完全主義者の渾身の一枚  BOSTON ー THIRD STAGE




BOSTONとの出会い

やはり僕はラジオっ子だったなあと思う。

 

もちろんテレビも見てはいたが、あの80年代に中高生だった僕は、ラジオ、とくにFMラジオに支配されていたラジオ少年だったのです。

 

FMステーションという隔週発売の雑誌を毎度買って、
洋楽に関する情報を収集し、
ラジオ番組から好きな曲を録音したカセットを作成し、
愛用のラジカセで聴きまくりながら勉強する。
まさに、ジャーニーのアルバム、RAISED ON RADIO、つまりラジオで育った、というコンセプトそのまんまの学生生活を送っていたのでした。

 

そんな中、1986年、大物バンドがなんと8年ぶりにアルバムを出す、というニュースをキャッチします。

 

BOSTON(ボストン)というバンドである。

 

その時点で、僕は全くその存在を知りませんでした。
なんと言っても、8年ってのは小学生が成人するくらいの長い年月なのです。
いろんなアルバムに手を出す金銭的な余裕のない学生にとって、そんな懐メロにさかのぼる余地はありませんでした。
まさに今流行っているものについていくので手一杯だったのです。

 

そして、ついにラジオで先行シングル、AMANDA(アマンダ)を耳にします。

 

懐かしいようなサウンドが聞こえてきた。
70年代から続く古いバンドが、そのまま現代にタイムスリップしたかのようだ。
ギターのストロークから始まるこの曲の上に、優しいハイトーンヴォイスがふわりとのせられ、そこにエレキギターの気持ちよいサウンドが絡まっていく。
またも直感的にこれはいいバンドだと確信した。

 

そして新作THIRD STAGE(サード・ステージ)を迷わず予約しにレコード屋へと向かいます。

 

そしてCDを購入。

 

 

アルバム、サード・ステージの紹介

BOSTONのロゴもキマっていて美しいジャケットですね。

 

アルバムを聴くと、いろんな発見がありました。
AMANDAは最初の印象では70年代の懐かしい感じを受けたのですが、CDできちんと聴いてみると、アレンジや楽器の感じが洗練されているのに気付いたのです。
ただの懐メロではない、ということはすぐにわかりました。
そして、今までに聴いたことのない世界が、アルバム中に広がっていたのでした。

 

ライナーノーツを見ると、ボストンの中心人物Tom Sholz(トム・ショルツ)の紹介があります。
彼はMIT(マサチューセッツ工科大学)出身です。
全米屈指のエリート名門校出身の人間が、渾身の知恵と能力を振り絞って音楽に向き合うと、こんな素晴らしいアルバムが生まれた、ということになるでしょう。
彼はロックマンというエフェクターやアンプのブランドを立ち上げるなど、機材のほうにもその才能を発揮しています。

 

とにかくこのアルバムを作るために、10000時間以上を費やしているらしいです。
トムはライナーノーツに、「How to make a record in just Six Years」(ちょうど6年でレコードを作る方法)なんてのを書いていて、どれだけこつこつ細かい作業を繰り返し繰り返し繰り返し行なったのかを述べています。
特に、主流になっているデジタルの、あるいはコンピューターによる録音をすれば簡単だったであろう作業を、ミキシングのために何度も何度も24トラックテープに録音した、というくだりは、彼のアナログへの強いこだわりを感じさせてくれます。
また、アルバムの裏ジャケットには、「No orchestral instruments or synthesizer were used to create the sounds」とあり、管弦楽器もシンセサイザーも用いることなくアルバムを作成した、ということが誇らしげに表示されています。
そしてクレジットには、プロデュースもエンジニアリングも、アレンジもトム・ショルツによるものだとあります。(少しの友達の助けを借りて、とも付け加えてあるのがお茶目)
まさにボストンはトム・ショルツそのものといっても過言ではないでしょう。

 

しかし、

 

それは過言なのでした。

 

彼はほとんどの楽器を操ってレコーディングすることはできましたが、ただ一つできないことがありました。

 

ヴォーカル、声である。

 

この天才がどんなに良い楽曲を作れても、ヴォーカルがだめだと、すべてがおじゃんになった可能性もあるのです。
しかし、Brad Delp(ブラッド・デルプ)という希代のヴォーカリストになり得る人が友人にいたことがミラクルを呼びました。
オーディションに合格したブラッドは何度同じメロディを歌わされたことでしょう。
完璧主義者であるトムは先ほども書いたように、根気強くレコーディング作業を行なっています。
であればヴォーカルにも同じクオリティを求めたということは想像に難くありません。
メインのヴォーカルだけでなく、コーラスもほとんどブラッドだったようなので、それはそれは大変だったに違いないです。
しかし、彼はやってのけたのです。

 

だから、ボストンはトム・ショルツのあふれんばかりの才能にブラッド・デルプの優れたヴォーカルが加わることによって完成を見た、と僕は思っています。

 

果たして、6年かけて作成された8年ぶりの新作はどうだったのか。

 

今日は1986年リリースのボストンの3rdアルバム、THIRD STAGE(サード・ステージ)をご紹介したいと思います。

アルバムTHIRD STAGE(サード・ステージ)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは先行シングルAMANDA(アマンダ)。

 

12弦ギターのストロークによるイントロが美しい。
広がるような音像はトムのミキシングの賜物であろう。
そしてブラッドのヴォーカルが優しく歌い始める。
すぐにそのヴォーカルに絡むように心地よいギターサウンドが聴こえてくる。
サビは重厚なバンドサウンドに早代わりだ。
そしてブラッドは力強く歌い上げる。
ギターソロもエレキギターのコーラスが気持ちいい。
ここもエフェクターだけでなく多重録音による音の厚みが、懐かしくも温かみのあるメロディを奏でている。
大サビもブラッドのヴォーカルが美しすぎる。
そしてコーラスもビューティフルだ。
そして静かに曲は終わりを迎える。

 

この曲はアルバムリリースの6年前の1980年には既にレコーディングされていたそうです。
今回バンドのキャリア初の、ビルボード誌シングルチャートでの全米No.1を獲得するのだが、もし、1980年に発表してても、また仮に、今現在発表しててもそこそこいいチャートアクションを見せたのではないかと思われますね。
それほど時代を超越した、素晴らしい楽曲と感じられます。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで2週連続のNo.1、同誌Mainstream Rockチャートでは3週連続のNo.1を記録しています。

 

2曲目はWE’RE READY(ウィア・レディ)。

 

アマンダの余韻の残る中、ハイハットの音につられるようにミュートの効いたギターのリズムが静かに音を刻み始める。
Aメロでは柔らかくブラッドは歌い始め、コーラスも優しくそれをサポートしている。
しかしBメロではソリッドなギターが入り、ブラッドも力強い歌声に変わる。
そしてサビではギターが厚みのあるリフを奏で、ブラッドの「カモン!」の声に呼応するかのように、美しくも存在感のあるギターソロが登場だ。
このソロもいい音だ。
自作のエフェクター、ロックマンとともに、根気強いミキシング作業で、太く艶のあるギターサウンドに仕上がっている。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第9位、Mainstream Rockチャートでは第2位を記録しています。

 

3曲目はTHE LAUNCH(ザ・ローンチ)。

 

静かに「ウィア・レディ」が終わると、そのままTHE LAUNCH(ザ・ローンチ)へ流れて行く。
これは3部からなる組曲の形になっている。

 

a COUNTDOWN
b IGNITION
c THIRD STAGE SEPARATION

 

の三つのパートだ。
前の曲からの流れで、遠くにずっとキーボードの音が鳴っている。
そしてその手前でオルガンが静かに奏で始められる。
後ろには雷のような音が。
そして、オルガンのような音が止まった瞬間、分厚い超極厚のオルガンのような音がヘヴィなメロディを奏で出す。
それにエレキギターの重低音も加わり、分厚いサウンドが続いて行く。
すると、雲間が晴れるように荘厳なパイプオルガンが始まり、その合間を縫って心地よいギターソロサウンドが広がる。
そしてもう一度重々しい世界に入ったと思うと、宇宙船が飛び立ったかのようなジェット音からいきなり次のCOOL THE ENGINES(クール・ジ・エンジンズ)へつながるのである。
上に述べたとおり、管弦楽器もシンセサイザーも用いることなくアルバムを作成したというわけだが、いったいどうやってアナログな機材だけでこの音世界を作り上げたのか、まったくトムの頭の中をのぞいてみたいものだ。
ここの組曲の前と後の曲のつながりは、絶妙である。

 

4曲目はCOOL THE ENGINES(クール・ジ・エンジンズ)。

 

この曲は前の曲で宇宙船が飛び立ったような勢いそのままの痛快なハードロックである。
ボストンらしいギターリフに始まり、そこにギターソロ音が乗っかる鉄板のボストン流ロックである。
ブラッドは、バラードだけでなく、このようなロックサウンドにもピッタリのヴォーカルを聞かせてくれる。
それに、やはりトムのギターリフがかっこいい。
サビ後のいったん沈黙した後のギターリフなんか、単なる理系ギタリストではプレイできないだろう。
重厚なバンドサウンドに、ブラッドのハードなヴォーカルが映える名曲です。

 

5曲目はMY DESTINATION(マイ・デスティネイション)。

 

ここでは一転してソフトなバラードだ。
この曲はアマンダのリプライズ(同じ曲をアレンジなどを変えて繰り返すこと)的に作られています。
主要なメロディは同じですが、アレンジが違います。
アマンダはギターストロークが印象的でしたが、この曲ではキーボードがメインになっているバラードです。
こちらもアマンダのように盛り上がってバンドサウンドになりますが、また、エレキが違う味付けで曲を彩っています。
しかしどっちにアレンジしても安定のボストンサウンドです。
ここで、しっとりとA面が終わります。

 

B面1曲目はA NEW WORLD(ア・ニュー・ワールド)。

 

これは短いインストゥルメンタルです。
短いとは言え、ボストンの最大の特徴の一つ、厚みのある、ふくよかなギターサウンドを味わえます。
そしてこのアルバムの世界観とも合致した、アクセントとなる曲になっています。

 

2曲目はTO BE A MAN(トゥ・ビー・ア・マン)。

 

スローな楽曲だが、途中から入るスペイシーなエレキギターのサウンドに注目だ。
ブラッドが切なく歌っているのと入れ替わりでギターがメロディを奏でます。
最後は半音キーが上がって盛り上がりますが、このへんのギターの用い方が秀逸です。
静かな楽曲ですが、ボストンらしさは満載になってます。

 

3曲目はI THINK I LIKE IT(アイ・シンク・アイ・ライク・イット)。

 

これは軽快なロックンロールになっています。
ただのロック曲のようですが、やはりギターの刻みや途中のリフも冴えています。
ところどころ入るエレキのメロディも空間処理されて、自在に宙を舞っているかのようです。
そしてこの曲のギターソロがまたかっこいい。
多重録音によって音の広がりと厚みが半端ないです。
それにロックマンを用いているので、とても心地の良いギターサウンドを堪能できます。
アウトロのエレキのソロまで、おなかいっぱいです。

 

4曲目は、CAN’TCHA SAY(YOU BELIEVE IN ME)/STILL IN LOVE(キャンチャ・セイ~スティル・イン・ラヴ)。

 

この曲は2曲で構成され、途中でスティル・イン・ラヴに変わり、そしてまたキャンチャ・セイに戻る、という展開である。
始まりはバラードのように始まるが、サビからは軽快なロックンロールサウンドだ。
もちろんそこにはトムのエレキがヴォーカルの合間でメロディを紡いでいる。
前の曲やこの曲のような爽快なロック曲は非常にボストンサウンドに合っていると思う。
で、途中でいったん曲は静まり、スティル・イン・ラヴに入る。
こっちはギターによるアルペジオが美しくバックを飾っている。
そこにブラッドが切なくメロディを歌い上げると、曲は盛り上がりを取り戻し、キャンチャ・セイの極上のノリに入る。
それをリードするのがエレキギターソロである。
ここでも気持ちの良いメロディアスなソロが用意されているのである。
完璧な作りではないだろうか。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第20位、Mainstream Rockチャートでは第7位を記録するヒットとなっています。

 

そしてアルバムラストを飾るのはHOLLYANN(ホリーアン)。

 

叙情的な雰囲気を醸し出しているバラードです。
アルペジオに乗せてブラッドが歌い始める。
なんか懐かしいような切ないバラードである。
しかし、この曲もサビではぶ厚いあのギターサウンド炸裂である。
そしてブラッドは得意のハイトーンヴォーカルで曲を盛り上げる。
それを後ろで支えるのがトムの極上のギタートーンである。
勝利の方程式とはこのことかもしれない。
後半は優しいキーボードの音をフィーチャーして曲に彩りを加える。
そして最後はやはり美しいギターサウンドでアルバムは終わります。

まとめとおすすめポイント

1986年リリースのボストンの3rdアルバム、THIRD STAGE(サード・ステージ)はビルボード誌アルバムチャートで4週連続No.1を獲得、アメリカだけで400万枚を売り上げました。

 

ボストンはアメリカン・プログレ・ハードなどとも呼ばれます。
確かにプログレっぽいところもあります。
THE LAUNCHからCOOL THE ENGINESへの流れ、A NEW WORLDなどのインストなどにそのような傾向が見られますね。
またハードでもあります。
COOL THE ENGINESWE’RE READYCAN’TCHA SAYなど、痛快なハードロックが聴けるのも魅力です。

 

しかし、AMANDAHOLLYANNのようなバラードも決してボストンサウンドを逸脱してはいません。

 

先行シングルAMANDA全米No.1に輝き、アルバムTHIRD STAGEも前作から2作続けてのNo.1を獲得しました。
8年間でファンは離れたどころか、その新作を待っていたのです。
それに加えて、僕のような新参者、このアルバムによりボストンの魅力にとりつかれた人も多く存在したようです。

 

ボストンサウンドはブラッド・デルプの美しいハイトーン・ヴォイスと緻密に重ねられたコーラス、トムの弾きまくり過ぎない、それぞれの楽曲にちょうどいいふくよかなギターサウンド、そしてアルバム全体に感じられるスペイシーな浮遊感のあるアレンジ、それらがからまりあって出来ています。
それは唯一無二ではないかと僕は思います。

 

つまり、ボストンをジャンル分けする必要はない。
ボストンはボストンなのだ、ということです。

 

80年代のサウンドか、というと、そうではないかもしれません。
でも、このサウンドは、どの時代に出しても人々に受け入れられる良さを持っているのではないでしょうか。
移り変わりの速い世の中で、8年ものインターバルでアルバムを出すこと事態が、時代を超越していることの証でしょう。
そして、人々はそれを待っているのです。

 

37分に満たないこのアルバムですが、その時間、ボクは彼らの作り出す世界へ旅をすることが出来ます。
それは至福の時間となり、音楽の素晴らしさを再確認できる時間となるのです。

 

この唯一無二のボストンサウンドは体験する価値ありです。

チャート、セールス資料

1986年リリース

アーティスト:BOSTON(ボストン)

3rdアルバム、THIRD STAGE(サード・ステージ)

ビルボード誌アルバムチャート4週連続No.1 アメリカで400万枚のセールス

1stシングル AMANDA(アマンダ) ビルボード誌シングルチャート2週連続No.1、同誌Mainstream Rockチャート3週連続No.1

2ndシングル WE’RE READY(ウィア・レディ) シングルチャート第9位、Mainstream Rockチャート第2位

3rdシングル CAN’TCHA SAY(YOU BELIEVE IN ME)/STILL IN LOVE(キャンチャ・セイ~スティル・イン・ラヴ) シングルチャート第20位、Mainstream Rockチャート第7位

 

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