ボノの魂の叫びとシンプルなバンドサウンド U2 - THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)
U2との出会い
1984年、1曲のPVと出会いました。
バンド名はU2、曲はPRIDE(IN THE NAME OF LOVE)(プライド)。
とてもシンプルなバンド構成なのでしたが、ジャキジャキと刻まれるギターの音色は、そのバンドサウンドに大きな厚みを加えていました。
それは、これまでに聴いたことのない独特な音で、非常に興味を惹かれたのです。
そして、また、ヴォーカルにも魅了されました。
魂を込めたそのヴォーカルは非常に力強く、訴えるものがありました。
友達に聞くと、U2はめちゃめちゃいい、と教えてくれ、カセットにそのときのアルバム、THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)を録音してくれした。
こうしてまた一つ新たなロックの一面を知ることになったのです。
U2とは
1976年、アイルランドの首都ダブリンにあるマウント・テンプル高校の掲示板に、ドラムをやっていたLarry Mullen, Jr.(ラリー・マレン・ジュニア)がバンドメンバー募集の張り紙を出しました。
Bono(ボノ)、Adam Clayton(アダム・クレイトン)、The Edge(ジ・エッジ)とその兄ディック・エヴァンスの4人が募集に応じ、5人でバンド活動を始めます。
その後ディック・エヴァンスが脱退。
1978年には残りの4人で、バンド名をU2とし、その活動を開始しました。
この4人は2017年現在の今まで一度も変更なく、解散もなくきているので、奇跡のバンドとも呼ばれていますね。
まったくこの4人が同じ高校に在籍していたというのもミラクルなのではないでしょうか。
こうして始まった4人によるバンドアンサンブルは世界的な成功へとつながっていくのでした。
バンドとしてのデビューは1980年、アルバムBOY(ボーイ)からです。
Steve Lillywhite(スティーヴ・リリーホワイト)のプロデュースによるこの作品は、全米で第63位、100万枚のセールスを記録、全英では第52位を記録しています。
荒削りではあるものの、タイトでストレートなギターバンドサウンドは海外進出のきっかけともなっていきます。
翌年発表された2ndアルバムOCTOBER(アイリッシュ・オクトーバー)は内省的な作品となり、少し地味なアルバムとなりました。
チャート的にも振るわず、全米で104位と苦戦。
全英では第11位を獲得しています。
テーマが煮詰まってなくて散漫な印象を与えるものの、結果的に次のアルバムへの橋渡しにはなっている、という評価も見受けられます。
そして1983年リリースされた3rdアルバム、WAR(闘)で世界的に大ブレイクを果たすことになりました。
NEW YEAR’S DAY(ニュー・イヤーズ・デイ)やSUNDAY BLOODY SUNDAY(ブラディ・サンデー)などのヒット曲を出し、全米で第12位、全英ではNo.1を記録しています。
とりわけこのアルバムでは、メッセージソングが多く含まれ、「社会・政治問題に積極的に関わるロックバンド」としての立場を決定付ける作品となりました。
ここまでの3作品のプロデュースはスティーヴ・リリーホワイトによるもので、リズム隊がはっきりしているのが特徴と言えるでしょう。
アダムのベース、ラリーのドラムがソリッドで武骨な手堅いバンドサウンドを作っています。
その上にジ・エッジの空間的なギターが彩り、そして熱いボノのヴォーカルが魂の叫びをぶつけます。
こうしたU2の基本となる音楽性はこの3作で確立されたと言えます。
そして、さらにこの先洗練されていくことになりました。
その一歩が次の1984年の作品、4thアルバムTHE UNFOGETTABLE FIRE(焔)。
ここにおいて、初めて僕はU2と接します。
そこで聴けたのは、熱くてクールな力強いバンドサウンドだったのです。
今回はプロデューサーがBrian Eno(ブライアン・イーノ)に変わっています。
彼はアンビエント音楽(環境音楽)の先駆者であり、これがU2に新たな魅力をもたらすことになったのでした。
では1984年リリースのU2の4thアルバム、THE UNFOGETTABLE FIRE(焔)をご紹介します。
THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)の楽曲紹介
アルバムのオープニングを飾るのは、A SORT OF HOMECOMING(ソート・オブ・ホームカミング)。
リズム隊は相変わらず武骨なリズムを刻んでいます。
そしてジ・エッジのギターも独特の寒々しい雰囲気をかもし出しています。
その上にのっかるボノのヴォーカルはやはり熱いです。
さっと聴くとU2らしい楽曲と言えますが、過去の作品と比べると大きく異なっていることがwikiでも指摘されています。
ドラムはポリリズム(拍の一致しないリズムが同時に演奏されることにより、独特のリズム感を出すこと)を使ったシャッフルが採用されています。
また、ジ・エッジのギターは以前ほど強調されておらず、楽曲に溶け込むようにミックスされています。
こうした変化は些細なことかもしれませんが、アルバム全体を通して聴くと、その雰囲気に大きな違いをもたらしていることに気付くことができるでしょう。
難しいテクニックは差し置いても、このオープニング曲は哀愁漂うキャッチーでかっこいい楽曲であることに違いはありません。
2曲目は、PRIDE(IN THE NAME OF LOVE)(プライド)。
僕が初めてU2に接した名曲です。
この曲は公民権運動の指導者で暗殺されてしまった、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに捧げる曲となっています。
イントロの響き渡るジ・エッジの独特のギターフレーズが印象的です。
また途中のディレイたっぷりのバッキングアルペジオもすばらしい。
これが武骨なドラムとベースとからみあい、見事なU2サウンドが完成していますね。
そしてボノの情熱的なヴォーカルも忘れてはなりません。
彼のヴォーカルは、心の奥底からの叫びのように聴こえます。
U2でしか聴けない、シンプルでソリッドなロックです。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャート第33位、同誌Mainstream Rockチャートでは第2位を記録しています。
3曲目は、WIRE(ワイヤー)。
ディレイをうまく使ったギターリフのイントロがなんとも言えない不思議な魅力をかもし出しています。
そして、バンドの勢いを表す疾走感あふれる楽曲になっています。
この曲でボノはドラッグに対する相反する感情を表そうとしているようです。
ファンキーなドラムに、時々はじけるベースサウンド、そして全編を彩るジ・エッジのギター。
スピード感があり、スリリングな楽曲となっています。
4曲目は、THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)。
タイトルは「忘れがたい焔(ほのお)」の意味ですが、広島・長崎への原爆投下を生きのびた被爆者達が描いた絵画のタイトルとなっています。
この曲は、シカゴ平和博物館でこの絵を見て触発され作られた曲です。
ドラマティックな展開と、ストリングスに包まれるようなアレンジ。
この辺にブライアン・イーノのアンビエント音楽の影響が色濃く反映されています。
そしてその合間にジ・エッジの空間的なギターも舞っているし、アダムとラリーのリズム隊もしっかりと存在をアピールし、U2としての枠を超えてはいません。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートは圏外となっています。
5曲目は、PROMENADE(プロムナード)。
ゆったりとしたリズムの中でボノの優しいヴォーカルが歌い上げます。
全体的にジ・エッジのディレイのかかったギター音がちりばめられています。
アダムのベースがロングトーンで曲を彩る美しいバラードです。
6曲目は、4TH OF JULY(7月4日)。
スタジオセッションの終わりに、ブライアン・イーノはたまたまアダムが何気なくベースを弾いているのを耳にします。
そのフレーズを気に入ったイーノはすぐに録音しました。
そして、ジ・エッジはそれが録音されているのを知らずに、そのベースフレーズにギターで音を重ねていきます。
最終的に少しイーノが手を入れてこの曲が完成した、ということらしいです。
最初はアメリカの独立記念日に関するインストかと思ったら、アルバム製作中に生まれた、ジ・エッジの娘の誕生日だったそうです。
7曲目は、BAD(バッド)。
これはアルバムを代表する楽曲です。
静かにジ・エッジのディレイのかかったイントロから曲は始まります。
ボノはささやくように歌い始めます。
途中からベースとドラムが合流し、たんたんと曲は進んでいきます。
そして、ボノの高い“ほっほー”という叫びに続いて大サビです。
ボノの力強いヴォーカルは心を揺さぶりますね。
やはり、これこそ魂の叫びと言えるのではないでしょうか。
次の作品WITH OR WITHOUT YOUの元となったとも言える素晴らしい楽曲だと思います。
8曲目は、INDIAN SUMMER SKY(インディアン・サマー)。
このアルバムの中では一番過去の作品の作風に近いのではないでしょうか。
ソリッドで硬派なロックを聴かせてくれます。
U2らしいいい楽曲です。
9曲目は、ELVIS PRESLEY AND AMERICA(プレスリ-とアメリカ)。
プライドや次のラストの曲がマーティン・ルーサー・キング・ジュニアについての歌だったり、この曲ではエルヴィス・プレスリーとアメリカについて歌うなど、当時の彼らはアメリカへの強い憧れがあったものと思われます。
その感覚は次のアルバムTHE JOSHUA TREEでも引き続き見られています。
アメリカ文化への接近の出発点となったのがこのアルバムだと言えるでしょう。
アルバムラスト10曲目は、MLK~マーティン・ルーサー・キング牧師に捧ぐ。
この曲は、アンビエントなBGMに乗せて、ボノの独唱となっています。
キング牧師に向けて、ボノが感情を込めて歌い上げてます。
短い曲ながら、アルバムを締めくくるにふさわしい曲になってます。
まとめとおすすめポイント
1984年リリースのU2の4thアルバム、THE UNFOGETTABLE FIRE(焔)は全米チャート第12位、アメリカで300万枚、世界で800万枚を売り上げました。
今回はプロデューサーをブライアン・イーノに変えて、大きく作風を変化させたアルバムで、楽曲はこれまでの3作品と比べると、おとなしくマイルドな印象があります。
ラフで少し攻撃的だった以前のサウンドを求める人たちは意表をつかれたかもしれません。
レコード会社はブライアン・イーノの起用により、せっかくの大成功のチャンスが台無しになると反対したのですが、バンドは押し切り、このアルバムをリリースにこぎつけます。
賛否両論あったものの、ある程度の成功を収めることはできました。
僕はこのアルバムで初めてU2に触れた者なので、これぞU2という強い好印象しか持ってません。
ラリーのドラムが力強いリズムを刻み、アダムのベースがしっかりとバンドの芯を支えています。
そしてその上にジ・エッジの切り裂くような鋭いギターリフが、ディレイとあいまって見事な雰囲気を作り出してます。
最後はボノの力強い、魂の叫びと言えるヴォーカル。
わずか4人編成のバンドで、これだけのものを生み出せるのだ、と驚かされます。
また、今回はイーノのプロデュースで、楽曲を時に幻想的に、時にシリアスにアレンジがされていて、曲がさらにブラッシュアップされていると僕は思います。
かといって80年代流行のオーバープロデュースではありません。
ちゃんとU2の魅力である、ソリッドでシンプルなバンドサウンド、という部分ではぶれてません。
次の超大ヒット作、THE JOSHUA TREEに向けての一歩として、とてもよく出来たアルバムだと思います。
シンプルで熱いのに、非常にクールなバンドサウンドをお楽しみください。
チャート、セールス資料
1984年リリース
アーティスト:U2
4thアルバム、THE UNFOGETTABLE FIRE(焔)
ビルボード誌アルバムチャート第12位、アメリカで300万枚の世界で800万枚のセールス (全英チャートNo.1)
1stシングル PRIDE(IN THE NAME OF LOVE)(プライド) ビルボード誌シングルチャート第33位、同誌Mainstream Rockチャート第2位
2ndシングル THE UNFORGETTABLE FIRE(焔) シングルチャート圏外
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