遅れてきた痛快ハードロックバンド STEELHEART - STEELHEART

STEELHEART(スティールハート)のデビューアルバム





正直、このバンド、STEELHEART(スティールハート)に関しては情報が少ない。
チャートもセールスも特筆すべきところもない

 

非常に優れたアルバムと僕は思っているのだが、なぜそんなに評価が得られていないのか。

 

ただただ、彼らのデビューが遅すぎたのだ。

 

1990年にこのセルフタイトルアルバムでデビューしたのであるが、それはもはや80年代の多くのHM/HRバンド、とりわけグラム・メタルバンドが衰退期に入っていったタイミングだったのである。

 

しかし、だからといってアルバムの内容を否定することはできないだろう。
非常に正統派のハードロックを聴かせてくれる。
とりわけ特筆すべきは、4オクターヴとも言われる、ウクライナ出身のMike Matijevic(マイク・マティアビッチ)のヴォーカルである。
ハイトーンヴォーカルは、この世界には数多く出現したが、その上をいく超絶ヴォーカルである。
美しいバラードから、力強いメタルソングまで、幅広い音域で歌い上げるその力量だけで、十分に聴かせてくれるのだ。

 

そして、そのヴォーカルの陰に隠れがちではあるが、バンドもしっかりした演奏を聴かせてくれています。
Chris Risola(クリス・リゾーラ)によるリードギターも、十分なクオリティを発揮しており、まさにエイティーズのハードロックサウンドを提供してます。

 

では今日は1990年リリースのSTEELHEART(スティールハート)のデビューアルバム、STEELHEART(スティールハート)を紹介したいと思います。

STEELHEART(スティールハート)の楽曲紹介

アルバムオープニングを飾るのはLOVE AIN’T EASY(ラヴ・エイント・イージー)。

 

まさにあの時代のバンドサウンドだ。
ギターリフにドラムが豪快で、正統派のハードロックだ。
そして、やはりマイク・マティアビッチのヴォーカルがたまらない。
低音から高音まで張りのあるすばらしい声を披露している。
クリスリゾーラのギターソロもしっかりと主張があってよい。

 

オープニング、アルバムのイントロダクションとしてインパクト十分の楽曲である。

 

2曲目はCAN’T STOP ME LOVIN’ YOU(キャント・ストップ・ミー・ラヴィング・ユー)。

 

ヘヴィリフで始まるゆったり横ノリのハードロックだ。
この曲でも、マイクのヴォーカルが縦横無尽に歌い上げる。
この人の場合は低音は甘くて魅力的だし、高音も芯があってただのキンキン声とは違うのだ。

 

クリスのギターもさすがに80年代にたっぷり技巧を磨き上げてきたのがわかる。
オリジナリティがあるとは言いにくいが、当時すでにメジャーとなってきたプレイをうまく組み立てて、いいソロを作り上げている。
最後は、ちょっと大げさなドラムの連打で楽曲は締めくくられる。

 

3曲目はLIKE NEVER BEFORE(ライク・ネヴァー・ビフォー)。

 

いきなりの高音シャウトから驚かされる。
楽曲はなかなかノリのいいロックンロールだ。
サビはキャッチーで、コーラスも美しい。
キャッチーな曲だが、リズム隊がしっかりとヘヴィに刻んでいるので、決してポップには聴こえない。
また、ワウを踏んだソロも、とても爽やかでメロディアスだ。

 

4曲目はI’LL NEVER LET YOU GO(アイル・ネヴァー・レット・ユー・ゴー)。

 

アルバムで初のパワーバラード。
マイクの弾き語りで、美しいアルペジオに乗せてマイクが歌い上げる。
しかし、彼のヴォーカルがすごすぎて、ただのパワーバラードに終わらない。
超絶パワーバラードだ。
どこまでも高く伸びていくマイクの声は、もはや芸術の域に達していると思える。

 

ヴォーカルが目立ちすぎて、バンドの演奏に注意が向けにくいのだが、安定のハードロッカバラードをプレイしている。

 

この曲は(恐らく)2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第23位、同誌Mainstream Rockチャートでは第24位を記録している。
典型的ではあるが、マイクのヴォーカルの力量もあり、非常に美しいパワーバラードとなっている。

 

5曲目は、EVERYBODY LOVES EILEEN(アイリーン)。

 

キャッチーで明るいハードロックだ。
サビもメロディアスで爽やかな印象を与えてくれる。
80年代のグラム・メタルによく見られた風情の陽気な楽曲だ。
ギターソロでは、両手を使ったタッピングを披露。
もはや、この時点で珍しいプレイではないが、やはりこうした飛び道具プレイは華がある

 

この曲は(恐らく)3rdシングルとしてリリースされていて、Mainstream Rockチャートで第34位を記録した。

 

6曲目は、SHEILA(シーラ)。

 

スローでブルージーなハードロックだ。
歌い始めのマイクの低音が非常に渋い。
この曲では、ブルージーなギタープレイがふんだんに楽しめる。
90年代に入った多くのギタリスト同様、クリスも引き出しが多いことを示している。

 

ラストのマイクとクリスの異種格闘的な超高音の掛け合いは圧巻である。

 

7曲目は、GIMME GIMME(ギミ・ギミ)。

 

いろいろ80年代に聴いたようなフレーズが満載のハードロックチューンだ。
過去の音楽を飲み込んで、マイクが歌い上げると、それは非常に迫力のある別物ができあがる。

 

ライヴでは必ず盛り上がるに違いない、明るい大合唱ソングである。

 

8曲目は、ROCK ‘N’ ROLL (I JUST WANNA)(ロックン・ロール)。

 

疾走感あふれる、ハードロックチューンだ。
たっぷり準備されたギターソロも痛快である。
そしてやはり、こうしたハードロックにもマイクのヴォーカルが映えるし、ハイトーンもピタリとはまる。

 

9曲目、SHE’S GONE (LADY)(シーズ・ゴーン)。

 

もう大仰と言われてもいい。
完璧なバラードである。

 

イントロでのクリスのギターがすでに泣きまくっている。
そしてやはりマイクのヴォーカルがすさまじい印象をくれる。
どこまでも伸びるような彼の超ハイトーンヴォイスは、ただでさえ良いこの曲を完璧なものへと仕上げた。

 

まさに盛り上がり必至のベタな展開と思われるかもしれないが、他にどのバンドがこんなバラードを作ったであろうか。
このマイクの天賦のヴォーカルの才能は、唯一無二の極上のバラードを作り上げた。

 

ラストの転調では、さらにヴォーカルの限界を突破している。
最終的には、非常にドラマティックな演出によって楽曲は終わりを迎える。

 

これはHM/HRの数あるバラードの中でも、究極のものではなかろうか。
泣きのギター、力強いリズム、そして感情の極みを最大限に表現したヴォーカル。
ヘア・メタルバンドのリリースしたパワーバラードの最後の輝きかもしれない。

 

この曲はアルバムの(恐らく)1stシングルで、シングルチャート第59位を記録している。

 

アルバムラストはDOWN ‘N’ DIRTY(ダウン&ダーティ)。

 

正統派ハードロックンロールソングだ。
ギターリフも、クールさを示しているし、やはり、マイクのヴォーカルが最後まで輝きを放っている。
サビも、合唱で盛り上がれる。
80年代HM/HRっぽい、オーソドックスで盛り上がり必至の楽曲だ。

まとめとおすすめポイント

1990年リリースのSTEELHEART(スティールハート)のデビューアルバム、STEELHEART(スティールハート)はビルボード誌アルバムチャート第40位を記録。

 

アルバムは80年代そのもののハードロック正統派の作品になっています。
加えて、マイク・マティアビッチの驚異的なハイトーンは、やはりある程度の注目を集めました。

 

もし、彼らのデビューが3~5年ほど早ければ、かなりなチャートアクションやセールスを期待できたはずです。
それほどのクオリティをこのアルバムは有している、と断言できます。

 

この後、90年代が進むにつれ、グランジの台頭により、一層彼らの活動は縮小していくわけで、ほんとに世に出たタイミングが悪かったとしかいいようがありません。

 

しかし、このアルバムはそんな中でもキラリと輝く優れた作品として残りました。

 

80年代HM/HRを愛する人にはぜひ、マイクの超絶ヴォーカルと共に優れたバンドサウンドを楽しんでもらいたいと思います。

チャート、セールス資料

1990年リリース

アーティスト:STEELHEART(スティールハート)

1stアルバム、STEELHEART(スティールハート)

ビルボード誌アルバムチャート第40位 

(恐らく)1stシングル SHE’S GONE (LADY)(シーズ・ゴーン) ビルボード誌シングルチャート第59位

(恐らく)2ndシングル I’LL NEVER LET YOU GO(アイル・ネヴァー・レット・ユー・ゴー) シングルチャート第23位、同誌Mainstream Rockチャート第24位

(恐らく)3rdシングル EVERYBODY LOVES EILEEN(アイリーン) Mainstream Rockチャート第34位

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