6作目にして、ついにスコーピオンズの形が完成 SCORPIONS - LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)

Uli Jon Roth(ウリ・ジョン・ロート)脱退後の流れ





1977年にSCORPIONS(スコーピオンズ)は5枚目のスタジオアルバムTAKEN BY FORCE(暴虐の蠍団 テイクン・バイ・フォース)をリリース。
彼らのアルバムもリリースごとにキャッチーでコマーシャルなハードロックへと変化していっています。
そのため、僕なんかにはとても聴きやすくなっていると思えますが、ギタリストのUli Jon Roth(ウリ・ジョン・ロート)はそのようなバンドの方向性を嫌い、脱退することになります。

 

2作目から5作目からリードギタリストとして、バンドの中心で楽曲を作ってきて、時にはヴォーカルも披露したりなんかしているウリの脱退はバンドにとって大きな出来事となりました。
天才ギタリストとして評価の高い彼は、アルバムのツアーには出ていて、ギタリストとしての務めを果たします。
そうして、1978年には来日し、5回の公演を行なっています。
後にこのライヴの様子は、彼らの初のライヴアルバム、TOKYO TAPES(蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ)としてリリースされ、その後、ウリは自らのプロジェクト、 Electric Sun(エレクトリック・サン)に力を注ぐため、脱退していきます。

 

さすがに天才ギタリストと言われたウリの抜けた穴を埋めるのは簡単ではなかったようです。
オーディションで集まった140人の中からはこれといったギタリストが見つかりません。
それで、地元ドイツに帰り、見つけたのがMatthias Jabsマティアス・ヤプス)。
このマティアスが今日に至るまでパーマネントなギタリストとして、バンドの世界的な飛躍に大きく貢献することになりました。

 

マティアス加入に続いて、バンドは6枚目のスタジオアルバムの製作に取り掛かります。
ちょうどその頃、1stアルバムではスコーピオンズのリードギタリストとして在籍していたMichael Schenker(マイケル・シェンカー)がUFOを脱退します。
その数週間後には、マイケルはスコーピオンズのアルバム制作に参加。
一時は3人のギタリストがいる状態になっていました。

 

このレコーディングでは、マイケルは一般には3曲でプレイを披露していると言われています。
が、後のマイケルのインタビューによると、クレジットされてはいませんが、アルバム全体の多くの楽曲で彼のプレイが収められているようです。

 

こうして、ウリ脱退の後はマイケルとマティアスが埋めることになり、結果的によりキャッチーなハードロックアルバムが完成しました。
この後のスコーピオンズの方向性を完全に決定付けた、そして世界的な成功への道のりを歩み始めたアルバムと言えると思います。

 

では、今日は、1979年リリースのSCORPIONS(スコーピオンズ)の6thスタジオアルバム、LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)をご紹介したいと思います。

LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、LOVING YOU SUNDAY MORNING(日曜の愛劇)。

 

ハードロックアルバムのオープニングにはどうなのか、という声もなかなか多く聞かれるミドルテンポのハードロックです。
確かに、おとなしいイントロに、甘いサビなど、一発目には弱いと言われてもまあ、仕方ないでしょう。

 

でも、いい曲です。
ドラム&ベースのリズム隊のグルーヴはばっちりです。
そしてギタープレイがいいですよ。
まず、切れ味鋭いRudolf Schenker(ルドルフ・シェンカー)のカミソリリフは、もうすでに立派に確立されてますし、ギターソロもかっこいいです。
どうやら、この曲のソロはマイケルのようです。
定かではありませんが、曲中盤のソロがマティアスで、ラストのソロがマイケルのように僕には聞こえます。
いずれにしても、ソロでマイケルが参加しているのは間違いないようです。
ゆったりグルーヴィーな曲中で、エレキギターがリフ、ソロともに目だってかっこよいです。

 

もちろん、Klaus Meine(クラウス・マイネ)のヴォーカルも、スコーピオンズの顔として、既に安定の域に達しています。
1曲目にしては激しさがちょっと足りない気はしますが、スコーピオンズらしいメロディアスハードないい曲だと思います。

 

2曲目は、ANOTHER PIECE OF MEAT(アナザー・ピース・オブ・ミート)。

 

こっちが1曲目でも良かったと感じられる、疾走ハードロックチューンです。
これは、なかなか爽快ですね。
イントロからのハードなギターリフが痛快です。
このグルーヴ感たっぷりのノリノリな感じは、彼らが新たな局面に達した感覚を受けます。
とにかく、このスピーディー&ハードなのにキャッチー
これぞスコーピオンズの真骨頂ではないでしょうか。

 

加えて、ギターソロはマイケルらしさ全開のスピーディーでメロディアスな秀逸ソロが収められてます。
前任者のウリとはまた全然違ったアプローチのソロが聴けますね。
もちろん、どちらも強烈な個性があり、どちらも素晴らしいギタリストだと思います。
それでも、マイケルが1stからずっと在籍していたらどうなってただろう、って妄想も浮かんでしまういいプレイだと思います。

 

3曲目は、ALWAYS SOMEWHERE(果てしなきロード)。

 

ギターアルペジオから始まるこの曲は、哀愁たっぷりの叙情的なバラードです。
こうなると、クラウスの美しいハイトーンヴォイスが冴えまくりますね。
ジャーマンメタルと言われる彼らの持つ音楽性は、日本人のメロディ感覚と似てると言われることもありますが、まさに僕はこんな叙情的なメロディ好きですね。
メロディがいい上に、バンドの演奏もとてもいいです。
泣きのギターソロも、クラウスの声と共に心を揺さぶってくれます。
パワーバラード、という点では既に完成の域に達していると思います。

 

4曲目は、COAST TO COAST(instrumental)(コースト・トゥ・コースト)。

 

ここで、インストゥルメンタル曲が入ります。
この曲は、やはりハードロックアルバム中のインストということで、賛否が分かれますね。
ハイテクギタープレイのインストならばある程度の需要があると思われますが、こういうメロディックなプレイになると、人によっては退屈に感じるかもしれません。
しかし、曲自体メロディがしっかりしてますし、曲展開もよく考えられていて僕は好きですね。

 

また、こういう曲だからこそツインギターが映えますね。
恐らくリフはルドルフが弾いていると思います。
安定の兄のリフの上で、ソロは弟のマイケルが担当しています。
後半のソロでの泣きの入る部分などはマイケルらしくていいです。
またサビメロは、とてもメロディアスで聞けば聞くほど味の出るいい曲だと思います。

 

派手ではありませんが、深みと味わいのあるロックインスト曲と言えるでしょう。

 

5曲目は、CAN’T GET ENOUGH(キャント・ゲット・イナフ)。

 

B面1曲目に当たるこの曲はハードロックで来ました。
これもハードなギターリフが、シンプルなのにノリノリでかっこいいです。
そこで、クラウスのヴォーカルが気を吐いてます。
メタルっぽいヴォーカルが似合ってます。
勢い一発という感じのストレートなハードロックチューンです。

 

6曲目は、IS THERE ANYBODY THERE?(瞑想のレゲエ)。

 

まさかのレゲエとハードロックの融合ということで、アルバム中では異質の楽曲となっています。
また、瞑想のレゲエ、という邦題が何とも言えません。

 

このアルバムリリースの2年前の1977年には、THE POLICE(ポリス)がパンクとレゲエを融合させたアルバムでデビューしたのが関係あるのかわかりませんが、スコーピオンズはハードロックとレゲエをミックスさせた、ちょっとした実験を行なっていますね。
で、出来たものと言えば、確かに最初は違和感を感じましたが、しばらく聴くと、意外にいいのでは、と思わせられました。
レゲエのリズムが根本にありますが、そこに重なるギターリフはやはりスコーピオンズのものですし、軽やかに歌い上げるクラウスの声も間違いなく彼らのものです。
そして、このリズムに乗って歌い上げられるメロディのキャッチーさも確かにスコーピオンズなのです。

 

というわけで、この曲もスルメのように味が出てくる楽曲のような気がしてます。
アルバムの中でちょっとばかり浮いてはいますが、決して悪くありません。

 

7曲目は、LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)。

 

アルバムのタイトルトラックがここに配置です。
勇壮で疾走感のあるイントロから非常にかっこいいです。

 

この曲もギターリフが、曲の全編に渡って楽曲をかっこよく彩ってます。
サビの裏のベースラインがとっても目だってかっこよいです。
また、マイナー調のAメロから始まって哀愁味たっぷりですが、サビで少し明るい雰囲気になる瞬間が非常に心地よいですね。
クラウスのヴォーカルが、とても艶っぽく見事な熱唱になっています。

 

そしてこの曲もソロはマイケルのプレイです。
彼らしい、泣きの入ったメロディからの速弾きプレイです。

 

キャッチー&ハードで、スコーピオンズのアルバムタイトルトラックにふさわしい名曲になっています。

 

ラスト8曲目は、HOLIDAY(免罪の日)。

 

2本のアコースティックギターによる前半は、もう美しい、としか表現できません。
そして、アルペジオに乗って切なく歌い上げるクラウスのヴォーカルがまたたまりません。
歌のメロディラインが、日本人の心の琴線に触れるのを狙ったかのような、マイナー調の哀愁たっぷりのメロディです。
クラウスのヴォーカルに、彼のコーラスがかぶさったとこでは、もう、心が揺さぶられるのが止まりません。

 

そして、そのまま行くのかと思いきや、曲の中盤では、バンドサウンドが加わり、ちょいハードなパワーバラードへと変貌します。
それから再びアルペジオの静かな楽曲へ
この展開もたまりませんね。
曲後半では泣きのギターソロメロディが。
これは恐らくマイケルのプレイと思われます。
そして静かにアルバムはフェイドアウトしていきます。

 

後々まで代表曲の一つとして歌い継がれていく名曲が誕生しました。

まとめとおすすめポイント

1979年リリースのSCORPIONS(スコーピオンズ)の6thスタジオアルバム、LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)はビルボード誌アルバムチャートで第55位を記録しました。
6枚目にして始めてアメリカのアルバムチャートに登場することになったのです。
そしてアメリカでは初めて50万枚を売り上げるヒットを記録しています。

 

ドイツのバンドがついにアメリカ進出の足がかりを掴んだアルバムと言えるでしょう。
シングルは、アメリカでも数曲リリースされてはいるようですが、チャートには登場していません。

 

今回、ギタリストの交代によって、彼らの音楽性が大きく変化したターニングポイントともなっています。
他の記事でも引用していますが、クラウスはこんなことを言っています。

マティアスが加入したとき、我々は我々のスタイルを見つけた
それは速いギターリフと素晴らしいメロディ、それとともにパワーバラードだ。

確かにこのアルバムで、この言葉通りの楽曲を楽しめます。
ルドルフの切り裂くようなギターリフに、クラウスの歌い上げる素晴らしいメロディ
そして、バラードでも、バンドならではの重厚感がありながらも美しくメロディアスな歌メロ。
確かに、ここで、スコーピオンズの音楽が完成した、と言っても過言ではないでしょう。

 

今回は、マティアスは加入したばかりで、ちょうど帰ってきたマイケルにギターソロのおいしいところを全部もっていかれた形になりましたが、この後リードギタリストとしてアルバムリリースごとにめきめきと頭角を表していきます。
で、ギタリストに関して言えば、マイケルはレコーディングで参加したわけですが、バンドはそのままマイケルをギタリストとして受け入れ、そのままツアーにも同行することになります。
つまりスコーピオンズのギタリストとしてマティアスではなくマイケルを選んだわけです。
それでやむなく加入したばかりのマティアスをバンドから降ろすことになりました。
ところが、ツアーに出て数週でマイケルは脱退。
結果としてマティアスが再びバンドに呼び戻され、ついにパーマネントなリードギタリストとしての地位を確立していくのです。
精神的に不安定なマイケルに振り回されたマティアスでしたが、この後バンドが世界的な成功を収める上で大きな貢献をすることになっていきました。

 

もう一つこのアルバムについて付け加えたい点があるとすれば、やはりルドルフのコンポーザーとしての力量になるでしょう。
ウリ時代は、ウリとルドルフで大体半々くらいの割合で作曲した曲がアルバムには含まれていましたが、今回は全曲でルドルフが作曲に絡んでいます
ちょっとマニアックだったウリの曲と比べると、明らかにルドルフの方が聞きやすく馴染み易いメロディがあると思います。
彼の生み出すキャッチーなメロディラインが、スコーピオンズをスコーピオンズたらしめてるのではないかと思えますね。
メロディアスな楽曲を生み出せる才能を持った人が、バンドのリーダーとして存在しているのは非常に大きいと思います。
ジャーマンメタル、と言われる彼らの、時折見せるあの繊細なメロディが、多くのリスナーの心を揺さぶっているのです。

 

このアルバムから世界的な成功に向けて走り出します。
ウリ時代のダークな雰囲気が抜け、アメリカ市場を意識したわかり易いキャッチーなハードロックが楽しめます。
1stアルバム以来に聴けるマイケルのプレイもキラリと光るこのアルバムは一聴の価値があると思います。

チャート、セールス資料

1979年リリース

アーティスト:SCORPIONS(スコーピオンズ)

6thアルバム、LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)

ビルボード誌アルバムチャート第55位 アメリカで50万枚のセールス

 

アメリカビルボード誌においてはシングルのチャートインはありません。