時代を超えたプログレッシヴ・ポップ名盤 ASIA - ASIA( 詠時感〜時へのロマン)

世界的大ヒットだが、賛否両論分かれる名盤





僕はASIA(エイジア)の2ndアルバム、ALPHA(アルファ)でエイジアにはまり、続く3rdアルバム、ASTRA(アストラ)も非常に気に入って聴きまくってました。
どちらも、商業的には成功とは言いがたい作品との評価がありますが、僕はどちらもとってもいい作品だと思っています。

 

で、そうなると、その前の世界的に大ヒットしたデビューアルバムはいったいどれほどのものだろうと、期待も高まるものです。
それで、アストラの後にさかのぼってぼくはこのエイジアの1stアルバムを聴くことになりました。

 

エイジアは、ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックの代表格である、YES(イエス)や Emerson, Lake & Palmer(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)などの終焉に伴って1981年に始まったバンドです。
そして、メンバーの4人は、プログレの5大バンドと呼ばれるうちの三つのバンドから集まったものだったので、スーパーバンドとして高い注目を集めることになります。
ちょうど、プログレ人気のピークは1970年代の後半に過ぎたと言われることも多く、この新たな4人の複合体が、いったいどんなサウンドを聞かせてくれるのかに関心が集まったのです。

 

その4人のメンバーを並べると、

キーボードのGeoff Downes(ジェフ・ダウンズ)は元バグルス、イエス

ギターのSteve Howe(スティーヴ・ハウ)は元イエス

ドラムの Carl Palmer(カール・パーマー)は元エマーソン・レイク・アンド・パーマー

ベース&リードヴォーカルのJohn Wetton(ジョン・ウェットン)は 元キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、U.K.

と、確かにそうそうたるメンバーだと言えます。
過去の実績は十分の、熟練プレイヤーたちばかりです。

 

とはいえ、この4人に落ち着くまでも紆余曲折あったようで、プログレに詳しくない者にとってプログレ界の移籍トレード複雑怪奇すぎて正直わけがわかりません
でも、最終的に実力のある、素晴らしいメンバーが集合した、と言えるでしょう。

 

まあ、いずれにしてもプログレの凋落を残念に感じている人たちにとって、このスーパーグループは希望の光になったのは間違いないでしょう。
いったい、新しいどんな作品を届けてくれるのか、期待は否が応でも高まったはずです。

 

そして、ついに1982年、彼らのデビューアルバムが完成します。
制作にあたって、彼らは「プログレッシヴ・ロックのエッセンスをポップスとして鏤めた3分半の楽曲」という新たなジャンルを掲げています。
しかし、それは世界的な大ヒットとなったと同時に、旧来のファンや批評家は失望を口にする、という二つの側面を持ったアルバムとなったのでした。

 

では、今日は、1982年リリースのASIA(エイジア)のデビューアルバム、ASIA( 詠時感〜時へのロマン)をご紹介します。

ASIA( 詠時感〜時へのロマン)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、HEAT OF THE MOMENT(ヒート・オブ・ザ・モーメント)。

 

変拍子の入ったギターリフのイントロが、やはり何かが始まる期待を呼び起こす素晴らしいイントロになっています。
そして、柔らかく心地の良いジョン・ウェットンのヴォーカルが非常にポップソングにマッチしてます。
ドラムが加わって、サビはメンバーのコーラスも入り、とっても爽快な楽曲になります。
ジェフ・ダウンズのキーボードもキラキラと楽曲を彩ってます。

 

しかし、やはりプログレ畑を行き巡ってきただけあって、ただのポップスではありません。
中間部では、いったん、静まりキーボードとベースなどで、少しドラマティックな静寂が創り出されます。
再びサビで盛り上がった後、ギターソロの入りまではいいです。

 

ここで、個人の意見なのですが、どうしてもこの曲のスティーヴ・ハウのギターソロが、良いものとは思えないのです。
彼は上手いはずなのですが、ここではなんか素人が弾いているように聞こえてしまうのは、僕の耳だけでしょうか。
何度聴いても、ここでのハウのプレイが受け入れられませんが、皆さんはどう思われますか???

 

とはいえ、楽曲のポップスとしての出来は素晴らしいと思いますね。
確かに4分弱で、ポップスにいい塩梅のプログレ感が振りかけられていると思います。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第4位、同誌Mainstream Rockチャートでは6週(連続ではない)No.1を獲得しました。

 

2曲目は、ONLY TIME WILL TELL(時へのロマン)。

 

ちょっとチープに感じられますが、勇壮なキーボードのイントロで勇ましく始まります。
しかし楽器が加わっていくと、なかなかかっこよく決まっていきます。
ウェットンのヴォーカルと、柔らかいキーボードの絡むAメロはとてもいいです。

 

曲の進行と共にハウのソロギターが存在感を増していきます。
サビ前のワイルドなソロプレイは非常にかっこいいです。
サビ中はウェットンのヴォーカルを追っかける形でギターフレーズが聞こえて来るとこなんかぞくぞくします。

 

今回はハウのギターは非常にいいですね。
前曲のソロは何だったんだと思える、良い出来です。
曲全体もキャッチーですし、構成も良く出来た楽曲だと思います。
ただ、時間の関係か、ラストが尻すぼみみたいなフェイドアウトになったのがもったいないです。
もうちょっと、びしっと終着点をきめてくれてたらもっと良かったと思います。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第17位、Mainstream Rockチャートでは第8位を記録しています。

 

3曲目は、SOLE SURVIVOR(孤独のサヴァイヴァー)。

 

不穏な雰囲気のイントロを経て、キャッチーなポップソングになっています。
曲中を彩る様々なキーボードの音がとてもいいです。
歌メロと歌メロをつなぐ部分でさりげなく変拍子が入っているところにプログレ風味が隠れています。

 

中間の間奏部でもキーボードが存在感を示し、ハウのギターが踊っています。
いったん静かになって再び盛り上がるドラマティックな展開も忘れていません。
そして、やはりウェットンの歌メロの哀愁がこの曲の価値を高めてますね。
ラストはサビメロに対抗して弾かれるハウのギターが光ってます。
なかなか、よくできた楽曲だと思います。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、Mainstream Rockチャートで第10位を記録しています。

 

4曲目は、ONE STEP CLOSER(ワン・ステップ・クローサー)。

 

この曲はイントロからプログレっぽいユニゾンプレイが踊っていますね。
とても優しい雰囲気の、温かい楽曲です。
なんと言ってもサビがほんわかしてていい感じですね。
ハウのギターソロもメロディアスに曲を盛り上げてます。
ラスト前のソロも非常にかっこよく、ラストのキーボードとのユニゾンプレイにつながる部分は秀逸ですね。
キーボードがカラフルに彩った極上のポップソングだと思います。

 

5曲目は、TIME AGAIN(タイム・アゲイン)。

 

イントロがプログレ風味が強く効いていて非常にドラマティックな楽曲になっています。
ここでも、ギターとキーボード、それにドラムも加えたユニゾンプレイが非常にかっこよいです。
そして、ドラムが入ってくると、シャッフルビートのノリノリの曲に変わります。

 

サビも相変わらずキャッチーで、コーラスも美しいです。
この曲では、かなりハードなギターが目立ちます。
ハウのプレイが目立ちまくってます。
キーボードとともに、熟練の技を見せ付けています。

 

ラストは、イントロのユニゾンプレイに戻って終幕です。
これはかっこよく終わってくれますね。
5分弱の楽曲で、たっぷりプログレの雰囲気も封じ込めていて、とても豪華な展開の楽しめる曲になっています。

 

6曲目は、WILDEST DREAMS(この夢の果てまで)。

 

B面1曲目に当たるこの曲は、他の曲に勝ってそれぞれのテクニックが際立ったかっこいい曲になっています。
結構ハード目で、ドラマティックな流れの中で、それぞれのプレイヤーがテクニックで激突してます。
特にハウのギター、ダウンズのキーボードはもちろんのこと、後半にはパーマーの激しいドラムソロもあり、たっぷりと円熟したプレイを楽しめます。

 

演奏が目立つとは言え、歌メロは相変わらずキャッチーなので、聴きやすい範疇には収まっています。
ぜひとも5分といわず、長尺の曲として聴いてみたい曲の一つと言えます。

 

7曲目は、WITHOUT YOU(ウィズアウト・ユー)。

 

静寂から始まる楽曲ですが、サビのタイトルの叫びから一気にバンドサウンドへ変貌します。
中盤からはさらに劇的な盛り上がりを擁し、引き込まれて行きます。
真ん中の間奏はかなり長い尺がとってあり、それぞれの楽器がしっかりと見せ場を示しています。

 

アコギのアルペジオが加わる後半も、なかなかにドラマティックです。
そして再び盛り上がり、バンドのプレイが目立って終わっていきます。

 

哀愁漂うヴォーカルを、バックの楽器隊がめまぐるしく盛り上げる、非常にいい曲だと思います。

 

8曲目は、CUTTING IT FINE(流れのままに)。

 

かわいらしいアコギのイントロから始まりますが、この曲もすさまじく展開を遂げていく、息もつかせぬ楽曲になっています。
かなりプログレの雰囲気を感じられる展開が始まります。
途中でのハウのギターがクリーンも歪み系もいい感じで弾きまくられてます。

 

また歌メロが非常にこれまたキャッチーで聴き易いポップスです。
そしてその裏で繰り広げられる楽器隊がすばらしいです。
この楽器隊の存在が、単なるポップバンドとの区別をつけてますね。

 

そして、残り2分を残して、ピアノソロが始まり、ぐっと静寂が訪れます。
そこから静かにシンセやドラムロール、ストリングスなどが加わっていき、じわじわと盛り上がって行きます。
この荘厳で神聖な感じ、これこそプログレが得意とする雰囲気なのでしょう。
アルバムのラスト前にいい感じでこの荘厳シーンが挿入されています。

 

ラスト9曲目は、HERE COMES THE FEELING(ときめきの面影)。

 

ちょうど、前の曲のラスト2分のインストパートは、ちょうどこの曲へのイントロだったのではと思える、いい感じのつながりがあります。
イントロははじけるような、明るいシンセで始まります。
ギターソロメロディが加わると、4つ打ちの非常に気持ちの良いリズムがはじまります。

 

歌メロがはじまると、ちょっと影のある雰囲気が入ってきますが、再びサビで、イントロのあの明るい雰囲気がはじけます。
いや、この感じはとても好きですね。
サビの明るく気持ちの良いメロディは、ウェットンの柔らかいヴォーカルでさらに輝きを増してますね。

 

間奏では、キーボードソロが堂々と披露され、その後、ギターもドラムもそれぞれに個性を発揮しています。
もうちょっと楽器を聴いていたいですが、この短さもエイジアの特徴の一つなのです。

 

サビの明るい雰囲気のまま、ラストに向かいます。
ハウの軽快なギターカッティングも気持ちよく鳴っています。
ラストはユニゾンで一気に終演です。
また聴きたくなる不思議な余韻でアルバムは終了します。

まとめとおすすめポイント

1982年リリースのASIA(エイジア)のデビューアルバム、ASIA( 詠時感〜時へのロマン)はビルボード誌アルバムチャートで、9週連続のNo.1に輝き、同年の年間チャートでもNo.1を獲得しています。
また、アメリカでのセールスは400万枚、世界中では1000万枚以上を売り上げたと言われています。

 

デビューにしてとんでもない大ヒットをぶっ飛ばしたエイジアですが、このエイジアには最初にも述べたように賛否両論がなされています。
まずは旧来のファン、つまりプログレファンの皆さんや、音楽の批評家たちは、この彼らの音楽性の変化に、失望した人が多かったようです。
ほとんどのプログレバンドが、売れることよりも芸術性に重きを置いた作品作りをしてきていたのが、突然、キャッチーで耳障りの良い誰もが口ずさめるようなポップスを作り上げてきたわけですから、そりゃ人によってはがっかりするのも判る気もします。
彼らとしては、低迷してきたプログレ界に再び明るい光をともしてくれるのを期待してたのでしょう。
ところが、まるで違うベクトルへ向かってしまったわけです。
それも、ラジオでかかりまくり、レコードは売れまくり、チャートも上位を独占してます。
そのような成功を見て、金のために魂を売った、との批判が相次いだようですね。

 

では受け入れたのはどんな人たちだったのでしょうか。
恐らく、一般の音楽リスナー
プログレがどうのこうのといった話題に縁のない、普通のリスナーたちが、彼らの音楽を聴き、衝撃を受けたのでしょう。
ただのポップスにしては、ゴージャスで、展開も面白いし、演奏もハイレベル
でも、歌メロはキャッチーで聴いても口ずさんでも楽しめる音楽。
これまでにはあまりなかった新しい形の音楽、つまりプログレとポップスの融合に心を持っていかれたのではないでしょうか。

 

こうして二つの意見に真っ二つに割れるわけですが、僕は人の意見には左右されたくはないですね。
自分がいいと思うものを聴きたい。
そのために、多くの人が評価しているなら、きっとそれは良いものだと思えますし、一部悪くいう人がいてもあまり気になりません
実際、エイジアも、産業ロック、というレッテルを貼られたバンドの一つとなってしまいますが、僕はそんなレッテルは気になりません。
結局、1000万人がアルバムを購入して楽しんだのは事実なのです。
いいバンドには売れて、また次もいいものを作って欲しいと願いたいものです。

 

さて、前述のとおり、僕はアストラからさかのぼってこの1stアルバムを聴いたのですが、やはり売れただけあって、良く出来たアルバムだなと感じました。
やっぱり、基本の歌メロがメロディアスでいいものだから、まずそこで評価があがります。
加えて、そこにプログレ風味がいい感じの調味料として、楽曲の良さをさらに高めています。
それを可能にしているのが、やはり、それぞれのバンドで腕を磨いてきた熟練プレイヤーたちの優れた技能、ということになるでしょう。

 

プログレファンからすると物足りないのかもしれませんが、幸か不幸か僕はプログレに造詣は深くはないのです。
だからこそ、ポップスに付け加えられたプログレの部分に心が動かされるのでしょう。
逆にエイジアを聴いて、そこからプログレに入っていった人も多かったに違いありません。

 

いずれにしても、このアルバムは1982年、という80年代の初期に、エイティーズのサウンドの一つの型となったのではないでしょうか。
キラキラしたシンセサウンドや、ちょっとオーバーかと思えるアレンジ
僕は、とても好きですね。

 

このアルバムは80年代を代表する作品の一つに数えられるのは間違いないでしょう。
やはり、その時代を語る上ではマストなアルバムとして紹介したいと思います。

 

ただ、個人的には2ndのアルファが初期エイジアでは1番好きです。(なんてったってドント・クライがオープニングで燦然と輝いてますから)

チャート、セールス資料

1982年リリース

アーティスト:ASIA(エイジア)

1stアルバム、ASIA( 詠時感〜時へのロマン)

ビルボード誌アルバムチャート9週連続No.1 1982年年間チャートNo.1

アメリカで400万枚のセールス 世界で1000万枚のセールス

1stシングル HEAT OF THE MOMENT(ヒート・オブ・ザ・モーメント) ビルボード誌シングルチャート第4位、同誌Mainstream Rockチャート6週(連続ではない)No.1

2ndシングル ONLY TIME WILL TELL(時へのロマン) シングルチャート第17位、Mainstream Rockチャート第8位

3rdシングル SOLE SURVIVOR(孤独のサヴァイヴァー) Mainstream Rockチャート第10位