災難を乗り越え、世界で大ブレイク  DEF LEPPARD - HYSTERIA(ヒステリア)

前作PYROMANIA(炎のターゲット)から新作HYSTERIA(ヒステリア)まで





アルバムPYROMANIA(炎のターゲット)は1983年の年末までにアメリカで600万枚を売り上げ、ブリティッシュバンド、DEF LEPPARD(デフ・レパード)は完全にアメリカでのブレイクを果たした。
この勢いのまま、次の作品に取り掛かるメンバーたち。
翌年1984年には本拠地をアイルランドのダブリンに移して、アルバムの製作に取り掛かっています。

 

しかし、次の作品が世に出るまで、4年の歳月を要するのでした。

 

その最大の原因となったのが、ドラマー、Rick Allen(リック・アレン)交通事故だ。
ガールフレンドを乗せたコルヴェットがスピンし、クラッシュ。
左腕を全て切断するという大悲劇に見舞われるのである。

 

当初はリックはもうバンドを続けられるとは思えなかったが、バンドメンバーの励ましによって、続けることを決意。
シモンズという電子ドラムのメーカーの協力もあって、片腕でも演奏できるようにカスタマイズされた電子ドラムセットをゲットし、リハビリに務める。
当然それにはかなりの時間がかかったわけだが、メンバーはリックの回復をサポート決して代わりのドラマーを探すことはなかったという。
数ヵ月後、リックは回復を見せるためメンバーの前で、レッド・ツェッペリンのレヴィー・ブレイクを叩いて見せた。
ヴォーカルのJoe Elliott(ジョー・エリオット)は、「それはとても感動的な瞬間だった」と述べている。
ついに、バンドはリックを見捨てることなく、再び共に活動を開始することが出来たのである。

 

そして、ついに1986年、事故後初のプレイを、ドニントンでのMonsters of Rock(モンスターズ・オブ・ロック)にて披露し、ついにバンドはリックを失うことなく復活することに成功した。

 

また、今回のアルバムのプロデュースは、前作「炎のターゲット」の大ヒットに貢献したRobert John “Mutt” Lange(ロバート・ジョン・“マット”・ランジ)に依頼していたのだが、途中で彼は疲労のため手を引いています。
しかし、リックの事故でアルバム製作の時間がかなり延びたこともあって、途中で再び“マット”・ランジがプロデュースを担当
これがより緻密な大ヒット作を生み出すのに大きく貢献したことは間違いありません。

 

こうして3年以上のレコーディングを経て、ついにアルバムは完成します。

 

今日は1987年リリースの、DEF LEPPARD(デフ・レパード)の4thアルバム、HYSTERIA(ヒステリア)をご紹介したいと思います。

HYSTERIA(ヒステリア)の楽曲紹介

オープニングを飾るのはWOMEN(ウィメン)。

 

ゆったりどっしりとしたミドルテンポの重い楽曲です。
前作の大ヒットからのブランクの心配を払拭するサウンドになっています。
リックのドラムスも重々しくメタリックに叩かれ、心配は無用でした。
これまでの3作とは明らかに作りこみ方が違うことを感じさせられます
ドラムセットが電子ドラムになった新生デフ・レパードの入魂の一曲だ。

 

結構キャッチーだと思ったのだが、チャートは伸びませんでした。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第80位、Mainstream Rockチャートで何とか第7位を獲得しています。
やはり約4年のブランクの後のアルバムは、出足好調とは言えない滑り出しとなってしまいました。

 

2曲目はROCKET(ロケット)。

 

ロケット発射のSEをイントロに使った、これも軽快なロックソングだ。
そして当時のメタルのなかでも実験的な音楽ともされている。
特に間奏部分のかなり長い時間を使ってさまざまなサンプリング、LRチャンネルの積極的な活用がなされるが、これは“マット”・ランジのアイデアで、バンドも驚かされたようだ。
メタルバンドで、ここまでアレンジするのは当時は画期的だったので、彼らのサウンドはハイテクメタル、とも呼ばれていました。

 

この曲はアルバムからの7thシングルで、シングルチャートで第12位、Mainstream Rockチャートで第5位を記録しています。

 

3曲目はANIMAL(アニマル)。

 

非常に気持ちの良いミドルテンポのロックソングだ。
出来上がったものを聴くのは簡単だが、このサウンドを作り出すのにかなりの期間苦労したようだ。
しかし、その甲斐あって、イギリスでは先行シングルとして大ヒット、アメリカでは1stシングルの、ウィメンの寂しいチャートアクションを巻き返すヒットとなりました。

 

ふわふわした心地の良いサウンドはまさにエイティーズのそれだと思います。
そしてキャッチーな歌メロと、爽やかなコーラス。
デフ・レパードは完全復活です。
確かに80年代を代表する名曲と言えるでしょう。

 

この曲はアメリカで2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第19位、Mainstream Rockチャートで第5位を記録しました。

 

4曲目はLOVE BITES(ラヴ・バイツ)。

 

デフ・レパードお得意のパワーバラードだ。
当初マット・ランジがこの曲に目を向けたとき、これはカントリー調のバラードになる予定だったようだ。
それからバンドは、力強いロックの演奏、強い感情を引き起こすバッキングヴォーカルなどをつけ加えていきます。
そして、最終的にSEを付け加え、美しいアレンジを加えることで、この形になりました。

 

この曲はアルバムからの5thシングルとしてカットされます。
ちょうど、4枚目のシングル、シュガー・オン・ミーが全米第2位を獲得し、その勢いでアルバムが全米N0.1を獲得した、その後のシングルリリースのタイミングとなっています。
そのような勢いを取り戻したタイミングに乗ったのも手伝って、ついに、彼らのキャリア初のシングルチャート全米No.1を獲得したのでした。
タイミングが良かったのもあるが、やはり楽曲が良いのは間違いないです。
ついに正当な評価を受けたとも言えるでしょう。

 

5thシングルのこの曲は、シングルチャートでNo.1、Mainstream Rockチャートで第3位を記録しています。

 

5曲目はPOUR SOME SUGAR ON ME(シュガー・オン・ミー)。

 

これこそ、その、アルバムが評価を高めるのに最大の貢献をした曲となります。
この曲がアルバムに入るまでのいきさつが興味深い。
アルバム、ヒステリアのレコーディングも終わろうとしていた頃の、その合間の休憩のときのこと。
ジョー・エリオットが2週間ほど前に思いついたリフを使ってアコギで即興の演奏をしていました。
その様子を見ていたマット・ランジが大変気に入り、それを使ってもう一曲作ることを提案。
スケジュールは既に遅れていたけれど、マット・ランジは、このアルバムには強い、ジャンルを超えた曲が欠けている、そしてこの最後の曲がそれになり得ると感じたようだ。
それから何と2週間で曲は完成し、アルバム最後の12番目に出来た曲となった、ということです。

 

確かにメタルとヒップホップの融合のような、ノリのよい楽曲だ。
しかし、これがそんなにウケるとは思いもしなかった。
先に述べたように、この曲はアルバムの4枚目のシングルとしてカットされ全米第2位まで上ってしまうのだ。
アルバムヒステリアは、前作の大ヒットからの4年のブランクで、前作の勢いを取り戻すのに時間がかかったが、この曲の大ヒットで息を吹き返し、ついに発売後一年を経過した後全米No.1を獲得することができたのだ。
最後の最後にたった2週間で完成し付け加えられた曲がこれほどのインパクトをもたらすとは、バンドもマット・ランジも何かを持ってたとしかいいようがありません。

 

4thシングルとしてカットされたこの曲は、シングルチャート第2位、Mainstream Rockチャートでは第25位を記録しています。

 

A面ラスト6曲目はARMAGEDDON IT(アーマゲドン)。

 

これもミドルテンポのキャッチーな楽曲だ。
相変わらず、コーラスが美しい。
彼らの特徴を生かした優れたアレンジになっています。

 

この曲は6thシングルとなり、シングルチャートで第3位、Mainstream Rockチャートでも第3位を記録しています。
確かにいい曲だが、そこまで上がるとは驚きました。
もうこの時点でデフ・レパードの勢いは止まらなかったのです。

 

B面1曲目はGOD’S OF WAR(ゴッズ・オブ・ウォー)。

 

この曲もデフ・レパード節のキャッチーな楽曲だ。
ツインギター、ベース、ドラムス、コーラスが絶妙にバランスされている。
そして曲の後半は戦闘シーンだ。
前作、炎のターゲットに収録の、DIE HARD THE HUNTER(狙撃兵)では戦地でヘリが飛び交うようなSEが入っていたが、今回はさらにエスカレートしている。
ロケット弾や、機関銃、ヘリ、爆発音といったより一層戦地での音を取り入れています。
曲のタイトルにぴったりだが、メタルバンドでここまでSE入れてくるのってやっぱり珍しかったんじゃないでしょうか。
たっぷりとWAR(戦争)の雰囲気を取り入れています。

 

2曲目はDON’T SHOOT SHOT GUN(ショット・ガン)。

 

この曲もキャッチーで爽快なハードロックを楽しめる。
シングル向けのいい曲だ。
前曲の戦争の雰囲気で重々しくなっていましたが、それを完全に払拭するかのような爽快な楽曲になっています。
コーラスと、メタリックなドラムが非常にかっこいいです。

 

3曲目はRUN RIOT(ラン・ライオット)。

 

そしてその勢いで、このアルバムで一番ハードにロックしている楽曲につながります。

 

このアルバムでは全体的にミドルテンポの曲が多くて、初期の3作品の疾走感や勢いがあまり感じられないのだが、この2連の曲ではそうした雰囲気を再び味わうことが出来ます。
久しぶりにエレキギターがソロパートで弾きまくっていますね。
個人的にはもう少し、このようなラフな楽曲が残っててもいいのでは、と感じます。
でも、ハードロック、といったもやはりキャッチーのがデフ・レパードらしいですね。

 

4曲目はアルバムタイトル曲HYSTERIA(ヒステリア)。

 

アニマルと同様ミドルテンポで、キャッチーなシングル向けの楽曲です
全編通して聴かれるクリーントーンのギターの音色が美しい。
そして、やはりマット・ランジの手によるものだろうが、多重にミックスされたコーラスが楽曲を美しく彩っています。
これも80年代を代表するバラードと言えるだろう。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第10位、Mainstream Rockチャートで第9位を記録しています。

 

しかし、アニマルやヒステリアのような超売れ線の名曲よりも、シュガー・オン・ミーのような異端の楽曲のほうが、アルバムの遥かに大きなプロモーションになるとは、なかなか難しい世界だと言えますね。

 

5曲目はEXCITABLE(エクサイタブル)。

 

イントロで女性のあえぎ声が・・・。
ボン・ジョヴィのSOCIAL DESEASEも同じだが、何で向こうの人はこんなのをアルバムに入れるかな。
人に紹介しにくくなるっちゅうねん。

 

でも、頭のギターリフからかっこいい、いい曲になっています。
デフ・レパードらしいストレートなハードロックである。
しょうもないイントロをくっつけずに、楽曲で勝負して欲しかったです、はい。

 

アルバムラストを飾るのはLOVE AND AFFECTION(ラヴ・アンド・アフェクション)。

 

ゆったりした楽曲で、気持ちよく聴ける曲です。
ハードロックではありませんが、万人受けするきれいな楽曲です。
最後までコーラスが美しい。
もし8曲目のシングルを出すつもりだったならこの曲ではなかったか、と思える良曲でアルバムは終わります。

まとめとおすすめポイント

1987年リリースの、DEF LEPPARD(デフ・レパード)の4thアルバム、HYSTERIA(ヒステリア)は、ビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得。
アメリカだけで1200万枚、そして全世界では2500万枚を売り上げています。
アルバムを出すまでに多くの出来事があり、時間はかかったものの、HYSTERIA(ヒステリア)は世界的に大成功をおさめます。

 

プロデューサーのマット・ランジによって、このアルバムの目標として掲げられていたのは、マイケルジャクソンのスリラーのハードロックヴァージョン、つまり全ての楽曲がヒットシングルになるポテンシャルを持たせることでした。
そのため、炎のターゲットの続編を期待した多くのメタルファンは少し肩透かしをくらうことになりました。
炎のターゲットはデフ・レパードの伝統的なメタルサウンドを再現していた一方で、ヒステリアではそれらより当時の最新のテクノロジーを投入することに注意が向けられたのです。
デフ・レパードがハイテク・メタルと言われたゆえんです。

 

果たしてこの変化は商業的には大成功につながることになりました。
売り上げはもちろん世界最高記録のスリラーには及びませんが、シングルカットが7曲というのは見事に並ぶことが出来ています。
シングルもNo.1を獲得したラヴ・バイツを初めとして3曲がトップ3入りを果たしています。
そしてアルバムは3年にわたってチャートに居座り続け、最高位第1位をマークしています。

 

なかなか目標に近い好成績ではないでしょうか。

 

確かに炎のターゲットや最初の2枚のアルバムを期待して聴くと裏切られるかもしれません。

 

しかし、このアルバムにはまた独特のよさがあります。
ハイテクメタルという異名が示すとおり、メンバーとプロデューサーが3年以上の年月をかけて綿密に作り上げられた優れた作品なのです。
まさに80年代、という音楽のエッセンスがメタルと融合している、と感じるのは僕だけではないことでしょう。

 

もちろんストレートなハードロックを好む人にはあまりおすすめできませんが、80年代のあの雰囲気をハードな作品でも味わいたい人にはぜひともお勧めしたいよく出来たアルバムとなっています。

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:DEF LEPPARD(デフ・レパード)

4thアルバム、HYSTERIA(ヒステリア)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで1200万枚、全世界では2500万枚のセールス

シングルカット順はアメリカでのものです。

1stシングル WOMEN(ウィメン) ビルボード誌シングルチャート第80位、Mainstream Rockチャート第7位

2ndシングル ANIMAL(アニマル) シングルチャート第19位、Mainstream Rockチャート第5位

3rdシングル HYSTERIA(ヒステリア) シングルチャート第10位、Mainstream Rockチャート第9位

4thシングル POUR SOME SUGAR ON ME(シュガー・オン・ミー) シングルチャート第2位、Mainstream Rockチャート第25位

5thシングル LOVE BITES(ラヴ・バイツ) シングルチャートNo.1、Mainstream Rockチャート第3位

6thシングル ARMAGEDDON IT(アーマゲドン) シングルチャート第3位、Mainstream Rockチャート第3位

7thシングル ROCKET(ロケット) シングルチャート第12位、Mainstream Rockチャート第5位

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