バンド黄金期へダメ押しの作品 HEART - BAD ANIMALS

前作 HEART(ハート)からの歩み





1985年、低迷していたハートは状況打破のため、これまでのカラをぶち破るアルバムを作り出そうとした。
そのために、80年代の売れっ子プロデューサーRon Nevison(ロン・ネヴィソン)を迎え、徹底的に売れるアルバムを狙った。
それとともに、アルバムの曲の大半を外部の売れっ子ライターに発注。

 

これらの策は効を奏し、自らのバンド名をタイトルに冠したアルバムHEART(ハート)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得。
アメリカだけで500万枚を売り上げる大ヒットとして、息を吹き返したのである。

 

人によってはそうした変化を、バンドの音楽の産業ロック化としていやがるかもしれないが、実際大ヒットして多くの人が受け入れたのが事実である。
僕も、前作で見せたウィルソン姉妹の、非常にかっこいい姿にほれ込んだものである。
そして、ちょうど80年代のテイストが見事にバンドにマッチし、最高傑作となったと考えている。

 

さて、そんな大復活劇を遂げたハートだが、今回も同じ路線で売れるためのアルバムつくりを行なった。
プロデューサーは引き続き、ロン・ネヴィソン。
時にオーバープロデュースとも言われることがありますが、ゴージャスなアレンジと、耳障りの良いサウンド。
そして徹底的に売れる音楽を作れると言う点で、希代の職人プロデューサーである。

 

加えて、今回も自作の楽曲にこだわらず、外部ライターからの優れた楽曲を十分に取り入れてます。

 

こうして、再び当時の音楽シーンに合致した、優れたアルバムが出来上がりました。

 

今日は1987年リリースの、ハートの9thアルバム、BAD ANIMALS(バッド・アニマルズ)をご紹介します。

HEART - BAD ANIMALSの楽曲紹介

オープニングを飾るのはWHO WILL YOU RUN TOフー・ウィル・ユー・ラン・トゥ )。

 

いきなりの王道ハードポップソングだ。
この曲の作者は、超売れっ子ライター、Diane Warren(ダイアン・ウォーレン)。
同じ年にSTARSHIP(スターシップ)にNothing’s Gonna Stop Us Now(愛はとまらない)を提供したのを初め、数多くのヒット曲を多くのアーティストに提供している、女性ソングライターだ。

 

この曲も、堂々としたハードな楽曲ではあるが、非常にキャッチーな楽曲になってます。
また、バンドサウンドもしっかりしていて、ハートというバンドがどんなものかを紹介するイントロダクションにもなっています。
そして、サビで聴かれるゴージャスなシンセアレンジが、エイティーズの香りをたっぷりに振りまいて、素敵な出来上がりになってます。

 

しかし、何よりも特筆すべきはAnn Wilson(アン・ウィルソン)とNancy Wilson(ナンシー・ウィルソン)姉妹のヴォーカルとコーラスワークに違いない。
アンは曲前半では、力を抜いて歌いだします。
しかし、サビ前からサビへ、その力強いヴォーカルを存分に発揮しておられます。
やはり女ロバート・プラントとの呼び声高い、迫力あるヴォーカルです。
それに加え、ナンシーのハモリのコーラスが、またたまりません
姉妹の息の合ったコーラスが、楽曲を優れたものとしています。

 

ミドルテンポの、キャッチーで、爽快な楽曲に仕上がっております。

 

この曲は、アルバムからの2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャート第7位、同誌Mainstream Rockチャートでは第2位まで上昇しました。

 

2曲目は、ALONE(アローン)。

 

これはTom Kelly(トム・ケリー)とBilly Steinberg(ビリー・スタインバーグ)というソングライターのコンビが、ユニット“i-TEN”として1983年にリリースしていた楽曲のカバーソングである。

 

シンプルなピアノによるイントロ。
これだけで、もはや名曲の予感が感じられます。
静かに歌い始めるアンも感情を抑えてたんたんと歌います。

 

そしてサビで一気にバンドサウンドへ。
アンも力強く歌い上げます。
ナンシーのハモリも素晴らしいです。

 

2回目のサビを、あえてヴォーカルを外すアレンジが憎いですね。
いっそうその後のサビが待ち遠しくなる仕組みです。
ギターソロも、かっちりまとめられた、メロディアスな素晴らしいプレイになってます。

 

非常に短い楽曲ですが、80年代を代表するパワーバラードと言えるでしょう。
オリジナルの楽曲も悪くないのですが、ハートのヴァージョンがあまりにも良すぎて、日が当たりません。
アンのパワフルなヴォーカルが冴え渡る、超名曲です。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、見事シングルチャートで3週連続No.1、Mainstream Rockチャートでは第3位、Adult Contemporaryチャートは第2位をそれぞれ獲得しています。
ちなみにこの年の年間シングルチャートでも、第2位という大ヒットとなりました。

 

3曲目はTHERE’S THE GIRLゼアズ・ザ・ガール )。

 

この曲はナンシーとHolly Knight(ホリー・ナイト)の共作だ。
ホリー・ナイトも80年代の優れたソングライターの一人である。
前作のNEVER(ネヴァー)の作者は彼女である。
今回も絶妙にいい曲を作っておられます。

 

今回はこの曲でナンシーがリードヴォーカルを担当しています。
アンほどのパワフルさはありませんが、非常に柔らかい優しいヴォーカルを聞かせてくれますね。
非常に優れたポップソングになってますが、バンドサウンドもしっかりしていてとてもいいです。
少し哀愁漂う雰囲気がありながらも、ミドルテンポの感じのおかげで爽やかにも聴こえます。

 

そして、この曲に関しては特にアレンジがたまらなくいいですね。
イントロから全体を包み込むシンセのゴージャスなサウンド
まさにエイティーズサウンドをたっぷり楽しめます。
ギターリフも鋭く、ドラムもバシッとしっかりきまり、ベースもいいラインを決めてます。

 

全体がゴージャスな80年代ならではの名曲となってます。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャートで第16位を記録してます。

 

4曲目はI WANT YOU SO BADアイ・ウォント・ユー・ソー・バッド )。

 

この曲も、ALONEのオリジナルを歌っていた“i-TEN”の二人、トムとビリーによる楽曲です。
前曲に続いて、シンセサウンドが曲全体を包んでいて、いい雰囲気のエイティーズサウンドのバラードです。
静かな楽曲だけに、アンのヴォーカルが次第に盛り上がっていく様子がとても素敵です。
特に途中の高音の裏声は、非常に美しいです。
ギターソロもいい感じにメロディを奏でてます。

 

あまり目立ちませんが、とても優しい雰囲気の良曲となっています。

 

この曲はアルバムからの4thシングルとしてリリースされ、シングルチャート第49位を記録しています。

 

5曲目はWAIT FOR AN ANSWERウェイト・フォー・アン・アンサー )。

 

この曲はLisa Dal Bello(リサ・ダルベロ)というカナダの女性歌手が1984年にリリースしていた曲のカバーである。

 

イントロは荘厳なドラムから入り、アンは静かに歌っていく。
音はドラムとささやかなシンセとベースだけで曲は静かに進んでいく。
サビは、ゆったりのメロディが繰り返される。
次第にシンセの装飾も厚みを増していき、ドラムや他の楽器も強くなっていく。
それと共に、アンのパワフルなヴォーカルも一層力強くなっていきます。
ラストは、畳み掛けるようにアンのヴォーカルが激しさを増してエンディングを迎えます。

 

とてもドラマティックな楽曲になっていると感じます。
オリジナルは、よりヴォーカルが荒く力強く歌ってますが、僕は洗練されているハートヴァージョンが好きですね。

 

6曲目はBAD ANIMALSバッド・アニマルズ )。

 

不思議なアレンジによるイントロから始まるこのタイトルトラック曲は、メンバー全員とSterling Crewさんとの共作です。
ゆったりと、豪快なロックサウンドを聴かせてくれます。
やはり、際立っているのはアンのヴォーカルです。
鬼気迫るパフォーマンスを見せてくれます。

 

そしてもう一つ注目すべきは、ラストのギターソロです。
普段のハートの楽曲ではギターソロは非常にシンプルで、目立たないものが多いですが、この曲に関しては弾きまくってます。
やはり、ハートはロックバンドだ、という主張には、アンの激しいヴォーカルと共に、激しいギタリストのプレイも必要だったのでしょう。

 

この曲はキャッチーとかの次元を超えた、パワフルなバンドサウンドを聞かせるものとなってます。

 

7曲目はYOU AIN’T SO TOUGHユー・エイント・ソー・タフ )。

 

この曲は、Olivia Newton-John(オリヴィア・ニュートン・ジョン)の大ヒット曲、Physical(フィジカル)の作者、Steve Kipner(スティーブ・キップナー)と、
PLAYERのヴォーカルで、その代表曲Baby Come Backの作者でもある、Peter Beckett(ピーター・ベケット)の二人の共作である。

 

大ヒット曲の作者だけあって、キャッチーな楽曲をつくるツボを心得ておられるようだ。
Aメロは少し単調な歌メロになっているが、バンドサウンドのアレンジがそう感じさせない。

 

そして、やはり何よりもサビの合唱がキャッチーでメロディアスである。
ちょっと気恥ずかしくなるほど80年代ポップロックの色が濃いい楽曲になってます。
ポップでノリのよい、名曲です。

 

8曲目はSTRANGERS OF THE HEARTストレンジャーズ・オブ・ザ・ハート )。

 

クレジットによると、Duane Hitchingsと、Sue Shifrinと、Andesという3人の共作になってます。
ちょっと情報がなくて、これらの人についてはわかりませんが、楽曲はとても素晴らしいものです。

 

イントロから、シンセの柔らかい雰囲気がとてもいいですね。
優しいアンのささやくようなヴォーカルからサビの美しいメロディへ移ることころは絶品です。
とてもドラマティックなバラードになっております。
アレンジもばっちりで素敵な曲です。

 

9曲目はEASY TARGETイージー・ターゲット )。

 

これはウィルソン姉妹とSUE ENNISという女性ソングライターとの共作です。
前作のTHE WOLFを思わせるようなヘヴィなギターリフがイントロを彩ってます。
なかなか爽快なハードポップソングです。
サビはすぐに口ずさめそうなキャッチーなものになってます。

 

アルバムラストはRSVP

 

R.S.V.P.とは、 英語で、招待状等の末尾に記される、出欠等の返事を求める言葉。
フランス語のRépondez s’il vous plaît(「ご返事願います」の意味)の略語になっています。

 

この曲も前曲同様、ウィルソン姉妹とSUE ENNISという女性ソングライターとの共作となっています。
アコースティック・ギターのコードストロークにのって静かに歌い上げるバラードである。

 

サビ後、YEAH!のアンの声と共にドラム&ベースも加わり盛り上がっていきます。
そしてGO!のアンの声の後には、ギターソロが。

 

最後はアコギの美しいストロークで静かに楽曲はエンディングを迎えます。

まとめとおすすめポイント

1987年リリースの、ハートの9thアルバム、BAD ANIMALS(バッド・アニマルズ)はビルボード誌アルバムチャートで、第2位を記録、アメリカだけで300万枚を売り上げています。

 

このアルバムはほぼほぼ大ヒットした前作と同じ方向性で作られたように思えます。
売れっ子プロデューサーの起用、外部ライターの採用など、基本路線は変わりません。
内容は前作同様、メロディアスで、80年代らしいゴージャスなアレンジを加えられ、とても耳障りの良い優れたハードポップアルバムとなっております。

 

産業ロックと揶揄されることもありますが、実際、大ヒットし十分に売り上げを記録したことからも、多くのリスナーの心をつかんだのは間違いありません。

 

また、アレンジがどれだけ優れてても、素材がだめなら意味がないのも事実と言えるでしょう。
その点、ハートはバンドとして素材は十分に成熟していると思えます。
バンドサウンドは安定してます。
そして何よりも、2枚看板のウィルソン姉妹のヴォーカルとコーラスワークが素晴らしいのは言うまでもありません。
アンの迫力あるヴォーカル、そして優しく柔らかい女性らしいナンシーのコーラスは、このバンドを他と大きく異ならせるものとなっています。

 

このようなバンドとしてのクオリティを持った人たちに、素晴らしい音楽と素晴らしいアレンジが施されれば、いい音楽が出来上がるに決まっています。

 

こうして、前作同様、多くの人に愛される素晴らしいアルバムが出来上がりました。

 

80年代のメロディアスなハードポップの王道を求める方には前作と共に、強くおすすめしたいアルバムになっています。

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:HEART(ハート)

9thアルバム、BAD ANIMALS(バッド・アニマルズ)

ビルボード誌アルバムチャート第2位 アメリカで300万枚のセールス

1stシングル ALONE(アローン) ビルボード誌シングルチャート3週連続No.1、Mainstream Rockチャート第3位、Adult Contemporaryチャート第2位

1987年、ビルボード誌年間シングルチャート第2位

2ndシングル WHO WILL YOU RUN TOフー・ウィル・ユー・ラン・トゥ ) シングルチャート第7位、同誌Mainstream Rockチャート第2位

3rdシングル THERE’S THE GIRLゼアズ・ザ・ガール ) シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャート第16位

4thシングル I WANT YOU SO BADアイ・ウォント・ユー・ソー・バッド ) シングルチャート第49位