生き残って欲しかった SUVIVIOR ー VITAL SIGNS




サバイバーとの出会い

極論かもしれませんが、JOURNEY(ジャーニー)が好きな人はSURVIVOR(サバイバー)も好きではないでしょうか。

 

僕は好きです。

 

もちろん、このバンドもメンバーの変遷があるのでどの部分が好きかは人によると思いますが、僕はこの1984年にリリースされたVITAL SIGNS(バイタル・サインズ)がベストだと思っています。

 

1983年に洋楽を聴き始めた僕にとっては、サバイバーに初めてふれたのはこのアルバムの先行シングル、I CAN’T HOLD BACK(キャント・ホールド・バック)ということになります。
確かMTVかナイトジャック福岡(福岡の民放局で、洋楽PVを流していた番組)か何かでPVを見たのが最初だと思います。
PVの内容は、イケメンヴォーカリストの妄想で、まあ、微笑ましくはあるが、さほど特筆すべきものはなかったです。
しかし、その映像の後ろで流れるこの曲に僕は激しく引き込まれました
曲は静かに美しく始まりますが、途中からドラムが入り、爽快なロックチューンに変わって行きます。
そしてとりわけ気に入ったのがこのイケメン君のヴォーカル。
少し甘いトーンの、そして爽やかなハイトーンヴォイスだ。

 

一発で気にいった僕は早速FMステーションでこの曲がかかるFM番組をチェックし、見事にカセットテープに収めることができました。

 

何度も繰り返し聴いて行くと、これは完全な好みだと確信し、お小遣いをはたいてLPレコードの購入にいたります。
このとき僕はまだCDプレーヤーを持っていなかったのだ。
この作品も当時はたぶんCDでは出てなかったと思われます。

 

ていうか、僕はレコードプレーヤーも持ってなかった(^^;)。
よっぽど気に入ったものはLPを買って、友達の家でカセットに録音してもらっていたのです。

で、購入したVITAL SIGNS(バイタル・サインズ)についてですが、これがドンピシャリで僕の好みのど真ん中でした
ライナー・ノーツによると、これがサバイバーの5作めのアルバムで、ヴォーカリストがちょうど交代したばかりの作品になります。
ロッキーⅢの主題歌で全米No.1にもなったEYE OF THE TIGER(アイ・オブ・ザ・タイガー)を歌っていたDave Bickler(デイヴ・ビックラー)はかすかにPVで見たことがあったのだが、彼が辞め、その代わりにJimi Jamison(ジミ・ジェイミソン)というあのイケメン君に代わった、ということでのようです。
そしてこの交代を機にサバイバーは黄金期に入ります。
ちょうどジャーニーにスティーヴ・ペリーが入ったときの事を髣髴とさせてくれますね。

 

アルバムはキャッチーな曲の連続で、全9曲気持ちよく聴くことができます。(10曲目は日本版のみのボーナス・トラックTHE MOMENT OF TRUTH、映画ベスト・キッドの主題歌です。)
どれをシングルカットしても良いほど心地よい良質のポップ・ロックであふれていました。

 

今日は、1984年リリースの、サバイバーの5thアルバム、VITAL SIGNS(バイタル・サインズ)をご紹介したいと思います。

VITAL SIGNS(バイタル・サインズ)の楽曲紹介

アルバムのオープニングを飾るのは、I CAN’T HOLD BACK(キャント・ホールド・バック)。

 

これはアルバムの先行シングルでサバイバー復活の狼煙を上げた曲です。
そして、僕が初めてサバイバーに出会った曲でもあり、非常にキャッチーな名曲です。

 

イントロからサビにいたるまでの爽やかな展開が非常に美しいです。
アコースティックギターのアルペジオにのってジミが静かに歌い始めます。
そしてサビ前に、少しづつギターやドラムが活動を始め、ドラマティックに盛り上がって行きます。
サビは爽快にジミが歌い上げています。
そのハイトーンヴォイスの美しいこと。
ちょっぴりハードなこのポップロックソングは、非の打ち所のないくらいキャッチーでメロディアスな楽曲です。

 

爽やかなメロディ、美しいハイトーンヴォイス、そこに加わるバンドサウンド
もう文句のつけようがありません。
爽快でドラマティック
80年代を代表する名曲の一つに数えておきたいと思っています。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第13位、同誌Mainstream Rockチャートでは、見事No.1を獲得しています。

 

2曲目はHIGH ON YOU(ハイ・オン・ユー)。

 

これまた非常に気持ちの良いミディアムロックになっています。
何よりまず、イントロのシンセの音が美しく印象的です。
そして、軽快なギターリフとともに進行する、ミドルテンポな楽曲。
これは、もう、聴いてて心地よくならない人がいるのだろうか、と思えるほど気持ちいい楽曲です。

 

適度なシンセやエレキギターが楽曲を彩り、爽やかな楽曲の中で存在感を放っています。
また、歌メロが何と言ってもキャッチーで美しいのです。
もうたまらなく大好きな名曲です。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第8位、Mainstream Rockチャートでも同じく第8位を記録しています。
このヒットはアイ・オブ・ザ・タイガー以来のトップ10入りということになりました。

 

3曲目はFIRST NIGHT(ファースト・ナイト)。

 

いきなり静かなバラードのようにジミが美しく歌いだします。
美しいピアノの弾き語りをバックに歌う楽曲はまさに美しいバラードです。

 

しかし、突如エッジの効いたエレキとドラムが入ってきて、爽快なロックソングに変貌です。
この展開が、非常にドラマティックでかっこいいです。
ハードポップバンドとしての本領発揮で、痛快なロックナンバーを披露してくれます。

 

このサビもやはりキャッチーで、ジミが美しく歌い上げます。
それに加えて、コーラスも美しく絡んで非常に盛り上がります。
最後、もう一度バラードライクな歌唱に変わって再び疾走感を取り戻す展開は見事です。
サバイバーの魅力あふれる名曲です。

 

この曲は4thシングルとしてリリースされ、第53位に終わります。
しかし、サバイバーの新たな魅力を放った名曲に間違いはありません。

 

4曲目はTHE SEARCH IS OVER(ザ・サーチ・イズ・オーバー)。

 

これは究極のバラードです。
僕の中では、ジャーニーのOPEN ARMSに匹敵するほど大好きなバラードです。

 

ピアノの音でしっとりと始まり、ジミが美しく歌い上げます。
一回目のサビの途中からドラムが加わり、壮大なパワーバラードに変わります。

 

The search is over , you are with me all the while
The search is over , love was right before my eyes

 

と歌う歌詞もすばらしい。
この曲をultimate love songに認定したいと思います。

 

やはりエモーショナルなジミのヴォーカルが最高ですね。
あと、この曲を含めてアルバムの全曲を作ったのは、バンドの Jim Peterik(ジム・ピートリック)とFrankie Sullivan(フランキー・サリヴァン)の二人ですが、彼らのメロディメイカーとしてのセンスがずば抜けてますね。
やはり、こんな美しいメロディを生み出せる優れたコンポーザーがバンド内にいるっていうのは非常に大きな強みだと思いますね。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第4位、そしてビルボード誌Adult Contemporaryチャートでは見事No.1を獲得しています。

 

A面ラストの5曲目は、BROKEN PROMISES(ブロークン・プロミセス)。

 

続いて少しハードな雰囲気を持つ楽曲です。
でもサビではやはりサバイバーらしいコーラスワークで、ハードになりすぎていません。
これもちょうどいいロック加減ということができるでしょう。

 

B面1曲目は、POPULAR GIRL(ポピュラー・ガール)。

 

これもポップなロックソングになっています。
Aメロが特に印象的なメロディで、少しはねた感じのとってもいいメロディを持っています。
そこからサビにつながる展開がかなり良すぎますね。
曲全体もキャッチー全開です。
まさにポピュラー・ソングだと思います。

 

2曲目はEVERLASTING(エバーラスティング)。

 

少し泣きの入ったギターソロによる印象的なイントロで始まります。
アコギによる伴奏で進むので雰囲気が他の曲とは少々異なります。
ジミの歌唱も、それに合わせて荒涼な雰囲気をうまく歌い上げています。
だが、サビはいつものサバイバー節になります。
つまり、キャッチーで、かっこよいのです。

 

3曲目はIT’S THE SINGER NOT THE SONG(イッツ・ザ・シンガー・ノット・ザ・ソング)。

 

これは非常に爽快なロックソングになっています。
このようなハードポップソングがアルバムに勢いを与えていると思いますね。
ポップだとかバラードだけでなく、このようなスピード感のあるロックソングがあるからこそアルバムは完成度を高めることが出来ているのではないでしょうか。
このいい感じのバランスがこのアルバムの特徴でもあると言えるでしょう。
最後のアウトロでは珍しく弾きまくるフランキーのエレキギターを聴くことができます。
このような技術は持っているが、普段は楽曲のよさを壊さないようにいい塩梅で提供しているのでしょう。
これもこのアルバムの完成度を高めている要因の一つに違いないと思います。

 

アルバムラストはI SEE YOU IN EVERYONE(アイ・シー・ユー・イン・エブリワン)。

 

これは何気にアルバムの最後を飾るにふさわしい名曲になっています。
やっぱりこのミドルテンポのロックがちょうど気持ちいいのです。
そしてサビのメロディアスな部分でのジミとメンバーのコーラスの掛け合いとハモリ。
メロディラインが秀逸で美しすぎるのです。
聴いていて幸せになれる楽曲ではないでしょうか。
音楽って素晴らしいものだ、と感じさせてくれる、いいアルバムのエンディングとなりました。

 

アルバムはここまでですが、ボーナストラックとして、映画「ベスト・キッド」の主題歌、THE MOMENT OF TRUTH(ザ・モーメント・オブ・トゥルース)が収録されています。
これも良曲ですね。
おまけでアルバムから浮いた曲をつけてくれることがよくあるが、この曲はこのアルバムに入ってもおかしくないいい出来と思います。
ただちょっと音質の点では、こもってる感じで他から浮いてる感じがするのが残念ですが、いい曲なので少し得した気持ちでアルバムを聴き終えることができます。

 

この曲はバイタル・サインズ制作前のシングルで、第63位を記録しています。

 

まとめとおすすめポイント

1984年リリースの、サバイバーの5thアルバム、VITAL SIGNS(バイタル・サインズ)はビルボード誌アルバムチャートで16位、全米で100万枚を売り上げるヒットとなりました。

 

このアルバムのハイライトは最初の4曲の流れではないでしょうか。
オープニングからザ・サーチ・イズ・オーバーまでは完璧な流れを見せてくれています。
強いて言えば、1991年のマクラーレン・ホンダのアイルトン・セナの開幕4連勝のようです。(当時の開幕連勝記録。)
この流れはぜひとも多くの人に味わってみて欲しいと思います。
で、その後、失速するかと言えばそうではなく、残り5曲も軽快なポップ・ロックを聞かせてくれるので安心して聴くことができるのです。

 

ジャーニーよりは少しハードさはないが、楽曲のよさ、ソリッドなギターサウンド、美しいキーボードの旋律、そしてジミの甘いハイトーンヴォイス、これらが相まって80年代らしい爽快なバンドサウンドを楽しめます。
非常にメロディアスで、心地よく聴ける、このアルバムをサバイバーの代表作として挙げたいと思います

さて、この後サバイバーは1985年にBURNING HEART(バーニング・ハート)というロッキーⅣの主題歌をリリース、全米2位まで上ります。
アルバムも1986年にWHEN SECONDS COUNT(ホエン・セカンズ・カウント)、1988年にはTOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)をリリースします。
どちらもサバイバー節全開になってます

 

WHEN SECONDS COUNTVITAL SIGNSとほぼ同じ路線のアルバムなので、間違いない作品です。
TOO HOT TO SLEEPは少し方向性をハードな方へ振ってはいますが、基本的には安定のサバイバー節といいってよいでしょう。

 

VITAL SIGNSを気に入ったのであれば、この2作は本作とともに間違いなくお勧めです。

 

しかし、その後、新作を待つも、待てど暮らせどその便りはなく、バンドは分裂し、事実上活動休止状態にあったようです。
するといつの間にか2006年に、18年ぶりREACH(リーチ)というアルバムを出していた!
そのころは洋楽から離れていたので、全くノーマークでした。

 

うれしいことにジミのヴォーカルは18年のブランクを感じさせない、相変わらずの美しい声を披露してました。
55歳ほどの年齢ゆえか、多少ハイトーンな部分が以前ほどクリアではなくなっていましたが、それでも十分魅力的な声は健在でした。
2曲ほどフランキー・サリヴァンがヴォーカルを取っているようですが、全体としてのサバイバー節は健在です。
2006年に、80年代サウンドで真っ向勝負です。
潔いではないですか。

 

その後、ジミはバンドを出たり入ったりしてましたが、2012年にはバンドに戻り、ツアーに参加しています。

 

しかし、2014年8月31日、ジミは心臓発作のため、メンフィスの自宅で亡くなりました。
享年63歳。

 

リアルタイムでこのニュースは見てなかったので、2年遅れで聞いたときにはショックでした。
ルックスに美声、天は2物を彼に与えましたが、そんな彼も寿命には逆らうことができなかったのです。
SURVIVOR(生存者)でもやはりいつかは死ぬのだ。
非常に惜しい人を亡くしたものです
でも彼が残してくれたものにあえて目を向けたいと思います。

 

虎は死して皮を留め、人は死して名を残す、と言うが、アーティストは死して、作品を残せるのです。

 

ジミは80年代に、まさに時代にピッタリの3作を残してくれました。
これを僕は大切にしていきたいと思ってます。

 

彼の残した作品たちは、これからもずっとSURVIVEしていくのです。
同じ時代に生きたことに感謝したい。

チャート、セールス資料

1984年リリース

アーティスト:SURVIVOR(サバイバー)

5thアルバム、VITAL SIGNS(バイタル・サインズ)

ビルボード誌アルバムチャート第16位 アメリカで100万枚のセールス

1stシングル I CAN’T HOLD BACK(キャント・ホールド・バック) ビルボード誌シングルチャート第13位、同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル HIGH ON YOU(ハイ・オン・ユー) シングルチャート第8位、Mainstream Rockチャート第8位

3rdシングル THE SEARCH IS OVER(ザ・サーチ・イズ・オーバー) シングルチャート第4位、Adult ContemporaryチャートNo.1

4thシングル FIRST NIGHT(ファースト・ナイト) シングルチャート第53位




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