なぜ売れなかったかわからない3rdアルバム TOTO - TURN BACK(ターン・バック)

よりハードでギターオリエンティッドなアルバムへ





1979年にリリースされたTOTOの2ndアルバム、HYDRA(ハイドラ)はビルボード誌アルバムチャートで第37位、アメリカで50万枚、世界でも200万枚と、ヒットしたデビュー作を大きく下回る成績に終わりました。

 

1stアルバムに比べると、プログレ要素が加わり、また、コンセプトアルバムとしての雰囲気がちょっとダークな感じもあり、そうしたことも売り上げに影響したのかもしれません。
また、シングルヒットも、“99”一曲という寂しい結果もやはりアルバムの売り上げを伸ばせなかった一因と言えるでしょう。

 

しかし、売れなかったとはいえ、アルバムの内容は決して悪いものではないと僕は思ってますし、結構このアルバムを評価する人たちも多数存在しています。
そんな中、TOTOは、ハイドラツアー終了後に、次のアルバムの制作に入ります。
前作のプログレ風味、もしくは深みのある渋い楽曲が、不振の原因と考えたのか、今回はよりシンプルでキャッチーな楽曲を揃えてきました。
また、シンセ中心のサウンドから、ギター中心の、よりハードな作品が目立つようになります。

 

では今日は、1981年リリースの、TOTOの3rdアルバム、TURN BACK(ターン・バック)をご紹介したいと思います。

TURN BACK(ターン・バック)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、GIFT WITH A GOLDEN GUN(ギフト・ウィズ・ア・ゴールデン・ガン)。

 

イントロはSteve Lukather(スティーヴ・ルカサー)の軽快なギターリフです。
そこに、Jeff Porcaro(ジェフ・ポーカロ)のドラムが、そして他の楽器が加わっていく様子は非常に爽快でかっこいいです。
音が全て加わった時点で、それはTOTOらしい、疾走感のある爽やかロックサウンドに仕上がってます。

 

この曲のリードヴォーカルはBobby Kimball(ボビー・キンボール)で、これまでどおりハイトーンヴォイスで爽やかに歌い上げてます。
加えて、他のメンバーたちによるコーラスも、とっても気持ちの良い爽やかさを与えてくれます。
曲の全体で、ちょっぴりハードなギタープレイが散りばめられており、ソロも軽快に奏であげてます。
このギターサウンドにピアノキーボードがうまくからまり、TOTOらしさ満載の爽快なポップロックソングになっています。

 

2曲目は、ENGLISH EYES(イングリッシュ・アイズ)。

 

イントロでは少しヘヴィ目のギターリフにより、リズムがずらされて、効果的なスタートになってます。
ギターのヘヴィさはあるものの、全体としては優れたポップソングに仕上がっています。
この曲でも、サビのコーラスにより、たいへんキャッチーな楽曲になっていますね。

 

そして中間部では、いったんそのノリが終わり、ベース音とドラムのハイハットのみの静かなパートに移ります。
そこに、軽快なキーボード、ギターのミュート音などが加わっていきます。
そして、シンセにより幻想的な雰囲気に変わると、またボビーの元気な力強いハイトーンをきっかけに再び良質なポップソングに戻ります。
この辺にささやかなプログレ的な展開が感じられますが、あまりくどくなく、聴き易い6分の曲になっています。

 

また、ラストのスティーヴ・ルカサーのギターソロが、かっこよく決まってます。
もうちょっとソロを聞いていたいと思いながらフェイドアウトしていきます。

 

3曲目は、LIVE FOR TODAY(リヴ・フォー・トゥデイ)。

 

ルカサー作曲のミディアムロックです。
ギターリフによるイントロから、ギター中心の心地よいロックサウンドが楽しめます。
ヴォーカルもルカサーが担当していて、ルカサー曲となっています。
非常に歌メロもメロディアスで、キャッチーな楽曲になっています。

 

ギターソロでは、転調して、とてもメロディアスなソロをルカサーが弾ききってます。
もう、後の多くのバンドがお手本としたのではないかと思える、典型的な80年代バンドサウンドになっていると思えます。
これも普通に楽しめる、良質のバンド曲だと思います。

 

A面ラストの4曲目は、A MILLION MILES AWAY(ミリオン・マイルズ・アウェイ)。

 

イントロで瞬間的に豪華なサウンドが聴けた後は、静かなバラードが始まります。
静かなベース音とピアノの音をバックに歌うボビーのヴォーカルは非常にいいですね。
そして、途中で加わるルカサーのギターオブリもかっこいいです。

 

サビでは一気に盛り上がり、かっこいいバンドサウンドに変化します。
そして、ルカサーのソロがそこに乗って心地よいです。

 

再び静かなバラードに戻り、この展開が繰り返されます。
やはりこうした曲を聴くと、TOTOのバンドとしての上手さが強く感じられます。
強弱のダイナミックスが感じられる、いいバラードだと思います。

 

ただ、一つ個人的に言わせてもらえば、強弱のつけ方がちょっと幅が大きすぎるかな、って思います。
ステレオに向かって聴くときはいいのですが、カーステレオなどで聴くと、弱の部分が音量が小さくて聞こえにくく、それでヴォリュームをあげるとサビの盛り上がりでは、非常にうるさくなってしまうのです。
なので、強弱の差をもう少し狭めてもらえると、もっと聴き易かったな、と感じてます。

 

でも、サビの爆発的な盛り上がりを表現する、という点では確かに効果的で、いい楽曲になっているとは思います。

 

B面1曲目の5曲目は、GOODBYE ELENORE(グッドバイ・エリノア)。

 

ドラムの連打のフェイドインで始まるこの曲は、勢いあふれるロックソングです。
3連の高速のビートを刻むジェフのドラムが、たまらない疾走感を演出しています。
また、それに絡むルカサーのギターリフがアーミングを交えてかっこよく楽曲を彩ってます。

 

歌メロはあくまでキャッチーで、ボビーのハイトーンと、メンバーのコーラスがミックスされて、とっても聞いて楽しめる楽曲になっています。
加えて、ルカサーの、高速ブリッジがところどころで挿入され、とてもクールな楽曲に仕上がってます。
また途中のギターとキーボードシンセ類のユニゾンプレイが、やはり彼らがテクニシャンの集まりだな、と感じさせてくれます。
ギターソロでも、ルカサーはしっかり弾きまくって、存在感を示しています。

 

で、この曲はシングルとしてカットされますが、ビルボード誌シングルチャートで107位、とトップ100を逃してしまいます。
こんなに元気で明るく、勢いのある曲が、なんでこんなに評価が低いのか、意味がわかりません

 

6曲目は、I THINK I COULD STAND YOU FOREVER(スタンド・ユー・フォーエヴァー)。

 

アコギのストロークに乗ったアコースティックなバラードスタイルで始まります。
このアコギはベースのDavid Hungate(デヴィッド・ハンゲイト)が弾いてます。
柔らかな楽曲に、突然、切れのあるエレキギターが割り込みます。
後のB’zReal Thing Shakesのイントロに大きく影響を与えてる気がしますね。

 

しかし、そのリフのあとに展開される曲は軽快なロックになっています。
サビメロもキャッチーでとても良いです。
また、ルカサーのギターソロもたっぷりとメロディアスに奏であげています。
ルカサーはリードヴォーカルも担当してます。
そして、ラストでもルカサーの弾きまくるソロプレイが光ってます。
駆け上がるシンセプレイのあと、次の曲へと続きます。

 

7曲目は、TURN BACK(ターン・バック)。

 

アルバムのタイトルトラックにもなっているこの曲は、かなり気合の入った曲になっています。
前作のプログレ感を感じられる、シンセのイントロとエレキのコーラスが、何かの始まる予感を与えるイントロとなっています。

 

少しダークな雰囲気の中で、ボビーの歌い上げる歌メロが切ないです。
自慢のハイトーンが、さらに伸びやかに曲を彩ってます。
タイトルコールの裏のルカサーのヘヴィリフも光ります。
また、ルカサーのソロもいい感じで曲を盛り上げてます。
前作であれば、結構な長尺な曲になったのでは、と思われますが、ここでは4分ほどで、ラストの曲へ。

 

アルバムラスト、8曲目は、IF IT’S THE LAST NIGHT(ラスト・ナイト)。

 

ラストは完全なバラードで締めくくられます。
リードヴォーカルはルカサーです。
やはり、この曲は歌メロが美しいですね。
そして、いつものようにサビでのメンバーのコーラスも非常に美しいです。

 

ルカサーのギターソロはほとんど歪ませないクリーンなもので、またいつもとは違う魅力があふれてます。

 

非常にいい曲で、シングルとしてもカットされたようですが、チャートインしてません。

まとめとおすすめポイント

1981年リリースの、TOTOの3rdアルバム、TURN BACK(ターン・バック)は、ビルボード誌アルバムチャートで第41位と、前作をさらに下回ってしまいました。
売り上げは、アメリカでゴールドディスク(50万枚セールス)を逃すなど奮わず、全世界でわずか100万枚のセールスとなり、デビュー時の勢いは全く失われてしまったのです。

 

今回はシングルヒットもほぼ生み出すことができませんでした。

 

ですが、僕は、非常に好きなアルバムであり、良曲が満ちている、優れた作品と感じています。
この失速の原因が何だったのか、いまひとつよくわかりません。

 

作品の色からすると、今回はルカサーのギターがフィーチャーされた、比較的ハードな作りの作品になっていると感じられます。
前の2作品より、シンセなどが減り、むしろギターが強く楽曲を彩っているようです。
1978年にVAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)がデビューして始まった、HM/HRの世界でのギターヒーローが続々登場している時代です。
そうした、ちょっとハードな路線にTOTOも合わせてきたのかもしれません。
確かにルカサーは、エディに対抗できるくらいの腕前があるようにも感じられます。
ただ、それがTOTOに合っていたか、というとちょっと浮いていたのかもしれません。

 

もちろん、デビュー曲で、大ヒット曲のHOLD THE LINE(ホールド・ザ・ライン)でのルカサーのギターリフは非常にかっこよく優れていました。
しかし、楽曲に味わいを増す程度の使用だった感じで、基本的にはAORサウンドが彼らの一番の魅力だったのかもしれません。
今回は、AORを飛び越えて、ハードな路線に振ったためにTOTOに求められる音楽性を逸脱してしまったため、売り上げが伸びなかったとも考えられます。

 

しかし、アルバムをよくよく聴いてみると、後に似たようなサウンドのバンドであふれていったのを思い出すことができます。
となると、結論として言えるのは、1981年には、彼らのサウンドは早すぎた、ということではないでしょうか。
時代が彼らに追いつくのは、次作の大ヒットアルバム、TOTO IV(邦題:TOTO IV〜聖なる剣〜)ということになるわけです。
まだ、彼らの良さが正しく評価されなかった時代に生み出された不遇のアルバムとも言えるかもしれません。

 

しかし、一つだけ、彼らの魅力に気付き、しっかりと評価していた国があります。
そうです、われらが日本です。
日本のみ、このアルバム、ターン・バックはゴールドディスク(10万枚)を記録する大ヒットとなっていたのです。
今でも、この不遇のアルバムを高く評価する声は、ネット内でも多く見受けることができます。

 

僕は何度も言ってますが、5thアルバム、ISOLATION(アイソレーション)からTOTOに入った者ですので、このハード路線はむしろ歓迎しています。
アイソレーションを好きな人は、きっとこのアルバムも気に入るに違いありません。
しかし、世の大勢は、1stや4thのあのTOTOのサウンドを好んでいるようです。
もはや、好みの問題になると、何も言えなくなってしまいます。

 

で、結論として僕個人としての意見を述べるにとどまりますが、売れなくたって、このアルバムはかっこいい良い曲であふれてます。
マイノリティの意見として、声を大にして語りたいです。

チャート、セールス資料

1981年リリース

アーティスト:TOTO

3rdアルバム、TURN BACK(ターン・バック)

ビルボード誌アルバムチャート第41位 世界で100万枚

1stシングル GOODBYE ELENORE(グッドバイ・エリノア) ビルボード誌シングルチャート第107位

2ndシングル IF IT’S THE LAST NIGHT(ラスト・ナイト) シングルチャート圏外