バッドボーイズロックの体現バンド Mötley Crüe - THEATRE OF PAIN
Mötley Crüe(モトリー・クルー)との出会い
HM/HR好きの僕にとって、80年代中後期は特に幾多のバンドの誕生によって楽しませてもらっていました。
その中でも異彩を放っていたMötley Crüe(モトリー・クルー)が目に入らないわけはありませんでした。
MTVで見たPV、SMOKIN’ IN THE BOYS ROOM(スモーキン・イン・ザ・ボーイズ・ルーム)では、いかにもLAメタルらしい格好のバンドメンバーがノリノリの楽曲をやっています。
そして、もう一曲HOME SWEET HOME(ホーム・スウィート・ホーム)では、80年代を代表するパワーバラードを披露しています。
今日はそんな2曲が収められたアルバムを紹介したいと思います。
Mötley Crüe(モトリー・クルー)とは
モトリー・クルーは1981年に、 ベーシストのNikki Sixx(ニッキー・シックス)を中心に、結成されています。
ドラマーに、Tommy Lee(トミー・リー)、ギタリストにMick Mars(ミック・マーズ)そして最後に加わったのが、ヴォーカルのVince Neil(ヴィンス・ニール)です。
その時点で全員10代だったといいます。
元々、リーダーのニッキーは、 David Bowie(デヴィッド・ボウイ)とSex Pistols(セックス・ピストルズ)とBlack Sabbath(ブラック・サバス)をミックスしたようなバンドにしたかったようです。
それで、グラムロック寄りのヴィジュアルに、ハードロック、もしくはメタルサウンドを融合させました。
このファッションとメタルとの融合はグラムメタル、ヘアメタル(日本でのみLAメタルと呼びます)というムーヴメントを起こし、多くのフォロワーバンドを生み出すことになりました。
そして、1982年にはToo Fast For Love(邦題:華麗なる激情)でデビューします。
このアルバムはビルボード誌のアルバムチャートで、第77位、アメリカで100万枚を売り上げました。
しかし、デビュー前から、ドラッグ、アルコール漬けの日々を送っており、デヴィッド・リー・ロスやスティーヴン・パーシーらと共に堕落した生活を送っていたそうです。
まあ、これをロックだ、といってしまうのは簡単ですが、この自堕落な習慣は、後々多くの面倒や騒ぎを引き起こしていくわけです。
身から出たサビということでしょうか。
翌1983年3月には、KISS(キッス)のサポートとしてツアーに参加しますが、ドラッグ・アルコール癖の酷さを理由に僅か数公演で外されることになります。
それでも、人気は上昇していきます。
同年5月、『USフェスティバル』にVAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)、OZZY OSBOURNE(オジー・オズボーン)、SCORPIONS(スコーピオンズ)、などなど大物バンドと共演。
まだ、アマチュアに近い彼らの演奏は、結構ひどかったらしいですが、むしろそのラフな感じがまた良かった、という意見もあります。
そして同年9月には2ndアルバム、Shout At The Devil(シャウト・アット・ザ・デヴィル)をリリース。
アルバムチャートは第17位に躍進、アメリカだけで400万枚を売り上げるヒット作になります。
翌1984年には、オジー・オズボーンのサポートとして全米ツアーを敢行。
4月からはSAXON(サクソン)、RATT(ラット)、ACCEPT(アクセプト)らを従えてヘッドラインツアーも行なってます。
8月にはMONSTERS OF ROCK(モンスターズ・オブ・ロック)にオープニングアクトとして参加。
10月には、 IRON MAIDEN(アイアン・メイデン)のサポートとしてヨーロッパ・ツアー。
順調にツアーを行ない、人気を確立しているその最中に事件は起きてしまいます。
1984年12月、ヴィンスが、愛車のDe Tomaso Pantera(デ・トマソ・パンテーラ)で、パーティでの酒を買い足しに、酒屋でアルコールを買って帰る途中(つまり完全な飲酒運転です。)、正面衝突事故を起こします。
そして、同乗していたHANOI ROCKS(ハノイ・ロックス)のドラマーRazzle(ラズル)が死亡する、という痛ましい事故でした。
ハノイ・ロックスはこの後、解散してしまいます。
ヴィンスは30日間の禁固刑と、200万ドルの罰金を科されました。
やっぱり彼らのアルコールとドラッグの乱用の関係する問題の中で、最悪の出来事はこれではないでしょうか。
そうしたダークな出来事の翌年、3rdアルバムの制作にとりかかります。
相変わらずのアルコール、ドラッグ依存を抱えながらの制作でしたが、前作のメタリックなものから、少しポップな要素の入ったアルバムになりました。
今日は、1985年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の3rdアルバム、THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)をご紹介します。
THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、CITY BOY BLUES(シティ・ボーイ・ブルース)。
ミックのギターリフがかっこよくイントロを決めています。
正統派のハードロックという感じです。
やはりこのバンドの特徴は、ヴィンスの悪そうな、そして艶のあるヴォーカルではないでしょうか。
サウンドは、当時のオーソドックスなもので、それほど目立つ楽曲ではありません。
でも、地味ですが悪くはないです。
ギタリストのミック・マーズはあまり高く評価されていないギタリストの一人です。
しかし、彼のギターリフは結構かっこいいものが多いです。
ソロが弱いのはまあ、他のバンドのギタリストがすごい時代なので仕方がないのかもしれません。
でも、まあ、曲にあったソロを披露していると思います。
2曲目は、SMOKIN’ IN THE BOYS ROOM(スモーキン・イン・ザ・ボーイズ・ルーム)。
僕が初めて聴いたモトリー・クルーの楽曲です。
もう、シャッフルビートで横ノリの、自然に体の動くめっちゃいい曲です。
ドラムの連打の後のサビでちょっとスピードアップする感じがかっこいいです。
この曲はモトリーのオリジナルかと思っていましたが、実はBrownsville Stationというバンドの1973年の楽曲のカバーでした。
オリジナルは、さすがに古い感じの楽曲ですが、モトリーは、非常に80年代ハードロック風にかっこよくカバーして披露して見せたと思いますね。
とにかく、あのシャッフルのノリが命の楽曲だと思いますが、非常にハードですが、ポピュラーにアレンジされています。
この曲はアルバムからの先行シングルとなっており、ビルボード誌シングルチャートで第16位、同誌Mainstream Rockチャートでは第7位のヒットとなりました。
3曲目は、LOUDER THAN HELL(ラウダー・ザン・ヘル)。
どっしりとしたスローテンポのハードロックチューンです。
この曲も、ミックのギターリフがとてもヘヴィなのに軽快でかっこいいです。
ワイルドに歌うヴィンスのヴォーカルもいけてます。
ミックのギターソロも悪くはないですが、ギターリフの良さを越えてない感じがします。
4曲目は、KEEP YOUR EYE ON THE MONEY(キープ・ユア・アイ)。
疾走感のあるハードロックです。
この曲もやはりミックのギターリフが、全体をかっこよく聴かせるものとなっています。
サビはキャッチーで、なかなか爽快な感じの楽曲だと思います。
ギターソロは、ピッキングハーモニクスを多用して、かっこいいロックギターの雰囲気をかもし出しています。
が、速弾きなどはないので、やはりその辺が他のギタリストに比べるとちょっと評価が低いのもうなづけます。
でも、悪くはないです。
5曲目は、HOME SWEET HOME(ホーム・スウィート・ホーム)。
この曲は、非常にかっこいいパワーバラードになっています。
イントロのピアノがシンプルだけど、すごく印象的に楽曲を飾っています。
このピアノは何と、ドラムのトミー・リーのプレイだというから驚きです。
なかなかドラマーが他の楽器をプレイってのは珍しいですよね。
この曲のAメロBメロの優しく透き通るヴィンスのヴォーカルがサビに近づくにつれ、毒気を増していく感じが非常にかっこいいです。
“tonight tonight♪”のところでの搾り出す声が超かっこいいです。
そして、この曲はミックのギターソロが相当いけてます。
前の曲までで、散々低評価してましたが、この曲に関しては、すごく展開がすばらしいと思います。
サビの裏でのソロスタートから、メロディアスに弾きまくってますね。
得意のピッキングハーモニクスでワイルドさを交えながら弾きこんでいきます。
途中、ラン奏法での速弾きも加えて、結構長いソロを飽きさせることなくしっかりプレイしています。
展開の良く考えられた素晴らしいソロだと僕は思います。
そして、最後にイントロのピアノに戻って、ヴィンスのハミングと共に静かに曲が終わる感じなんて、とてもバッドボーイズたちの演奏とは思えない素晴らしい出来だと思います。
この曲はアルバムからの2ndシングルとしてリリースされ、シングルチャートで、第89位、Mainstream Rockチャートでは第38位となっています。
チャートは伸びませんでしたが、個人的にはSKID ROW(スキッド・ロウ)のI REMEMBER YOU(アイ・リメンバー・ユー)に並ぶ、素晴らしいパワーバラードだと思います。
6曲目は、TONIGHT (WE NEED A LOVER)(トゥナイト)。
B面一曲目だけあって、なかなか激しく攻めた楽曲になっています。
結構どっしりとした疾走感のあるかっこいい曲ですが、サビがちょっと弱い感じがします。
しかし、相変わらずミックのギターリフはかっこいいです。
ギターソロは物足りないですが、がんばっています。
アウトロのギターリフはかっこいいのですが、tonightの連呼が、ちょっと残念な感じになってしまってます。
7曲目は、USE IT OR LOSE IT(ユーズ・イット・オア・ルーズ・イット)。
これはイントロのギターリフから疾走感抜群の、かっこいいハードロックになっています。
早口でまくしたてるヴィンスのヴォーカルもいいですし、ギターソロも結構派手にやっちゃってくれてます。
このくらいの疾走曲をもう少し増やすと、もっといいアルバムになったのではとも思います。
8曲目は、SAVE OUR SOULS(セイヴ・アワ・ソウルズ)。
どっしりとしたドラムのリズムが目立つ、ローテンポのメタルソングです。
ヴィンスの張り上げたヴォーカルはとてもいいのですが、キャッチーさが薄いので、その辺がちょい残念な楽曲ですね。
9曲目は、RAISE YOUR HANDS TO ROCK(レイズ・ユア・ハンズ)。
珍しく、アコースティックギターのストロークのイントロから始まります。
ギターストロークからのどっしりドラムが入るパートは、後のGUNS N’ ROSES(ガンズ・アンド・ローゼズ)のPARADISE CITY(パラダイス・シティ)に近い感じがあってとてもいいです。
低音から高音まで自在に歌うヴィンスのヴォーカルがこの楽曲では1番目立っています。
しかし、サビがやはりあまり頭に残らないのがやや難ありです。
きっとライヴではオーディエンスの声が加わって盛り上がる感じの曲だとは思います。
アルバムラストは、FIGHT FOR YOUR RIGHTS(ファイト・フォー・ユア・ライツ)。
この曲も、ハードではありますが、キャッチーさがちょっと足りない感があります。
Aメロのぐいぐい突き進む感じはすごくいいのですが、サビがやはり弱いと思います。
ギターリフもいいので、後はサビだけ、って感じがします。
ちょっと物足りない感じでアルバムは終わります。
まとめとおすすめポイント
1985年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の3rdアルバム、THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)はビルボード誌アルバムチャートで初のTOP10入りし、第6位を記録しています。
そしてアメリカでは前作同様、400万枚を売り上げるビッグヒットとなっています。
良くも悪くも、いろんな話題を振りまいたメンバーたち。
それに加えて、2曲のキャッチーなシングルは、特にMTVでヘヴィローテーションされ、人気を高めていきました。
さらに、ツアーを重ねることで、一層実力と人気を高めて言ったとも考えられます。
しかし、後のアルバムと比べると、ちょっと垢抜けてない、というか、洗練されてない部分も感じられます。
楽曲のつめが甘いといいますか、サビの弱い曲が複数見られるのも事実です。
そのためか、彼らのアルバムの中では評価がやや低めのものとなっているようです。
本人たちも、ヴィンスのあの事故の後の作品でもありますし、全員がアルコールとドラッグ依存の中でのレコード、ということで、あまり高く評価していないようです。
しかし、逆に言えば、そんな状態にありながら、よくここまでの作品を作れたな、というのに驚かされます。
また、若い彼らのデビューからの3作目、ということを考えれば、ブレイク寸前の気配も感じられます。
一気にバッドボーイズロックの高みへと昇華する直前の彼らのステップが垣間見れるアルバムとなっています。
名曲、ホーム・スウィート・ホームだけでも聞く価値があると思います。
バッドボーイズLAメタルの一つのモデルが完成しつつある様子をぜひともご賞味ください。
チャート、セールス資料
1985年リリース
アーティスト:Mötley Crüe(モトリー・クルー)
3rdアルバム、THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)
ビルボード誌アルバムチャート第6位 アメリカで400万枚のセールス
1stシングル SMOKIN’ IN THE BOYS ROOM(スモーキン・イン・ザ・ボーイズ・ルーム) ビルボード誌シングルチャート第16位、同誌Mainstream Rockチャート第7位
2ndシングル HOME SWEET HOME(ホーム・スウィート・ホーム) シングルチャートで第89位、Mainstream Rockチャート第38位