。

 

そしてアルバムは世界中の大勢の人に受け入れられ、世界的なアイドルは世界的なアーティストへと成長を遂げることに成功した。

 

まさにその瞬間を目撃した我々はラッキーだったと思う。

 

残念ながら彼はその短い生涯を閉じてしまったが、これらの偉大な記録と作品は後世まで語り継がれるに違いありません

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:GEORGE MICHAEL(ジョージ・マイケル)

1stアルバム、FAITH(フェイス)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで1000万枚、全世界で2500万枚のセールス

1stシングル I WANT YOUR SEX (Parts 1 & 2)。(アイ・ウォント・ユア・セックス) ビルボード誌シングルチャート第2位、 Dance Club Songsチャート第2位

2ndシングル FAITH(フェイス) シングルチャート4週連続No.1、Adult Contemporaryチャート第5位、Dance Club Songsチャート第17位

1988年のシングル年間チャートNo.1

3rdシングル FATHER FIGURE(ファーザー・フィギュア) シングルチャートNo.1、 Adult Contemporaryチャート第3位、Dance Club Songsチャート第13位、 Hot R&B/Hip-Hop Songs第6位

4thシングル ONE MORE TRY(ワン・モア・トライ) シングルチャートNo.1、Adult ContemporaryチャートNo.1

5thシングル MONKEY(モンキー) シングルチャートNo.1、Dance Club SongsチャートNo.1、 Hot R&B/Hip-Hop Songsチャート第8位

6thシングル KISSING A FOOL(キッシング・ア・フール) シングルチャート第5位、Adult ContemporaryチャートNo.1

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