西ドイツ発のニューウェイヴバンドが世界を席捲 NENA - NENA(プラスティック・ドリームス)

ドイツからいきなり世界へ大ブレイク





1983年、僕が洋楽を聴き始めた頃、ドイツ人アーティストがビルボード誌やキャッシュボックス誌のチャートに入ってくる、というのは希少なことでした。
そんな中でも、唯一知っていたドイツのアーティストと言えば、Puttin’ On The Ritz踊るリッツの夜)のTACO(タコ)くらいだった、と思って今回検索してみると、彼は当時ドイツ在住のオランダ人だったことが判明しました。

 

なので、ドイツ人アーティストなんて、全く接する機会がなかった僕の前に、彗星のように彼女は現われたのです。
彼女の名前はNENA KERNER(ネーナ・ケルナー)、NENA(バンド)のヴォーカルとして一躍時の人に。
そのかわいらしい容貌と、舌足らずな感じのかわいらしい声
たちまち僕は、その魅力に取り付かれたのでした。

NENA(ネーナ)とは

ヴォーカルの女の子、ネーナ・ケルナーは西ドイツ出身で、本名は、Gabriele Susanne Kerner(ガブリエレ・ズザンネ・ケルナー)といいます。
ネーナ、というのはスペインのカタロニア語で、”little girl”を意味する愛称のようです。
ネーナは高校卒業前に退学し、数年間、金細工職人としての訓練を受けていたそうです。

 

彼女の音楽のキャリアは、高校退学後2,3年後から始まります。
ちょうど、ギタリストの Rainer Kitzmann(ライナー・キッツマン)が The Stripes(ザ・ストライプス)を結成しましたが、ディスコで知り合ったネーナをバンドのヴォーカルとして誘ったのです。
このバンドでは、英語の歌詞の歌を歌っていました。
ザ・ストライプスは5曲のシングルと、一枚のアルバムをリリースしますが、大きなヒットに結びつきません。
で、結局そのまま解散してしまいます。

 

ところが、ザ・ストライプスのレコード会社はネーナに、ベルリンに移ってドイツ語の歌を作るという契約を申し出ます。
やっぱり、魅力があふれていたに違いありません。
会社はそれを見逃しませんでした。
それで、1982年、バンドのドラマーで、当時の恋人だったRolf Brendel(ロルフ・ブレンデル)と共に西ベルリンへ移ります。
ベルリンでは、ギタリストの Carlo Karges(カルロ・カルゲス)、キーボードの Uwe Fahrenkrog-Petersen(ウヴェ・ファーレンクローク=ペーターゼン)そして、ベースの Jürgen Dehmel(ユルゲン・デーメル)と出会い、ついにネーナを結成するのです。

 

ネーナとして1982年にはデビューシングルがリリースされます。
Nur geträumt(後の邦題:夢を見ただけ)と題されたシングルは、テレビのショーなどの出演もありヒット。
ドイツのチャートで第2位を獲得するという、幸先のいいスタートとなりました。

 

そして翌1983年には1stアルバム、NENA(後の邦題:プラスティック・ドリームス)をリリース。
その中からのシングル、99 LUFTBALLONS(後の邦題:ロックバルーンは99)が大ヒット。
ドイツのチャートでNo.1になっただけでなく、世界にその人気が飛び火していきます。
こうして世界中を巻き込んだネーナ旋風が巻き起こったのでした。

 

当時、NHKの夕方の情報番組でも取り上げられていたのが思い出されます。
とにかくドイツ発で世界的なヒットとなったのは、とても希少だったわけです。
PVも、MTVを初めとしていろんなところでかかりまくっていました。

 

そして日本でも遅れてアルバムがリリース。
僕は、ダビングハウス、と言われるお店でカセットテープに録音してもらい、アルバムを聴きまくることになったのでした。

 

では今日は、1983年リリース(日本では1984年)のNENA(ネーナ)のデビューアルバム、NENA(邦題:プラスティック・ドリームス)をご紹介したいと思います。

NENA(邦題:プラスティック・ドリームス)の楽曲紹介

ここでは僕の聴いた当時の日本盤の曲順でご紹介したいと思います。

 

オープニングを飾るのは、99 LUFTBALLONS(ロックバルーンは99)。

 

オリジナルではA面ラスト6曲目に収録されていますが、日本ではトップに配置されてます。
もう、この曲がたまらなくかっこよかったです。
ネーナのあどけなさの残る舌足らずなヴォーカルが、デジタルっぽいビートのロックサウンドと融合して斬新な印象を持ちました。

 

シンセサウンドがとても新鮮で、とてもデビュー作とは思えないいい曲になっています。
シンセのふわーっとした雰囲気の中でネーナが、舌足らずに、甘ったるく歌い上げます。
そして、ドラム、ベース、シンセ、エレキが加わってゆったりビートを刻み始め、ドラムの連打と共に一気に疾走感あるエイトビートのAメロへ突入します。

 

この軽快でノリのいい楽曲に乗せて歌い上げるネーナのヴォーカルがとっても気持ちいいです。
ドイツ語なので、ほぼ聞き取れるところと言えばタイトルぐらいですが、全然気にならずに曲を楽しめます。
いったん疾走が終わり、ゆったりビートになってから再びドラムの連打で高速ビートに戻る構成なんかたまりませんね。
80年代らしい、素晴らしいポップスのスタンダードが、何とドイツ語で登場したのです。

 

非常に明るくポップなロックンロールですが、歌詞は反戦歌になっており、メッセージ性の強いものとなっています。
日本人の僕にはそんな内容は伝わらず、ただただ80年代を代表する洋楽の代表曲の一つとして強烈な印象を受けることができました。

 

この曲は、ドイツのチャートでNo.1を取っただけにとどまらず、世界各地で大ヒットを記録しています。
そのきっかけとなったのが、この曲を偶然聞いたカリフォルニア州のDJの耳にとまって、ラジオで大量にオンエアされたことになるでしょう。
それによってアメリカ西海岸から全米に飛び火して、ついにはドイツ語でありながら、ビルボード誌シングルチャートで第2位まで上り詰めます。
(No.1を阻んだのは、VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)のJUMP(ジャンプ)でした。)

 

結局、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、日本、オランダ、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、などの国でNo.1を獲得する大ヒットになっています。
そして、後に英語の歌詞に訳されて数カ国でリリースされます。
そっちのタイトルは 99 Red Balloonsとなり、イギリス、アイルランド、カナダでNo.1を獲得しています。
ただ、その英訳は直訳ではなく、詩的に訳されてしまったため、本人たちはあまり内容に満足はしなかったようです。
結果として、30年以上の500回ほどのコンサートで、一度も英語ヴァージョンは披露しなかったようです。

 

いずれにしても、世界中で大ヒットしたこの曲は、80年代を代表する一曲であることに間違いはないでしょう。
名曲の一つに数え上げておきたいと思います。

 

2曲目は、オリジナルではオープニングを飾っている、KINO(魅惑のシネマハウス)。

 

これはシンセがキラキラしててとってもかわいい曲です。
シンセポップ、と言われるだけあって、シンセの使い方が絶妙ですね。
サビもキャッチーで、ドイツ語がわからなくてもとっても楽しい気分にしてくれるいいオープニングになっています。

 

3曲目は、INDIANER(インディアーナ)。

 

インディアンの儀式を思わせるドラムのイントロがおもしろいです。
また、ベースが効いてるのと、シンセが不思議な雰囲気を生み出していてこれはなかなか面白い曲です。
中間部のコーラスなんかは、彼女らのインディアンのイメージがこんなんなのだろうな、と思えて興味深いです。

 

面白い曲ですし、ポップスとしてもいい感じで成立してて結構好きでしたね。

 

4曲目は、VOLLMOND(満月と魔法)。

 

ちょっとアダルティな雰囲気のある、穏やかな優しい曲です。
イントロで聞こえる、ネーナのあくびのような声がとてもかわいいです。
イントロで聴けるアルペジオもきれいで、とってもいい雰囲気を出してます。

 

ギターソロも、クリーントーンでやさしく奏でられてます。
この曲はやはりネーナの気だるいヴォーカルがとっても魅力的に思えます。
コーラスの彼女もいい感じでハモってていいです。

 

5曲目は、NUR GETRäUMT(夢を見ただけ)。

 

ネーナのデビューシングルです。
若さいっぱい、元気いっぱいのノリのいい曲ですね。
まさにシンセポップな楽しい楽曲です。

 

映像でも、飛び跳ねながら歌うネーナの健康的な様子がうかがえます。
軽快で、踊れて、聴いて楽しい、とっても素敵なデビュー曲だと思います。

 

この曲が Musikladen というドイツの人気テレビ番組で演奏されてから人気が急上昇。
ドイツのチャートで7週連続で第2位を獲得しています。
そのときNo.1を阻んだのが、F. R. David(F.R. デイヴィッド)のWords(ワーズ)とのこと。
この超名曲にはかなわなかったのは仕方ないでしょう。

 

6曲目は、TANZ AUF DEM VULKAN(天使達のダンス)。

 

イントロでは、いろんな音が飛び交って不思議な雰囲気をかもし出してます。
ちょっと暗めの雰囲気の楽曲ですが、サビはしっかりキャッチーになっており、いい曲になってます。
AメロBメロと、サビのエイトビートとの差がおもしろい構成になっています。
ちょっとSFチックなポップナンバーです。

 

7曲目は、ZAUBERTRICK(プラスティック・ファンタスティック)。

 

B面の1曲目になるこの曲は、どっしりとした楽曲に乗せて、ネーナが歌い上げる、これまたいい曲です。
アルバムの邦題はこの曲の内容から取られているようです。

 

ネーナのヴォーカルが1番目立ちますが、バックの演奏陣も決して悪くないです。
ドラムもベースも、ギターもシンセも、しっかりと仕事してます。
ただのポップス、とくくるには惜しい、しっかりとしたバンドサウンドが聴けるのもネーナの魅力だと僕は思っています。

 

サビ裏のシンセがとっても気持ちいい音で、アウトロでもたっぷりと聴けます。
ラストは、ドラムの連打と、ネーナの笑い声
とってもキュートです。

 

8曲目は、EINMAL IST KEINMAL(未知の国へ)。

 

これも、シンセが曲の背景をたっぷりと飾っています。
ちょっと大人な楽曲を、ネーナがまた気だるく歌ってます。
シンセの高低差の音変化がいい味わいを生み出しています。

 

9曲目は、LEUCHTTURM(水平線が知っている)。

 

これまた、いい曲です。
静かにネーナが歌い始めます。
バスドラがリズムを刻み始め、そしてギターや他の楽器も加わって、軽快なエイトビートの楽曲へと成長していきます

 

印象的なのはやはりサビの“アーアアー”のパートでしょう。
一度聴いたら忘れられない、心地よくキャッチーなメロディです。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、ドイツのチャートで第2位を記録しています。

 

10曲目は、ICH BLEIB’ IM BETT(ベットが好き)。

 

これも、ちょっとレゲエタッチのアダルティなポップスです。
珍しく、他の男子メンバーたちのコーラスが加わって、曲を盛り上げています。
キーボードプレイが結構フィーチャーされてて、かわいい楽曲でもあります。

 

11曲目は、NOCH EINMAL(最後の電話)。

 

ギターリフから始まる、ちょっとハードなロックソングです。
シンセ中心のアルバムの中では異彩を放つかっこいい楽曲です。
ネーナもちょっと気張って歌い上げてますね。

 

シンセソロも、ちょっと派手にやっちゃって盛り上げてます。
でも基本はシンセポップです。
最後は、ネーナのため息が色っぽいです。

 

アルバムラスト12曲目は、SATELLITENSTADT(流星都市)。

 

これも少し雰囲気が怪しく始まります。
SFチックな楽曲です。
珍しくエレキギターのソロメロディも聞こえて来ます。
シンセが、近未来っぽい雰囲気を醸しだしています。

 

流星都市、という近未来の雰囲気を彼女ららしく生み出してアルバムは終わります。

まとめとおすすめポイント

1983年リリース(日本では1984年)のNENA(ネーナ)のデビューアルバム、NENA(邦題:プラスティック・ドリームス)は本国ドイツやオーストリアでNo.1を獲得しました。

 

ネーナの音楽性は、Neue Deutsche Welle (読み:ノイエ・ドイチェ・ヴェレ)の一部と言われています。
これは英語で言えば、 “New German Wave“つまりドイツ語で歌われたニューウェイヴのことです。
まあ、厳密に共通のサウンドというものはないようですが、ネーナのドイツ語で歌われるシンセポップは、そのジャンルに属していた、というのが一般の理解のようです。

 

しかし、ノイエ・ドイチェ・ヴェレのムーヴメントに属しているバンドの中でネーナほど世界的にブレイクしたバンドはないでしょう。
やはり、アメリカの一人のDJによって広まった、そんなラッキーが生み出したミラクルだったと思われます。
でも、ラッキーとは言え、彼女らの音楽はとっても魅力にあふれていたのも間違いない事実だと思います。
キラキラしたシンセポップサウンドはまさに80年代初頭のサウンドそのものでしたから。
それに加えてヴォーカルのネーナの健康的でかわいいルックスとヴォーカルも、大ブレイクの大きな要因の一つと言えるはずです。
洋楽を聴き始めて間もなかった僕にとって、こんなに楽しく聴きこんだアルバムはそんなになかったと思います。

 

あと、この頃のネーナについて語るには、腋毛の話は避けて通れないかもしれません。
1984年のイギリスでのツアー中に、腋毛が剃られてないことについて、イギリスのタブロイド紙のヘッドラインを飾ることになってしまいました。
当時、大陸ヨーロッパ(イギリスなどの島国を除くヨーロッパ)ではこれは稀なことではありませんでしたが、その他の英語圏の国では普通ではないとみなされていたようです。
そのため、ネーナが「ロックバルーンは99」のみの一発屋になったのは、この腋毛のせいだという口の悪い人たちまで出たようです。

 

まあ、20代前半の子の腋毛にスポットライトを当てるなんて、タブロイド紙もえげつないですよね。
そのせいで、この話題は当時かなり広がってました。
結局、困惑したネーナはマネージャーのガールフレンドに剃ってもらったらしいです。

 

まあ、文化の差というものはどこでもあるものですが、こんな話題でさらされた20代前半の女の子がかわいそうではありますね。
でも、ノースリーヴで楽しそうに踊りながら歌うネーナは、とても健康的で無邪気で、魅力的でした。
何てったって、ドイツ圏から世界を席捲したのですから、胸を張って腋をさらし続けてもよかったかもですね。

 

2018年のいまや、男女平等を訴える多くのフェミニスト(女権拡張論者)たちが、その象徴の一つとして腋毛を剃らない、というのがよく見られます。
多くの有名女優やアーティストが、堂々と腋毛をさらしてたりもします。
ネーナはちょっと時代を先取りしすぎてしまったのかもしれませんね。

 

まあ、そんなこともありましたが、ネーナの1stアルバムは今でも、聴いたら楽しいポップアルバムです。
エイティーズサウンドのドイツ代表として、今でも君臨している、ナイスなアルバムだと思います。

チャート、セールス資料

1983年リリース

アーティスト:NENA(ネーナ)

1stアルバム NENA(邦題:プラスティック・ドリームス)

ドイツアルバムチャートNo.1  ドイツで50万枚のセールス

1stシングル NUR GETRäUMT(夢を見ただけ) ドイツのシングルチャート7週連続第2位

2ndシングル 99 LUFTBALLONS(ロックバルーンは99) ドイツのシングルチャートNo.1 ビルボード誌シングルチャート第2位

3rdシングル LEUCHTTURM(水平線が知っている) ドイツのシングルチャート第2位