優秀なスタジオミュージシャンが集まって出来た、職人ロックバンドのデビュー作  TOTO - TOTO(宇宙の騎士)

TOTO結成





一般に、ロサンゼルスでスタジオミュージシャンをしていたキーボードのDavid Paich(デヴィッド・ペイチ)と、ドラムスのJeff Porcaro(ジェフ・ポーカロ)が中心となってTOTOは結成された、と言われています。
この二人と、ギタリストのSteve Lukather(スティーヴ・ルカサー)、キーボードのSteve Porcaro(スティーヴ・ポーカロ)は、幼馴染で、高校のころは既にバンドを組んでいたようです。

 

その後、それぞれ、スタジオミュージシャンとして活躍を始めますが、Boz Scaggs(ボズ・スキャッグス)のアルバムSilk Degreesに参加したときに、再び一緒になったペイチとジェフが、これをきっかけとしてバンドを結成します。
ベースには、このアルバム制作に参加した、David Hungate(デヴィッド・ハンゲイト)が加わります。
そしてオーディションで、リードヴォーカルとしてBobby Kimball(ボビー・キンボール)が参加します。
キンボールも、70年代には様々なバンドを渡り歩いた職人ヴォーカリストです。

 

こうして、1977年、6人の優秀なスタジオミュージシャンがバンドを結成、バンド名はTOTOとなります。
当初は「スタジオ・ミュージシャン達の寄せ集め」といった否定的な声が聴かれたものの、彼らはそうした批評を、優れた作品で黙らせることになりました。

 

今日は、1978年にリリースされた、TOTOのデビューアルバム、TOTO(宇宙の騎士)をご紹介したいと思います。

TOTO(宇宙の騎士)の楽曲紹介

オープニングを飾るのはCHILD’S ANTHEM(子供の凱歌)。
なんと、インストゥルメンタルでアルバムスタートである。

 

優れたスタジオミュージシャンの集まり、というだけあって、まずは、演奏で聴かせようという算段でしょう。
今聞くとちょっとチープさは否めませんが、確かにいいですね。
プログレの風味も感じさせながら、フュージョンのように爽やかさも感じられます。
そして、インストだからといってハイテクを満載に詰め込んでないところもいいですね。
結構、そうなりがちだと思いますが、各自ツボは抑えながらも、ド派手ではないという、いいバランスの取れた曲だと思います。
エレキとシンセの融合もいい感じですし、はねたドラムのビートもあわせて、アルバム全体のイントロとしてにふさわしい楽曲になっています。

 

2曲目はI’LL SUPPLY THE LOVE(愛する君に)。

 

前曲のインストからの流れが非常にいいです。
ルカサーのエレキのリフから始まりドラムの頭打ちが入るイントロは絶品ですね。

 

そして、サビのさわやかなコーラスが、初期のヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのようで、とても心地よいです。
キンボールのハイトーンヴォイスも、非常にかっこよいですし、ルカサーのギターカッティングがまたかっこよく気持ちいいです。
ギターソロは派手ではありませんが、いいアクセントとなって楽曲に表情をつけてます。

 

そしてラストは、またプログレっぽく拍子を変えながらテンポアップしていきます。
ホーンセクションも盛り上げてますし、曲ラストへ向けて疾走していく感じがたまりません。

 

わずか4分弱の間にいろんな表情を見せる、キャッチーなロックソングになってます。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで、第45位を記録しています。

 

3曲目はGEORGY PORGY(ジョージ・ポージー)。

 

AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)に分類される、少し地味だが大人なロックサウンドだ。
この曲ではルカサーがリードヴォーカルをとってます。
最小限の音数で、雰囲気たっぷりの楽曲を作り上げています。

 

高校生の頃聞いたときも、これは渋かっこいい、と思えました。
きっと僕はおっさんの心をもった高校生だったのでしょう。
ちょうど、ジェネシスのザッツ・オールを聴いたときのような感じです。
背伸びをしていたのか、ほんとにおっさんだったのかわかりませんが、ジワーとくる名曲の予感だけは感じていましたし、やはり今聞いても名曲ですね。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルで、シングルチャート第48位、そしてビルボード誌Adult Contemporaryチャートでは第49位を記録しています。

 

4曲目はMANUELA RUN(マヌエラ・ラン)。

 

ちょうどよいミドルテンポで進んでいく、楽しい雰囲気の楽曲です。
これはペイチがヴォーカルをとってます。
イントロや間奏のピアノの音がやけにシンプルだけどおしゃれです。
サビメロをなぞったギターソロも心地よく爽快です。
ベースもたっぷり動きがあって、盛り上げてます。
目立たないかもしれないけど、良曲になっていると思います。

 

5曲目はYOU ARE THE FLOWER(ユー・アー・ザ・フラワー)。

 

前の曲ラストでドアがバタンと閉められて、また別の雰囲気の楽曲が始まります。
これは渋くて大人な楽曲です。
イーグルスの暗めの楽曲を思わせるようなサウンドになってます。

 

この曲はキンボールによる楽曲で、ヴォーカルも彼が担当しています。
彼のハイトーンはなかなかいいですね。
また、楽曲の芯はピアノが支えている感じで、アダルティな雰囲気があってクールです。

 

そして、この曲のルカサーのギターソロは特筆すべき出来です。
やはり、ウェストコーストっぽいソロを結構たっぷり聴かせてくれます。
デビューアルバムでこの感じが出せるとは、ギタリストとしても既に成熟していたことを感じられます。

 

6曲目はGIRL GOODBYE(ガール・グッドバイ)。

 

ちょっとしたプログレを思わせる雰囲気のイントロから始まるが、ハードなギターリフと共におしゃれなハードロックに変わる。
また、長めのギターソロも非常に美しく心地よい。
リフ、ソロ共にルカサーがはじけてます
また、サビのコーラスは爽やかで、TOTO節のロックンロールとなっています。
アウトロの、ジェフのドラミングも拍子が独特で、聴き応えがあります。

 

7曲目はTAKIN’ IT BACK(ふりだしの恋)。

 

この曲はスティーヴ・ポーカロによる楽曲で、リードヴォーカルも彼がとっています。
大人の雰囲気の、まさにAORソングだ。
イントロはシンセによる優しいメロディから始まり、曲全体も優しいバラード調の楽曲になってます。
はねたベース音が全体を大人っぽく飾ってます。
アウトロで、楽器が重なってテンポを速めたように聞こえるアレンジは、技巧派のTOTOならではのかっこよさを見せてます。

 

8曲目はROCKMAKER(ロックメイカー)。

 

西海岸ロックテイストのあふれる、アメリカンロックである。
コーラスも、ギターソロも、ドラムのテンポも、全てが爽やかである。
ペイチによるヴォーカルも、TOTOサウンドにしっかりはまってます。
コーラスのキンボールも、かっこよくハイトーンを披露してます。
聴いて心地よい良曲です。

 

9曲目はHOLD THE LINE(ホールド・ザ・ライン)。

 

TOTOの記念すべきデビューシングルです。
一発目から、完璧に整った作品を出したと思います。
TOTOの骨格は、この最初の一曲から完成していたと思えます。

 

イントロのキーボードの3連のテンポとドラムのリズムパターンがずらしてあり、非常に印象に残るプレイになっています。
この辺の拍子のずらしの部分などはプログレの雰囲気をかすかに表現してます。
そして、そこに切り込んでくる、このポップな曲には非常にメタリックなルカサーのエレキが強烈な存在感を放ってます。

 

歌が始まるとAORの雰囲気もたっぷりとあり、サビではさわやかなコーラスが聴けます。
ベースラインがAOR風味を出すのに一役買っています。
バックを彩るシンセも80年代に入る前から、これからのシンセの時代を預言するかのような模範的な用いられ方がされてますね。
そのシンセとは別にピアノプレイも聴かれて、ツインキーボードが十分に生かされた作りにもなっています。
ルカサーのギターソロも非常に熱く長いです。
キンボールも自慢のハイトーンをたっぷりと聴かせてます。
ジェフのドラムスも、手堅い中にハイハットの細かなコントロールなどがされていて、そこに注目して聴いてみるのも興味深いです。

 

このように腕利きのミュージシャンがそれぞれの持ち味を主張しているのに、全体が優れたポップソングとしてまとまっているところがこの曲の魅力ではないでしょうか。
洗練された見事な楽曲になっています。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで第5位といういきなりの大ヒットとなりました。

 

アルバムラストはANGELA(アンジェラ)。

 

最後は静かなバラードです。
しかし、ただのバラードで終わらないのがデビュー時のTOTOでした。
少ない音数で静かに進んでいきますが、途中から鋭いギターや力強いドラム&ベースが加わり、ロックテイストの楽曲へと変わります。

 

そして、またもとの静かな楽曲に戻りますが、ラストはもう一度ロックテイストに変わってフィニッシュです。

まとめとおすすめポイント

1978年にリリースされた、TOTOのデビューアルバム、TOTO(宇宙の騎士)はビルボード誌アルバムチャートで第9位という大ヒットとなりました。
デビューアルバムながら、アメリカでは200万枚、世界では450万枚というセールスを記録しています。

 

ちょうどこの頃は、70年代から80年代にシーンも移り変わろうとしているときでした。
ボストンやフォリナーといった耳馴染みの良い、バンドが登場し始めていた頃で、まさに、時代が求めた音をTOTOも生み出していたと言えます。

 

TOTOの最大の特徴はやはり、スタジオミュージシャンあがりの職人プレイヤーが集まっていることが挙げられるでしょう。
しかし、高度な演奏技術はメインではなく、やはりまず優れた楽曲ありきだったところがヒットの要因だったのではないでしょうか。
このアルバムでは5曲目と7曲目以外の8曲はデヴィッド・ペイチによるものです。
このコンポーザーとしての彼の力量がたっぷりと発揮されたアルバムと言えます。
ほとんどの曲がキャッチーで、良曲が詰まっています。
そして、それをうまく時流にのったアレンジで、洗練されたサウンドに仕上げています。
その辺がやはり職人技と言えるかもしれません。

 

また、音楽性も様々なジャンルがミックスされて独自のサウンドを聴かせてくれてます。
プログレ、ウェストコーストロック、フュージョン、R&Bなど幅広い音楽が取り込まれています。
それを見事にTOTO風味に纏め上げたのが、人気の要因だったと思われます。

 

この後、多くのヒット作品を世に出していきますが、この1stで、すでにTOTOのサウンドはほぼ完成していると言えるかもしれません。
洗練された、心地よい大人のロックを楽しみたい人にはおすすめのアルバムです。

チャート、セールス資料

1978年リリース

アーティスト:TOTO

1stアルバム、TOTO(宇宙の騎士)

ビルボード誌アルバムチャート第9位 アメリカで200万枚、世界で450万枚のセールス

1stシングル HOLD THE LINE(ホールド・ザ・ライン) ビルボード誌シングルチャート第5位

2ndシングル I’LL SUPPLY THE LOVE(愛する君に) シングルチャート第45位

3rdシングル GEORGY PORGY(ジョージ・ポージー) シングルチャート第48位、Adult Contemporaryチャート第49位