古くて新しい、アメリカンポップアルバム BILLY JOEL - AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)

BILLY JOEL(ビリー・ジョエル)との出会い





僕が洋楽を聴きだした頃、FMステーション(ラジオ雑誌)を片手にFMラジオにかじりついていました。
そうすると、かなりのかつての名曲にも出会って、新たな音楽を知る、ということを繰り返していたものです。

 

そんな中で僕が最初にBILLY JOEL(ビリー・ジョエル)に出会ったのは、彼の大ヒット曲HONESTY(オネスティ)でした。
非常に暗い曲でしたが、ピアノをバックに優しく歌う彼のヴォーカルは僕の耳を引きました。
また、メロディラインが秀逸で、悲しげだけれど美しい旋律にとりこになってしまったのです。
エアチェック(FMラジオをカセットテープに録音すること)して繰り返し聴いたものです。

 

次に知ったのはJUST THE WAY YOU ARE(素顔のままで)です。
イントロの浮遊感ある感じから始まり、やはり彼の歌うメロディがこれまた素晴らしく、同じくエアチェックして何度も聴きました。

 

どちらも1970年代後半のヒット曲としてとても有名で、中学生の僕の中にもしっかりと強い印象を刻み付けてくれました。
中3の僕は、それ以上はビリーを追っかけることも出来ずに、その2曲で満足していました。
そうしていると、土曜の午後2:00の民放FM局のポップスベストテンという番組にて、ついに彼の新曲がチャートインしてきて、再び彼の音楽と出会うことになってのです。

 

曲のタイトルは、TELL HER ABOUT IT(あの娘にアタック)。
その明るく軽快なポップスに、これはあの僕が知っているビリーか、と最初は戸惑いましたが、すぐにその楽しいメロディにとりこになってしまったのでした。
それから次々にニューアルバムからのシングルヒットを飛ばすビリー。
そのどれもがいい曲で、一気に好きになってしまいました。
このときに出たアルバムが、今日紹介するAN INNOCENT MAN(イノセント・マン)ということになります。

BILLY JOEL(ビリー・ジョエル)とは

ビリーはニューヨーク生まれで、クラシックのピアニストの父を持ち、母の強い勧めでピアノを始めました。
高校在学中は、母の家計を助けるため、ピアノバーで演奏するバイトをしており、結局学校の単位を落とし、中退することになります。
その際、コロンビア大学に行けなくても、コロンビアレコードに行くつもりだ、と言って音楽のキャリアで生きていくことに決めます。
そして実際に後にコロンビアレコードと契約を得ることになる、ということで、彼の強い意志と、優れた音楽の能力が垣間見れるエピソードになっていますね。

 

彼の音楽キャリアのスタートは複数のバンド活動で始まります。
ビリーは、The Beatles(ビートルズ)の The Ed Sullivan Showでのプレイを見てロックで生きていくことに決めたようです。
しかし、初期のバンドやユニットでの活動は、あまり良い成績を収めることができませんでした。

 

1970年にはついに契約を取り、ソロデビューを果たします。
デビュー作こそ、大ヒットには至りませんでしたが、2作目のPIANO MAN(ピアノ・マン)以降、ミリオンヒットを連発していくことになります。

 

特に、1977年の5thアルバム、THE STRANGER(ストレンジャー)はアメリカでのセールスが1000万枚を越える大ヒットを記録しています。
ちなみに前述の“素顔のままで”はこのアルバム収録の曲で、ビルボード誌シングルチャート第3位のヒットとなっています。
また、6thアルバムの52nd Street(ニューヨーク52番街)と7thアルバムの Glass Houses(グラス・ハウス)は共にビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得しています。
こうして順調にチャートもセールスも伸ばして、アメリカを代表するピアニスト兼シンガーソングライターとなっていきました。

アルバム、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)について

そんな彼のアルバム、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)は既に9枚目のアルバムということになります。
そして、当時は全く知りませんでしたが、このアルバムはコンセプトアルバムとなっていて、彼の青年期に影響を与えたアメリカのポピュラー音楽へのトリビュートとなっています。
ちょうど1950年代末期から1960年代初期までの、ドゥーワップ、R&Bやソウルミュージックを初めとする、様々なアメリカの音楽スタイルへのオマージュとなっているのです。

 

アルバム作成に関するインタビューの中で、ビリーはその頃、最初の奥さんのエリザベスと離婚したことを明かしています。
エリザベスとは、ソロデビューアルバム作成前に結婚していました。
つまり、ロックスターになって以来初めての独身状態だったわけです。
それで、Elle Macpherson(エル・マクファーソン)やChristie Brinkley(クリスティ・ブリンクリー)といったスーパーモデルとデートする機会が開けたそうです。

 

こうした経験のおかげで、ティーンエイジャーの感じをもう一度味わえたみたいな感覚だったそうです。
それで、ティーンエイジャーだったころの思い出の曲たち、つまり1950年代末期から1960年代初期に流行っていたポップ音楽のスタイルの曲を書き始めることになりました。
それにはR&B、ソウル音楽、モータウン音楽などが含まれました。

 

実際その作曲作業は非常に楽しく、とてもラクにすばやくメロディが頭に浮かんできたそうです。
ビリーは、青春を追体験したみたいに感じてたみたいです。
それはそうでしょう。
スーパーモデルとデートできる身分なのですから、気も若くなるってもんです。
そんな楽しい作曲作業は6週ほどで完了できたようです。
独身を謳歌し、いわば青春をもう一度楽しみながら行なったアルバム制作によって出来上がった作品は、まさにその彼の楽しみ、喜び、幸せを凝縮したような、明るく楽しいポップな作品へと仕上がりました。

 

では今日は1983年リリースの、BILLY JOEL(ビリー・ジョエル)の9thアルバム、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)をご紹介したいと思います。

AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、EASY MONEY(イージー・マネー)。

 

この曲は、 James Brown(ジェームズ・ブラウン)と Wilson Pickett(ウィルソン・ピケット)へのオマージュとなっています。
シャウトが特徴的なファンクの帝王のジェームズ、そして激情型シャウターと言われるソウルシンガーのウィルソン。
いきなりビリーが怒ったようなシャウトを繰り返すのは、彼らへのオマージュ(敬意)の表れだったんですね。

 

当時僕は、アルバム中の他のポップスの中で、怒れるヴォーカルに戸惑ってましたが、そんな意味があったのを知ると納得のヴォーカルですね。
ビリーも彼の個性を残しつつも、彼らのようにシャウトしてます。
ホーンセクションも、楽曲をファンキーに彩って、古き良きアメリカの雰囲気たっぷりですね。
豪快に吹きまくって、怒涛のオープニングになっています。

 

2曲目は、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)。

 

この曲は Ben E. King(ベン・E・キング)と The Drifters(ザ・ドリフターズ)へのオマージュになっています。
ソウルシンガーと、コーラスグループへのオマージュということですが、僕はそこまでオールディーズに詳しくはないので、どの辺がリスペクトされてるのかは定かではありません。
強いて言えば、ベースメインのイントロがベン・E・キングの代表曲スタンド・バイ・ミーに似てるぐらいしか気がつきませんでした。

 

オマージュはさておき、これもいい曲ですね。
とても静かなスタートですが、サビの盛り上がりとの強弱のつけ方がとてもいいです。
静かな部分もメロディがいいので、決してダレませんし、サビも、メロディアスでビリーが力強く歌い上げて気持ちよく盛り上がります。
暴れた感じのイージーマネーからまさかのソフトタッチの名曲で、意表を付かれます。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第10位、同誌Adult ContemporaryチャートでNo.1を獲得しています。

 

3曲目は、THE LONGEST TIME(ロンゲスト・タイム)。

 

この曲は、The Tymes(ザ・タイムス)のようなドゥーワップグループへのオマージュとなっています。
もう、僕はザ・タイムスなんて聞いた事がありません。
まあ、この曲がそうであるように、ア・カペラなどが得意なソウルグループなんでしょう、おそらく。

 

リスペクト先がわからなくても、この曲の良さは僕にもわかりますね。
この曲では使われている楽器はベース音と、スネアドラムをブラシでこすって出す音のみのようです。
あとは、完全なア・カペラということですが、何と、全部ビリーが一人で歌ってるものみたいですね。
メインメロディはもちろんのこと、超低音部から、超高音部までビリーが歌ったものを多重録音しています。
ついでにいえば、ハンドクラップやフィンガースナップ(いわゆる指パッチン)も全部ビリーによるものです。
何とも多彩な人だなぁと感じさせられますね。

 

その上、歌のメロディが優れてますね。
昔からある懐かしい感じだけども、メロディはオリジナル、というビリーならでの素晴らしいオマージュになっています。

 

この曲は4thシングルとしてカットされ、シングルチャート第14位、Adult ContemporaryチャートではNo.1を記録しています。

 

4曲目は、THIS NIGHT(今宵はフォーエバー )。

 

この曲は、Little Anthony and the Imperialsリトルアンソニー&ジ・インペリアルズ)というアメリカのソウルヴォーカルグループへのオマージュとなってます。
これまたもはや、聞いた事も見た事もないバンドですが、やはりドゥーワップやR&B系のヴォーカルグループのようです。

 

そして、サビの部分はベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第8番ハ短調「悲愴」の第2楽章のあの有名なメロディを使用しています。
なので、作曲者のクレジットでは、ビリーの名と共にベートーヴェンの名が連ねられています。

 

これまた名曲となってますね。
前半は、ドゥーワップ全開のゆったりした中でのいい曲ですが、そこからサビのあの悲愴のメロディへとつながるところが秀逸です。
R&Bとピアノ・ソナタ、一見何の関係もなさそうな2者を見事に融合させて、素晴らしい曲に仕上がっています。
こんなアイディアとセンスはやはりビリーならではのものなのでしょう。

 

そしてまた歌い上げる彼のヴォーカルも上手く、聴き易く、ポップスのスタンダードになりうるポテンシャルのある良曲となっています。
中盤のサックスソロも、楽曲にぴったりですし、ア・カペラで終わるラストは、もう見事な美しさがあります。
楽曲は、スーパーモデルの一人、エル・マクファーソンとの関係について歌った曲のようです。
そりゃそんな美人さんと過ごせば、フォーエバーであって欲しいと思うことでしょう。

 

この曲はアメリカではシングルカットされてませんが、日本ではリリースされたので、良くラジオでかかっていたのを思い出せます。

 

5曲目は、TELL HER ABOUT IT(あの娘にアタック)。

 

この曲は、The Supremes(ザ・スプリームス)やThe Temptationsテンプテーションズ)といったモータウン系のグループへのオマージュとなっています。
ビートの感じ、ホーンの使い方、シンプルな裏拍でのギターカッティング、計算された美しいコーラス、まさにモータウンサウンドそのものですね。
このシンプルなアレンジとビートで、楽しい音楽を生み出す黒人アーティストのお家芸を、ビリーは見事に自分のモノにしてしまってます。

 

これぞポップス、とも言えるすばらしい名曲を80年代に再生産したと思います。
これ聴いて楽しい気持ちにならない人っているのでしょうか。
こんな普遍の、時代や国を超えた素晴らしいサウンドを生み出したオールディーズのアーティストへのリスペクトが強く感じられます。
敬意を込めて、新たな曲に生まれ変わらせたビリーの才能に脱帽です。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートNo.1、Adult ContemporaryチャートでもNo.1、Mainstream Rockチャートで第17位を記録しています。

 

6曲目は、UPTOWN GIRL(アップタウン・ガール)。

 

この曲は、Frankie Valli and The Four Seasons(フランキー・ヴァリ・アンド・フォー・シーズンズ)へのオマージュとなっています。
フォー・シーズンズは白人グループで、ブルー・アイド・ソウル( 元来は黒人のものであったR&Bやソウルミュージックを白人が取り入れ形成した白人の音楽を指す)の草分けとも言われています。
ビリーは彼らの特徴を忠実にこの曲において再現しているそうです。

 

まあ、もちろんこのグループも僕は知りませんでしたが、それでも、そうしたブルー・アイド・ソウルの雰囲気は十分に感じられますね。
やっぱり昔っぽいシンプルなサウンドの上で楽しげに歌うビリーのヴォーカルが素敵です。
そして、当然、メロディも秀逸で、ところどころに挟まれるWow wow wow…のメロディが非常にいいですね。
とにかく、これも過去のテンプレートをうまく生かして、現代風(80年代)に上手く蘇らせた名曲だと思います。

 

ちなみにこの曲は、最初はエル・マクファーソンに関しての歌でしたが、結局別れて、クリスティ・ブリンクリーと付き合うようになってからは、クリスティに関する歌になっていったそうです。
実際、PVでは、クリスティ・ブリンクリーがUPTOWN GIRL(山の手の高嶺の花)を演じてます。
そして、後に結婚するわけですから、楽曲で口説き落としたビリーの手腕は素晴らしいです。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第3位、Adult Contemporaryチャートでは第2位、Mainstream Rockチャートで第22位を記録しています。

 

7曲目は、CARELESS TALK(ケアレス・トーク)。

 

この曲は、 ソウル・シンガーのSam Cooke(サム・クック)へのオマージュとなっています。
オールディーズな感覚満載の楽曲ですね。
昔の曲も聴いたら悪くはありませんが、やはり音が悪かったりしてがっつり聴くまではいたらないことが多いです。
ですが、ビリーが蘇らせるこうしたオールディーズ曲は、当然のように音が良くて聴き易いです。

 

また、バックのサウンドもシンプルで、低音のヴォーカルによるベースも効いてておしゃれですね。
そして、しっかりと歌い上げるビリーのヴォーカルも素晴らしいです。
すごく昔っぽいのに、音の良い新曲といういいものを生み出してると思います。

 

8曲目は、CHRISTIE LEE(君はクリスティ)。

 

この曲は Little Richard(リトル・リチャード)と Jerry Lee Lewis(ジェリー・リー・ルイス)へのオマージュとなっています。
まさに、彼らのオールドロックンロールの雰囲気が息づいた、ノリのいい曲です。

 

軽快なエイトビートに、8分のリズムで入るピアノの軽快な音が古かっこいいです。
ロックンロールの初期の雰囲気をたっぷり吹き込んでいます。
途中に入る軽快なサックスもいい感じで盛り上げてます。

 

僕みたいに、50年代や60年代の音楽をあまり知らない人に、当時の魅力を教えてくれるいい曲だと思います。

 

9曲目は、LEAVE A TENDER MOMENT ALONE(夜空のモーメント)。

 

この曲は、 Smokey Robinson(スモーキー・ロビンソン)へのオマージュです。

 

イントロや途中で聞こえる優しいハーモニカが、懐かしい雰囲気をかもし出してます。
そしてビリーのヴォーカルの、特に美しいファルセット部分で、スモーキーの雰囲気が感じられます。

 

これも名曲ですね。
シンプルな演奏に、ビリーの作り出すメロディアスな歌メロが本当に良く映えます。

 

この曲は5thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第27位、Adult Contemporaryチャートでは2週連続No.1を獲得しています。

 

アルバムラスト10曲目は、KEEPING THE FAITH(キーピン・ザ・フェイス)。

 

この曲は、Pre-British Invasion Rock n Roll(イギリスからの音楽的な侵略が来る前のロックンロール)へのオマージュとなっています。
やはりビートルズを初め、多くのブリティッシュアーティストが、入れ替わり立ち代りアメリカ市場に乗り込んできましたが、そうなる前の、アメリカ独自のポピュラー音楽で育ったビリーはそこに思いを馳せているようです。

 

ですが、歌詞では古きよきアメリカでのグッズに身をまといながらも、未来も言うほど悪くない、とも述べています。
結局、感傷的に振り返ってばかりではなく、明日へ進んでいかなきゃならない、っていうメッセージが込められているようです。
このアルバム全体を通して過去の自分の青春時代の音楽、古きよきアメリカのポピュラー音楽に目を向けました。
しかし、そこでとどまるのではなく、ビリーはそれをうまく活用して、新たな作品を生み出しました。
そうやって、過去も無駄にすることなく、前へ進んでいくべきだ、と言っているように感じられます。

 

そんな信念を保つこと(KEEPING THE FAITH)がラストの曲となって、ちゃんとオチがついてるように感じられて、とてもいいです。
曲自体もポップで、いつもどおりメロディが良く、ビリーは歌が上手い。
もう、ポップソングとしての高いクオリティを保っていると思います。

 

この曲は6thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第18位、Adult Contemporaryチャートでは第3位を記録しています。

 

最後までポップで上質な楽曲でアルバムは幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1983年リリースの、BILLY JOEL(ビリー・ジョエル)の9thアルバム、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン)は、ビルボード誌アルバムチャートで第4位、アメリカでの売り上げは700万枚に達する大ヒットとなりました。

 

前作の8thアルバム、The Nylon Curtain(ナイロン・カーテン)がアメリカで200万枚と、ちょっとセールスにかげりが見え始めたように感じられていましたが、見事にそんな心配を払拭する大ヒットアルバムとなりました。

 

今回はこれまでの作風とは違い、かなり明るい曲がアルバム全体に詰まっています。
その大きな原因は、やはり私生活の充実と言えるでしょう。
先妻と別れ、晴れて独身の身となったビリーはスーパーモデル二人と付き合います。
ロックスターとしての生活を謳歌できたわけです。
もともと精神的に病むこともあったビリーですが、この時期はまさにハイ状態だったのではないでしょうか。

 

それに加えて今作のコンセプトが、彼の青春時代のアメリカのポピュラーミュージック、ということで、そのころ流行った明るくて上質なポップスが材料となってました。
優れたアメリカンポップスという材料を使って、ハイなビリーが楽曲を作ると、なんとまあ、こんなに明るく楽しいアルバムになってしまった、というわけです。

 

また、今回のヒットは全曲オリジナルというところにもあると思われます。(ベートーヴェンのパートは除く)
こうした、原点を見つめなおす場合、当時の曲のカバー曲を集めリメイクしてアルバムとしてリリース、というのはよくあることです。
しかし、ビリーは当時の雰囲気を保ちながら、すべて新しく楽曲を作っています。
この辺にただの、ハイになったおっさんとの大きな違いが感じられます。

 

やはり、彼の優れたメロディメイカーとしての資質が、このアルバムの成功をもたらした大きな要因であることは間違いないでしょう。
またパクリではなくオマージュ、という点も十分に納得のいく作品となってます。
彼のオリジナリティは、十分に感じられるからです。
古き良きアメリカンミュージックを素材にした、最高のポップスがつまったのがこの作品と言えるでしょう。

 

このアルバムは、グラミー賞の最優秀アルバム賞にノミネートされてます。
また、アップタウン・ガールは最優秀男性ポップボーカルパフォーマンスにノミネートされてもいます。
結果的には、いずれもMICHAEL JACKSON(マイケル・ジャクソン)のTHRILLER(スリラー)にかっさらわれてしまってます。(前者はアルバム、後者はシングル)
まあ、この時期にマイケルは向かうところ敵なし状態でしたからね。
タイミングが悪かったとしか言いようがありません。

 

しかし、ノミネートされただけでも、このアルバムが高く評価されたことの表れと言えるのは間違いないでしょう。

 

ポップアルバムとしては、やはり80年代を代表する一枚ではないかと僕は思っています。
捨て曲など見当たらない、上質のポップスで満ちたこのアルバムは、80年代を語る上で欠かせない素晴らしいアルバムだと思います。

チャート、セールス資料

1983年リリース

アーティスト:BILLY JOEL(ビリー・ジョエル)

9thアルバム、AN INNOCENT MAN(イノセント・マン) ビルボード誌アルバムチャート第4位 アメリカで700万枚のセールス

1stシングル TELL HER ABOUT IT(あの娘にアタック) ビルボード誌シングルチャートNo.1、同誌Adult ContemporaryチャートNo.1、同誌Mainstream Rockチャート第17位

2ndシングル UPTOWN GIRL(アップタウン・ガール) シングルチャート第3位、Adult Contemporaryチャート第2位、Mainstream Rockチャート第22位

3rdシングル AN INNOCENT MAN(イノセント・マン) シングルチャート第10位、Adult ContemporaryチャートNo.1

4thシングル THE LONGEST TIME(ロンゲスト・タイム) シングルチャート第14位、Adult ContemporaryチャートNo.1

5thシングル LEAVE A TENDER MOMENT ALONE(夜空のモーメント) シングルチャート第27位、Adult Contemporaryチャート2週連続No.1

6thシングル KEEPING THE FAITH(キーピン・ザ・フェイス) シングルチャート第18位、Adult Contemporaryチャート第3位