泥臭いブルーズロックとシンセサイザーのケミストリー ZZ TOP - AFTERBURNER

ZZ TOP(ZZトップ)との出会い





80年代、MTVは自分の知らないアーティストを知るには絶好の機会だったと思う。
次から次に、趣向を凝らしたPVを通して、いろんなバンドに興味を持った。

 

その中で、1983年、一つのコミカルなPVを見つけてしまいました。
ZZ TOPというバンドのLEGS(レッグス)という曲です。
内容は大して語るほどのものはありませんでしたが、そこに出てくるバンドメンバーの風貌に惹かれたのです。
そこにはものすごいヒゲを伸ばした二人がギターとベースを持って歌っているのです。
そして、ドラマーとともに3人とも真っ黒なサングラス

目を引く3人組(レッグスのPVから)

そして聞こえてくるのは、シンセ交じりの軽快なロックンロールだったのだ。
とにかくこの風貌は僕の記憶にしっかりと刻み付けられました。

 

そしてその2年後の1985年に再会します。
そのときはニューアルバム発表のタイミングで、先行シングルSLEEPING BAG(スリーピング・バッグ)という楽曲だ。
この曲も、PVで見たわけだが、内容こそ変わっていましたが、二人のヒゲ面と3人のグラサンといういでたちは、1ミリも変わっていなかった

 

そして、聞こえてきたのは、前のレッグスのとき以上に、当時の80年代テイストが盛り込まれたロックソングだったのです。
一気に引きこまれた僕は、アルバムをカセットに収めました。

ZZ TOP(ZZトップ)とは

メンバーは

 

ギタリストでリードヴォーカルのBilly Gibbons(ビリー・ギボンズ)
ベースのDusty Hill(ダスティ・ヒル)
ドラムスのFrank Beard(フランク・ベアード)。

 

ビリーとダスティが、ヒゲの二人である。
そして、フランクだけ名前にBeard(ヒゲの意味)が含まれているのに、ヒゲを伸ばしていないというおかしなことになってますw

 

まあ、この風貌がトレードマークになっているのは、僕が聴いていた80年代の頃の話なので初期や、現在どんな感じかは定かではありません。(ちなみに二人のヒゲが長く伸びたのは1970年代の後半らしいです。)

 

ZZ トップはなんと1969年に結成してます。
テキサス州出身の3ピースバンドということで、ブルーズに根付いた南部ロックンロールをプレイしていました。
ビリー・ギボンズが中心となり、Dan MitchellBilly Ethridgeの3人で初期は活動しています。
しかし、次第にメンバーが入れ替わり、最終的に上述の現在のラインアップに固定になります。
この3人でついにレコード会社と契約、1971年にデビューアルバムをリリースしました。

 

そして、なんとデビュー時の3人は、今に至るまで(2017年現在)一度もメンバーチェンジをしてないという、なかなか他では見られない結束も見られます。

 

ちなみに、バンド名は、ビリーが思いついたようです。
バンドはコンサートポスターで覆われた小さなアパートを持っていたようです。
その中で、ビリーはイニシャル(頭文字)を用いたバンド名が気になります。
その中でも、 B.B. Kingと Z.Z. Hillが特に目に付きました。
それで、その二つを合体させた ZZ Kingを思いつきます。
でも何か他と似すぎてオリジナルさがないと感じた彼は、KingはTopになるものだ、と考え、最終的にZZ TOPに決めたそうです。

 

それはさておき1981年までに7枚のスタジオアルバムをリリースしています。
その間も地道に精力的なライヴツアーを続け、人気を確立していきます。
加えて、数々の大物バンド(The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)やDeep Purple(ディープ・パープル)、Janis Joplin(ジャニス・ジョプリン)etc.)の前座も務めて、一層ファン層を広げていきます。
それにつれてステージは大掛かりになりながら、全米を回るツアーを続けていきます。

 

途中、ツアーとレコーディングの連続に疲れ切って、2年ほど活動を休止する期間はありましたが、概して安定した活動を続けています。
アルバムのチャートも順当に伸びて、大体安定してtop20に入るくらいになっていました。
セールスもアメリカで50~100万枚をコンスタントに売り上げる、安定した人気を保ってきました。

 

そんな彼らに転機が訪れます。
時代は1980年代に入り、シンセサウンドがちまたにあふれかえっています。
ついにバンドは、旧来の泥臭いブルージーなロックサウンドに、シンセを導入することを決断。
さらに、MTVも積極的に活用するため、PVの制作にも力を入れます。

 

結果として1983年にリリースした8thアルバムEliminator(イリミネイター)は世界中で爆発的なヒット
ビルボード誌アルバムチャートで第9位を記録、アメリカでの売り上げは最終的には1000万枚を越えました。
このアルバムからのシングルヒット、レッグスのPVで僕は彼らに出会ったわけです。

 

そして、さらにシンセやドラムマシンやシーケンサーで、より80年代の音楽に寄せてきたアルバムを制作します。

 

今日は1985年にリリースされた、ZZ TOP(ZZ トップ)の9thアルバム、AFTERBURNER(アフターバーナー)をご紹介したいと思います。

AFTERBURNER(アフターバーナー)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、SLEEPING BAG(スリーピング・バッグ)。

 

イントロのドラムの音からもはや、元のバンドの音ではない。
80年代の音だ。
オーケストラヒット(ジャン!ってやつ)を使ったり、全編シーケンサーによりまさに80年代当時の音を再現しています。
もう完全の従来のファンを置いてきぼり、って感じがします。

 

しかし、よくよく聴くと、シンセの音を抜くと、泥臭い彼らのサウンドの芯が残っているんですね。
もともとの音に80年代サウンドの洋服を着せたような楽曲になっています。
つまり、中身は相変わらずのZZ トップなのだ。
彼らの、変わらないブルージーなサウンドはしっかり残ってます。
ただ洋服が派手すぎてちょっと目立たない、といった感じでしょうか。
ブルージーで派手で、疾走感あるこの曲は先行シングルとしてリリースされて、ビルボード誌シングルチャートで、第8位を記録しています。
そして、同誌Mainstream Rockチャートでは、No.1を記録しています。

 

2曲目はSTAGES(ステージス)。

 

これは非常に爽快なロックンロールソングです。
もともと、ノリのよいこうした楽曲が彼らですが、シンセのバッキングがさらに爽やかさをアップさせています。
これも間違いなく80年代の流行の音で、その流行を見事に彼らのロックンロールに取り入れて成功したと思われます。

 

けども、やっぱり芯となる部分、ギターソロプレイなども、彼らの元々持っていたものだと容易に気づくことが出来ます。
それをさらに時代に合わせた名曲です。
彼らのこんな疾走感あふれる楽曲は、アメリカの長距離トラック運転手達に特に好まれたと言われています。
確かにドライヴにピッタリの楽曲になってます。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルになっており、シングルチャートは第21位のヒットとなり、Mainstream Rockチャートでは2曲連続のNo.1となっています。

 

3曲目はWOKE UP WITH WOOD(ウォーク・アップ)。

 

この曲も勢いのあるロックンロールです。
ギターリフが目立ちますね。
結局シーケンサーをいれたとしても、彼らの生み出すサウンドが根底にある、という証となってます。
でも、やはりシンセがあることで、当時の“ナウ”な音になっているのは間違いありません。
ノリのいい曲が続くのもドライバーに好まれる一因と言えるでしょう。
アウトロの長いギターソロも、80年代のギターテクと比べると、かなり大人しい感じですが、そこはZZトップらしい味のあるプレイでカバーしています。

 

4曲目はROUGH BOY(ラフ・ボーイ)。

 

ここで一息入れて、素晴らしいバラードがきます。
ドラムのゆったりした一撃が6発あった後、美しく柔らかいギターのソロメロディ
ここだけでも名曲の予感がたっぷりです。
このアルバムの中では異質なほどゆったりスローテンポの楽曲です。
そして、ビリーのヴォーカルが枯れてて、非常に味わい深いですね。

 

さらにギターソロも、2回とも見事に泣きまくっています。
最初のソロと2回目のソロが、連作のようになってて、このソロの間での起承転結も素晴らしいと思いますね。
とにかく泣かせるサウンドです。
シンセがどうとかシーケンサーがどうとか、そういうレベルをはるかに越えるパワーバラードだと思います。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第22位、Mainstream Rockチャートでは第5位を記録しています。

 

5曲目は、CAN’T STOP ROCKIN’(キャント・ストップ・ロッキン)。

 

再び勢いの良い疾走ロックンロールが来ます。
ワイルドなギターリフがたまりません。
この曲ではベースのダスティがリードヴォーカルをとっています。
完全なたてノリロックンロールです。
やはり、こういうノリのよいロックンロールは元々お手の物ですから、それをさらにシーケンサーで飾り立ててブラッシュアップした感じですね。
とにかく、爽快感が味わえる名曲ですね。

 

6曲目はPLANET OF WOMEN(プラネット・オブ・ウィメン)。

 

B面に入っても勢いは止まりません。
とにかく怒涛のノリは続きます
ベースラインなんかとてもシンプルで、ただただ突き進む感じです。
これはもうドライブに持っていくしかないって曲ですね。
もうテンション上がりっぱなしです。

 

7曲目はI GOT THE MESSAGE(アイ・ガット・ザ・メッセージ)。

 

この曲のイントロは、ちょっと毛色が変わってます。
80年代っぽく、ちょっと変わった音をぶっこんできた感じです。
しかし、曲始まると彼らの得意パターンです。
キャッチーな歌メロに、ブルージーな演奏がバックを固めます。

 

その楽曲の表で、シンセがちょっと楽曲を彩っている感じです。
この辺もVAN HALENが成功したように、ZZトップもグルーブ感を出すのにシンセをうまく使っている感じがあります。
また、シーケンサーの表で、ビリーのエレキギターが自在に弾きまくっているのも、うまいことミックスされているとも思いますね。

 

8曲目はVELCRO FLY(ヴェルクロ・フライ)。

 

リズムがすごくダンスっぽくて、PVでも3人が、あの3人が踊ってます。
確かに80年代ダンスチューンの香りのするイントロです。
でもそこにビリーのヴォーカルとギターが入ると、やはりZZトップの曲になりますね。
ダンサブルな合間に聴こえるビリーのソロは非常にかっこいいですね。
これまでの彼らのサウンドとは一線を画すのかもしれませんが、80年代のZZトップには、この曲は全くもって問題ないでしょう。

 

この曲は4枚目か5枚目か(確認ができませんでした。)のシングルとしてカットされ、シングルチャートで第35位、Mainstream Rockチャートでは第15位を記録しています。

 

9曲目はDIPPING LOW (IN THE LAP OF LUXURY)(ディッピング・ロウ)。

 

ミドルテンポのロックソングです。
でも、やはりベテランならではの余裕のある堂々とした楽曲になっています。
ギターリフがかっこいい上にシンセがそれを飾る王道パターンになってます。

 

アルバムラストはDELIRIOUS(デリリアス)。

 

クールなギターリフから始まり、いきなり怒涛の歌メロに突入するハードなロックンロールです。
この曲も5曲目と同じくベースのダスティのリードヴォーカルです。
この人は、こういう怒涛の熱い楽曲に似合う声質を持ってますね。
ところどころコンピューターっぽい声がしたりと、80年代っぽいですが、本質はドライビングロックンロールです。

 

最後までノリノリの爽快なアメリカンロックでした。

まとめとおすすめポイント

1985年にリリースされた、ZZ トップの9thアルバム、AFTERBURNER(アフターバーナー)はビルボード誌アルバムチャートで第4位、と彼らの過去最高位を獲得します。
そしてアメリカでは500万枚の大ヒットを記録します。

 

38分ほどで全10曲のこのアルバムは、怒涛の勢いを封じ込めたアルバムになっています。

 

歴史あるバンドが、時代に合わせて自らを変化させていくのは、容易なことではないに違いありません。
旧来のファンはこれまでの音楽性を支持しているでしょうし、変に変わりすぎると元のファンを失った上に新たなファンも付かない、という最悪の結果もありえます。
果たして、ZZトップはどうだったかというと、非常にうまくこの時代の波を乗り切ったと思われます。

 

ブルージーなハードブギソングが中心の彼らの音楽でしたが、それに80年代風のキラキラアレンジを加えると、見事な化学反応を引き起こしました。
これまでの、ノリノリのロックンロールはそのままに、それをそっくり現代風に(80年代風)見事に料理できたと思います。
そのため、ファンは減るどころか、世界中で大ヒットしてしまいました。

 

ここで一番大切な点と思いますが、80年代風に変わったのは、アレンジの部分だけだということです。
彼らのデビュー以来持っている、泥臭いブルーズロックの根底はそのまま残っています。
加えて、今でも通用するのではないかと思える、バンドの勢い、疾走感、このノリの部分もしっかり以前同様残っています。

 

この辺が勝因だったのではと僕は思います。

 

爽快なアメリカンロックを楽しみたい方には、絶対におすすめのアルバムとなっています。
あと、ドライブのお供にも。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:ZZ TOP(ZZ トップ)

9thアルバム、AFTERBURNER(アフターバーナー)

ビルボード誌アルバムチャート第4位 アメリカで500万枚のセールス

1stシングル SLEEPING BAG(スリーピング・バッグ) ビルボード誌シングルチャート第8位、同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル STAGES(ステージス) シングルチャート第21位、Mainstream RockチャートNo.1

3rdシングル ROUGH BOY(ラフ・ボーイ) シングルチャート第22位、Mainstream Rockチャート第5位

4th(or 5th)シングル VELCRO FLY(ヴェルクロ・フライ) シングルチャートで第35位、Mainstream Rockチャート第15位