80年代のサントラブームの代表アルバム FOOTLOOSE(SOUNDTRACK)
大ヒット連発!! サントラの時代ど真ん中のアルバム
1983年に洋楽を聴き始めた僕は、その年の大ヒット曲、Irene Cara(アイリーン・キャラ)の Flashdance… What a Feeling(フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング)が大好きでよく聴いてました。
他にも映画がらみの楽曲もFMラジオで頻繁にかかってたので、映画からのヒット曲、というのは結構早い時期から馴染んでいました。
しかし、これまでは映画のヒットに、いい洋楽が付属していた、そんな感じがしていました。
飽くまでも、まず映画ありき、そして、それがヒットすれば曲もヒットする、そのようなものだと思っていたわけです。
しかし、ついに映画と音楽とが、まさに表裏一体となった作品が現われました。
それが今日紹介する、映画FOOTLOOSE(フットルース)のサントラ(サウンドトラック)です。
もともと映画のサウンドトラックと言えば、劇中のシーンのバックで使われるインストゥルメンタルが集められているものだと僕は認識していました。
それで、スター・ウォーズのサントラを聞いて、映画のシーンを思い出したりしたものです。
しかし、フットルースはこれまでのものとは大きく異なりました。
洋楽ロックが全9曲収められているのです。
このようなコンピレーション、もしくはオムニバスタイプのサントラが、他に既にあったのかどうかは定かではありませんが、間違いなくかなりな先駆者であることに間違いないでしょう。
そして、その中からトップ40ヒットを6曲も出して、その後のサントラのあり方を、全く変えることになりました。
もはや、映画はヒット曲を出す手段の一つとなり、またヒット曲が出ればそれは大きな宣伝となり映画もヒットする、という新たな図式が生まれたのです。
まさに80年代のサントラブームの火付け役として大きな役割を果たしたのがこのアルバム、ということになると思います。
今日は新たな大ブームを引き起こした、1984年の映画、FOOTLOOSE(フットルース)のサウンドトラックをご紹介したいと思います。
FOOTLOOSE(フットルース)の楽曲紹介
オープニングを飾るのはアルバムタイトル曲、Kenny Loggins(ケニー・ロギンス)の FOOTLOOSE(フットルース ~ メインテーマ)。
もう、文句なしにノリノリで楽しい曲ですね。
ケニー・ロギンスは、Loggins and Messina(ロギンス&メッシーナ)というデュオでの活動や、ソロ活動、また作曲家としても70年代から音楽活動をしていたミュージシャンです。
そこそこヒット曲を出しては来てますが、やはりこの曲で一気に世界中の注目を集めたといってよいでしょう。
僕も、ケニーの曲は初めてでしたが、これは恐らく嫌いな人は少なかったことでしょう。
青春映画の一場面にまさにピッタリな楽曲を作ったと思いますね。
このアルバムでは、収録された9曲の歌詞はすべて、脚本を書いている、 Dean Pitchford(ディーン・ピッチフォード)が書いています。
なので、歌詞の世界が一貫して映画にぴったりな内容になっているようです。
その辺が、単なる洋楽曲の寄せ集めのコンピレーションアルバムとは大きく異なっていると言えるでしょう。
そして作曲はケニー自身です。
映画は、ロックもダンスも禁止されている田舎で、主人公がダンスパーティを企画する、という内容ですが、主人公たちが楽しみながら踊る風景が絵に浮かぶようなゴキゲンな楽曲を作ってますね。
イントロからギターがかっこよく唸ってますが、適度にシンセが混じってまさに80年代のサウンドになってます。
当時、知らない人は誰もいなかったのではないでしょうか。
この映画の大ヒットのおかげで、彼のソロキャリア初のNo.1ヒット曲となりました。
この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで3週連続No.1を獲得しています。
また、1984年の年間チャートでは第4位となっています。
2曲目は、Deniece Williams(デニース・ウィリアムス)の LET’S HEAR IT FOR THE BOY(レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ(当時はレッツ・ヒア・ボーイ))。
この人も当時は僕は知りませんでした。
デニースはスティーヴィー・ワンダーのバックコーラスをしたり、70年代中期からはソロ活動をしていた女性シンガーです。
彼女もこの曲でソロキャリア初のNo.1を獲得しました。
これまた80年代らしいダンスミュージックですね。
キラキラした軽快なポップスになっています。
そしてそこに乗るデニースのヴォーカルも軽やかで、とっても聴き心地がいいですね。
4オクターヴの音域があるといわれてますが、さすが伸びやかに軽やかに歌い上げて極上のダンスポップミュージックに仕上がっています。
この曲は、アルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャート、同誌Dance Club Songsチャート、同誌Hot R&B/Hip-Hop Songsチャートの3部門でNo.1を獲得した大ヒットとなりました。
3曲目は、Mike Reno and Ann Wilson(マイク・レノ&アン・ウィルソン)のALMOST PARADISE (Love Theme from Footloose)(パラダイス~愛のテーマ)。
これはEric Carmen(エリック・カルメン)作曲の極上のバラードです。
当時、いい曲だな、また、二人の声も素敵だな、と感じていました。
しかし、後々、実はこの二人がLOVERBOY(ラヴァーボーイ)とHEART(ハート)のそれぞれのリードヴォーカルだということを知ることになるのです。
それを知ると、なお一層この曲の価値がぐんと高まった気がしました。
このデュエットが可能になったのは、所属していたレコード会社が一緒だったから、ということのようです。
なかなかなミラクルですね。
これも80年代らしいパワーバラードです。
二人の美しい歌声が絡まり合う様は、もう、“ほとんどパラダイス”状態ですね。
この曲はアルバムからの5thシングルとしてカットされ、シングルチャート第7位、Adult ContemporaryチャートではNo.1を獲得しています。
4曲目は、Bonnie Tyler(ボニー・タイラー)の HOLDING OUT FOR A HERO(ヒーロー)。
この曲の作曲者は、Jim Steinman(ジム・スタインマン)というミュージシャンで、前年1983年の、ボニーの全米No.1ヒット曲、Total Eclipse of the Heart(愛のかげり)の作者でもあります。
その縁もあり、今回フットルースの楽曲を手掛けるにあたり、ボニーを起用することにしました。
パワフルな彼女のヴォーカルにピタリとはまったダンスチューンになっています。
大げさとも思える、ドラムのアレンジ、勇壮なコーラス、これでもかと言わんばかりのピアノのグリッサンドの嵐。
そこで、力強く歌い上げるボニーのヴォーカルが見事な迫力を見せてくれますね。
これも80年代らしい雰囲気たっぷりの楽曲になっています。
ド迫力のこの曲は、和製ボニー・タイラーの異名を持つ(!?)葛城ユキさんをはじめ、多くのアーティストにカバーされているので、日本でも馴染みの楽曲ですね。
この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第34位を記録しています。
5曲目は、Shalamar(シャラマー)の DANCING IN THE SHEETS(ダンシン・イン・ザ・シーツ)。
僕はシャラマーも初見だったのですが、70年代から活躍しているR&Bヴォーカルグループのようですね。
あの、Jody Watley(ジョディ・ワトリー)も在籍していたようです。
これも軽快なダンスソングですね。
シンセのメロディが、PRINCE(プリンス)の1999のものとそっくりですね。
80年代らしい、ダンスミュージックになっています。
この曲は4thシングルとしてカットされ、シングルチャート第17位、Hot R&B/Hip-Hop Songsチャートで第18位を記録しています。
6曲目は、再びケニー・ロギンスの I’m Free (Heaven Helps the Man)(アイム・フリー)。
これも爽快な楽曲で、サントラ男ケニーの面目躍如です。
オープニングに続いて、映画にぴったり合った楽曲を作ってますね。
この曲のシンセは、David Foster(デイヴィッド・フォスター)が弾いており、またギターソロはTOTOの Steve Lukather(スティーヴ・ルカサー)が弾いているところも聞きどころとなっています。
この曲は6thシングルとしてカットされ、第22位を記録しています。
7曲目はKarla Bonoff(カーラ・ボノフ)のSOMEBODY’S EYES(誰かの愛が…)。
この人も、僕は知りませんでした。
カーラは60年代末期から音楽活動を行なっており、バンド活動を経て、ソロでもアルバムを出している西海岸のシンガーソングライターです。
この曲はレッツ・ヒア・ボーイの作者と同じ、Tom Snow(トム・スノウ)という人の楽曲です。
アレンジもシンプルな楽曲になってますので、カーラの爽やかな声が映えます。
アルバムの中ではそんなに目立ちませんが、結構いい曲だと思いますね。
この曲はアルバムから、恐らく7枚目にカットされたシングルで、シングルチャート第109位、Adult Contemporaryチャートでは第16位を記録しています。
8曲目は、Sammy Hagar(サミー・ヘイガー)の、THE GIRL GETS AROUND(危険なガール)。
Montrose(モントローズ)を脱退し、VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)に加入するまでのソロ活動期間中に、サミーはここでサントラに参加しています。
まさに、アメリカンロックの王道的な楽曲を聴かせてくれます。
ギターリフのイントロからノリノリのハードロック、ギターソロもかっこよく決めています。
その上、VOA(ヴォイス・オブ・アメリカ)と称されていたヴォーカルを惜しみなく聴かせてくれてます。
ドライヴにもぴったりな、爽快なロックンロールになっていますね。
アルバムラスト9曲目は、Moving Pictures(ムーヴィング・ピクチャーズ)のNEVER(ネヴァー)。
ムーヴィング・ピクチャーズはオーストラリアのロックバンドで、70年代末期から活動していたバンドのようですね。
もはや、聞いたこともなかったのですが、アルバムフットルースのトリを務めることになってます。
シンセから始まり、サックスが豪快に吹き上げるイントロがとても印象的です。
サビのネバネバが耳に残る佳曲です。
ヴォーカルもちょっとワイルドで悪くはないですね。
まとめとおすすめポイント
1984年の映画、FOOTLOOSE(フットルース)のサウンドトラックはビルボード誌アルバムチャートで、11週連続でNo.1を記録しました。
それも、MICHAEL JACKSON(マイケル・ジャクソン)のTHRILLER(スリラー)の連続No.1の記録を37で止めたのが、このフットルースなのでした。
そして、アメリカだけで900万枚を売り上げ、世界では1500万枚売り上げたと言われています。
また、1984年のビルボードの年間アルバムチャートも堂々のNo.1を獲得しています。
当時は次から次に出てくるシングルのため、フットルースの嵐が吹き荒れてた感じがあります。
結局、9曲中6曲をトップ40に送り込み、そのうち3曲がトップ10入り、そしてそのうち2曲がNo.1を獲得しているのです。
まさに社会現象として注目されたアルバムでした。
そしてこれまでの映画サウンドトラックのあり方を変え、これ以降数多くの洋楽ロック&ポップスの楽曲の詰まったコンピレーションサウンドトラックが制作されるようになったのです。
当時、FMラジオから楽曲を録音して、様々なアーティストの楽曲の詰まったカセットテープをせっせと作成していた(これをエアチェックと呼んでいました)僕にとって、まさにこれは勝手に名曲を集めてくれたアルバムのような存在でした。
アルバム一枚で、たくさんのアーティストに触れることができる、このお得感がたまりませんでしたね。
その上、ヒット曲集といった側面もあり、当時のエアチェック派のリスナーたちにはマストなアルバムだったのではないでしょうか。
そして、時代も1984年、という80年代エイティーズサウンドの真っ盛りな中での楽曲たちなので、キラキラしたまばゆいばかりの楽曲で満ちています。
今聞くと、音的にはちょっと古い感じもありますが、とても懐かしく、あの頃の思い出が甘酸っぱく蘇ります。
80年代を懐かしみたい方、また80年代サウンドがどんなものか知りたい方には絶好の一枚だと言えるでしょう。
チャート、セールス資料
1984年リリース
映画サウンドトラック
タイトル FOOTLOOSE(フットルース)
ビルボード誌アルバムチャート11週連続No.1、1984年年間アルバムチャートNo.1
アメリカで900万枚、世界で1500万枚のセールス
1stシングル Kenny Loggins(ケニー・ロギンス): FOOTLOOSE(フットルース ~ メインテーマ) ビルボード誌シングルチャート3週連続No.1、同誌1984年間チャート第4位
2ndシングル Deniece Williams(デニース・ウィリアムス): LET’S HEAR IT FOR THE BOY(レッツ・ヒア・ボーイ) シングルチャートNo.1、Dance Club SongsチャートNo.1、Hot R&B/Hip-Hop SongsチャートNo.1
3rdシングル Bonnie Tyler(ボニー・タイラー): HOLDING OUT FOR A HERO(ヒーロー)シングルチャート第34位
4thシングル Shalamar(シャラマー): DANCING IN THE SHEETS(ダンシン・イン・ザ・シーツ) シングルチャート第17位、Hot R&B/Hip-Hop Songsチャート第18位
5thシングル Mike Reno and Ann Wilson(マイク・レノ&アン・ウィルソン):ALMOST PARADISE (Love Theme from Footloose)(パラダイス~愛のテーマ) シングルチャート第7位、Adult ContemporaryチャートNo.1
6thシングル Kenny Loggins(ケニー・ロギンス): I’m Free (Heaven Helps the Man)(アイム・フリー) シングルチャート第22位
恐らく7thシングル Karla Bonoff(カーラ・ボノフ):SOMEBODY’S EYES(誰かの愛が…) シングルチャート第109位、Adult Contemporaryチャート第16位