ワルで痛快なロックンロールアルバム Mötley Crüe - GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)

前作からの流れ





1985年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の3rdアルバム、THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)はビルボード誌アルバムチャートで第6位を記録し、アメリカでは400万枚を売り上げました。

 

LAメタルの筆頭バンドとしてRATT(ラット)らと共にブームを牽引していきます。
まさにこの時期はBON JOVI(ボン・ジョヴィ)を初めとして、数多くのHR/HMバンドが世界的な大ヒットを生み出していった時期です。

 

そんな時期でしたが、バンドメンバーのアルコールやドラッグ問題は相変わらず山積していた状態だったようです。
特に、ベーシストのNikki Sixx(ニッキー・シックス)がこの点で際立ってひどかったみたいですね。
ヘロインやコカインの完全な中毒に陥っていました。
ウィキぺディアによると、「ロンドンでドラッグディーラーの家でドラッグを摂取している際に意識を失い、死亡したと思われたためにゴミ箱に捨てられていた」とニッキー本人が語っていたことが記録されています。

 

そんな状態でしたが、ライヴツアーはしっかり行なっています。
この時期に初の来日公演も行なっています。
また全米ツアーではY&Tを従えて敢行していますし、ツアー後半は日本のラウドネスをサポートに迎えています。
ただ、ツアー中も、かなりニッキーの中毒具合はひどかったようです。
よくそんな中で続けられたな、と思います。

 

そして、5thアルバムの制作に入ります。
もう既に、彼らのフォロワーのようなバンドが巷にあふれるようになっていましたが、バンドは黒のレザーに身を包み、さらにワルでワイルドなルックスを極めていきます。

 

そして新たなアルバムは、前作と比べるとさらに洗練され、ワイルドなロックンロールが楽しめる名盤になりました。

 

では今日は、1987年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の4thアルバム、GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)をご紹介します。

GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、WILD SIDE(ワイルド・サイド)。

 

これは、イントロから超かっこいいワイルドなロックですね。
やはりこのイントロのギターリフを繰り出すギタリストのMick Mars(ミック・マーズ)の功績はでかいと言えるでしょう。

 

ごりごりの典型的なハードロックパートは非常に爽快ですし、途中スローダウンしてブルージーなノリになるところもかっこよいです。
ほぼギターソロがないところもギタリストミックの真骨頂かもしれません。
切れ味鋭いギターリフで魅了してくれます。

 

また、毒気も艶もあるVince Neil(ヴィンス・ニール)のヴォーカルもグラマラスで非常によいですし、メンバーのコーラスが入るサビも最高です。

 

また、この曲のPVではライヴシーンがあり、そこではドラムのTommy Lee(トミー・リー)が、ドラムセットごと一回転するというド派手な演出をしていたのが大きな話題になりました。
発想がぶっ飛んでますが、リアルもぶっ飛んでた彼ららしい演出ですね。

 

非常にモトリー・クルーらしいオープニング曲です。

 

アルバムの2ndシングルとしてカットされましたが、チャートインはしていません。
が、PVは話題を呼んでいたので、アルバムセールスに大きく貢献したのは間違いないでしょう。

 

2曲目は、アルバムタイトルトラック、GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)。

 

図太いバイクの音で始まる、エイティーズ感覚あふれるノリノリのハードロックチューンです。

 

いやいや、これもまた非常にギターリフがかっこよいです。
また、こんなあからさまなタイトルが似合うバンドはモトリー・クルーをおいて存在しなかったのではないでしょうか。
猥雑な雰囲気にキャッチーなサビも絡んで、まさにグラムメタル、LAメタルの代表的な曲になっています。

 

歌詞やPVが卑猥なのは、彼らのトレードマークとして置いといて、楽曲は非常に明るいパーティロックのような感じです。
まさに、この時代ならではのロックンロールですね。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第12位、同誌Mainstream Rockチャートで第20位を記録しています。

 

3曲目は、DANCING ON GLASS(ダンシング・オン・グラス)。

 

この妖しい雰囲気のイントロも彼ららしいですね。
どっちかというとダークだけどストレートなハードロックです。

 

サビ裏のギターリフもなかなか渋かっこいいです。
やはりミックのギターセンスが、モトリーの音楽性で非常に重要だと感じます。
それと、やはりヴィンスのヴォーカルももちろんですけど。

 

後半のキーボードが風変わりな印象を与えてます。

 

4曲目は、BAD BOY BOOGIE(バッド・ボーイ・ブギー)。

 

自らバッドボーイと言っちゃってるところがかわいいですね。
前作のSMOKIN’ IN THE BOYS ROOM(スモーキン・イン・ザ・ボーイズ・ルーム)を思わせる、シャッフルのブギーソングです。

 

こんな横ノリも悪くないですね。
こんなブギーな感じの曲でも相変わらずミックのギターリフが骨格を支えてますね。
やはりミックはギタリストとして評価が高くないとはいえ、モトリーサウンドには絶対に欠かせません

 

5曲目は、NONA(ノーナ)。

 

この曲は、アルバム制作中に亡くなった、ニッキーの祖母に捧げられた小曲です。
アコギのアルペジオが、アルバム中で新鮮さを見せてます。
ワルぶっていても、ちょっとその中に残るまともな人間性を感じられる楽曲になってます。

 

6曲目は、FIVE YEARS DEAD(ファイヴ・イヤーズ・デッド)。

 

B面1曲目に当たるこの曲は、ストレートなロックンロールですね。
サビあたりが、ガールズ、ガールズ、ガールズにも似てますが、全体としてはノリのよいハードロックです。
ミックのギターリフも光ってます。
ただ、やはりソロはそんなに突き抜けてはいません。

 

7曲目は、ALL IN THE NAME OF…(オール・イン・ザ・ネーム・オブ・・・)。

 

軽快なドラムで始まり、そこにキレたミックのギターリフが絡まる、疾走感たっぷりのハードロックです。
これは文句なくノレる、痛快ロックンロールですね。
この曲はギターリフもいつものようにかっこよいのですが、ギターソロも頑張ってます。
ミック渾身のプレイが、このロックにぴたりとはまってて心地よいです。

 

サビのヴィンスの熱唱も、メンバーのコーラスも爽快で非常にかっこよいです。

 

8曲目は、SUMTHIN’ FOR NUTHIN’(サムシン・フォー・ナッシン)。

 

もう、B面のここまでの流れがたまりませんね。
3曲連続でノリノリのロックンロールが続きます。

 

この曲も、非常にかっこよい、そして凝ったギターリフで始まります。
ミックのギターリフと、ヴィンスのヴォーカルで、見事なモトリーサウンドが作り出されてます。
サビメロもキャッチーで、聞いて楽しい楽曲ですね。
ついでに言えば、この曲でもミックはソロ頑張ってます。

 

9曲目は、YOU’RE ALL I NEED(オール・アイ・ニード)。

 

これは歌詞を無視すれば、非常に優れた名曲だと思いますね。
しかし、歌の内容は、女を愛しすぎて、愛を返してくれないためにその女を殺してしまった男の歌です。
今のオフィシャルPVでは、冒頭にこれは実話に基づいてるって出てきてますね。
まあ、今で言うストーカー殺人のようなものかもしれません。
当時のPVはMTVによって放送禁止になったそうです。

 

ところが、楽曲だけをみると非常によいのですよ、これが。
前作のHOME SWEET HOME(ホーム・スウィート・ホーム)のようにピアノが効果的に用いられていて、かっこいいパワーバラードになっています。
また、ヴィンスの切なげにも力強く歌い上げるヴォーカルがまたたまりません。

 

この曲はモトリー・クルーの楽曲の中で最高のバラードだとジョン・ボン・ジョヴィが称賛したそうです。
しかし、これを聞いて作者のニッキーはくだらないと思いました。
なぜなら、この曲の背後にはぞっとする意味合いがあったからです。

 

ニッキーは、付き合ってたガールフレンドについてのこの歌を書きました。
その時彼は、彼女が別の役者と浮気をしていると信じていたようです。
それでこの曲を書き、彼女に聞かせます
彼女もぞっとしたでしょう。
お前は俺が必要だったすべてだ、といいながらも切り裂いたり、そしてついには殺してしまって新聞沙汰になった、なんて内容の歌を聞かせられたのですから。
まあ、実際に手をかけてはないわけですが、浮気の復讐としてこの歌を作った感じでしょう。

 

で、元々はレコーディングするつもりもなかったわけですが、他のメンバーはこの曲を気に入り、アルバムに収録するようになったようです。

 

出来上がった曲は、ジョン・ボン・ジョヴィを初めとして多くの人を感動させる名曲に仕上がりました。
僕も、歌詞を除けば本当にいい曲だと思ってます。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第83位を記録しています。

 

ラスト10曲目は、JAILHOUSE ROCK (LIVE)(監獄ロック)。

 

アルバムラストは、Elvis Presley(エルヴィス・プレスリー)の名曲をライヴでカバーしています。

 

僕個人は、基本的にカバーの収録には否定的です。
アルバムの内容と乖離しているものが多いのがその理由です。
しかし、このモトリーのこのカバーはあまりにもピッタリはまってて気に入ってしまいました。

 

まずは、選曲の妙
ヴィンスは、あの交通事故で、短いとはいえしばらく監獄にいたわけですよ。
その彼にこの曲を歌わせるって、なかなかのブラックなユーモアではないでしょうか。

 

あと、やはりこのノリ
原曲よりも遥かに高速なカバーで、あの名曲を非常にワルっぽく、そしてモトリーらしくカバーしてます。
超高速な楽曲ですが、見事にバンドの一体感も見せています。
ミックのギターもリフ、ソロともに頑張ってます。
ヴィンスも、痛快に歌い上げていますよ。

 

なかなかの爽快感でアルバムを閉じることが出来ました。

まとめとおすすめポイント

1987年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の4thアルバム、GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)は、ビルボード誌アルバムチャートで第2位を記録しています。(ちなみにその時のNo.1は、 Whitney Houston(ホイットニー・ヒューストン)の2ndアルバム、Whitney(ホイットニー)でした。)
またアルバムはアメリカで400万枚を売り上げています。

 

前作と変わらないビッグセールスに加えて、チャートアクションでは第2位と、最高位を更新しています。
やはり、HR/HMの全盛期とも言えるこの時期に、王道的な作品を作り出したと言えるかもしれません。

 

前作では、いい曲ももちろんありましたが、ちょっと弱い曲もちらほら混じってました。
今回はその点、かなり楽曲のレベルがアップしたのではないか、と感じています。
今回も前作同様、カバー曲を除いて全曲をメンバーたちが作っています。
その中でもニッキーは全曲で作曲に絡んでいます。
彼らの作曲能力も向上したと感じられますね。
ニッキーはドラッグに侵されながらもこのポテンシャルを発揮できるとは、ある意味すごいです。

 

バッドボーイズロックの代表格として、ワルのバンド道を究めつつあるモトリー・クルー。
それにしても、歌う内容のほとんどが、刺激的で退廃的なのにこれだけ人気を獲得するとは、やはりそんな時代だったのでしょうね。
また、グラムロック出身でケバいルックスが特徴の一つでしたが、この頃から少しイメチェンして、黒のレザージャケットを着てハーレーにまたがるなど、硬派なルックスへと変貌していきます。
とはいえ、楽曲はモトリー・クルーらしく、猥雑なロックンロールが中心です。
そして、聞けば爽快な楽曲が詰まっているアルバムともなっています。

 

80年代だからこそヒットしたに違いないアルバムかもしれませんが、それでもロックンロールの楽しさも十分に包含しています。
時代の雰囲気を感じられる彼らの代表作の一つといって間違いはないでしょう。

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:Mötley Crüe(モトリー・クルー)

4thアルバム、GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)

ビルボード誌アルバムチャート第2位 アメリカで400万枚のセールス

1stシングル GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ) ビルボード誌シングルチャート第12位、同誌Mainstream Rockチャート第20位

2ndシングル WILD SIDE(ワイルド・サイド) チャートインなし

3rdシングル YOU’RE ALL I NEED(オール・アイ・ニード) シングルチャート第83位