80年代末期に現れたスーパーバンドのデビューアルバム MR.BIG - MR.BIG

テクニカルプレイヤーの集合体、MR.BIG結成





ベーシストのBilly Sheehan(ビリーシーン)は、 DAVID LEE ROTH(デヴィッド・リー・ロス)のバンドで、1986年、EAT ‘EM AND SMILE(イート・エム・アンド・スマイル)、1988年、SKYSCRAPER(スカイスクレイパー)の2枚のアルバムを制作。
しかし、音楽性の違いから2枚目をリリース後、バンドを脱退。
自ら新たなバンドの結成に向けて動き出します。

 

シュラプネルレコードのMike Varney(マイク・ヴァーニー)の助けを受けながら、メンバーを集めていきます。
シュラプネルレコードと言えば、イングヴェイを初めとする数多くの速弾きギタリストを発掘したことで有名な会社ですね。

 

そしてまず、ビリーはマイクの紹介でERIC MARTIN(エリック・マーティン)と出会います。
エリックはERIC MARTIN BANDとして、またソロとしても作品を残していましたが、ちょうど活動に行き詰っていたところでした。

 

また、シュラプネル在籍のギタリストで、Racer X(レーサーX)として2枚の作品を作っていたPaul Gilbert(ポール・ギルバート)、そしてIMPELLITTERI(インペリテリ)に一時在籍していたこともあるPat Torpey(パット・トーピー)の二人も加わり、4人でMR.BIGを結成しました。
このバンド名は、ブルースロックのブリティッシュバンド、FREE(フリー)の楽曲タイトルからとられています。

 

こうして、技巧派として既に名前の売れていたプレイヤーたちが集まり、結成されたバンドはスーパーバンドとして大きな注目を浴び、ついにデビューを果たすことになるのでした。

 

今日は1989年リリースのMR.BIGのデビュー作である、セルフタイトルアルバム、MR.BIGを紹介したいと思います。

MR.BIGの1stアルバムMR.BIGの楽曲紹介

1曲目はADDICTED TO THAT RUSH(アディクテッド・トゥ・ザット・ラッシュ)。

 

イントロでのポールのギターとビリーのベースの超絶な掛け合いから始まる疾走オープニングナンバー。
前評判に違わぬテクニカルハードロックを披露しています。
ドラムも疾走のリズムを刻み続けます。
エリックのヴォーカルもハードロックを見事に歌いこなしてます。

 

間奏でのポールのギターソロもシュラプネル出身だけあってさすがに高速プレイを聴かせてますし、後半ではその速さでユニゾンするビリーのベースがまた超絶過ぎます。
後半のエリックのヴォーカルと、ポールのギター、ビリーのベースの掛け合いが素晴らしすぎます。

 

MR.BIGのデビューアルバムのイントロとしてはド派手で最高の幕開けとなったのではないでしょうか。

 

この曲は、1stシングルとしてリリースされ、ビルボード誌、Mainstream Rockチャートで、第39位を記録しています。

 

2曲目は、WIND ME UP(ワインド・ミー・アップ)。

 

ドラムの強烈なリズムに絡んでくるソリッドなギターリフがかっこいい。
その後加わるベースで、非常にかっこいいバンドサウンドが完成です。
サビもエリックのヴォーカルと共にコーラスでとても盛り上がります。
ギターソロも、やはりポールは聴かせてくれます。
ソロのラストはビリーも存在感を示すことを忘れてません。

 

少し懐かしい感じの、爽快なロックンロールになっています。

 

3曲目は、MERCILESS(マーシレス)。

 

グルーヴ感あふれるロックンロールです。
適度に重いギターリフが独特のノリを生み出していますね。

 

ギターソロも非常にいいですが、その裏でリズムを刻むベースラインも非常に良いです。
コーラスワークも、既に完成していますね。

 

4曲目はHAD ENOUGH(ハッド・イナフ)。

 

ビリーの高速ベースのイントロがすさまじいことになっています。

 

しかし、ふたを開けると、少し渋めのパワーバラードです。
ギターソロも暗めの艶のあるメロディを奏でてます。
サビの追っかけコーラスも美しいです。
アウトロでもベースソロが聴けます。

 

5曲目はBLAME IT ON MY YOUTH(ブレイム・イット・オン・マイ・ユース)。

 

なかなかよいハードロックソングです。
あちこちで目立つベースの音が、やはりビリーのバンドであることを主張しています。
しかし、1曲目を除くと、基本的に歌メロ中心であることにも気付いてきます。

 

6曲目は、TAKE A WALK(テイク・ア・ウォーク)。

 

散歩のイメージとは程遠い、結構ヘヴィなロックソングです。
ギターリフがクールでヘヴィ、ギターソロもワイルドで楽曲にはまっています。
その裏でのベースがやはり他のバンド以上によく目立っています。

 

7曲目はBIG LOVE(ビッグ・ラヴ)。

 

アルバム中では少し地味な存在ではありますが、歌メロとしては非常にいい曲になっています。
アウトロでのベースとギターの地味なせめぎ合いも、なかなか他のバンドでは聴けない演出ではないでしょうか。

 

8曲目は、HOW CAN YOU DO WHAT YOU DO(ハウ・キャン・ユー・ドゥ・ホワット・ユー・ドゥ)。

 

疾走系のハードロックです。
ここはオーソドックスに、心地よいロックンロールを聴かせてくれてます。
ギターソロは、さすがに腕の見せ所とばかり、ポールがきっちり聴かせてくれ、その合間で絡むビリーのプレイにも注目です。
ハードロックの良曲だと思います。

 

9曲目は、ANYTHING FOR YOU(エニシング・フォー・ユー)。

 

アルバム中2曲目のパワーバラードです。
イントロや曲中に見せるアルペジオが美しい。
また、この曲でのエリックのヴォーカルも非常にいいですね。
特にサビはメロディもよく、美しく歌い上げている
ギターソロでは、ポールが見事なプレイを演奏してくれる。
特に後半のスキッピング(弦飛びピッキング)プレイは、さりげなく何事もないかのように美しく滑らかに聴かせてくれてます。

 

そしてベースのタッピング音をちりばめて、曲は終わります。
非常に美しい優れた曲になっています。

 

10曲目はROCK & ROLL OVER(ロックン・ロール・オーヴァー)。

 

問答無用のロックンロールナンバーです。
MR.BIGの音楽はこのアルバムでしっかりと確立されている、と思われます。
この曲もそんなに新しい曲風ではありません。
しかし、そうした古くからあるものを、彼らのテクニックで現代によみがえらせているのです。

 

特にポールのギターはソロも、その後のヴォーカルとの掛け合いでも非常に存在感がはっきりしています。
そしてもちろんビリーのベースも然りです。
合間合間でビリーここにあり、の音をしっかりと聴かせています。
そこにエリックの独特のヴォーカルがあいまって、MR.BIGは完成しているのです。

 

こうして本編はロックな余韻を残して幕を下ろします

 

11曲目はおまけ的なライヴ曲で、HUMBLE PIE(ハンブル・パイ)のカヴァーで、30 DAYS IN THE HOLE(30デイズ・イン・ザ・ホール)。

 

ブリティッシュロックバンドの曲を、うまく彼らなりにプレイしていますね。
非常に聴き易いロックチューンです。
ライヴならではのギターソロも、ベースプレイもしっかり聴けて、確かに彼らがほんとにテクニックのあるバンドであることを証明しています。

 

この曲を聴くと、やはり、ビリーのやりたかったのは70年代のブリティッシュロックであった、という主張も納得が出来ます。

まとめとおすすめポイント

ビリー・シーンを中心に技巧派ミュージシャンの集まったスーパー・バンド、1989年リリースのMR.BIGのデビュー作である、セルフタイトルアルバム、MR.BIGはビルボード誌アルバムチャートで第46位を記録します。
アメリカではそこそこのヒットでしたが、ボン・ジョヴィのように日本ではヒットを記録しています。
オリコンチャートで第22位10万枚の売り上げを記録しています。

 

さすがにテクニカルなHR/HM好きな日本では彼らは大歓迎を受けたわけです。

 

確かにすでにビリー・シーンはデヴィッド・リー・ロスバンドで既に超絶ベーシストの名は轟いていました。
また、ポール・ギルバートも、RACER Xのギタリストで、知る人ぞ知る速弾きギタリストとなってます。
加えて、 パット・トーピーも、元インペリテリの肩書きは、日本のファンに大きな期待を抱かせたことでしょう。
それとエリック・マーティンは日本ではアイドル的人気を博します。(恐らくかつてのジョン・ボン・ジョヴィがそうであったように)

 

日本でウケる要素満載のこのバンドは、アメリカより先に日本で火がつくことになりました。

 

しかし、実際アルバムを聴いてみると、予想ほどはテクニカルが強調されてはいないことに気付きます。
もちろん、挨拶代わりのオープニングの、アディクテッド・トゥ・ザット・ラッシュは超絶プレイ満載で、期待に十分応えるものとなってましたが、残りはそういう点ではあまりテクニックをひけらかしてはいないように思えます。
むしろ、歌メロを中心とした、オーソドックスなハードロックナンバーでアルバム全体は構成されています。
それも80年代に流行ったグラムメタルっぽいところはなく、ちょっと古めの70年代のロックサウンドを基調としているように感じられます。

 

とはいっても、プロデューサーのKevin Elson(ケヴィン・エルソン)によってバンドのサウンドは現代風にアレンジされ、非常に切れの良いソリッドなハードロックへと仕上げることができました。

 

今作ではポール・ギルバートは、既に活躍していた憧れのミュージシャン二人、ビリーとエリックと共演できるということで、興奮の内にバンドに加入しています。
そのような状況だったので、自分の主張をするよりも、人の言うことを良く聴いてレコーディングしたと語っています。
その結果、彼の超絶テクニックは、多少抑えられ気味になっているのは間違いないですね。
しかし、そのおかげで、エリックのヴォーカルが引き立った、優れたハードロックアルバムが出来上がったのだと思います。

 

個々のテクニカルプレイより、結束したバンドサウンドでのハードロックを楽しみたい人にはおすすめのアルバムとなっています。

 

でも、ビリーのベースは各地にちりばめられています
要チェックです。

チャート、セールス資料

1989年リリース

アーティスト:MR.BIG

1stアルバム、MR.BIG

ビルボード誌アルバムチャート第46位 

1stシングル ADDICTED TO THAT RUSH(アディクテッド・トゥ・ザット・ラッシュ) ビルボード誌Mainstream Rockチャート第39位

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