安定のサバイバークオリティの第2作 SURVIVOR(サバイバー) – PREMONITION(予戒)

前作からの流れ





1980年にリリースされた、SURVIVOR (サバイバー)の1stセルフタイトルアルバム、SURVIVOR (サバイバー)はビルボード誌アルバムチャートで第169位を記録しました。
背景の異なる“survivor(生存者、生き残り)”の集まったバンドとして話題にはなりましたが、いきなり大成功を収めるほどアメリカ市場は甘くなかったようです。

 

とはいえ、個人的には想像以上の秀作メロディアスハードポップアルバムだと思ってます。
サバイバーの最大の特徴と言えるハイトーンヴォーカルが、Dave Bickler(デイヴ・ビックラー)によって生き生きと歌い上げられています。
またバンドの中心人物の一人、Jim Peterik(ジム・ピートリック)を中心に書かれた楽曲も、キャッチーで粒よりの作品群となってます。
80年代に入ったばかりで、音的には多少古っぽくも感じられますが、アメリカンロックの王道スタイルはすでに1stでがっちりと確立していたと僕は思いますね。

 

1stアルバムでは、ジムはリズムギターをメインでプレイしていましたが、その後キーボードとバックヴォーカル、そしてソングライティングに専念するように変わっていきます。
また、キーボードを兼任していたヴォーカルのデイヴはヴォーカルにのみ専念するようになりました。

 

そして、バンドメンバーに大きな変更が加えられます。
ベースのDennis Keith Johnson(デニス・ジョンソン)、ドラムスのGary Smith(ゲイリー・スミス)が他のプロジェクトとの兼ね合いでスケジュールが合わなくなり、バンドを離脱することになります。
ジムによると、この元ブラスロックバンドのChase(チェイス)出身の二人は、音楽へのアプローチがジャズ風過ぎる、ということで、この脱退劇には音楽性の違い、という理由もあったようです。
そしてジムとフランキーは代わりのメンバーを探しますが、L.A.でバンド活動をしていた、ドラマーのMarc Droubay(マーク・ドラウベイ)、ベーシストのStephan Ellis(ステファン・エリス)がバンドに加わることになりました。

 

こうして、二人のメンバーを入れ替えて、2枚目のアルバムが制作されます。
今回は、前作のプロデューサーRon Nevison(ロン・ネヴィソン)の手を離れ、ジムとフランキーの二人によるセルフプロデュースが行われます。
8曲中6曲がジムとフランキーによる共作、そして残りの2曲(T-1、T-6)はジム一人で作られた楽曲となっています。

 

この新体制で作られたアルバムも、サバイバーらしいキャッチーなメロディアスハードポップ路線を貫く佳作となりました。

 

では今日は、1981年にリリースされたSURVIVOR (サバイバー)の2ndアルバム、PREMONITION(予戒)をご紹介します。

PREMONITION(予戒)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、CHEVY NIGHTS(シェヴィ・ナイツ)。

 

いきなりの疾走感あふれるメロディアスハードポップの登場です。
新メンバーのマークとステファンの2人のリズム隊によるイントロは痛快そのものです。
そこに、軽快なギターリフが加わって、典型的なアメリカンハードポップ曲が始まっていきます。

 

ヴォーカルのデイヴの声が、前作よりもバランスがとれてよく伸びているような気がします。
後のJimi Jamison(ジミ・ジェイミソン)と遜色ないナイスヴォーカルを聞かせてくれてますね。

 

ギターの音がいい感じで加わったり消えたり、非常に動きがあって良いです。
また、途中でキーボードの8分の音の連打のみをバックに歌メロがあるところなんか、いい構成です。
ギターソロは、全体が疾走してる分、ゆったりとロングトーンとハモリで聞かせています。
曲にあったギターソロプレイを聞かせるのもサバイバーの特徴の一つですね。

 

アルバムのオープニングとしては申し分のないノリノリのいい曲でスタートしました。

 

2曲目は、SUMMER NIGHTS(サマー・ナイツ)。

 

ここで早くもバラードスタイルの楽曲が登場です。
ゆったりとしたリズムに乗る、ソロギターのイントロがぐっとハートをつかんでくれます。
ピアノの伴奏と共に歌われるデイヴの歌メロが、なかなか染みるヴォーカルを聞かせてくれます。

 

しかし、そのままバラードでいくのかと思いきや、バンドのサウンドが厚みを増し、コーラスも同じく厚くなって盛り上がっていきます。
ここでいったん再びAメロに戻りますが、その後また盛り上がっていきます。
今度は倍テン(倍のテンポ)となっていく展開がなかなかのドラマティックなものになっています。

 

ちょっとサビがどれなのか迷うくらいサビが弱い気はしますが、構成やメロディはなかなか秀逸です。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第62位を記録しています。

 

3曲目は、POOR MAN’S SON(プア・マンズ・サン)。

 

これはまたかっこいい曲ですね。
シングル向けの楽曲に感じられます。

 

イントロのキーボードのメロディが印象的で、そこに切り込んでくるエレキギターのリフが非常にかっこいいです。
楽曲の全編で、力強いドラムスとキレの良いギターリフ、そしてキーボードの8分での連打が、楽曲のテンションを高めています。
そして、もちろんデイヴのヴォーカルも冴えていて、この力強い楽曲をしっかりと歌い上げています。
ギターソロは速弾きではありませんが、メロディアスなプレイでかっこよくキマっています。

 

シンプルなサウンドですが、展開も演奏もヴォーカルも、とてもクールな楽曲に仕上がっています。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで第33位を記録し、バンド初のTop40ヒットとなりました。

 

4曲目は、RUNWAY LIGHTS(ランウェイ・ライツ)。

 

これまた最高級のドラマティックな名曲です。

 

イントロのギターソロメロディにハモリが加わって、すごく叙情的な雰囲気から楽曲が始まります。
ミドルテンポのバンドサウンドに乗って歌われる歌メロが、もう言葉にならないほど良いですね。
特に、サビの歌メロの美しさと言ったら言葉になりません
1番ではサビの最後は下降メロディで終わりますが、本サビのハイトーンに上昇するサビメロからのギターソロへの流れが最高です。

 

ギターソロも美しいメロディを奏でてます。
間奏のソロも非常に良いですし、アウトロ前のプレイも気持ち良いです。
ほんと、サバイバーのギターソロはいつまでも聞いていたいようなメロディが多くて、僕にはすごくツボですね。

 

堂々たるリズム隊をバックに、珠玉のメロディのギターとヴォーカルが舞い踊る、アルバム中のハイライトの楽曲だと僕は思っています。

 

5曲目は、TAKE YOU ON A SATURDAY(テイク・ユー・オン・ア・サタデイ)。

 

B面1曲目となるこの曲は、ちょっとハードエッジなギターリフが目立つ、ロックチューンです。

 

少し怪しげな雰囲気の歌メロのバックに響くベース音が、楽曲の重みを増し加えています。
ハードな雰囲気で進んでいきますが、中盤でテンポが落ちたところで響くアコギのストロークがいいアクセントになり、その後のちょっと激しめのギターソロが非常に際立ってかっこいいです。
このソロもメロディが滑らかで、かつ美しく、非常に好みのサウンドとメロディです。

 

6曲目は、LIGHT OF A THOUSAND SMILES(ライト・オブ・ア・サウザンド・スマイルズ)。

 

キーボードのメロディがかかり、そこにドラムが加わっていくイントロはこれまたドラマの始まりを感じさせてくれます。
そして、この曲もまた途中からスピードが増す展開で、これもまた構成が良いです。
2番からは、ぐいぐい進む感じのリズム隊にヴォーカルが乗る形で、コーラスも加わり、非常に良いです。

 

ギターソロは、このアルバム中ではけっこう弾きまくっている感じで、きれいなメロディをスピーディーに滑らかに奏でています。
これも、なかなかの名演と僕は思っていますが、いかがでしょうか。

 

ドラマティックな展開がたっぷり楽しめる、佳曲となっています。

 

7曲目は、LOVE IS ON MY SIDE(ラヴ・イズ・オン・マイ・サイド)。

 

ここで鉄板のシャッフルビートに乗って、非常にかっこいいアメリカンロックが登場です。
やっぱりシャッフルビートのうまいバンドは、一流に聞こえますよね。
サバイバーは1stでも1曲シャッフルが入ってましたが、さすがにこのノリはバンドとしての実力をはっきりと示すものとなってると思います。

 

キレのあるギターリフ、サビ裏のギターメロ、どちらもとてもかっこよいです。
間奏では、たっぷり時間を取ってからのギターソロ登場、という演出が心憎いです。

 

ロックバンドの楽しさを感じられるこれもいい曲です。

 

8曲目は、HEART’S A LONELY HUNTER(ハーツ・ア・ロンリー・ハンター)。

 

アルバムラストは、ドラマティックなパワーバラードです。

 

コーラスから入って、静かに歌い上げられていきます。
じきにバンドが入ってきて、ゆったりと盛り上がっていきます。

 

この曲でのハイライトはやはりサビ等で聞ける、デイヴのハイトーンヴォーカルでしょう。
切なくも力強く歌い上げています。
サビの歌メロも哀愁感たっぷりですが、デイヴが見事に切なく歌い上げています。

まとめとおすすめポイント

1981年リリースの、SURVIVOR (サバイバー)の2ndアルバム、PREMONITION(予戒)はビルボード誌アルバムチャートで第82位を記録しました。
デビュー作が第169位ですから、ジャンプアップではあるものの、やはり物足りない結果に終わってますね。
今回はリードシングルがTop40入りしたにも関わらず、このチャート結果では非常に残念としか言いようがありません。
なかなかアメリカ市場の壁は高々とそびえたっていますね。

 

しかし、内容はというとなかなかの好作品と思えるデビュー作をさらに磨き上げた感じがあると思います。
今回は、作曲がジムとフランキーのみとなっていますが、非常にキャッチーでメロディアスな楽曲が詰まっています。
前作以上に粒よりの楽曲がそろっていると感じるのは僕だけではないでしょう。
メロディアスハードポップ路線をさらにつきつめた感じで、とにかく歌メロやギターソロのメロディなどが秀逸です。
加えて、ジムとフランキーによるセルフプロデュースも、サバイバーをよりサバイバーらしく仕上げるのに貢献したとも思えます。
何といっても、名前の通り、“survivor(生存者、生き残り)”として経験者、玄人たちが集まった集団ですから、作曲も演奏も、アレンジも優れていたのだろうと感じられます。

 

ちなみにアルバムタイトルの「PREMONITION」は予感、兆候といった意味で、虫の知らせなどどちらかというと悪いことが起こる嫌な予感の方に使われる言葉のようです。
それに充てられた邦題は「予戒」です。
これは前もって警戒、用心すること、といった意味があり、やはりこちらも先に悪いことがあるような雰囲気の言葉となっています。

 

彼らにどんな悪い予感があったかわかりませんが、その一つは2作目も前作同様ヒットせずに終わることも嫌な予感としてあったかもしれません。
まあ、実際、前作よりはちょっとばかりいい成績をとれたので、この予感は外れたとも言えるでしょう。

 

しかし、そのわずか1年先に、全米制覇という超巨大な未来が待ち受けているなんて、メンバーの誰一人予想していなかったに違いありません。
結果としてこの2作目は、とても悪い予感をもたらすどころか、最高の未来の前触れとなったのでした。

 

そんな大ブレイクを果たせたのも、この1作、2作でたとえ売れなかったとしてもいい作品を生み出していた、というのが布石となっていたことは間違いありません。
そんな最高の運命を引き寄せるきっかけとなった、この2ndアルバムは、やはり内容的にも優れたもので、もっと評価されてしかるべき作品だったと思えます。

 

サバイバーのメロディアスハードポップの原点をすでに確立しているこの作品は、デビューアルバムと共に、僕は優れたアルバムとして高評価をあげたいと思っています。

チャート、セールス資料

1981年リリース

アーティスト:SURVIVOR(サバイバー)

2ndアルバム、PREMONITION(予戒)

ビルボード誌アルバムチャート第82位

1stシングル POOR MAN’S SON(プア・マンズ・サン) ビルボード誌シングルチャート第33位

2ndシングル SUMMER NIGHTS(サマー・ナイツ) シングルチャート第62位