80年代を代表する斬新なポップロックアルバム
YESとの出会い
洋楽を聴き始めた頃、いろんな音楽にふれてヴァラエティに富む楽曲たちに出会っています。
そんな中で出会ったYES(イエス)というバンドも、斬新で強烈な印象を与えてくれました。
イエスというバンドは1969年、アルバムYES(イエス・ファースト・アルバム)でデビューした老舗バンドです。
この1983年の時点で10枚のアルバムを世に出しています。
メンバーや音楽性も時代とともに移り変わり、めまぐるしく変わってきているので、その変遷の解説については、ウィキペディアなどに譲りたいと思います。
僕はそんな長い複雑に入り組んだ過去を何も知らずにイエスと出会ったのです。
最初に聞いたのがOWNER OF A LONELY HEART(ロンリー・ハート)。
いきなりイントロから斬新そのものだ。
そしてハイトーンなヴォーカルと、不思議な効果音たちに魅せられてしまいました。
僕はまだ、この時点でプログレッシヴ・ロックには接したことがなかったので、彼らの音楽性、音世界は全くの未知との遭遇だったと言えます。
では今日は、1983年リリースのYES(イエス)11thアルバム、90125(ロンリー・ハート)をご紹介したいと思います。
YES - 90125(ロンリー・ハート)の楽曲紹介
アルバムのオープニングを飾るのはOWNER OF A LONELY HEART(ロンリー・ハート)。
こんな音使いの楽曲は僕には衝撃だった。
イントロの何かが崩壊するようなドラムの音、それに続く切り裂くようなエレキギターのリフ、それだけで、プログレ、すげーと思わせてくれた。
すると、ジャン!!という不思議な音が。
後に知ることになるが、これはオーケストラル・ヒットと呼ばれ、シンセでオーケストラの音をサンプリングしたものを打ち出すことによって得られるサウンドエフェクトだ。
これも衝撃的で、非常にお洒落でかっこ良く聴こえたものです。
そしてハイトーンのヴォーカル。
Jon Anderson(ジョン・アンダーソン)のこの強烈に高い声がイエスを特徴付けている。
言わば英国製小田和正、といったところだ。
ヴォーカルの後ろでエレキのミュート音がずっと小さく鳴っている。
こんなのもそれまでに聴いたことがなかった。
サビはキャッチーで、一度聴いたら忘れられない。
時折入る、崩壊音やエレキギターの効果音、何もかもが新鮮だった。
ギターソロも、R&Lチャンネルをメロディが行き交う空間的な処理がされている。
こんな新鮮なエフェクト満載なのに、ポップロックとして見事に成立した素晴らしい楽曲だ。
過去のイエスを知らない僕は、この曲をイエスの最高傑作として挙げたいと思う。
僕の主観抜きにしてもこれは80年代を代表する曲の一つと言えるのは間違いないでしょう。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートでNo.1、同誌Mainstream RockチャートもNo.1、同誌Dance Club Songsチャートで第3位を獲得しています。
特に彼らの十数年のキャリアの中で初で唯一の全米No.1の記録となっています。
2曲目はHOLD ON(ホールド・オン)。
ゆったりとしたロックだ。
ギミックに頼らない確かなロックバンドでもあることがこの曲からわかる。
少しハードなエッジのギターが印象的である。
しかし途中でドラムが少しリズムを変えたり、曲中で演奏がとまり、アカペラのように変わったり、とただのロックバンドではないこともちょっぴり主張することも忘れていない。
ギターソロなど聴くと、やはり、凄腕の集団だということも見えてくる。
コーラスの美しいいい曲だ。
3曲目はIT CAN HAPPEN(イット・キャン・ハプン)。
シタールによるオリエンタルな雰囲気漂う、ロックソングだ。
空間を利用した、ヴォーカルが左右に行き交うエフェクトがAメロで聴かれるが、サビ前からシャープなロックソングに変貌する。
ギターソロはクリーントーンだが、美しい旋律を奏でてくれる。
これもコーラスが目立つ、爽やかなロックだ。
この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第51位、Mainstream Rockチャートで第5位を記録してます。
4曲目はCHANGES(変革)。
これはまさにプログレッシヴなイントロで幕を開ける。
木琴スタートのイントロにベースやドラムやエレキが加わっていって、スピード感のあるメロディを作り出す。
なんともスリリングなオープニングだ。
そして曲調は変わり、アルペジオやシンセをバックに歌メロが進む。
サビではハードなロックテイストが加わり、盛り上がりを演出する。
サビのコーラスも美しい。
この美しいハーモニーはイエスの特徴なのだろう。
どの曲でも、楽曲を美しく彩っている。
そしてラストはオープニングと同じスリリングなエンディングだ。
プログレってかっこよすぎる、と思える一曲でA面が終わります。
B面1曲目はCINEMA(シネマ)。
このアルバム唯一のインストゥルメンタルとなっています。
爽快なロックをそれぞれの楽器のプロが見事にプレイしている。
わずか2分ほどの楽曲で、メロディアスなので、インストでよくある間が伸びる、といった感覚は皆無である。
むしろ、それぞれの楽器の主張を楽しめるほどそれぞれのプレイがよく聴けてあっという間に終わる感じだ。
この曲は評価が高く、グラミー賞の、ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞している。
これは彼らにとって唯一のグラミー賞だ。
2曲目はLEAVE IT(リーヴ・イット)。
続く曲はバンドが才能にあふれた集団であることを示す楽曲となっています。
何と言ってもこの曲ではあまり注意しなかったら、普通のいい曲だ。
アカペラで始まり、そこにギターやドラム他の楽器が乗っかっていき、厚みのあるロックサウンドが出来ている。
しかしよくよく聴くと、ずっとアカペラは続いているようなのだ。
そしてこの曲の別ヴァージョンにアカペラヴァージョンというものが存在することを知る。
それは一曲通してアカペラ、つまり無伴奏で曲を披露しているのだ。
ぜひともこのヴァージョンを聴いて欲しい。
ボイスパーカッションにベースなど、メンバーは見事にやりきっている。
むしろ楽器抜きのこっちがオリジナルでも良かったのでは、と思えるほどだ。
メンバーの才能の別の一面を知れる佳作だ。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第24位、Mainstream Rockチャートで第3位を記録しています。
3曲目は、OUR SONG(アワ・ソング)。
次の曲はさわやかなシンセのイントロがきもちいい楽曲になっています。
バンドの演奏が始まってからも、爽快なロックが聴けるのでもう一度気持ちいい。
このバンドは、リフは結構激しいが、ギターソロはクリーンなものが多いようだ。
クリーントーンできれいに弾くのにはやはり技量が求められる。
そういう意味でハイテクなのだ、彼らは。
4曲目は、CITY OF HOPE(シティ・オブ・ホープ)
これは少し毛色が変わった曲になっています。
不思議なテンポの取り方が多用されている。
これも先進的と言えるのでしょう。
しかしサビでは美しいコーラスに戻ります。
その後変拍子を取り入れ、ギターソロも派手ではないが、不思議な世界にふさわしいヘヴィなものになっている。
おそらくこれが以前のイエスのサウンドを受け継いだものなのだろうと勝手に想像する。(以前を知らないので。)
ラスト5曲目はHEARTS(ハーツ)。
ポップではあるがプログレ色も残っている楽曲で、プログレらしく7分30秒を超える大作である。(もちろん長ければプログレってわけではないが・・・)
イントロの軽快なシンセをテーマにバックの演奏が変わって行く。
後半は、長いギターソロを経過して、アルバムの終わりを感じさせる展開へ。
最後はシンセをバックにジョンが歌い上げて静かにアルバムは幕を下ろします。
まとめとおすすめポイント
1983年リリースのYES(イエス)11thアルバム、90125(ロンリー・ハート)は、ビルボード誌アルバムチャートで第5位、アメリカで300万枚を売り上げました。
歴史の長いバンドはどうしても過去作品と比較されがちになります。
イエスも例外ではありません。
1969年以来積み重ねたキャリア込みでファンは新作の出来を判断します。
それは当然のことと言えるでしょう。
しかし、今回イエスはちょうど再結成のタイミングであったこともあって、80年代のサウンドに合わせることを選びました。
そのため以前イエスにも在籍していたTrevor Horn(トレヴァー・ホーン)にプロデュースを委ねます。
彼は後にFrankie Goes To Hollywood(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド)やPet Shop Boys(ペット・ショップ・ボーイズ)を手掛けることからわかるように、コンピューターを駆使してゴージャスなアレンジをするのに長けている人です。
今回もイエスのプログレ風味を残しながら、大胆に時代にあったポップアルバムにすることに成功しました。
あの印象的なオーケストラル・ヒットも彼がサンプラーを用いて出した音です。
で、昔と比べると変わり果てたイエスサウンドになりましたが、古くからのファンがどう思うかに関わりなく、作品は大ヒット。
シングルのロンリーハートは全米No.1を獲得してますし、アルバム90125もビルボード第5位をマークし、300万枚の大ヒットを記録するのである。
まさに時代のニーズに彼らが合わせてきて、見事に時の流れに対応できたかたちになりました。
全く過去作品の先入観のない僕からしても、彼らの楽曲は十分プログレッシヴであったし、80年代のテイストも含んだ大変魅力的なアルバムだと感じます。
当時の最新技術を駆使したエイティーズサウンド、とそんなに目立たないけどハイテクなミュージシャンのいぶし銀のようなプレイの融合をぜひともお楽しみください。
チャート、セールス資料
1983年リリース
アーティスト:YES(イエス)
11thアルバム、90125(ロンリー・ハート)
ビルボード誌アルバムチャート第5位 アメリカで300万枚のセールス
1stシングル OWNER OF A LONELY HEART(ロンリー・ハート) ビルボード誌シングルチャート第10位、Maintstream Rockチャート第3位
2ndシングル LEAVE IT(リーヴ・イット) シングルチャートで第24位、Mainstream Rockチャートで第3位
3rdシングル IT CAN HAPPEN(イット・キャン・ハプン) シングルチャート第51位、Mainstream Rockチャートで第5位
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はじめまして。イエスのことをいろいろ調べていたらこちらのブログに辿り着きました。管理人さんとは世代が違いますが80年代洋楽と90年代邦楽が大好きでこの90125以外の記事も興味深く読ませていただきました。この90125名盤ですよね、プログレ要素とポップスが上手い具合に融合していて素晴らしいです。
がくさん、コメントありがとうございます。
イエスについて調べて、ということであれば、僕の記事は情報が薄かったと思われ、申し訳ありませんw
それでも、90125は僕も非常に気に入っていて、まさに80年代のあのタイミングだからこそ生まれた名盤だと思います。
きっとこのアルバムきっかけでプログレに関心を持った人も多かったのではないかとも思っています。
がくさんは、世代が違うと言われていますが、恐らく僕より若い世代かと思われます。
そのような方が80年代洋楽が大好きと聞けてとてもうれしいです。
80年代は、いろんな新しいモノが生まれた、いい意味でカオスな時代で、きっと当時を体験してない人にとっても多くの面白いもの、いいものを発見できる時代だと思っています。
これからももっとエイティーズを掘り出して、宝のような楽曲を発掘してほしいと思いますし、そのために僕の記事がお役に立てればもっとうれしいです。
コメントに感謝いたします。