よりハードな路線を狙った意欲作 SURVIVOR - TOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)

前作からの歩み





前作、WHEN SECONDS COUNT(ホエン・セカンズ・カウント)は、大ヒット作VITAL SIGNS(ヴァイタル・サインズ)と同じ方向性で臨んだものの、チャート的には振るいませんでした。
アルバムチャートでは49位、売り上げはアメリカで50万枚と大きく沈んでしまったのです。

 

内容は非常に優れたポップアルバムとなっていたのですが、前作の16位100万枚からのダウンと言うことで、さて、次どうしたもんだろ、と考えたに違いありません。
とはいってもそこそこのヒットはしているので、引き続きライヴツアーを行なっていました。

 

しかし、1987年、まずベーシストのStephan Ellis(ステファン・エリス)が胃潰瘍のため、バンドを脱退することに。
そして、次にドラマーのMarc Droubay(マーク・ドラウベイ)はどんどんポップ化するバンドをいやがり脱退。

 

結局、残った三人、Jimi Jamison(ジミ・ジェイミソン)、Frankie Sullivan(フランキー・サリバン)、Jim Peterik(ジム・ピートリック)がサバイバーとしてアルバム製作を開始。
ベースとドラムスはスタジオ・ミュージシャンを雇い入れました。

 

今回は前のヒット2作を手掛けた、ヒットメイカーであるプロデューサー、Ron Nevison(ロン・ネヴィソン)を離れ、フランキー・サリバンとエンジニアのフランク・フィリペッティの共同プロデュースでアルバムは作られます。
結果として前作までのポップな楽曲をよりハードな味付けにしたアルバムとなりました。

 

今日は、1988年リリースの、サバイバーの7thアルバム、TOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)をご紹介したいと思います。

TOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)の楽曲紹介





オープニングを飾るのは、SHE’S A STAR(シーズ・ア・スター)。

 

イントロのドラムとハードなギターリフから、サバイバーは変わった、と感じさせてくれる。
勢いのある強力な楽曲だ。
ジミのヴォーカルも、前作よりも力強く歌い上げています。
またギターソロも結構長く、ハードロックなソロを聴かせてくれてます。
全編を通してギターが目立つのが特徴となってます。

 

とはいっても根本的なところは変わりません。
安定のサバイバー節です。
ハードよりに振ったとはいえ、キャッチーですし、ポップなアレンジも含まれてます。
フランキーとジムのコーラスも相変わらずきれいです。
僕の好みのサウンドからは全く逸脱しておりません。

 

2曲目はDESPERATE DREAMS(デスパレート・ドリームス)。

 

イントロの美しいシンセの調べは、サバイバーらしい素晴らしいバラードへとつながります。
やはり、この手のバラードをプレイさせたら、天下一品ですね。
全編を彩るシンセの音が切ない雰囲気を見事に演出しています。
そして、ジミのヴォーカルも、やはり美しいハイトーンヴォイスで見事に歌い上げます。
また、コーラス隊もこれまたハイトーンで美しくハモってます。

 

マイナー調の楽曲が、最終的にはメジャー調に変わって終わっていく感じが、夢があってとてもいい感じです。
これはシングルにしても良かったくらいな名曲です。

 

3曲目はTOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)。

 

アルバムのタイトル曲となってます。
前作といい、今回といい、タイトル曲は名曲が来ますね。
ギターのアルペジオから始まりだんだん盛り上がっていくドラマティックな楽曲です。
ジミのヴォーカルが冴え渡ってます。
また、要所要所で聴かれるギターの細かなフレーズが曲を引き立てています。

 

サビはお約束のコーラスで盛り上がります。
ギターソロもいい感じです。
曲全体でギターが前面に出されていてとてもいい感じです。
アウトロのギターソロも非常によく出来てます。

 

4曲目はDIDN’T KNOW IT WAS LOVE(愛とは知らなくて)。

 

イントロから、サバイバーキター!って感じの良質のポップソングです。
もう、この手の曲を書かせてプレイさせたら右に出るものはいませんね。
HIGH ON YOU以来、数多くの名ポップソングを生み出してきましたが、まだまだいけますね。
もう、このメロディのセンス、匠の域に達してます。

 

そしてもちろんバンドもいい演奏してます。
シンセのイントロはもちろんのこと、ちょっとハード気味になったギターも見事に楽曲を盛り上げます。
サビでのシンセも適度に使われてて、非常に心地よいです。
また、ジミのヴォーカルも、彼こそがサバイバーですね。
彼が歌うからこそ、このポップなロックが完成するのです。

 

ギターソロも、短いですが非常に気持ちよく奏であげてます。
サビのコーラスも、まさにサバイバー節で、非の打ち所がありません。
最高のポップソングです。

 

この曲はアルバムからの先行シングルとしてリリースされましたが、なんとビルボード誌シングルチャートで第61位と、驚きの低位置でした。
同誌Mainstream Rockチャートでは、かろうじて第40位とTOP40入りしていますが、まさかこんなにもチャートが上がらないとは、当時相当驚いたことを覚えてます。
こんなに良く出来た極上とも言えるポップソングが、こんな順位とは、いったい何を作れっていうんだ、と本人たちが思ったかどうかは知りませんが、やはり落胆はしたのではないでしょうか。
やはり時代の求める音ではなくなっていってたのかもしれません。

 

5曲目はRHYTHM OF THE CITY(リズム・オブ・ザ・シティ)。

 

ハードロック路線を狙ってきたことが顕著にわかる楽曲の一つだ。
イントロのギターリフから、非常にヘヴィなリズムを刻んでいます。
それに合わせて、ジミも力強く歌い上げてます。
ハードロックのサバイバーも、とてもかっこいいと僕は思いますね。
一つ目の間奏でも、アーミングを使った、ハードロックでありがちなギタープレイを聴かせてます。
ギターソロも、たっぷりとハードに速弾きやアーミングも混ぜながらかっこよく決めてます。
アウトロのギターソロも、これまでのサバイバーにはなかったいいソロを聴かせてますね。

 

とは言っても、周辺のHR/HMのバンドと比べると、優等生的なサウンドに聴こえてしまいます。
やはり、シンセの使い方や、コーラスはサバイバーの枠の中と言えます。
サバイバーにしてはハードで、新境地と言う点ではとてもよいです。
しかし、だからといって、他のハードロックバンドと戦うにはちょっときれい過ぎるのかもしれません。

 

まあ、僕は好きですよ、こういうの。

 

6曲目はHERE COMES DESIRE(ヒア・カムズ・ディザイヤー)。

 

ゆったり王道のハードロックを聴かせるかと思いきや、途中でキーボードが入り、古っぽいバンドサウンドへ雰囲気が変わります。
しかし、サビは戻って堂々とハードロックしてます。
ギターソロプレイもいいですね。
間奏はちょっとトーンを落として、ギターソロでスタートだ。
そこからのギタープレイは非常にいいし、アウトロでもいいプレイを聴かせてます。

 

サバイバー風の王道ハードロックと呼べるだろう。

 

7曲目はACROSS THE MILES(アクロス・ザ・マイルズ)。

 

これまでのサバイバーにはない雰囲気の楽曲だ。
バラードに入るかどうかわかりませんが、叙情的ないい曲です。
シンセに柔らかく包まれた静かなたたずまいの中で、ジミがハートフルに歌い上げてます。
ここまでハードだったギターが、柔らかい音色を奏でます。

 

サビがやはりメロディアスで、ジミのヴォーカルとハモリのコーラスが美しく響き渡ります。
また歪みを抑えたギターソロプレイが何とも大人な雰囲気をかもし出しています。
サバイバーの新境地とも呼べるかもしれません。

 

この曲は2ndシングルとしてリリースされ、シングルチャートでは第74位といまいちでしたが、Adult Contemporaryチャートでは第16位と善戦しています。
やはり、このアダルトな雰囲気は多くの人に受け入れられたようです。
ジミのヴォーカルの良さがにじみ出る、良曲となっています。

 

8曲目はTELL ME I’M THE ONE(テル・ミー・アイム・ザ・ワン)。

 

ハードなギターリフから始まるこの楽曲は、サビのコーラスから始まる、サバイバーにはありそうでなかった、印象的な楽曲です。
Aメロからの流れも、ちょいハードながら、サバイバー節全開のハードポップソングである。
やはりこういうのを僕は待っているのです。
爽快で、メロディアスで、サビのコーラスも心地よい。
まさにサバイバーの、魅力の凝縮した楽曲になってます。

 

後半のコーラスとギターの掛け合いからのギターソロへの流れは秀逸です。
キャッチーで、たまらなく心地よい、サバイバーらしい一曲となってます。

 

9曲目はCAN’T GIVE IT UP(キャント・ギヴ・イット・アップ)。

 

これは、今作で目指したハード路線の楽曲の一つです。
ドラム&ベースによる疾走感ギターリフのかっこよさジミのヴォーカルハモリのコーラス、見事にはまっています。
ギターソロも、ちょいハード目に弾きまくってます。
味付け程度のシンセも、ほどよくて、今回の路線に貢献してます。
その分、アウトロで珍しくキーボードソロがあり、その音色もハードロックでよくある音で、雰囲気をうまく作っています。

 

アルバムラストはBURNING BRIDGES(バーニング・ブリッジ)。

 

ラストにふさわしい、ゆったりとしたロックを聴かせてくれます。
サビのジミのヴォーカルの声が哀愁も感じさせ、その熱唱に感動すら覚えます
ヴォーカルに絡むギターの音色がまたいい雰囲気を演出しています。
ギターソロもメロディアスで、楽曲にピッタリなものとなってます。

 

スケール感のある、スローロックナンバーだが、ジミの魂のヴォーカルでいっそうその迫力は増している。
加えて、アウトロのギタープレイも、ムードたっぷりである。

 

こうして、サバイバーの、渾身の作品は幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1988年リリースの、サバイバーの7thアルバム、TOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)は、ビルボード誌アルバムチャートで、第187位という驚くべき順位で終わってしまいました。
結局この商業的な失敗によって落胆したバンドは、活動休止を余儀なくされるのである。

 

もはや時代というしか仕方がないのかもしれない。
時代はもう、彼らのような音楽を必要としなかったのか。

 

しかし、どう聴いてもこのアルバムは素晴らしいです。
前の2作と根本的には同じです。
美しいメロディーキャッチーな楽曲、きっちりしたバンドサウンド。
ジミの美しい歌声ハモリのコーラスの尋常じゃない美しさ
エイティーズ風味に味付けされたアレンジ。

 

どこをとっても何も悪いところは見当たりません
前作から変わったところといえば、シンセが少し陰を潜め、エレキギターが前面に出ていること。
ギターリフが、よりハードになったこと。
ジミがちょっと力んで歌う場面が多くなったこと。

 

それくらいかなぁ。
多少ハードな曲が増えたと言え、全体には安定のサバイバー節なのです。
これだけのクオリティのある楽曲を作ってこの順位なら、もはや手の打ちようがないと思ったとしても仕方がありません。

 

こんなに過小評価されてはいますが、判る人は判ってます
このアルバムの素晴らしさを。

 

僕は、どれほど売れなかったとしても、このアルバムを前の2作と同様、名盤と保証したいと強く思います。

 

いいものはいいのです。

チャート、セールス資料

1988年リリース

アーティスト:SURVIVOR(サバイバー)

7thアルバム、TOO HOT TO SLEEP(今夜は眠れない)

ビルボード誌アルバムチャート第187位

1stシングル DIDN’T KNOW IT WAS LOVE(愛とは知らなくて) ビルボード誌シングルチャート第61位、同誌Mainstream Rockチャート第40位

2ndシングル ACROSS THE MILES(アクロス・ザ・マイルズ) シングルチャート第74位、Adult Contemporaryチャート第16位