ただのアイドルじゃない! 80年代を代表するポップデュオ WHAM! - FANTASTIC(ファンタスティック)
WHAM!(ワム!)との出会い
これは1984年ごろ、弟からカセットに収めてもらったのが、このワム!のデビューアルバム、ファンタスティックでした。
何ともノリの良い楽曲で満ちたアルバムで、洋楽初心者の僕には非常にカラフルで楽しいアルバムでした。
でも、最初はアイドル然とした雰囲気に、ワム!好きとは公言しにくい感じはありましたね。
でも、楽曲の良さはアイドルの枠を明らかに超えてました。
アイドルは、大抵いい楽曲をレコード会社からあてがわれるので、曲がいいのは当たり前となってます。
が、ワム!は当時の多くの人の予想に反して、ほとんどの楽曲をGeorge Michael(ジョージ・マイケル)が作ってたんですよね。
とはいえ、当時はそうした事実を知らずに僕は素敵なアルバムを無邪気に楽しんでいました。
WHAM!(ワム!)とは
ワム!は、Andrew Ridgeley(アンドリュー・リッジリー)とジョージ・マイケルという二人の英国人によるポップデュオです。
二人は学生バンドのメンバーとして活動を開始しますが、バンドの終わりと共に1981年に二人でワム!として活動を始めます。
アンドリューはヴィジュアル担当、ジョージはそれ以外の多くの役割を果たすことになります。
ジョージは、コンポーザー、プロデューサー、シンガー、時には楽器を演奏するなど、ワム!のなかの大部分の役割を担います。
なので、当時、僕らの間でも、楽曲の中で聞こえてくるのはジョージの声ばかりなので、アンドリューは必要なのか、という話題があったのは事実です。
でも、雑誌などでもアンドリューの人気は高く、ワム!のヴィジュアル担当として、立派に役割を果たしていたのも間違いありません。
結成時まだティーンエイジャーだった二人は、自らを快楽主義の若者、仕事や責任のないお気楽な人生を謳歌する若者としてプロモートを始めています。
そうした主張は、初期のシングルなどの中に色濃く反映されています。
そして、ついにWHAM! RAP (ENJOY WHAT YOU DO)(ワム・ラップ(楽しんでいるかい?))でデビュー。
しかし、この曲は英国でチャートインはしていません。
が、新人アーティストとして、ある程度のお披露目には成功します。
そして、ジョージが勝負をかけた2枚目シングル、Young Guns (Go for It!)(ヤング・ガンズ(やりたいことをしようぜ!))は、彼の目論見とは裏腹に英国でTop40入りせずにチャートを落ちていきます。
これには、ジョージはかなり頭を抱えたそうです。
ところが、 BBCのTop of the Popsという人気番組で、あるアーティストが降板したところの穴埋めで偶然出演が決まります。
普通なら彼らのレベルではお呼びがかかるような番組ではありませんでしたが、番組プロデューサーがたまたまワム!に関心をもってたのでそんなミラクルが起きたようです。
そして、番組でヤング・ガンズを歌唱。
このヤング・ガンズのパフォーマンスは多くのリスナーの、特にティーンエイジの少女たちに強いインパクトを残しました。
彼らのメッセージは多くの若者の共感を得ることになり、番組放送後、チャートを再び上がり始め、英国チャートで最高位第3位を記録することになりました。
それからはイギリスで快進撃が始まります。
続くBad Boys(バッド・ボーイズ)も大ヒット。
こうして満を持してのアルバムがリリースされることになります。
今日は1983年リリースのWHAM!(ワム!)のデビューアルバム、FANTASTIC(ファンタスティック)をご紹介したいと思います。
FANTASTIC(ファンタスティック)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、BAD BOYS(バッド・ボーイズ)。
何ともダンサブルな名曲ですね。
これをジョージが作曲してるわけですから、彼のコンポーザーとしての才能はいきなり計り知れません。
アレンジもカラフルで、80年代らしい楽曲になってますね。
それにしても、最初からジョージのヴォーカルの能力の高さも十分に感じられます。
色気のある声に、ファルセットもきれいに決まってますし、文句なしのヴォーカルです。
ギターのカッティングも軽快に決まってますが、アンドリューが弾いているとは思いにくいですね。
とにかく、楽曲的にはジョージの魅力のつまった素晴らしいダンスチューンです。
この曲は、彼らのデビュー3作目のシングルとしてリリースされ、イギリスで第2位を記録。
そして、アメリカでも初めてチャートインし、ビルボード誌のシングルチャートで第60位となっています。
2曲目はA RAY OF SUNSHINE(サンシャイン・ビート)。
ベースラインが心地よい、これもダンスソングです。
ホーンセクションの使い方や、カッティングのギターの使い方など、70年代のディスコサウンドっぽい感じです。
でも、それをジョージが歌って見事にワム!らしい楽曲に仕上げています。
ジョージの低音ヴォーカルも非常に魅力的でかっこいいです。
3曲目はLOVE MACHINE(ラヴ・マシーン)。
アルバム中この曲のみカバー曲となってます。
THE MIRACLES(ミラクルズ)の1976年のNo.1ヒット曲が原曲となります。
僕はミラクルズについてはよくわかりませんが、PVを見てわかるとおり、黒人ミュージシャンのバンドです。
ジョージは後にソウルへの傾倒も見せることになりますが、デビューアルバムですでにこうして明らかだったわけですね。
黒人ヴォーカルの雰囲気、ファルセットまで、ジョージは見事にカバーしてます。
僕がこれがカバーだと知ったのはずいぶん後のことで、それほど、ワム!の楽曲として馴染んでたのだなと感じさせられます。
これもノリのよいダンスチューンですね。
4曲目はWHAM! RAP (ENJOY WHAT YOU DO)(ワム・ラップ(楽しんでいるかい?))。
なんと、ここでラップの登場です。
僕の中で、ラップは、後のRun-D.M.C.のWALK THIS WAY(ウォーク・ディス・ウェイ)以降一気に流行っていった、ような記憶があるので、そう考えると、ワム!は結構時代を先取りしてたな、と改めて驚かされます。
そして、また、ジョージがリズム感がいいのだからだろうけど、めっちゃかっこいい出来になってますね。
こうしたセンスも、やはりジョージは若い頃から一流だったのだと理解できます。
この曲はワム!のデビューシングルで、チャートインできませんでした。
ですが、2ndシングルの大ヒットの後、再びリイシュー盤として再発され、イギリスで第8位まで上昇しています。
B面1曲目はCLUB TROPICANA(クラブ・トロピカーナ)。
カセットをB面に変えると、涼やかな虫の音色が聴こえきて、そして車が止まり、楽曲が始まる。
当時、なんかお洒落に感じてましたね。
フェイドインしてくる音楽のベースのかっこいいこと。
いきなりイントロでひきつけられます。
ワム・ラップとこの曲だけがアンドリューが共作者としてクレジットされています。
でも、恐らく、大したことはやってないと、思われます、友情クレジットって感じではないでしょうか。
この曲は非常に心地よくメロディアスなダンスソングです。
そして間奏やバックではホーンセクションや、ピアノなどが軽やかに、お洒落に楽曲を彩っています。
アレンジが非常にイカシタものになってると思いますね。
この曲は4枚目のシングルで、アルバムリリース直後に発売され、イギリスで第4位を記録しています。
2曲目は、NOTHING LOOKS THE SAME IN THE LIGHT(初めての恋)。
初のムーディな大人な楽曲です。
アレンジも、メロディも二十歳そこそこのジョージが作ったとはとても思えない素敵な楽曲になっています。
ゆったりとした楽曲を歌い上げるジョージも、この時点からヴォーカリストとして完成してますね。
3曲目はCOME ON!(カム・オン!)。
しっとりとしたあと、再び強力なベースのイントロでダンスチューンへ。
グルーヴィーなベースのリズムにのって、ジョージがダンサブルに歌い上げます。
シンプルな楽曲ですが、アルバム全体のダンサブルなコンセプトにしっかり乗っています。
アルバムラストは、Young Guns (Go for It!)(ヤング・ガンズ(やりたいことをしようぜ!))。
上述のとおり、この曲でついにワム!がブレイクを果たした記念すべき楽曲だといえます。
この曲にも、適度にラップが挟み込まれ、非常にノリのいい楽曲になっています。
ジョージはこの曲で、人気を確立できると確信してシングルとして出しただけあって、アルバムの最後に配置してます。
メッセージについては、英語では聞き取れないので詳しくはわかりませんが、当時の若者にはしっかりと伝わったようです。
でも、歌詞がわからなくても、楽曲の良さはしっかりと感じ取れます。
そしてピアノによるちょっとした余興と共にアルバムは終わります。
この曲は彼らの2枚目のシングルで、イギリスで第3位を記録し、初ヒットとなりました。
これをきっかけに大ブレイクしていったわけです。
まとめとおすすめポイント
1983年リリースのWHAM!(ワム!)のデビューアルバム、FANTASTIC(ファンタスティック)はイギリスでは史上4組目となる、デビューアルバムの初登場1位獲得を達成しました。
ほぼ同時にアメリカでもリリースされましたが、アメリカではまだ時期ではなかったようで、アルバムチャートは第83位にとどまってます。
完全にアイドルチックな売り出しで始まったため、彼らの曲は本当に自分らで書いたのか、という疑惑もあったようですが、カバー曲を除いて、ほぼジョージ・マイケルが全曲書いています。(アンドリューは2曲で共作とクレジットされてます。)
加えて、アルバムのプロデュースにはSteve BrownとBob Carter、という人に加えて、ジョージ・マイケルの名前もクレジットされています。
そして、ヴォーカルはほぼジョージの独り舞台、というジョージの才能が見事に開花、お披露目されたアルバムとなっています。
では、ジョージ一人で、この大ヒットが生まれたのでしょうか。
決してそうならなかっただろうというのが大方の見方でしょう。
何よりも、もともとの二人の過去に注目できます。
学生時代は、アンドリューはモテモテだったのに対して、ジョージは太っていて、暗くて、牛乳瓶のビン底のようなめがねをかけた、全く華のない生徒だったのです。
そんな目立たないジョージに声をかけて、音楽を始めるきっかけを与えたのがアンドリューなのです。
アンドリューの存在なしには、ジョージは表舞台には出てこなかった可能性も多分にあるわけです。
なので、デビューして、ワム!の中の役割のほとんどをジョージが受け持ったとしても、ジョージは苦にしなかったと思われます。
それだけ、アンドリューはジョージにとって大切な存在であり続けたわけです。
ジョージにとってアンドリューは、絶対不可欠なパートナーだったわけです。
実際、初期のころはライヴやビデオの映像を見ても、ジョージも少しづつ垢抜けてきてるとは言え、アンドリューがやっぱり華があると感じさせられます。
曲を書いてなくても、楽器を演奏してなくても、歌を歌ってなくても、やっぱりアンドリューはワム!には不可欠な存在だったのです。
この二人組の華やかなイメージが、楽曲の良さに加えて、ハッピーで楽しい雰囲気をワム!の音楽に付け加えていたと思われますね。
若さと才能のあふれる、良質のダンスミュージックを聴きたいなら、ワム!のこのデビューアルバムはおすすめです。
チャート、セールス資料
1983年リリース
アーティスト:WHAM!(ワム!)
1stアルバム、FANTASTIC(ファンタスティック)
アメリカ
ビルボード誌アルバムチャート第83位 アメリカで50万枚のセールス
1stシングル BAD BOYS(バッド・ボーイズ) ビルボード誌のシングルチャート第60位
イギリス
全英アルバムチャートNo.1 イギリスで90万枚のセールス
1stシングル WHAM! RAP (ENJOY WHAT YOU DO)(ワム・ラップ(楽しんでいるかい?)) チャート圏外
2ndシングル Young Guns (Go for It!)(ヤング・ガンズ(やりたいことをしようぜ!)) チャート第3位
WHAM! RAP (ENJOY WHAT YOU DO)(ワム・ラップ(楽しんでいるかい?)) リイシュー盤 チャート第8位
3rdシングル BAD BOYS(バッド・ボーイズ) チャート第2位
4thシングル CLUB TROPICANA(クラブ・トロピカーナ) チャート第4位
ジョージ・マイケルのポップセンスというか、ソウルフレイバーというか、秀でてましたよね。
もしかすると、次はmake it big を予定されていますか!?
みちさん、毎度ありがとうございます。
ジョージはこのアルバム制作は弱冠20歳にも関わらず、すでにマルチな才能を発揮してますよね。
みちさんの言われるように抜群のポップセンスに、ソウルミュージックのフレイバーが加味されて、絶妙な作品をたくさん残してます。
僕は彼のあのヴォーカルが非常に好きで、後に多くの大物ともデュエットで競演してますが、見事に個性を発揮してますよね。
ブラックアーティストに負けないソウルフルなヴォーカルスタイルが素晴らしいと思っています。
MAKE IT BIG、いきたいと思ってますので、しばらくお待ちください。
コメントありがとうございました。
レスありがとうございます。
デュエットなら、どれも素晴らしいでしが、私のベストは I knew you were waiting (for me)ですね!
アレサフランクリン対等のボーカル、素晴らしかったです。
確かにクイーン・オブ・ソウルとも呼ばれてた大物アレサとの互角のパフォーマンスは、飛びぬけてましたよね。
ワム!解散後の一発目がアレサとのデュエットだったわけで、やっぱりただのアイドルではないってのを見せ付けられた気がしました。
大先輩へのリスペクトも感じられる素敵な作品でしたね。
僕も大好きな楽曲でした!