ジャーニー成功の立役者の極上のポップソロアルバム STEVE PERRY - STREET TALK

STEVE PERRY(スティーヴ・ペリー)とは





STEVE PERRY(スティーヴ・ペリー)とは、言わずと知れたJOURNEY(ジャーニー)のヴォーカリストだ。

 

スティーヴがジャーニーに加入する前に、Neal Schon(ニール・ショーン)とGregg Rolie(グレッグ・ローリー)らが1973年にジャーニーを結成してから、既にアルバムを3枚出していた。

 

1975年、1stアルバム、JOURNEY(宇宙への旅立ち)はビルボード誌アルバムチャート第138位

1976年、2ndアルバム、LOOK INTO THE FUTURE(未来への招待状)は同チャート第100位

1977年、3rdアルバム、NEXT(果てしなき挑戦)は同チャート第85位

 

と、商業的には成功とはかけ離れたものだった。
当時の音楽性は、インストゥルメンタル曲主体でプログレッシヴなジャズスタイルのロック、ということで、一部のマニアや、こういうのが好きな日本のファンからの評価は高かったが、一般受けすることはなかったのだ。

 

レコード会社は、この状況を打破して、売り上げをのばすために、フロントマンを置くことを決定。
まず、ロバート・フライシュマンが専属ヴォーカリストとして加入、しかし、気質や契約の問題で半年ほどで解雇。
早く次のヴォーカルが必要とされる状況が生じた。

 

一方、スティーヴ・ペリーは、12歳のときに歌手になりたいと初めて意識し、それに向けて着実に歩みを進めていた。
マーチング・バンドでドラムを叩き、合唱隊でファーストテナーを担当。
それから、アイス、ピーセズといったバンドに参加するがなかなかレコード契約を結ぶまでには至らない。
しかし、次のバンドAlien Project(エイリアン・プロジェクト)では、メジャーデビューの契約まであと少しのところまでこぎつけた。

 

が、バンドのベーシスト、リチャード・マイケルズが交通事故で他界するという悲劇に見舞われ、結局契約は白紙となった。
心が折れたスティーヴは夢を断念、地元に帰って農場で働き始める。

 

だが、エイリアン・プロジェクトのデモテープを聴いたジャーニーのマネージャー、Herbie Herbert(ハービー・ハーバート)による接触と、母の強い勧めでスティーヴはジャーニー加入を決意する。

 

そして1978年、スティーヴ加入後の4thアルバム、INFINITY(インフィニティ)がリリース。
これまでの演奏中心だったプログレッシヴなロックが、スティーヴのエモーショナルでソウルフルなハイトーンヴォーカルと融合し、新たな魅力のあるバンドへと大きく変化を遂げた。
結果として、初のシングルヒットも生まれ、アルバムはチャートで第21位へと躍進、売り上げもアメリカで300万枚と商業的な成功を収めたのだ。

 

翌1979年、5thアルバムEVOLUTION(エヴォリューション)はチャート第20位で、またもアメリカで300万枚を売り上げた。

 

さらに翌1980年の6thアルバムDEPARTURE(ディパーチャー)はチャートは第8位、アメリカで安定の300万枚を売っている。

 

こうしてスティーヴ加入後、着々と売り上げも人気も高まっていき、ついに1981年の7thアルバムESCAPE(エスケイプ)ではアルバムチャートNo.1を獲得、アメリカだけで1000万枚を売り上げる大ヒットを記録するのである。
また1983年の8thアルバムFRONTIERS(フロンティアーズ)はマイケル・ジャクソンのスリラーに1位は阻まれたものの、アルバムチャート第2位を記録、アメリカで600万枚を売り上げた。

 

間違いなくスティーヴは、ジャーニーの世界的な成功の主要な要因の一つと言えよう。
彼が入った後、バンドは飛躍的に成長を遂げ、商業的成功を手中にしたのである。

 

その後に、僕は1983年にSEPARATE WAYS(worlds apart)(セパレイト・ウェイズ)で衝撃を受け、ジャーニーのファンになったのだ。
なので次のアルバムはリアルタイムで聴けると思ってたところに、ジャーニーの成功の立役者、スティーヴ・ペリーのソロ活動の話が聞こえてきたのである。

 

では今日は、1984年リリースの、STEVE PERRY(スティーヴ・ペリー)の1stソロアルバム、STREET TALK(ストリート・トーク)をご紹介したいと思います。

STREET TALK(ストリート・トーク)の楽曲紹介

アルバムのオープニングを飾るのは、OH SHERRIE(Oh、シェリー)。

 

きれいなシンセによるイントロから始まり、それが途切れたとき、スティーヴのハイトーンヴォイスが鮮烈に歌い始める、という印象的な楽曲だ。
ジャーニーのロックバンドのサウンドとは大きく異なり、非常にキャッチーで、ポップな楽曲である。
ジャーニーの延長を期待していた僕には少々肩透かしだったものの、すぐに素敵な楽曲であることに気付いてきた。
後半のハモリのコーラスのところなど、非常に聴いてて気持ちがいい。
スティーヴのヴォーカリストとしての魅力の詰まった楽曲である。

 

当時のFM福岡の土曜2時のポップスベストテンでは一ヶ月近く第1位を独走してたような記憶がある。
みんなジャーニーを待っていたのだが、ソロでやってきたスティーヴをも温かく歓迎したのが、この人気の秘密だったと言えるでしょう。
非常にポップスとしては優れた曲であるが、それに加えてPVもヘヴィオンエアされていて、それも大ヒットの要因と言えます。

 

この歌われているシェリーというのは、当時のスティーヴのガールフレンドで、PVにも出演しています。
PVの出来については、賛否両論あったが、大ヒットしたことを考えれば概して好意的に受け止められてたのだろう。
僕も、このPVは非常に気に入っている。

 

このソロアルバムはサポートミュージシャンによる演奏が主で、楽曲に関してはスティーヴと他の誰かとの共作がほとんどだ。
この曲に関して言えば、エイリアン・プロジェクトでバンドを組んでいたドラマー、クレイグ・クランプという人が共作であり、ドラムも叩いている。
まさに、デビュー間近まで共に活動した仲間とこうして再びプレイできたと考えると感無量だったに違いない。

 

この曲は、アルバムの先行シングルで、ビルボード誌シングルチャート、第3位の大ヒットとなり、Mainstream Rockチャートでは、No.1を獲得している。

 

2曲目は、I BELIEVE(アイ・ビリーヴ)。

 

この曲はモータウンっぽい、少し古めのポップロックだ。
この辺に、彼の元々のルーツが見え隠れしている。
彼が歌手を目指したきっかけはサム・クックの楽曲だそうだから、このようなソウルフルな楽曲を聴いて育ったに違いない。
当時の音楽を彼なりに吸収して、再構築したのがこの曲だろう。
とても心地よく、ノリの良い曲だ。
ちなみにこの曲にもクレイグ・クランプが共作者としてクレジットされている。

 

3曲目はGO AWAY(ゴー・アウェイ)。

 

AORにジャンル分けしてもいい、とても雰囲気のいいゆったりとした楽曲だ。
シンセが全体を彩っているとはいえ、メインはスティーヴのヴォーカルだ。
良質なポップスである。
ギターソロのメロディも非常に心地よい。

 

4曲目はFOOLISH HEART(フーリッシュ・ハート)。

 

ランディ・グッドラムとの共作による美しいバラードだ。
ジャーニーでは絶対出せない雰囲気だといえる。
シンセの使い方も絶妙だし、その上に乗るスティーヴのヴォーカルが圧巻である。

 

この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャート第18位を記録、また同誌Adult Contemporaryチャートでは第2位を獲得している。

 

5曲目はIT’S ONLY LOVE(オンリー・ラヴ)。

 

アルバム初の元気なロックソングだ。
でも、ジャーニーのようなロックではない。
軽快なポップソングといったほうがいいかもしれない。
A面最後を飾るにふさわしい爽やかな楽曲だ。

 

B面1曲目はSHE’S MINE(シーズ・マイン)。

 

イントロのきれいなシンセの音から一転シャープなドラムにより、少しシリアスな雰囲気の楽曲が始まる。
夜の街が似合うようなアダルトな雰囲気の漂う名曲である。
途中のサックスソロが、その雰囲気をいっそう盛り立てる。
またそれに続くギターも然りだ。
そしてスティーヴのヴォーカルがやはりうまい。
ジャーニーでは聴けない、大人な雰囲気をうまく歌い上げている。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第21位、Mainstream Rockチャートでは第15位となっている。

 

2曲目はYOU SHOULD BE HAPPY(ユー・シュッド・ビー・ハッピー)。

 

エッジの効いたギターリフにより、少しハードな感覚のあるロックである。
ニールのギターとは音色が違うとはいえ、この雰囲気なら一番ジャーニーに近い楽曲と言えるかもしれない。
サビのコーラスもジャーニーっぽくて爽やかだ。

 

3曲目はRUNNING ALONE(ランニング・アローン)。

 

この曲もクレイグ・クランプが共作としてクレジットされている。
きれいなシンセによるイントロから爽やかに楽曲は始まる。
サビも非常にキャッチーで、スティーヴのハイトーンをうまく生かしたとても美しい曲だ。
80’sのHR/HMバンドのバラードのような感じの盛り上がりが心地よい。

 

4曲目は、CAPTURED BY THE MOMENT(キャプチュアド・バイ・ザ・モーメント)。

 

トーンを落として、抑え目に歌い出します。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、ビートルズ、ジャクリーン・ケネディ、サム・クックなど、過去の人物に思いを馳せ、その一瞬一瞬を忘れるな、と歌い上げている。
スティーヴの人生を作り上げてきた過去の出来事全てが色あせないことを願う、魂の叫びのようだ。
感傷的な内容の楽曲をエモーショナルに歌い上げています

 

アルバムラストはSTRUNG OUT(ストラング・アウト)。

 

軽快なポップロックソングだ。
非常にリラックスして聴ける良曲だ。
ジャーニーでは出せないポップ感あふれる楽曲だ。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第40位、Mainstream Rockチャートでは第17位を記録してます。

 

こうしてあっという間に心地よいアルバムは終了する。

まとめとおすすめポイント

1984年リリースの、ジャーニーのヴォーカリスト、STEVE PERRY(スティーヴ・ペリー)の1stソロアルバム、STREET TALK(ストリート・トーク)はビルボード誌アルバムチャート、第12位まで上昇し、アメリカで200万枚の売り上げを達成しました。
ジャーニーほどではなかったが、4曲のシングルヒットも含めて、そこそこの大ヒットではないでしょうか。

 

しかし、やはり驚かされたのは彼がこのアルバムで見せた音楽性だ。
大抵、バンドのヴォーカリストがソロをリリースすると、あまりもとのバンドと変わらない楽曲を出すことが多いものだ。
だが、スティーブはそのような予想と期待に反して、彼の音楽的な背景とともに、ヴォーカリストとしての力量がにじみ出る作品を作り出した。

 

参加したミュージシャンは西海岸の一流スタジオミュージシャンたちで、ジャーニーとは違うベクトルの演奏を聴かせてくれる。
スティーヴの望む音楽を見事に演奏によって表現してくれたようだ。

 

もともとスティーヴは前述のとおりサム・クックの曲に触れて歌手を志したのだが、やはり彼が聴いて育った音楽たちの影響が色濃く出たアルバムとなった。
R&Bに根ざすソウルフルな楽曲、これを彼は目指したようだ。
これはこれまでのジャーニーでは採用されていないことを考えると、スティーヴは自分のやりたい音楽を追求したソロアルバムを作ることに成功したと考えられる。

 

そしてそれが、結果的には次のジャーニーのアルバムRAISED ON RADIO(レイズド・オン・レイディオ)での音楽性の変化への大きな布石となったのだ。

 

また、このアルバムタイトル、「ストリート・トーク」も由来が興味深い。
彼がデビューにまさにこぎつける直前までいった、あのエイリアン・プロジェクトの元の名前がSTREET TALKなのだ。

 

そして、このアルバムが捧げられている人の一人はエイリアン・プロジェクトでデビュー直前に交通事故で亡くなったベーシスト、リチャード・マイケルズだ。
また、当時エイリアン・プロジェクトにドラマーとして参加していたクレイグ・クランプが、Oh、シェリーを始めとする4曲ほどで共作者としてクレジットされており、数曲でドラムも叩いている。

 

こうしたことを考えると、スティーヴの、ジャーニー加入前にかなわなかった夢を果たすという意味も、このアルバムは持っていたのではないか、とも推測できる。

 

ジャーニーからいったん距離を置いて作られたこのソロアルバムは、極上のポップアルバムとなった。
それはジャーニーより気楽に楽しめ、心地よい時間を与えてくれる。
美しい楽曲に、それを表現するプロミュージシャンの絶妙なプレイ、そして、何よりもスティーヴのエモーショナルでソウルフルなヴォーカルを楽しめる。

 

ジャーニーとは違う魅力たっぷりのこのアルバムを堪能して欲しい。

チャート、セールス資料

1984年リリース

アーティスト:STEVE PERRY(スティーヴ・ペリー)

1stアルバム、STREET TALK(ストリート・トーク)

ビルボード誌アルバムチャート第12位 アメリカで200万枚のセールス

1stシングル OH SHERRIE(Oh、シェリー) ビルボード誌シングルチャート第3位、Mainstream Rockチャート、No.1

2ndシングル SHE’S MINE(シーズ・マイン) シングルチャート第21位、Mainstream Rockチャート第15位

3rdシングル STRUNG OUT(ストラング・アウト) シングルチャート第40位、Mainstream Rockチャート第17位

4thシングル FOOLISH HEART(フーリッシュ・ハート) シングルチャート第18位、Adult Contemporaryチャート第2位


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