アメリカでの成功へ向けての第2弾 SCORPIONS(スコーピオンズ) - ANIMAL MAGNETISM(電獣〜アニマル・マグネティズム)

前作からの流れ





1979年リリースのSCORPIONS(スコーピオンズ)の6thスタジオアルバム、LOVEDRIVE(ラヴドライヴ)はビルボード誌アルバムチャートで第55位を記録しました。
1972年デビューのドイツのバンドが、ついにアメリカでのチャートインを果たし、50万枚を売り上げることになったのです。

 

もともと2作目以降のギタリスト、Uli Jon Roth(ウリ・ジョン・ロート)の末期ごろからバンドはキャッチーでコマーシャルなハードロックへと方向転換していっていました。
それを嫌ったウリは、ライヴアルバムを最後に脱退。
そこで戻ってきた初代ギタリストのMichael Schenker(マイケル・シェンカー)と、新加入のギタリストMatthias Jabsマティアス・ヤプス)とともに作った6作目は、その方向転換が正しいことを証明し、アメリカでの初ヒットアルバムとなったのです。
もちろん、この時点ではほとんどのギターソロはマイケルがプレイしていたようで、マティアスにとっては研修期間のようなものだったと思われます。

 

しかし、やはり天才マイケルの復帰はバンドの音になくてはならないものだと思ったのか、ルドルフの弟思いの気持ちが勝ったのか、アルバムの完成とリリースを迎えると、マティアスを辞めさせマイケルを正式にバンドに残すことをバンドは決断しました。
そうして、ラヴドライヴリリースに伴うツアーを行います。
ところが、1979年春、ヨーロッパツアー中のフランスで、突如マイケルが脱退します。
前のバンドUFOでマイケルは、アルコールとドラッグの併用で精神的な支障をきたし、失踪からの脱退となっていることから、今回も同じように精神的に変調をきたしたのではないかと思われます。
そのため、バンドは再びマティアスを呼び戻すことになり、ついにこのバンドに永住することになったのでした。

 

その後、ヨーロッパツアーに続き、来日公演を果たしています。
また、アメリカンロッカーTed Nugent(テッド・ニュージェント)のサポートとして全米ツアーに参加し、アメリカでのより大きな成功への足掛かりを固めていきます。

 

この頃1979年末にはウリ在籍中の4作のアルバム(2nd~5th)からのセレクションで初のベストアルバム、BEST OF SCORPIONS(蠍団伝説~スコーピオンズ・ベスト)をリリース。
米ビルボード誌アルバムチャートで第180位を記録しています。

 

そして、ついにウリもマイケルもいない状態で、スコーピオンズは新たなアルバムの制作に入ります。
リードギターにマティアス・ヤプス、サイドギターにRudolf Schenker(ルドルフ・シェンカー)と、この二人によるツインギター時代が始まります。
そして、ヴォーカルにKlaus Meine(クラウス・マイネ)、ベースにFrancis Buchholz(フランシス・ブッフホルツ)、ドラムスにHerman Rarebell(ハーマン・ラレベル)の5人による黄金期が始まります。
まだ、発展途上にあるマティアスですが、真のメインリードギタリストとしての第一歩をここで刻み始めました。

 

では、今日は1980年リリースのSCORPIONS(スコーピオンズ)の7thスタジオアルバム、ANIMAL MAGNETISM(電獣〜アニマル・マグネティズム)をご紹介したいと思います。

ANIMAL MAGNETISM(電獣〜アニマル・マグネティズム)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、MAKE IT REAL(メイク・イット・リアル)。

 

ルドルフ作曲の、キャッチー&メロディアスなゆったりハードロック曲です。
やはり、このイントロの二つのギターがたまりませんね。
切れ味鋭いルドルフのカッティングから始まるマティアスのメロディアスなソロプレイ。
この2人の相性の良さが見事に表現されているとともに、スコーピオンズのキャッチーハードロックの完成形を見るかのようです。

 

そして、哀愁味たっぷりのクラウスの歌メロもポップで非常に心地よく聞けます。
この歌メロの良さが、このバンドの最大の特徴と言ってよいでしょう。
ハードなバンドサウンドに乗ったクラウスのヴォーカルはもはや無敵だと思えます。
サビの歌メロに絡むギターソロメロディが絶妙で秀逸です。

 

間奏のブレイクでのハードなギターカッティング、それに続くギターソロ。
ソロはマイケルほどの鮮烈なものはなく、マティアスにはまだ荷が大きいのかと思えますが、今後成長していくプレイに期待できます。

 

ジャーマン・メタルを追求する人にとっては、ポップすぎて多少物足りないかとは思われますが、後々まで愛される代表曲の一つでこのアルバムは幕を開けました。

 

この曲はシングルカットされていますが、イギリスで第72位を記録しているのみになっています。

 

2曲目は、DON’T MAKE NO PROMISES (YOUR BODY CAN’T KEEP)(密約の証)。

 

アルバム中唯一マティアスが作曲した曲で、短いですがスピード感あふれるハードロックチューンになってます。

 

イントロのギターリフが非常に心地よいです。
この疾走感もスコーピオンズの魅力の一つですね。
クラウスの絞り出すヴォーカルがメタリックに歌い上げてます。
ギターリフに関してはおそらくルドルフがメインで、シンプルなリフを非常に軽快に刻み続けてます。
この安定のルドルフが、自分の仕事に徹するからこそ、リードギタリストが映えるのでしょう。
マティアスは、この曲ではソロもアウトロでもマイケルばりに弾きまくっています。

 

メタリックだけどキャッチーさがキープされてて、非常に痛快な楽曲だと思います。

 

3曲目は、HOLD ME TIGHT(ホールド・ミー・タイト)。

 

ルドルフ作曲の、ヘヴィ&スローの楽曲です。

 

切り刻むような鋭いギターリフと、低音に響くベース音が広がって独特のグルーヴ感があります。
サビでのクラウスのシャウト気味のハイトーンが冴えています。

 

ギターソロはイマイチですが、全体としてブラッシングを多用したダークな雰囲気づくりのエレキが印象的です。

 

4曲目は、TWENTIETH CENTURY MAN(20世紀ジャングル)。

 

ルドルフ作曲の、ミドルテンポのハードロック曲です。

 

イントロや全体で広がるスライドを混ぜた軽快な雰囲気のギターリフが印象的です。
このリフの切れ味が良いので、多少歌メロが地味でもカバーされていると思います。
リフに絡むリードギターはオリエンタルな雰囲気が漂ってます。
ソロは勢いよく始まりますが、そんなに特筆すべきではない感じです。

 

それにしても、20世紀ジャングルって・・・w

 

5曲目は、LADY STARLIGHT(レディ・スターライト)。

 

ルドルフ作曲の叙情的な絶品バラードです。

 

アコギをベースに、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、オーボエ、ホルンといった、クラシック要素のある楽器たちが優しい世界を作り上げています。
これまでのスコーピオンズの枠から、さらに大きく飛び出した、新たな可能性を感じさせる楽曲だと思います。
この曲があるからこその、後のオーケストラとの共演のアイディアにつながっていったことが容易に予想できます。

 

牧歌的な雰囲気の中で、伸びやかに歌い上げるクラウスのヴォーカルが絶品ですね。
バックの美しいメロディに全く引けをとらない彼の天性の声質は、スコーピオンズにはなくてはならない強力な武器だと思います。

 

そして中盤から「ルドルフ」による、叙情的で美しいギターソロが入ります。
これがまた、琴線に触れるような素晴らしいタッチと音色、そしてメロディを持っていますね。
いつもは強力なバッキングで目立っている彼も、リードギタリストとしても十分な才能があることがわかります。
さすがにマイケルの弟だけのことはありますね。

 

アルバムのハイライトとも呼べる、ドラマティックな大作バラードに仕上がっています。

 

6曲目は、FALLING IN LOVE(フォーリング・イン・ラヴ)。

 

ドラムスのハーマン・ラレベル作曲の、軽快なハードロックです。

 

イントロのギターリフが、非常にアメリカナイズされていますね。
ミュート音とディレイの組み合わせは鉄板です。

 

その後に続くリフも、ブラッシングを交えてヘヴィにかっこよくできてますね。
歌メロは特別に良いわけではありませんが、十分にキャッチーでいいです。
ハモリのクラウスのシャウトが気持ち良いですね。

 

ギターソロはたっぷりマティアスが弾きまくってます。
ややマイケル風の部分がありますが、彼の才能の開花は始まったばかりです。

 

7曲目は、ONLY A MAN(蠍の紋章)。

 

ルドルフ作曲の、ヘヴィなシャッフルリズムが気持ち良いロック曲です。

 

イントロではいきなりクラウスのヴォーカルのみで主旋律が歌われていきます。
そこに、バンドサウンドが加わるのが半拍ずれているので、効果的なリズムトリックが完成していますね。(実際は、ヴォーカルの歌い出しに音のない半拍が入っている。)
このAメロの歌とシンクロするヘヴィなギターリフが非常にかっこよいです。

 

荒々しいギターソロもダークな雰囲気を生かしていますね。
サビの歌メロはやっぱりキャッチーなので、ヘヴィなのに聴きやすいスコーピオンズ流です。

 

重厚感と弾むリズムが両立する、なかなかの名曲だと思います。

 

8曲目は、THE ZOO(背徳の街角)。

 

ルドルフ作曲の、こんどはかなりゆったりのシャッフルメタルソングです。

 

これまたイントロからギターリフがキレまくってます。
ギターの切れ味が鋭く、カミソリのようにダークな雰囲気を演出しています。
間奏では、マティアスによるトーキングモジュレーター使用による長くねちっこいギターソロがプレイされています。

 

重々しいリズムでどっしり進むABメロから、キャッチーに盛り上がるサビへの展開が非常にいいです。
スコーピオンズの定番曲として、その後ライヴで披露される名曲として誕生しました。

 

この曲をはじめとして、アルバムの多くの楽曲は、前年の初アメリカツアー中に作られた曲です。
ルドルフがこのリフを聞かせると、クラウスはその前に訪問してた時のN.Y.の通りを思い出したようです。
そして、その様子を冗談で“ZOO”と表現しています。
人通りが動物園のように見えたのかもしれませんが、ZOOにはごったがえした場所、混乱状態、などの意味もありますからそっちでしょうね。
実際、クラウスはマンハッタンの42nd Street(42番街)を歌詞中に入れてます。

 

まあ、邦題が「背徳の動物園」にならなくてよかったと思いますw

 

ラスト9曲目は、ANIMAL MAGNETISM(アニマル・マグネティズム)。

 

最後はルドルフ作曲の、アルバムタイトルトラックです。
非常にヘヴィでダークな世界を構築しています。

 

イントロのソロギターから激しく歪んだ音でこの世界に導入していきます。
3連のリズムがまた効果的に世界観を作り上げています。
クラウスのヴォーカルも、次第に狂気じみていき、曲を不気味に盛り上げていきます。
ギターソロも、歪みたっぷりで曲調にピッタリのダークなメロディを紡いでいます。

 

ラストのクラウスの不気味な笑い声も含めて、スコーピオンズのダークサイドを表現したおどろおどろしい楽曲でアルバムは幕を下ろします。

 

ちなみに、アニマル・マグネティズム(動物磁気)とは、フランツ・アントン・メスメルというドイツ人の医師が18世紀ごろ提唱した治療法のことのようです。
一種の催眠療法の走りのような療法で、生命体が持っている磁気をコントロールすることで病気を治そうとするものだったみたいです。
まあ、怪しさ満点の治療で、まさにこの曲もそんな怪しさたっぷりの楽曲になってますね。
アルバムの邦題は「電獣」となってますが、この原題から考えると、「磁獣」というのが正しいかもしれません。
まあ、どちらにしても、僕はこんな邦題はいらないと思ってますけどw

まとめとおすすめポイント

1980年リリースのSCORPIONS(スコーピオンズ)の7thスタジオアルバム、ANIMAL MAGNETISM(電獣〜アニマル・マグネティズム)はビルボード誌アルバムチャートで第52位を記録し、アメリカで100万枚を売り上げました。
ついにアメリカでミリオンセールスに成功したわけです。

 

今回のトピックとしては、やはりウリが抜け、そして前作かかわったマイケルも抜けての作品となったということになるでしょう。
そんな超個性的な優れたギタリストが抜けて、いったいどうなるのか、と心配した声もあったかと思いますが、後任のマティアスはしっかりと仕事をしたと思いますね。
この時点では、彼の強烈な個性というものはそんなに感じられませんが、ルドルフのサイドギターとうまい具合に役割分担して、ツインギターとしては十分なレベルのプレイをしてるのではないでしょうか。
この作品以降、マティアスのプレイもスコーピオンズにはなくてはならないサウンドを提供していくことになりました。

 

作品自体の評価は、名作に囲まれているためかあまり高くないこの作品ですが、なかなか粒のそろったいいアルバムではないかと思います。
スコーピオンズ節とも言える、キャッチーなハードロック、という形の路線は前作からしっかりと延長され、踏襲されています。
そういう意味では手堅い作品と思います。
やはりルドルフを中心とした、コンポーザーの能力がこの辺に貢献しているのではないでしょうか。
とにかく、バンドとしてハードロック、またヘヴィメタル、といった雰囲気を持っているのに、メロディはキャッチーでメロディアスなのです。
これこそが、スコーピオンズの最大の特徴だと思っています。
だからこそ、この後世界的にヒットを重ねていきますし、ドイツでも国民的バンドとして認知されることになっていくわけですね。
メタル系で国民に愛される、ってちょっとありえなさそうですが、彼らの美しいメロディラインは一般にもウケるポテンシャルがあるということでしょう。

 

そのキャッチーなハードロックのバンドサウンドの上でフロントを任されられたクラウスのヴォーカルもやはり特筆すべきでしょう。
自慢のハイトーンを生かして、メタリックソングからバラードまで見事に歌いこなしています。
彼は、ヴォーカルとしてのギフトを、すばらしい形でスコーピオンズに落とし込んでいるのではないでしょうか。
僕は、彼のヴォーカルが最高級に好きですね。

 

作品としては前作の延長線にあるということもあり目立ちませんが、レディ・スターライトという、彼らに新たな魅力を付け加えたバラードも収められています。
この作品で見せた管弦楽とのケミストリーも、今後の活動に影響を及ぼす大きな起点となったに違いありません。

 

全体としては地味ではあっても、後に代表曲と呼ばれる楽曲も複数含まれているこの作品は、キャッチー&ハードロックという彼らの特徴を盤石にする過程でなかなかの粒よりとなっています。
次の大ヒット作につながる布石としての存在感は十分に持ち合わせていると思いますね。

 

ドイツから世界へ飛び出そうとする、まさにその前夜の雰囲気のあるこの作品は、良作として僕は一聴をお勧めしたいと思っています。

チャート、セールス資料

1980年リリース

アーティスト:SCORPIONS(スコーピオンズ)

7thアルバム、ANIMAL MAGNETISM(電獣〜アニマル・マグネティズム)

ビルボード誌アルバムチャート第52位 アメリカで100万枚のセールス

 

アメリカビルボード誌においてはシングルのチャートインはありません。