相変わらずのハイクオリティだと思いますが・・・ ASIA(エイジア)- ASTRA(アストラ)
2ndアルバムからの巻き返しを図ります
1983年にリリースされた、ASIA(エイジア)の2ndアルバムALPHA(アルファ)はビルボード誌アルバムチャートで第6位、アメリカでのセールスは100万枚を記録します。
これだけ聞くと、そんなに悪くは聴こえませんが、1stアルバムのAsia(詠時感〜時へのロマン)が全世界で1500万枚のセールスをあげたことと比較すると、かなり寂しい成績だと言えます。
僕は個人的には、2ndのアルファも決して悪くない、いや、むしろ良く出来たアルバムと思いますし、好きなアルバムでもあります。
なので、逆になぜにこんなに成績が下がったのか不思議に思います。
しかし、現実には多くの酷評を受けています。
特に、オーヴァープロデュースの商業主義的な作品という評価もあり、結構きついですね。
そういう面があることも否定はしませんが、どんなアーティストも行きつくところ、売れるのが目標であるはずなので、なぜそこを酷評される必要があるのか、とも思います。
まあ、特にこのころはスタジアムロック、産業ロック、などという言葉が出来て、そういうバンドが批判の的になっていた時代でしたから、思いっきりそのあおりを食ってしまったのでしょう。
さて、アルバムが期待したほど売れなかったため、ベース&ヴォーカルのJohn Wetton(ジョン・ウェットン)はバンドを追われます。
バンドは、ウェットンが辞めた、と述べてます。
しかし、ウェットンは電話で首にされたと反論しています。
後にウェットンは、自身のアルコール依存が問題だったのかもしれないことを明かしています。
まあ、こんだけセールスがガタ落ちすれば、酒も飲まずにはいられないのもわかる気がしますね。
そして、1983年のアルバム「アルファ」にあわせたアメリカでのツアーも行なわれますが、ウェットンの代わりに、 Greg Lake(グレッグ・レイク)が召集されています。
グレッグ・レイクは元King Crimson(キング・クリムゾン)、ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)のフロントマンだったということで、資格は十分ですね。
しかし、チケットの売れ行きが芳しくなく、突然途中でキャンセルされることになりました。
その年の年末には、日本において、MTVの企画で、武道館でのライヴを全米に生中継する企画が行なわれます。
タイトルは「ASIA in ASIA」、日本でも放送され日本でのタイトルは「武道館から初の衛星生中継!ASIA in ASIA 独占生中継」というものだったようです。
しかし、幾つかの曲では、レイクに合わせてキーを下げたり、また、レイクは急な召集だったため、歌詞をプロンプターに写してそれを見ながらの歌唱ということで、全くベストのパフォーマンスを披露できなかったようです。
そんなごたごたもすぐに終わり、1984年の早い段階でレイクはバンドを離れ、再びウェットンが合流します。
やはりあの声あってのエイジア、という気もしますのでこれで安心ですね。
と、思ってたら、今度はギターのSteve Howe(スティーヴ・ハウ)が脱退します。
どうもウェットンとの仲が良くなかったようですね。
なかなかバンド内の人間関係も難しいものです。
ハウが抜けたので、とりあえずスリーピースバンドとして活動しようと考えます。
ギタリストは、ゲストを迎えてアルバムを作ろう、というわけです。
その時のゲストギタリスト候補には、 Jeff Beck(ジェフ・ベック)やDavid Gilmour(デヴィッド・ギルモア)などが挙げられています。
どんな作品になるか見当がつきませんが、それはそれで、聴いてみたかったですね。
しかし、レコーディングセッションが始まる前に、ウェットンがMandy Meyer(マンディ・メイヤー)をつれてきます。
マンディは、あのサバイバーのジミ・ジェイミソンが所属していたバンド「コブラ」にもおられた方です。
完全にハードロックバンドのギタリストでしたので、この加入によって、少しばかりアルバムのサウンドがよりエッジの効いたハードな方向へシフトすることになりました。
当初、アルバムの仮タイトルは、Arcadiaとなっていましたが、DURAN DURANのメンバーのサイドプロジェクト名とかぶってしまったので、ASTRAに変更されました。
ウェットンとGeoff Downes(ジェフ・ダウンズ)はアルバムのために25曲を書き上げ、その中から10曲が選ばれます。
では今日は1985年リリースの、ASIA(エイジア)の3rdアルバム、ASTRA(アストラ)をご紹介します。
ASTRA(アストラ)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、GO(ゴー)。
この曲が先行シングルとしてラジオで聞こえてきたとき、これはめっちゃかっこいい、これは売れるぞ!という強い確信を持ったことを思い出します。
荘厳にはじまるオルガンのイントロ、そして、静寂を突き破るかのようなSEからの勇壮なギターリフ。
相変わらずのメロディアスな歌メロ。
サビは“GO!”だけで引っ張る斬新さ。
DON’T CRY(ドント・クライ)が前作で1番好きだったのですが、それに匹敵する、素晴らしい楽曲と思いました。
当時はギタリストのハウがメイヤーに代わったことなんて全く知りませんでした。
今聞くと、やはりサウンド的にハードロックよりのギタープレイが、楽曲をかっこよく彩っていますね。
キレのよいリフや、アウトロでのソロなど、僕好みのギターサウンドが楽しめます。
ただ、旧来のファンからすると、このギターの音変化は許せなかったのでしょうね。
ハウのプログレっぽいギターが、結構普通のハードロックギターに変わっている感じは受けますからね。
この辺が評価を分けるところだと思います。
僕は非常に好感をもって聞いていましたけどね。
中盤もドラマティックに展開しますし、エイジアらしい楽曲であることには違いありません。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第46位、同誌Mainstream Rockチャートで第7位を記録しました。
当時はロックチャートの方の存在は知らなかったので、普通のシングルチャートで46位というのは衝撃を覚えましたね。
この曲は全米No.1を獲得するに違いないと思えたかっこいい曲だっただけに、何、何が起こったんだ、と思ってました。
いきなり出鼻をくじかれたアルバムリリースとなってしまいました。
2曲目は、VOICE OF AMERICA(ヴォイス・オブ・アメリカ)。
きれいなキーボードから始まる美しいバラードです。
スケールの大きな、エイジアらしい見事なバラードだと思いますね。
特に、エモーショナルなウェットン節が炸裂しています。
やはり、エイジアの声はこの声じゃなきゃなりません。
エレキギターソロも、新入りの若いメイヤーが頑張ってドラマティックに弾いてますね。
コーラスも厚みがあってとても美しいものになっています。
なかなかな名曲に仕上がっていると思いますよ。
3曲目はHARD ON ME(ハード・オン・ミー)。
勢いのあるアップテンポな楽曲ですね。
ダウンズのシンセが洪水のように楽曲全体を彩っています。
ゴージャスで、なおかつシンセがプログレっぽい使い方がされてて、これまたエイジアらしいです。
ただ、あまりにもスーパーポップなところが、これも評価が分かれるかもしれません。
しかし、もともと彼らのデビュー時のコンセプトは「プログレッシヴ・ロックのエッセンスを、“ポップス”としてちりばめた3分半の楽曲」だったわけですから、まさにコンセプトどおりの楽曲と言えるかもしれません。
ちなみにこの曲は、アルバム中にヒットシングルになるポテンシャルのある楽曲が少ない、というGeffenレコードの意見を受けて、最後に作り足した曲になっています。
確かにヒットしそうなキャッチーな楽曲ですね。
そう言われて、要望どおりさらっと作れるのがすごいです。
4曲目は、WISHING(ウィッシング)。
とても柔らかい哀愁味を帯びた、ミディアムポップナンバーです。
ウェットンの歌うメロディアスな歌メロがたまりません。
聞いただけで、懐かしい感覚に陥る絶妙なメロディラインを持っていますね。
A面ラスト、5曲目は、ROCK AND ROLL DREAM(ロックンロール・ドリーム)。
アルバム中最長の7分近い長尺の楽曲です。
各演奏パートにたっぷりと尺がとられてて、エイジアにしては演奏が十分に楽しめるものとなっています。
間奏のギターソロ、メイヤーなかなかいい味出してます。
中盤の“Tonght!!!”を皮切りに、アップテンポな楽曲に変化します。
そしてオーケストラサウンドも交えて壮大な大団円。
ここでは Royal Philharmonic Orchestra(ロイヤル・フィル・オーケストラ)まで投入して、豪華に楽曲を盛りたてます。
ドラマティックな盛り上がりを見せ、最後は爽快な感動を与えてくれる大曲です。
B面1曲目は、COUNTDOWN TO ZERO(カウントダウン・トゥ・ゼロ)。
B面も荘厳に始まります。
どこかで聞いたことのある出だしのSE。
これは映画館でTHXの文字が出てくるときに出てくるあの効果音である。
さて、この曲も静かに始まります。
ウェットンが静かに歌い始めますが、サビとともにロックソングへと変わります。
サビもキャッチーで、一度聞いたら忘れられないメロディになっています。
途中要所要所で、ダウンズのシンセがキラキラと楽曲を彩ります。
また、メイヤーのソリッドなギターもなかなかいい感じでクールな楽曲を飾っています。
ウェットンの語りは、一応、雰囲気作りには一役買っていますね。
やはり彼ららしく、大げさでドラマティックな楽曲になっています。
このアルバムのコンセプトにあったなかなかの楽曲になっています。
2曲目は、LOVE NOW TILL ETERNITY(ラヴ・ナウ)。
過去のプログレ作品のようなイントロからはじまる、エモーショナルな楽曲です。
サビのコーラスが美しいです。
4分ほどの楽曲ですが、結構プログレっぽいパートがねじ込まれていますね。
温かい楽曲になっています。
3曲目は、TOO LATE(トゥー・レイト)。
この曲は正統派のハードポップになっていますね。
ハードなギターリフ、キャッチーなサビ、ゴージャスなシンセ。
まさに80年代のハードポップのど真ん中をいっていますね。
サビもわかりやすく、聴いて心地よいです。
間奏で、いったんヴォリュームダウンでダウンズのシンセによる静かなパートが来て、そこからメイヤーのハードでかっこいいギターソロが展開します。
短い曲ですが、きちんとドラマ要素も加味されて、王道とはいえ、エイジアらしい爽快な楽曲に仕上がっています。
この曲は2ndシングルとしてカットされていますが、シングルチャートでは圏外、Mainstream Rockチャートで第30位と沈みました。
4曲目は、SUSPICION(サスピション)。
前半の少し寒々しい雰囲気が、サスピション(疑惑)のタイトルにふさわしくアダルティにキマっています。
間奏のシンセソロからの大サビで大きく盛り上げます。
そして、再び導入部が繰り返し、余韻たっぷりに終わります。
やはり展開がとてもドラマティックに感じられます。
アルバムラスト、5曲目は、AFTER THE WAR(アフター・ザ・ウォー)。
美しいキーボードのイントロから始まり、ギターが入ってきて、いきなり盛り上がって行きます。
シンセがたっぷり音に厚みを加え、もうイントロだけでおなかいっぱいなドラマティックな楽曲ですね。
また疾走感を感じられるギターリフ、ドラムのリズムと共に、ウェットンが歌い上げるメロディは、あくまでもメロディアスでキャッチーです。
そして、雷鳴のようなSEとともに連呼される曲タイトル。
もう、大げさを通り越して、感動すら覚えます。
そして間奏ではメイヤーのギターソロが思いっきり泣いています。
その後は静かなアコギ伴奏の音の上で、ウェットンとコーラスでタイトルを連呼し終局の響きを与え、
最後は爆発のような大きな効果音がきらめき、静かにフェイドアウトしていきます。
もう、ゴージャスで大仰な、見事にエイジアらしいアルバムのラストになっています。
まとめとおすすめポイント
1985年リリースの、ASIA(エイジア)の3rdアルバム、ASTRA(アストラ)はビルボード誌アルバムチャートで第67位と大きく沈んでしまいました。
彼らのデビュー当初の「プログレッシヴ・ロックのエッセンスを、“ポップス”としてちりばめた3分半の楽曲」というコンセプトどおり、一部の長い曲を除いて、コンパクトで安定のエイジア節を聞かせてくれていると思います。
キラキラゴージャスなアレンジは、80年代ど真ん中にあっては、それほど浮いたものではなかったと思われますが、1stの大成功には遠く及ばず、またいまいち売れなかった2ndよりもさらに売れない、という厳しい評価を受けることになりました。
セールス的には失敗作、とされるこの作品、何がいけなかったのでしょうか。
考えられる一つの理由は、やはりギタリストの交代、ということになるでしょう。
スティーヴ・ハウからマンディ・メイヤーへの移行は、どうしてもバックグラウンドに差がありすぎたと思えます。
プログレ出身のハウのちょっと変態的なプログレギタープレイが、ハードロック出身のメイヤーのストレートなギタープレイに変わることで、やはり全体としてプログレ感がなくなったわけではありませんが、薄れた感じは否定できません。
僕はどちらかというと70年代のプログレバンドのプレイにあまり接していないので、逆にメイヤーのギターのほうが好きだったりするわけですけど、旧来のファンはそうではなかったんでしょう。
あと、オーヴァープロデュースも一因でしょうか。
2作目アルファでも述べましたが、やはり大げさなアレンジが、人によっては受け付けにくい、と。
それが同じ方向性のまま作られたために、リスナーに飽きが来てしまったのかもしれません。
あと、ウェットンが抜けたり戻ったりのごたごたや、「ASIA in ASIA」の生中継での、イマイチなプレイなどを理由に挙げる方もおられます。
まあ、売れなかった理由として、上がるのはこれくらいでしょうか。
それで、ウィキぺディアにもありますが、ウェットンも
「なぜ急に売れなくなったのかわからない、あれだけの作品で売れなければ今後何を作ればいいんだ」
と嘆いているようです。
全く僕も同感です。
個人的にはかなりいい作品だと思っているからです。
しかし、結果としてアルバムリリース後のツアーもキャンセルされ、ウェットンは解雇。
第一期のエイジアは3つの作品を残して活動を停止してしまいました。
ただ、一筋の光明があるとすれば、日本ではオリコンチャート第15位を記録するヒットを記録しています。
当時の日本のファンは、僕を含めてこの作品の良さを正しく評価していたのです。
今でも、なぜこの作品が駄作や失敗作扱いされたのがわからない、と語る日本のリスナーたちの意見も多く聴かれます。
そうです。
ボン・ジョヴィやMR.BIGの良さを世界に先駆けて見つけたのは日本の洋楽ファンなのです。
世界がこの作品を受け付けなかったとしても、われわれは良いものを見極める目を持っているのです。
世界がどう見ようと、この作品は80年代に輝いた、優れた職人たちによる優れたプログレポップスとして高く評価されるにふさわしいアルバムだと、僕は紹介したいと思います。
チャート、セールス資料
1985年リリース
アーティスト:ASIA(エイジア)
2ndアルバム、ASTRA(アストラ)
ビルボード誌アルバムチャート第67位
1stシングル GO(ゴー) ビルボード誌シングルチャート第46位、同誌Mainstream Rockチャート第7位
2ndシングル TOO LATE(トゥー・レイト) シングルチャート圏外、Mainstream Rockチャート第30位
おお!alphaの次がastraとは!ある意味、通ですね。(誉めています)
ハードロック、ポップス、etc…引き出し多いですねー。
ALPHAのリリース後に洋楽を聴き始めた僕は、リアルタイムのASIAはこのASTRAで、それから1stに遡る形になります。
一応その順序で書いていきたいと思って、こうなりました。通というほどのものではありません(^^;)。
FMステーションというラジオ雑誌を片手に、シングルチャートやラジオにのめりこんでいたら、自然と多種多様な音楽に触れ、好きになっていきました。
いろんなジャンルがごちゃまぜにポップチャートにチャートインしていた80年代の音楽性のおかげです。
楽しい時代でしたよね。