よりヘヴィで、アグレッシヴな2ndアルバム  SKID ROW - SLAVE TO THE GRIND

前作からの流れ





1989年にリリースされたSKID ROW(スキッド・ロウ)のデビュー1stアルバム、SKID ROW(スキッド・ロウ)はビルボード誌アルバムチャートで第6位、アメリカだけでアルバムを500万枚売り上げる大ヒットを記録しました。

 

当時乱立していたグラム・ロックバンドの中では、抜きん出てヘヴィなサウンドがかっこよかった、というのもあると思いますが、やはり弱冠21歳のヴォーカル、Sebastian Bach(セバスチャン・バック)の強烈で怒れる激しいヴォーカルが、他のバンドと大きな違いを生み出していたのではないでしょうか。
痛快で、なおかつキャッチーでもある1stアルバムは、非常にまとまりがある爽快なアルバムだと思います。
きっとストレス発散にピッタリのアルバムではないでしょうか。

 

1stアルバムリリース後、多くのツアーを行なっています。
まずは、やはり兄貴分とも言うべきBON JOVI(ボン・ジョヴィ)のアルバムNew Jerseyのツアーのオープニングアクトとして半年ほど参加しています。
そして、8月には、ソ連のモスクワで行なわれた、Moscow Music Peace Festival(モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル)でプレイしています。
このフェスは、ソ連における麻薬撲滅運動と世界平和のアピールを目的に行なわれていたもので、Bon JoviMotley Crue(モトリー・クルー)、Ozzy Osbourne(オジー・オズボーン)、Scorpions(スコーピオンズ)など西側のHM/HRバンドが参加したことで有名になったものです。
そこで、スキッド・ロウも他のバンドと遜色ない、素晴らしいライヴを披露しています。
また、その後モトリー・クルーやWhite Lion(ホワイト・ライオン)などともツアーで回っています。

 

数多くのライヴを精力的にこなしていきますが、若きセバスチャンは、Guns N’ Roses(ガンズ&ローゼズ)のAxl Rose(アクセル・ローズ)のように、やんちゃな言動でも知られていくことにもなります。
その中でも有名なのは “The Bottle Incident(ビン事件)”でしょうか。
ライヴの曲中(楽曲Piece of Me)に客席からビンが投げ入れられ、それに怒ったセバスチャンはそれを投げ返し、客席に向かってダイヴ
乱闘になりますが、無事に(!?)曲は途切れることなく演奏し終えます。
しかし、投げたビンは関係ない女性の顔に当たっており、結果として逮捕されたという事件です。

 

そんなこともありつつも、ツアーを続けた彼らは、2ndアルバムの制作に取り掛かります。
ちょうど、この頃、Metallica(メタリカ)や、Pantera(パンテラ)などのメタル系、またとりわけグランジと呼ばれるオルタナティヴロックが人気を博すようになってきており、そうした時代の変化に合わせて、よりヘヴィに、そしてよりダークなアルバムとなりました。

 

では今日は、1991年リリースのSKID ROW(スキッド・ロウ)の2ndアルバム、SLAVE TO THE GRIND( スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)をご紹介します。

SLAVE TO THE GRIND( スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、MONKEY BUSINESS(モンキー・ビジネス)。

 

イントロの乾いたブルージーなギターにのり、セバスチャンが思いっきり抑制した声でひそやかに始まります。
しかし、シャウト一発で、ヘヴィなロックンロールに早代わりです。

 

Aメロからはエアロスミスのスティーヴン・タイラー張りに早口でまくし立てます。
非常に重いヘヴィなバンドサウンドの上で、怒れるヴォーカルがいきなりかっこよすぎます。
いったん、スローダウンしてからも抑えた怒りのヴォーカルが続き、超強烈なロングシャウトからのギターソロが、超絶にかっこいいです。

 

前作より、いっそうハード&ヘヴィなサウンドに大きく変化して帰ってきましたね。
ちょうど、グランジっぽいダークでヘヴィな雰囲気もありつつも、やっぱりスキッド・ロウらしいキャッチーさも決して消えてないところが僕は好きです。
そして、ヘヴィでグルーヴ感たっぷりのバンドのプレイも非常にいいですが、やはりセバスチャンのヴォーカルがキレッキレで冴えまくってますね。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートではチャートインしませんでしたが、ビルボード誌 Mainstream Rockチャートで第13位を記録しています。
前作のハードロックから、今回は非常にメタリックな楽曲となり、チャートアクションはそれほどでしたが、アルバムの初登場No.1獲得に大きく貢献したかっこいい楽曲になってますね。
やはり、ファンも時代もダーク&ヘヴィサウンドを求めるようになっており、そこにけっこうぴったりとはまったのではないでしょうか。

 

2曲目は、アルバムタイトルトラック、SLAVE TO THE GRIND(スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)。

 

前曲からの流れがたまりませんね。
ヘヴィ&ダークネスに、今度はスピード感がプラスされます。
イントロからヘヴィなギターリフがかっこいいですが、ドラムの連打の後の、超ヘヴィな重低音リフのスピード感が超気持ちいいです。

 

やっぱりこの重いリフでの疾走感がかっこいいですね。
スピードメタル、とくくってもいいような、この激走感覚は、タイトルトラックにふさわしい力のこもったものとなっています。
そして、やはり変幻自在なセバスチャンのヴォーカルがいいですね。
抑制されたものから、シャウトまで、この時期の彼は表現力が素晴らしいですね。
アクセル・ローズと同系統のヴォーカルと思いますが、十分に匹敵するフロントマンと思えます。

 

ギターソロもかっこいいソロになっていますが、曲全体の勢いの中ではコンパクトで、おまけのように聞こえてしまいます。
この辺がギターソロに否定的なグランジの影響をちょっと感じさせられます。

 

この曲は、2ndシングルとしてカットされましたが、チャートには登場していません。
しかし、PVはMTVではヘヴィローテーションされ、アルバムの売り上げに貢献したのは間違いありませんし、きっとファンを増やしたのも間違いないでしょう。

 

3曲目は、THE THREAT( ザ・スレット)。

 

この曲も、イントロのギターリフが非常にかっこいいです。
また、ファンキーな雰囲気もあるバンドサウンドのグルーヴ感もいいですね。
曲中のギターリフも、とてもアグレッシヴでいいですし、ギターソロもこの曲ではたっぷり聴けます。

 

スキッド・ロウにはDave “The Snake” Sabo(デイヴ・”ザ・スネイク”・セイボ)と、Scotti Hill(スコッティ・ヒル)の二人のギタリストがいます。
ちょっとどちらがどのプレイをしているのかまでは僕には確定できないのですが、ギターソロやリフに関しては、とてもバランスよくプレイされていると思います。
途中に挟まるブリッジも非常にかっこよいです。
特にデイヴはアルバム中9曲の作曲に関わる主要メンバーとして、スキッド・ロウの曲の良さに大きく貢献していると思われます。

 

この曲はヘヴィ&ファンキーで、とてもいいノリがありますね。
もちろん、セバスチャンのヴォーカルで、曲の良さがさらに高まっているのは間違いありません。

 

4曲目は、QUICKSAND JESUS(クィックサンド・ジーザス)。

 

ここでバラードが配置されてます。
ギターアルペジオによるイントロが美しいですし、その裏でうねっているベースの音もいいですね。
そしてやはりセバスチャンの伸びやかなヴォーカルが美しいです。
怒りを消した、きれいなヴォーカルも彼は持ち合わせているところがいいですね。

 

サビではバンドサウンドのしっかりしたパワーバラードになります。
ギターソロも、バラードにあった美しいメロディを奏であげてますね。
中後半は、セバスチャンの独壇場とも言えるヴォーカルによる盛り上げが見られますね。
ハイトーンの絶唱がとっても切なく、またその裏でギターソロも奏でられ、非常にドラマティックにエンディングへ。

 

ここだけ、80年代のパワーバラードに聞こえますね。
とっても叙情的で、そしてドラマティックな素晴らしい曲だと思います。

 

この曲は5thシングルとしてカットされていますが、チャートインはしていません。

 

5曲目は、PSYCHO LOVE(サイコ・ラヴ)。

 

イントロからベースのゴリゴリした存在感が、かっこいいグルーヴを生み出しています。
この曲はベーシストのRachel Bolan(レイチェル・ボラン)による作曲なのです。
レイチェルは、アルバム中全曲で作曲に関わっており、デイヴとともに、スキッド・ロウの優れた楽曲にコンポーザーとして大きく貢献しています。

 

ベースの出すグルーヴに重なるギターのヘヴィリフが非常にかっこいいです。
この曲もとても重いですが、キャッチーでもあるなかなか良い楽曲です。
中間部で、アルペジオによるゆったりパートがありますが、そこでもセバスチャンの抑揚のあるヴォーカルが楽しめ、シャウトと共にギターソロへ突入。
後半にはちょっとしたベースソロもあり、なかなかカラフルな楽曲になっています。
ラストのセバスチャンのサビの連呼もサイコーです。
そして、ラストのラストで疾走ロックンロールに変わる展開もとてもよいです。

 

6曲目は、GET THE FUCK OUT(ゲット・ザ・ファック・アウト)。

 

アルバム中では、結構明るいノリのハードロック曲ですね。
明るいといっても、ヘヴィなギターリフが、響き渡るかっこよい曲です。
とにかくノリのよい疾走感もある、佳曲ですね。
タイトルの連呼も、悪い言葉ではありますが、もはや爽快そのものです。
重いのにキャッチーな、そしてパンク要素も楽しめるスキッド・ロウらしいヘヴィロックです。

 

7曲目は、LIVIN’ ON A CHAIN GANG(リヴィン・オン・ア・チェイン・ギャング)。

 

イントロがレッド・ツェッペリンのあの曲を思わせるような、素晴らしいヴォーカルを見せてくれます。
この曲では、他の曲も全部そうなのですが、とりわけセバスチャンのすさまじいまでの攻撃的なヴォーカルが披露されています。
もう、怒りに任せて、というか、感情に任せてなのか、とにかくのびのびと歌い上げ、シャウトしまくっています。
もう、その感じが爽快そのものですね。
曲もヘヴィですがキャッチーなので、その良曲を歌い上げるセバスチャンがかっこ良すぎます。
ギターソロも、ツインギターを利用してかっこよく決まってますが、あまりにもヴォーカルがすさまじすぎて、ちょっと霞んでしまってる感じさえします。
テンポは速くありませんが、非常にパワフルで魂のこもった楽曲になっていると思います。

 

8曲目は、CREEPSHOW(クリープショー)。

 

前曲の流れで、ミドルテンポの重いロックです。
少し目立たない感じはありますが、彼ららしいハードロックをやってます。
変わらずヘヴィなギターリフはかっこよいですし、ギターソロもちょいとブルージーな感じもありイカシテます。
加えて、休むことなくまくし立てるセバスチャンも安定のシャウトと歌唱です。
普通のアーティストやアルバムであれば、捨て曲と言われそうな位置にある曲かもしれませんが、それでこのクオリティなので、このアルバムがいかにハード&ヘヴィでまとまっているかを感じられます。

 

9曲目は、IN A DARKENED ROOM(イン・ア・ダークンド・ルーム)。

 

イントロの泣きのギターソロがたまりませんね。
ゴリゴリのヘヴィロックだけでない、叙情的な哀愁楽曲もできるスキッド・ロウ。
こんなバラード歌わせても、セバスチャンは上手すぎます。

 

抑制の効いたヴォーカルから、盛り上がるパートではシャウト気味に声を張り上げます。
このハイトーンが美しいのです。
ギターソロ直前の搾り出す魂の叫びも素晴らしいです。
そのままエンディングまで長いギターソロになりますが、甘い、そして切ないメロディが素晴らしいですね。

 

この曲は4thシングルとしてカットされましたが、チャートインはしていません。

 

10曲目は、RIOT ACT(ライオット・アクト)。

 

前曲で一息ついた後、再び疾走感あるパンキッシュなロックンロールです。
非常にわかり易いキャッチーな楽曲なので、あっという間にノレます。
ギターソロも勢いよくもメロディアスです。
ソロ後は、シャウトで歌い続けるセバスチャンもかっこいいですね。
よくもまあ、これで喉をやられないものだ、と感心します。
コンパクトにまとまっており、一気に駆け抜ける痛快な楽曲です。

 

11曲目は、MUDKICKER(マッドキッカー)。

 

またもヘヴィなギターリフの印象的なメタリックソングです。
この重々しいグルーヴ感もたまりませんね。
もう、かっこいいとしかいいようがないです。
メロディも、ちょっとした中毒性のあるキャッチーさを兼ね備えています。

 

アルバムラスト12曲目は、WASTED TIME(ウェイステッド・タイム)。

 

ラストは、素晴らしいパワーバラードで締めくくりです。
ギターアルペジオに始まり、途中からバンドサウンドが加わるバラード、といういわゆる典型的なパワーバラードのように進みます。
その部分だけでも、やはりセバスチャンの素晴らしいヴォーカルによって、1ステージ上の楽曲になっています。
切ない叙情的なメロディと、曲展開、そして彼のヴォーカルとギターソロ、ここまででも非常にクオリティの高い楽曲だと思いますね。
とりわけ、セバスチャンの絶唱は、こんなパワーバラードではとても映えますね。

 

そして、普通ならギターソロ後のサビの熱唱でフェイドアウトなのでしょうが、この曲はそこから転調し、さらにドラマティックなエンディングへと向かっていきます。
この展開が、一層楽曲を盛り上げ、なおかつ、セバスチャンの魂のこもった絶唱は、リスナーの魂を揺さぶる感動的なものだと思います。
アルバムラストがバラードというと、柔なイメージがありますが、彼らは真のパワーバラードにより、力強くアルバムを締めていると思います。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第88位、Mainstream Rockチャートで第30位を記録しています。

まとめとおすすめポイント

1991年リリースのSKID ROW(スキッド・ロウ)の2ndアルバム、SLAVE TO THE GRIND( スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)はビルボード誌アルバムチャートで、初登場No.1を記録しました。
ちなみにHM/HRのアーティストが初登場でNo.1を取ったのは彼らが初めてだったようです。
また、アメリカで200万枚のセールスを記録しています。

 

時代の流れに逆らわず、ヘヴィネス&ダークネスを一層つきつめた今作は、前作以上にエネルギッシュでかっこいいロックを見せてくれています。
とりわけ、攻撃的なセバスチャン・バックのヴォーカルもよりいっそう磨きがかかり、表現力の向上と共に、パワフルさも増していると思います。
80年代サウンドが少しづつ飽きられていき、グランジが台頭し始めているタイミングでスキッド・ロウが出した答えは、よりダークで攻撃的なサウンドというものだったようです。

 

確かに前作は既に非常に攻撃的でハードなアルバムでしたが、今回はさらにそれをよりヘヴィでスラッシーに成長させています。
僕は、この変化は最初はあまりにヘヴィすぎてとまどいましたが、やはり聞き込むと、かっこいい、という一言しかなかったですね。
それに、そうしたサウンドの雰囲気の変化がありつつも、やはりどこかキャッチーさが残っています。
そこが、僕にとっての評価ポイントです。
ヘヴィ&ダークなんだけども、スキッド・ロウらしい耳障りの良いメロディが残っているのです。
この辺が非常に気に入っています。

 

また、セバスチャンのヴォーカルがかっこよすぎます。
絶唱シャウト系の声もいいですし、バラードで見せる美しい声もたまりません。
バンドも、ツインギターがうまく機能していて、ヘヴィなリフと共にクールなソロ、エモーショナルなソロ、どちらもいけてます。
バンドのグルーヴという面でも、一作目を凌駕しているのではないでしょうか。

 

デビュー時にはセバスチャンのルックスゆえに、アイドルバンド的なイメージがあったスキッド・ロウですが、もはやそんなイメージを吹き飛ばすかのような痛快なヘヴィロックを聴かせてくれました。
80年代の名残はわずかになり、新たな時代へ、その攻撃的なサウンドで立ち向かう様はかっこいいの一言に尽きます。

 

時代の変革期に、彼らの見せた一つの答えである、より激しいロックンロールの楽しめる会心作だと僕は思います。

チャート、セールス資料

1991年リリース

アーティスト:SKID ROW(スキッド・ロウ)

2ndアルバム、SLAVE TO THE GRIND( スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)

ビルボード誌アルバムチャート初登場No.1 アメリカで200万枚のセールス

1stシングル MONKEY BUSINESS(モンキー・ビジネス) ビルボード誌Mainstream Rockチャート第13位

2ndシングル SLAVE TO THE GRIND(スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド) チャートインせず

3rdシングル WASTED TIME(ウェイステッド・タイム) シングルチャート第88位、Mainstream Rockチャート第30位

4thシングル IN A DARKENED ROOM(イン・ア・ダークンド・ルーム) チャートインせず

5thシングル QUICKSAND JESUS(クィックサンド・ジーザス) チャートインせず