ブルージーなハードロックへ変貌 CINDERELLA   -   LONG COLD WINTER

前作、NIGHT SONGSからの歩み





CINDERELLA(シンデレラ)の1986年リリースのデビューアルバム、NIGHT SONGS(ナイト・ソングス)はビルボード誌アルバムチャートで第3位、アメリカで300万枚売り上げる大ヒットを記録した。

 

もちろんBON JOVI(ボン・ジョヴィ)の弟分的な扱いや宣伝のおかげもあるにはあったかもしれないが、彼らは硬派なハードロック作品を作り上げた。
やはり、その作品が良かったからヒットしたのは明らかだ。

 

そして、その素晴らしいアルバムを携えて、ライヴ活動にも力を注いでいる
最初のツアーはPOISON(ポイズン)と共に回っている。
そして、日本が誇るヘヴィメタルバンド、LOUDNESS(ラウドネス)のオープニングアクトとしてもプレイしている。

 

さらに1987年になると、アリーナクラスのライヴにも精力的に励んでいる。
最初の5ヶ月間は、DAVID LEE ROTH(デヴィッド・リー・ロス)の、残りの7ヶ月はボン・ジョヴィのオープニングアクトを務めている。
その後、バンドは海を渡り、日本やスカンディナヴィアへも上陸。
その他、英国やドイツでのMonsters of Rock(モンスターズ・オブ・ロック)というメタルフェスにも参加している。

 

このような精力的なライヴ活動も彼らのアルバムのセールスを押し上げた一因と言っていいだろう。
こうして、さらに力を蓄えたシンデレラは1988年にニューアルバムをリリースする。

 

タイトルはLONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)。
前作の硬派なハードロックに、ブルーズの味付けがされた素晴らしい傑作が生み出されたのである。

 

では今日は、1988年リリースの、CINDERELLA(シンデレラ)の2ndアルバム、LONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)をご紹介します。

LONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、BAD SEAMSTRESS BLUES/FALLIN’ APART AT THE SEAMS(バッド・シームストレス・ブルース/フォーリン・アパート)。

 

イントロのスティールギターとハーモニカの音。
まさにブルージーな幕開けによって、このアルバムは前作とはちょっと違うぞ、というのを直感的に知ることができる。

 

前半のバッド・シームストレス・ブルースのパートはゆったりとした、アメリカのド田舎の雰囲気を感じさせてくれます。
まさにブルーズが発祥したであろう、土地のフィーリングがにじみ出ている。
リーダーであり、ギタリスト、メインヴォーカリストでもあるTom Keifer(トム・キーファー)はブルーズに傾倒していたと言われている。
前作では、あまりその部分が目立つことはなくストレートで硬派なロックを聴かせてくれたが、今回はかなり彼のその趣味嗜好がアルバム全体に散りばめられることになった。

 

とはいえ、後半のフォーリン・アパートは前作を引き継いだヘヴィなロックチューンとなっている。
ゆったりブルーズから、ヘヴィなロックに変貌を遂げる瞬間は鳥肌ものだ。
相変わらず、グラムメタルに見られる陽気さは薄く、非常に攻撃的でストレートなバンドサウンドを聴かせてくれてます。

 

そして、ブルーズパートとヘヴィロックパートの、トム・キーファーの歌声の違いが強烈だ。
ブルーズをゆったり歌うトムの声は魅力的だが、やはり、ハードロックを歌うトムの強烈なヴォーカルは中毒性が高い
アルバムのオープニングを飾るのにふさわしい、非常に激しい楽曲だ。

 

2曲目はGYPSY ROAD(ジプシー・ロード)。

 

これは非常にキャッチーなロックンロールだ。
イントロのギターリフにドラムが入る瞬間に、だまされた、と思えるようなリズムの取り方がされている。
ヴァン・ヘイレンのパナマのイントロよりももうちょい複雑なのか、いまだに正しいリズムがわからないのは僕が音痴だからだろうか。
とにかく印象的なイントロであり、そのギターリフが全編で鳴り渡っている
このリフだけで、この楽曲の爽快な魅力をかもしだしていると言えるかもしれない。

 

しかし、やはりトムの強烈なヴォーカルがあってこそのシンデレラでもある。
ジャニス・ジョプリンに影響を受けたとも言われてますが、この曲ではスティーヴン・タイラーばりの強烈ヴォーカルを披露しています。
非常にノリが良く、軽快であるが、やはりヴォーカルがトムだからこそ、他のバンドと一線を画していると思います。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャート第51位で、同誌Mainstream Rockチャートでは第20位を記録しています。

 

3曲目はDON’T KNOW WHAT YOU GOT (TILL IT’S GONE)(ドント・ノウ・ホワット・ユー・ゴット)。

 

80年代を代表するパワーバラードの一曲だ。
美しいピアノのイントロが印象的だ。
これは当時うちの安物キーボードでマスターしましたよ。
シンプルでコピーし易いのに、とてもメロディがいいもんだから多くの人が弾いてみたのではないだろうか。

 

そしてアコギのストロークとゆったりとしたドラムのリズムに乗ってすすむメロディ。
これもやはりトムの、ハスキーなハイトーンヴォイスが強烈である。
彼の魂のこもったかのような搾り出すヴォーカルで、いっそう際立ったパワーバラードになった。

 

さらに特筆すべきは、トムのギターソロだろう。
飛びぬけたハイテクプレイはないが、非常に渋い、楽曲の雰囲気にぴったりのソロを披露している。
哀愁漂う楽曲を、間奏でいっそう味わい深く盛り上げてます。

 

このギターソロも、当時マスターしましたね。
ちょうどいい具合の難易度で、しかもメロディアス
弾けたら、自分がすごく上手くなったように感じられる優れた教材となってました。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第12位を記録し、Mainstream Rockチャートでは第10位を達成してます。

 

4曲目は、THE LAST MILE(ラスト・マイル)。

 

アルペジオのイントロからすでに爽やかだ。
そこに切り込んでくるギターリフが非常にかっこいい
さらにドラム&ベースが加わって、トムが歌い出すと、安定のシンデレラ節のできあがりだ。

 

非常にまっとうなロックンロールだが、サビのコーラスがなんとも爽快感をかもし出している。
マイルを重ねるドライヴにピッタリな楽曲だ。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第36位、Mainstream Rockチャートでは第18位となってます。

 

5曲目はSECOND WIND(セカンド・ウィンド)。

 

この曲もイントロのリズム遊びがかっこいい。
基本となるギターリフがあって、そこにドラムがリズムを加えてきて、そして疾走感あふれるハードロックチューンになる。

 

歌が入ってからは、前作からの硬派なロックンロールを聴かせてくれる。
ノリがいいし、やはりトムの癖になるあの声がたまらない。
シンデレラらしい、ストレートなハードロックである。

 

6曲目はアルバムタイトルソング、LONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)。

 

もう、完全にブルーズソングである。

 

イントロのギターソロから、もうたまらない。
完全にブルーズの世界をトムは見事に再現している。
こってこてにブルージーなフレーズを弾きまくっている。
それも、長い冷たい冬の雰囲気もまたしっかりと描写してもいるのである。

 

歌も、トムは魂を込めて、渋く強く歌い上げています。
もはやスローなブルーズロックのクラシックでもあるかのような、堂々たる楽曲となっています。

 

ギターソロも一際図太いレスポールサウンドで、ブルーズフレーズを弾きまくっています。
もう、完全にトムの独壇場です。
80年代後半に流行ったハードロックバンドのブルーズロック回帰のなかでも、頭一つ抜けてますね。
トムは、ブルーズを十分に理解し、完全に彼らの楽曲の中に消化し、見事な作品を残してくれました。
トムがギタリスト、ヴォーカリスト、コンポーザー、という点で、遺憾なくその才能を発揮した楽曲になっていると思います。

 

アルバムのタイトルを背負うだけあって素晴らしい楽曲です。

 

7曲目は、IF YOU DON’T LIKE IT(ユー・ドント・ライク・イット)。

 

これは、また、シンデレラっぽい正統派のロックンロールだ。
やはり、彼らの楽曲のギターリフはどれもフックがあり、キレもある、曲を強く印象付ける点で素晴らしいものになっているものが多いと思います。

 

また、サビのコーラスも爽やかに決まってます。
ソロも、小気味いいフレーズが重ねられ、速弾き至上のHR/HMの世界にあって、独自のかっこよさを見せてくれてます。

 

8曲目はCOMING HOME(カミング・ホーム)。

 

これはブルージーな味付けのあるパワーバラードだ。
イントロから全編で聴かれる12弦ギターのストロークが美しい
もう一人のギタリストのJeff LaBar(ジェフ・ラバー)がギターソロを弾いている。
トムの陰で目立たないが、きっちりと仕事をしている。
アルバム中この曲と1曲目で彼のソロプレイを聴くことができる。
天才トム・キーファーを支える献身的な仕事ぶりへのちょっとしたボーナスだろうか。

 

しかし、この曲の魅力はやはりトムのヴォーカルに尽きるのではないだろうか。
前半、低音でやさしく歌い出す。
しかし、後半は一オクターヴ上へと上がり、いつものシンデレラ節へと豹変する。

 

そのどちらの声も非常に魅力的なのである。
恐らく、高音の搾り出す声のほうは、好みが分かれると思うが、低音ヴォイスは多くの人に好まれるに違いない。
この振り幅が、シンデレラの魅力に大きな幅を持たせていると言えるだろう。

 

低音だけでは、HR/HMには迫力が足りない。
それで、高音シャウト気味にハードロックを歌うわけだろうけど、その合間に低音の魅力が加わることによって、楽曲の完成度が高まっているに違いない。

 

とにかく、この高低入り混じったトムの独特のハスキーヴォイスが、シンデレラを他のバンドと大きく隔てているのである。

 

この曲はアルバムからの4thシングルとしてリリースされ、シングルチャート第20位、Mainstream Rockチャートでは第13位のヒットとなっている。

 

9曲目は、FIRE AND ICE(ファイアー・アンド・アイス)。

 

アルバム中ではかなりメタリックな感じのあるハードロックソングだ。
イントロのギターリフからヘヴィに曲を彩っている。
トムも搾り出したヴォーカルで歌い上げており、後半のスティーヴン・タイラーばりのシャウトもきまってます。
ヘヴィだが、キャッチーでもある。
この辺の作曲能力も、トムは才能があると言えるに違いない。

 

アルバムラストを飾るのはTAKE ME BACK(テイク・ミー・バック)。

 

アメリカンなハードロックが最後に配置されている。
ロックンロールなギターリフで、非常に軽快で明るい楽曲になっている。
爽やかなコーラスとともに、サビも盛り上がって、アルバムはダークになることなく幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1988年リリースの、CINDERELLA(シンデレラ)の2ndアルバム、LONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)はビルボード誌アルバムチャートで第10位を記録し、前作同様アメリカで300万枚を売り上げる大ヒットとなりました。

 

とはいえ、前作の硬派でストレートなハードロック路線に、ブルージーでアーシーな味付けがなされたことで、評価が分かれることになりました。
しかし、評価が分かれていながら、この売り上げをキープできれば御の字ではないでしょうか。

 

僕はこのブルーズに傾いたアルバムを彼らの最高傑作だと思います。
トムのブルーズへのアプローチは決して取って付けたものではなく、彼自身が吸収してきたものを改めて煮詰めなおして形にしたように思えるからです。

 

とりわけ、表題曲のロング・コールド・ウィンターで見せる、強烈なブルーズギターソロは、80年代の速弾きがあふれてるシーンの中で、強烈な輝きを放っていると思われます。
加えて、トムのしゃがれたハイトーンヴォイスはブルーズとも非常に相性がよく、感情と魂を込めたそのヴォーカルはアルバムの中でも際立っています。

 

また、オープニングのスティールギターから入るイントロなどは、アメリカの荒涼とした大地をイメージさせますし、カミング・ホームではアコースティックでアーシーなカントリー音楽の影響も感じられます。

 

このように、前作と異なる幾らかのアプローチがありましたが、その根本となるヘヴィなバンドサウンドは健在です。
ブルージーでアーシーな味付けがされることによって、シンデレラのハードロックは、より魅力を増したと僕には感じられます。

 

次回作では、よりブルーズの度合いが深まっていくわけですが、この2ndはその点で絶妙なバランスをとっているのではないかと僕には思えます。

 

というわけで、勝手にこの作品をシンデレラの最高傑作に認定したいと思います。(もちろん今後もいい作品を出してますけどね。)

 

ブルージーなハードロックをお探しの方には、絶対におすすめの一枚となっております。

チャート、セールス資料

1988年リリース

アーティスト:CINDERELLA(シンデレラ)

2ndアルバム、LONG COLD WINTER(ロング・コールド・ウィンター)

ビルボード誌アルバムチャート第10位 アメリカで300万枚のセールス

1stシングル GYPSY ROAD(ジプシー・ロード) ビルボード誌シングルチャート第51位、同誌Mainstream Rockチャート第20位

2ndシングル DON’T KNOW WHAT YOU GOT (TILL IT’S GONE)(ドント・ノウ・ホワット・ユー・ゴット) シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャート第10位

3rdシングル THE LAST MILE(ラスト・マイル) シングルチャート第36位、Mainstream Rockチャート第18位

4thシングル COMING HOME(カミング・ホーム) シングルチャート第20位、Mainstream Rockチャート第13位

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