切ない系ハードロックバンドのデビュー作 WHITE LION - FIGHT TO SURVIVE(華麗なる反逆)

WHITE LION(ホワイト・ライオン)大ヒット2ndアルバムからデビュー作へさかのぼります





1987年リリースのWHITE LION(ホワイト・ライオン)の2ndアルバム、PRIDE(プライド)はとっても気に入っていて、かなり聞き込んだ覚えがあります。
やはりヴォーカルのMike Tramp(マイク・トランプ)の枯れた切ない声、そしてギタリストのVito Bratta(ヴィト・ブラッタ)のエディ・ヴァン・ヘイレンを思わせるテクニカルなギターフレーズの融合が、たまらなくかっこよかったのです。

 

ジャンル的にはグラム・メタル、ヘア・メタルに属すると思われますが、当時の多くのそんなバンドの中では北欧風な感じのある、ちょいシリアスなイメージがあります。
恐らく、ヴォーカルでありリーダーのマイクがデンマーク人だということがあるのでしょう。
アメリカンハードロックに、北欧風のエッセンスが加わって、非常に僕好みのサウンドを聞かせてくれたアルバムでした。

 

となると、やはりデビュー作も気になってしまうものです。
1985年に、1stアルバムはリリースされています。
ほとんどヒットはしなかったのですが、そこでは、すでに彼らの音楽性が確立されていたことがはっきりと聴けます。
北欧の雰囲気が感じられる、メロディアスハードロックとしてかなりなクオリティだと思います。
多少荒削りではありますが、かなりな良曲ぞろいで、これまた愛聴盤の一つとなってしまいました。

 

では今日は、1985年リリースの、WHITE LION(ホワイト・ライオン)の1stアルバム、FIGHT TO SURVIVE(華麗なる反逆)をご紹介したいと思います。

FIGHT TO SURVIVE(華麗なる反逆)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、BROKEN HEART(ブロークン・ハート)。

 

イントロのアルペジオから、寒い北欧のイメージを持つのは僕だけでしょうか。
そしてその演奏をバックに歌い始めるマイク。
彼の声は、とっても切なく聴こえます。
声を張り上げるところでは、たまらない哀愁が感じられます。

 

この曲はバラードっぽく始まりますが、途中からギターの激しいリフやドラムのビートが入ってきて、いい感じのメロディアスロックに変わります。
ギターソロはヴィトがメロディアスなプレイを丁寧に奏でてます。
彼は、後にエディ・ヴァン・ヘイレンからの影響について語っており、ここでもエディのようなタッピングを交えたプレイを披露しています。
この曲は後にリメイクされることになりますが、やはりオリジナルの方が遥かに良いと僕は思っています。

 

この曲は彼らのデビューシングルとしてリリースされましたがチャートインはしていません。

 

2曲目は、CHEROKEE(勇者チェロキー)。

 

イントロのメロディアスなギタープレイがかっこいいミドルテンポの楽曲です。
ちょっと爽やかな感じもあり、哀愁もあるという、絶妙に気持ちの良いハードロックです。
歌メロが、やはり切ないです。
また、全編でヴィトのギターリフがかっこよく響き渡ってます。

 

サビはキャッチーで爽やか系です。
メロディのセンスが抜群だと思います。
80年代のポップハードロックの基本のような楽曲です。
ギターソロでは、やはりタッピング交じりでの速弾きが聴けます。
ソロラストでは流れるような速弾きでビシっときめてくれます。

 

3曲目は、FIGHT TO SURVIVE(ファイト・トゥ・サヴァイヴ)。

 

イントロは思いっきりタッピングの速弾きです。
そしてどっしりと始まるタイトルトラックです。

 

Aメロはマイクが切なく歌っていく哀愁たっぷりの歌メロです。
途中からはヴィトのエレキがエディのように各地で踊りまわってます。
きらびやかなギタープレイがヴァン・ヘイレン並にかっこよいです。

 

サビの哀愁ただようヴォーカルと、その裏で聴こえるギタープレイがたまらなくかっこよいです。
ギターソロでは、メロディアスに奏であげてます。
ヴィトのセンスは非常に好ましいです。
途中で入るオブリもこれがデビューアルバムとは思えないいいプレイです。

 

4曲目は、WHERE DO WE RUN(逃れなき街)。

 

80年代ハードロックらしいリフで始まるミドルテンポの楽曲です。
キャッチーな歌メロに絡むギタープレイが曲を飾り立ててます。
サビも、切ないメロディを歌い上げてます。

 

ギターソロはタッピングスタートです。
その後、多くのアーミングを交えながら、メロディアスに奏であげてます。
なかなかよくできた優秀ソロだと思います。
ラストでの転調とそれに伴うギターソロプレイがかっこよく、もうちょっと長く聴いていたかったです。

 

5曲目は、IN THE CITY(摩天楼の叫び)。

 

夜の街の雰囲気たっぷりのアダルトなスローハードロックです。
ベースラインもしっかりと聴こえるところがとてもいいです。
これまた、哀愁たっぷりに歌い上げるマイクのヴォーカルが際立ってます。
サビの歌メロにかぶさるコーラスが非常にいい感じです。

 

そして、中間部で曲調が激変します。
激しい切り裂くようなギターリフを境に、高速ロックへと変貌です。
その激しいビートの上で、ヴィトが思いっきりギターソロを披露します。
アーミングを使っての激しいプレイから、タッピングも交えて荒々しく弾きまくります。

 

ひとしきりのソロタイムが終わってから、最初のテンポに戻って切なく楽曲は終了。
なかなか展開の楽しめる、面白い曲になっています。

 

6曲目は、ALL THE FALLEN MEN(すべての英雄(ヒーロー)たちへ)。

 

ギターリフがかっこいいイントロで始まる、ミドルテンポのハードロックです。
B面1曲目はちょっとダークなハードロックになっています。

 

サビでは少し明るめなメロディになっているのが、いい感じです。
明るいといってもマイクの声で哀愁味はしっかり残ってます。

 

ダークなギターリフから始まるソロも、いいです。
やはりエディっぽいですが、決してパクリではなくヴィトらしいセンスのいいソロになっております。
ラストのサビの連呼もちょっと工夫があって、とてもかっこよいです。

 

7曲目は、ALL BURN IN HELL(オール・バーン・イン・ヘル)。

 

この曲もダークなイメージで、ギターリフも激しく貫かれてます。
ヘヴィなリフも、とてもカラフルで楽曲を邪悪に彩ってます。

 

サビはコーラスも交えて気持ちよい感じで歌い上げられてます。
ギターソロも、決して速弾きではありませんが、アーミングやピッキングハーモニクス、ミュートなどを交えてメロディアスなプレイを披露しています。

 

8曲目は、KID OF 1000 FACES(千の顔を持つ男)。

 

ドラムソロから始まり、そこにヘヴィなギターリフが加わるかっこいいイントロです。
意外にも、Aメロはちょっとメジャーキーの爽やかさがあります。
しかし、Bメロはダークに戻り、ハードなロックが聴けます。
サビはちょい明るめ、と結構転調の激しい楽曲になってます。

 

ギターソロはワイルドに奏であげられてます。
ラストは、ドラムと競演してかっこいいエンディングになってます。

 

9曲目は、EL SALVADOR(エル・サルバドルの悲劇)。

 

スパニッシュなアコギとそれを追いかけるエレキの速弾き
とても面白いイントロになってます。
追っかけるエレキは、単にメロディを追うだけでなく、タッピングを交えたりして非常に聴いてて楽しいイントロになってます。
ヴィトの上手さがさらに際立つイントロプレイです。

 

そして楽曲はイントロに続いて高速のかっこいいハードロックへ変貌を遂げます。
高速3連のリズムの曲って、大抵かっこいいですが、これも例外ではありません。
3連のギターリフが、非常にきまってます。

 

また歌メロも飽くまでキャッチーで、爽快感が感じられます。
ギターソロもたっぷり取られていて、激しく弾きまくってます。
その裏で聴こえる男性コーラスの合唱が一層楽曲に重みを加えてます。

 

非常に展開のおもしろい、一聴の価値ありのハードロックとなっています。

 

ラスト10曲目は、THE ROAD TO VALHALLA(ヴァルハラへの道)。

 

イントロでは、王宮の楽隊で聴けるような荘厳なホルンなどのサウンドで始まります。
なんかロールプレイングゲームのエンディングのような感じです。
ヴァルハラとは、北欧神話における主神オーディンの宮殿のことです。
そんな雰囲気が感じられるイントロとなってます。

 

そしてピアノをバックに壮大なバラードが始まっていきます。
マイクの枯れた切ない感じのヴォーカルが、ヴァルハラに思いを馳せる雰囲気にぴったりです。
彼の声も賛否両論ありますが、僕は結構気に入ってます。
普通に歌うだけで哀愁が漂うヴォーカルって希少でしょう。

 

後半にはヴィトのエレキが加わり盛り上がっていきます。
ドラムとベースのリズム隊が加わってから、さらにマイクのヴォーカルが力強く歌い上げます。
ギターソロも、楽曲にふさわしいメロディアスなものになっています。
最後はサビを繰り返していきますが、ふっ、と終わります

 

ここはちょっともったいなかったです。
せっかくドラマティックな盛り上がりを見せていたのですから、せめてもう少しサビを続けてフェイドアウトしてくれたほうが余韻が残ってよかったのでは、と思います。

 

こうして、ふっ、とアルバムは終わりを迎えます。

まとめとおすすめポイント

1985年リリースの、WHITE LION(ホワイト・ライオン)の1stアルバム、FIGHT TO SURVIVE(華麗なる反逆)はビルボード誌アルバムチャートで第151位に終わっています。
シングルヒットもなく、大量のハードロックバンドが生まれる中で、当時はそんなに目立つことはなかったようです。

 

その原因の一つは、2ndアルバムのPRIDE(プライド)の記事でも少し書いてますが、デビューアルバムが出るまでのごたごたが関係していたのかもしれません。
レコード会社が破産なんかしてるくらいなので、十分なプロモーションはできなかったに違いありません。
なので、ブレイクは2ndアルバムまで待つ必要がありました。

 

しかし、ヒットしなかったとはいえ、2ndアルバムに匹敵するクオリティがあったと僕は感じています。
グラム・メタル、というジャンルの基本は押えた上で、そこに北欧の雰囲気が加わることで、他との差別化が図られています。
また、マイクのヴォーカルは、哀愁たっぷりなので、その辺が北欧風、という点にさらにプラスになっているようです。
そしてヴィトのギターは、エディ・ヴァン・ヘイレンと近い、非常にセンスあるプレイを繰り出しています。
タッピングやアーミングを駆使して、メロディアスなプレイを多く披露しています。
彼のギタープレイが、アルバム全体を優れたハードロックアルバムにするのに大きく貢献している気がします。

 

もちろん2ndアルバムはさらにクオリティをあげて、実際に大ヒットしたわけですが、この1stアルバムも負けず劣らずの優れた作品だと思います。
一つ言わせてもらえば、アルバムタイトルを含め、ほとんどの邦題がイマイチです。
それ以外、文句ない優れたアルバムです。

 

本来なら大ヒットしてもおかしくなかった、優れた北欧風ハードロックアルバム、これも聴いておきたいアルバムだと思います。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:WHITE LION(ホワイト・ライオン)

1stアルバム、FIGHT TO SURVIVE(華麗なる反逆)

ビルボード誌アルバムチャート第151位

1stシングル BROKEN HEART(ブロークン・ハート) チャート圏外