世界一忙しい男の絶妙ポップアルバム PHIL COLLINS - NO JACKET REQUIRED(フィル・コリンズIII)

PHIL COLLINS(フィル・コリンズ)との出会い





1983年に、一曲の渋い曲をFM番組、クロスオーバー11で見つけた。
GENESIS(ジェネシス)というバンドのTHAT’S ALL(ザッツ・オール)という曲だ。
ジェネシス、という名前は聞いたことがあったが、昔からあるバンド、ってくらいしか知らなくて、この曲で初めてその楽曲に触れたのだ。

 

暗いロックだったが、ピアノがうまく入ってて、とてもおしゃれに聴こえた。
そして一番僕の耳をとらえたのは、そのヴォーカルである。
暗いとは言え、何かしっかりとフックのあるメロディを歌い上げている男性ヴォーカルをとても気に入ってしまった。

 

しかし、そのときは予算の関係もあり、それ以上ジェネシスを探求することはなかった。
が、その後別の形でその男性ヴォーカリストと再開する。

 

1984年、まさにこのころは映画のサウンドトラックと、ロック&ポップスのヒットは切っても切れない関係になっていた。
フットルース、ゴーストバスターズ、ネヴァーエンディングストーリーなどの映画のサントラから大ヒット曲が大量生産されていた中、一つの映画からも一曲の大ヒットが生まれた。
映画のタイトルは、AGAINST ALL ODDS(邦題:カリブの熱い夜)。

 

そしてヒットしたのは、タイトルソングとなっている、PHIL COLLINS(フィル・コリンズ)のAGAINST ALL ODDS (Take a Look at Me Now)(邦題:見つめて欲しい)である。
あのときのジェネシスのヴォーカリストのソロ作品なのだ。
この曲も非常に良くて、素晴らしいバラードになってます。
また、サビで盛り上がるにつれ力強さを増していくフィル・コリンズのヴォーカルにまたも魅せられるのでした。

 

この曲はビルボード誌シングルチャートで堂々No.1を獲得しています。
また、同誌Mainstream RockチャートでもNo.1、同誌Adult Contemporaryチャートでは第3位と大ヒットになっています。
全英チャートでも第2位です。

 

次に彼に会うのは同じ年の暮れ、EARTH,WIND & FIRE(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)のメンバーのPhilip Bailey(フィリップ・ベイリー)のソロ作品だ。
ベイリーのソロアルバムのプロデュースを依頼されたコリンズは、ついでにベイリーとのデュエット曲を共作で作り、ヒットするのである。
EASY LOVER(
イージー・ラヴァー)である。
この曲も80年代を代表する楽曲の一つといっていいでしょう。
コリンズのドラムの生音を生かしたポップセンスと、ベイリーのハイトーンヴォイスが組み合わさった絶品のポップデュエットソングになっています。
PVでも、二人がおしゃれなスーツ姿で、並んでデュエットする様子が印象的です。
また、オフショット満載で、非常に楽しい現場だったことも窺えます。

 

この曲はビルボード誌シングルチャートでは第2位まで上昇しています。
全英チャートではNo.1を獲得してます。

 

フィル・コリンズのソロ活動

そんなコリンズは、ジェネシスとは別に既に2枚のソロアルバムを出していました。

 

1981年、1stソロアルバム、FACE VALUE(夜の囁き)は、ビルボード誌で第7位、アメリカで500万枚を売り上げています。
彼の母国イギリスではNo.1を記録しています。

 

1982年、2ndアルバム、HELLO,I MUST BE GOING!(フィル・コリンズ 2:心の扉)はビルボード誌で第8位、アメリカで300万枚を売り上げました。
イギリスでは第2位となっています。

 

ジェネシスのドラマー、ヴォーカルということもありますが、やはりその優れたソングライティング能力により、これだけの好成績を収めているようです。

 

そんな彼が、ついに3枚目のソロアルバムを出します。
「見つめて欲しい」と「イージー・ラヴァー」という大ヒットにより大きな注目を浴びていたコリンズは、その期待に違わぬ素晴らしいポップアルバムを作り出しました。

 

今日は1985年リリースの、PHIL COLLINS(フィル・コリンズ)3rdアルバム、NO JACKET REQUIRED(フィル・コリンズIII)をご紹介します。

NO JACKET REQUIRED(フィル・コリンズIII)の楽曲紹介





オープニングを飾るのは、SUSSUDIO(ススーディオ)。

 

いきなり元気のいい超ノリのよい楽曲だ。
ダンサブルで、キャッチーなサビ
打ち込みの音が、かっちりとリズムを決めていて、その上にコリンズの上手いヴォーカルが乗っている。
本職のドラマーがドラムマシーンでリズムを作るって、めちゃめちゃ割り切ってますね。
しかしおかげで非常にメリハリのある、ノリノリの楽曲に仕上がってます。
また、ホーンセクションが楽曲を大きく盛り上げる要素になっています。

 

PVでは、パブで彼らが演奏を始めますが、最初は見向きもしなかったお客さんが、曲が進むにつれてどんどん盛り上がっていく、という内容のものでした。
まあ、それ自体は演技ではありますが、誰もが楽しめる楽曲であることは間違いありません
また、雰囲気がプリンスの1999に似てると当時から言われていたようですが、僕はそんなに気になりません。
これをパクリと言ったら、他にも大量の盗作曲を訴える必要が出てくるでしょう。
雰囲気はちょっと似てはいますが、そこにとどまってると思います。
コリンズ自身もその類似性は否定していません。
そして、彼もプリンスの作品のファンであり、ジェネシスのツアーの時に良く聴いていたことを思い出す、とは語ってます。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートでNo.1を獲得しています。
また、同誌Dance Club Songsチャートで第4位と、ダンサブルな楽曲としても高い評価を得ています。

 

2曲目はONLY YOU KNOW AND I KNOW(ユー・ノウ&アイ・ノウ)。

 

この曲もホーンセクションがふんだんに用いられたノリの良い曲です。
また、シンセの音使いもまさに80年代のサウンドとなっています。
この曲では、コリンズはドラムとドラムマシンを合わせて用いてちょっとヘヴィなサウンドを刻んでいます。
さらにベースやキーボードもコリンズはこの曲で演奏していて、マルチプレイヤーであることを見せ付けてますね。
なかなか良い曲だと思います。

 

3曲目はLONG LONG WAY TO GO(ロング・ロング・ウェイ)。

 

この曲ではコリンズはキーボードを弾いてますし、ドラムマシーンによる打ち込みを使ってます。
静かに繰り広げられる世界にかすかにジェネシスのサウンドが感じられます
また、サビではTHE POLICE(ザ・ポリス)のSTING(スティング)がバックヴォーカルを務めているところが特徴的な楽曲です。

 

4曲目はI DON’T WANNA KNOW(知りたくないの)。

 

これは本人がドラム叩いてますね。
ドラムマシーンもいいですが、生ドラムもいいです。
非常にキャッチーな楽曲です。
フックのあるメロディと、コリンズの味のあるヴォーカルによってとても軽快で聴き易い良曲になってます。
サックスソロも、いい感じで楽曲を飾ってますし、少し激しいギターリフが入るところもしゃれてます。
後半のギターソロのメロディもいい感じで曲を爽やかなものにしてとてもいいです。

 

5曲目はONE MORE NIGHT(ワン・モア・ナイト)。

 

静かなバラードです。
「見つめて欲しい」のように熱く激しくはありません。
今回は、静かに静かに歌い上げます
曲全体をシンセとストリングスが美しく彩ってます。
後半のサックスソロも素敵な雰囲気をかもし出してます。
優しい優しい静かな大人の切ないラヴソングです。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートでNo.1を獲得、同誌Mainstream Rockチャートでも第4位を記録しました。
また、同誌Adult ContemporaryチャートでもNo.1に輝いてます。
やはり大人な楽曲なのです。

 

6曲目はDON’T LOSE MY NUMBER(ドント・ルーズ・マイ・ナンバー)。

 

これもノリのいい楽曲です。
この曲ではドラムとドラムマシンをあわせて用いてます。
やはりメロディがとてもいいので、ポップロックとして非常に出来が良いものとなってます。

 

PVがコミカルで、いろんな他のアーティストのビデオをパロったものとなってます。
俳優志願もある彼にとって、演技は非常に楽しめたのではなかろうかと思われます。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第4位を記録しています。

 

7曲目はWHO SAID I WOULD(フー・セッド・アイ・ウッド)。

 

これはススーディオのアナザーヴァージョンのような感じの曲です。
勢いがあってノリがよくて、ホーンセクションが曲を飾ってます。
歌メロは違いますが、曲の構成要素はほぼ同じっぽいですね。
なので、決して悪くはありません。
元気で楽しい曲です。

 

8曲目はDOESN’T ANYBODY STAY TOGETHER ANYMORE(静寂の扉)。

 

この曲ではコリンズはドラムを叩いてます。
邦題の割りに、静かではない楽曲です。
これも、アルバムの中では、ジェネシスの雰囲気が感じられるわずかな楽曲の一つのようです。
そう考えると、この邦題はジェネシスの曲になら付きそうなタイトルみたいですね。

 

9曲目はINSIDE OUT(インサイド・アウト)。

 

コリンズの叩くドラムは毎度印象的である。
この曲もジェネシスのプログレっぽい雰囲気が漂っている。
と思いきや、サックスが心地よく流れて、気持ちよい雰囲気もある。
ラストはギターソロでしめる。
決して悪くはないが、ちょっと目立たない曲ではあります。

 

アルバムラストはTAKE ME HOME(テイク・ミー・ホーム)。

 

ミディアムテンポのポップソングです。
この曲のバッキングコーラスが非常に豪華になってます。
3曲目でもコーラスで参加しているスティング、
元ジェネシスのPeter Gabriel(ピーター・ガブリエル)、
カルチャー・クラブのアルバムで、迫力あるコーラスを聞かせていたHelen Terry(ヘレン・テリー)。

 

ただ、惜しむらくは、あまり3人の声が聞き分けできるほどはっきり聴こえないです。
でも、この3人が参加してると知るだけでもなんか豪華な気がします。
楽曲は、ドラムマシーンで凝ったリズムを作っていますが、メロディの流れとしてはシンプルで、リフレインの多いものとなってます。
なので、雰囲気はいいのですが、ちょっと単調で長く感じてしまいます(5’51″)。

 

しかし、この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第7位、同誌Adult Contemporaryチャートでは第2位を記録しています。

 

アルバムは以上ですが、CD盤では後一曲”We Said Hello Goodbye“という曲がボーナストラックとして収録されています。

まとめとおすすめポイント

1985年リリースの、PHIL COLLINS(フィル・コリンズ)の3rdアルバム、NO JACKET REQUIRED(フィル・コリンズIII)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得、また全英チャートでもNo.1です。
他にも、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ノルウェー、ニュージーランド、スペイン、スウェーデン、スイスなどでNo.1を獲得、世界的なヒットとなりました。
また売り上げは、アメリカだけで1200万枚、全世界では2000万枚売れたと言われています。

 

ちなみにアルバムタイトルがNO JACKET REQUIREDになったエピソードも良く知られています。
このタイトルはシカゴのあるレストランでの出来事にちなんで名づけられています。
コリンズは、元Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)のヴォーカル、Robert Plant(ロバート・プラント)と共にそのレストランに入ろうとしたが、プラントは入場許可されましたが、コリンズは入場を拒否されます。
なぜかというと、その店には”jacket required“(ジャケット着用必須)のドレスコードがあったからだ。
しかし、コリンズはジャケットを着用していたので、異議を唱えたのだが、レストランの支配人は、「そのジャケットはproper(適切な、きちんとした)ではない」と主張。
後にコリンズは、人生でこんなに頭にきたことはなかったと語っている。
この出来事の後、コリンズはしばしばショーの際に、この出来事について語り、公然と非難してます。
その結果、レストランの経営者は、後に無料で軽いシングルのジャケットとお詫びの手紙を送り、その手紙には、好きなものを着て来場いただけることが書いてあったそうだ。

 

というわけで、皮肉も込めてアルバムタイトルはNO JACKET REQUIRED(ジャケット着用不要)にしたそうです。
恐らく、このアルバムは、ドレスコードなど堅苦しいこと抜きに誰でも楽しめますよ、という意味も込めてるんじゃないかと僕は思ってます。

 

その気持ちが通じたのか、アルバムは世界的な大ヒットを記録してしまったのでした。

 

その大ヒットの要因は、やはり楽曲の良さになるでしょう。
ジェネシスにポップセンスを持ち込んだのはコリンズだと言われていますが、その持ち前のセンスが十分に生かされたアルバムになっています。
もはや売れ線という言葉が似合うほど、彼の楽曲はキャッチーで、誰からも愛される要素が満載です。
ダンサブルな曲は楽しく聴けますし、バラードはしっとりと心地よい空間を楽しめます。
まさに80年代のサウンドの申し子とも言えるコリンズの才能が爆発したアルバムと言えるでしょう。

 

加えて、PVなどで垣間見える、彼のちょっと出たがりでひょうきんなおっさん、というキャラクターも人気の一つだったに違いありません。
ヴォーカルは確かに上手いし、ソウルフルではあるものの、それを歌ってるのが、ちょっと頭髪の薄くなった巻き毛のおっさん、というそんなギャップも人気の理由の一つにあげられるでしょう。
その上、このごろから囁かれだしている、世界一忙しい男、という話題性も、彼の人気に拍車をかけたものと思われます。

 

この憎めないキャラのおっさんが作り上げたエイティーズ感満載のアルバム、誰もが楽しめる優れたポップアルバムになっています。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:PHIL COLLINS(フィル・コリンズ)

3rdアルバム、NO JACKET REQUIRED(フィル・コリンズIII)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで1200万枚、世界で2000万枚のセールス

1stシングル ONE MORE NIGHT(ワン・モア・ナイト) ビルボード誌シングルチャートNo.1、同誌Mainstream Rockチャート第4位、同誌Adult ContemporaryチャートNo.1

2ndシングル SUSSUDIO(ススーディオ) シングルチャートNo.1、Mainstream Rockチャート第10位、Hot R&B/Hip-Hop Songsチャート第7位、Dance Club Songsチャート第4位、Adult Contemporaryチャート第30位

3rdシングル DON’T LOSE MY NUMBER(ドント・ルーズ・マイ・ナンバー) シングルチャート第4位、Mainstream Rockチャート第33位、Adult Contemporaryチャート第25位

4thシングル TAKE ME HOME(テイク・ミー・ホーム) シングルチャート第7位、Mainstream Rockチャート第12位、Adult Contemporaryチャート第2位

また、後に発売されたデラックスエディションでは、お歳を重ねたコリンズの画像がジャケットで使われてます。
歳をとるって怖いけど、これほど堂々と魅せてくれるコリンズさんはすばらしいと思います。