実はデビュー時からクオリティは高かった SURVIVOR – SURVIVOR (サバイバー)
SURVIVOR (サバイバー)結成
僕は1984年リリースのSURVIVOR (サバイバー)のVITAL SIGNS(バイタル・サインズ)以降、彼等の音楽をこよなく愛していました。
僕にとっては、やはり、Jimi Jamison(ジミ・ジェイミソン)のヴォーカルこそがサバイバーの声と認識して、そのちょいハスキーで美しい歌声に引かれていたものです。
ところが、彼等のアルバムをさかのぼると、実はヴォーカルの系統は初代から一貫していたということに気付いたのです。
そして、アルバムの内容も、最初から後のジミ時代と遜色ない出来だったことにも。
今日は、そんなサバイバーのデビューアルバムについて語ってみたいと思います。
まず、言っておきたい大事なことですが、「サバイバー」という日本語表記についてです。
僕は、このブログで、ほぼ一貫して「V」の日本語にはヴァ、ヴィ、ヴェ、ヴォといった言葉を当てています。
なので、サバイバーの場合、本来は「サヴァイヴァー」と書くべきところです。
ただ、当時からレコード会社の公式の表記は「サバイバー」となっていますし、ウィキペディアでもやはり「サバイバー」との表記がなされています。
そして、僕もずっと「サバイバー」表記を見て育った来たものだから、こっちの方が馴染んでいます。
というわけで、今後も全力で「サバイバー」表記で行こうと思っています。
さて、サバイバーの中心人物と言えば、Jim Peterik(ジム・ピートリック)とFrankie Sullivan(フランキー・サリバン)の2人ということになるでしょう。
僕は、当時はほぼヴォーカルのジミしか目に入ってませんでしたが、結成時からのメンバーであるこの2人がコンポーザー、プレイヤーとして重要な働きをしていることに後から気付くことになりました。
ジム・ピートリックは1960年代中盤から、The Ides of March(アイズ・オブ・マーチ)というブラスロックバンドでヴォーカル兼ギタリストとして活動しています。
4枚ほどアルバムを出し、その中からシングルチャート第2位のVehicle(ヴィークル)という大ヒットを出したりしてます。
そして1976年にはソロアルバムDon’t Fight the Feelingをリリース。
そのアルバムのライナーノーツで、ジムのことが“survivor(生存者、生き残り)”として言及されており、その言葉が後のバンドの名前の決定のヒントの一つとなりました。
また、その少し前の1970年代中期には、ジムはChase(チェイス)というブラスロックバンドでも活動していましたが、そのバンドが1974年のツアー中の飛行機事故でメンバーのほとんどが死亡、バンドは消滅してしまいます。
その時たまたま別移動だったジムは、その事故を逃れることができ、ここでは文字通りの“survivor(生存者、生き残り)”となっていて、それも後のバンド名の由来の一つとなっています。
自身のバンドを率いてソロ活動中の1978年、マネージャーにより、Mariah(マライア)というハードロックバンドで活動してたフランキー・サリバンと会うことになります。
わずか一時間の最初の出会いで、サバイバーは産声を上げることになりました。
ベースにはDennis Keith Johnson(デニス・ジョンソン)、ドラムスにはGary Smith(ゲイリー・スミス)を誘います。
この二人は、あの飛行機事故で消滅したバンド、チェイスの元メンバーで、そういう意味でやはり“survivor(生存者、生き残り)”でもあります。
そして、ヴォーカルには元Jamestown Massacre(ジェイムスタウン・マサカー)のDave Bickler(デイヴ・ビックラー)が選ばれます。
こうして、飛行機事故を免れた、あるいは他のバンド活動をやっていた、といった意味で、“survivor(生存者、生き残り)”たちが集まり、活動を開始しました。
その1978年から高校や小さなクラブでのライヴ活動を行なっていて、ついにアトランティックレコードとの契約が決まります。
プロデューサーは、UFOなどを手掛け売れっ子になりつつあったRon Nevison(ロン・ネヴィソン)が行ないデビューアルバムが制作されます。
ブラスロックバンド出身者が多いにも関わらず、純粋なアメリカンハードロック路線を追求しています。
そして8ヶ月の歳月をかけてデビューアルバムは制作されました。
では、今日は、1980年にリリースされた、SURVIVOR (サバイバー)の1stセルフタイトルアルバム、SURVIVOR (サバイバー)をご紹介します。
SURVIVOR (サバイバー)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、SOMEWHERE IN AMERICA(サムホェアー・イン・アメリカ)。
クリーントーンのギターストロークで静かに始まっていき、少しずつ音が加わっていくイントロが、何かの始まりを感じさせてくれるアルバムスタートです。
そして、ロックンロールの王道のギターリフを伴い、ゆったり進んでいきます。
初めて聴いたときの驚きと言えば、やはり、デイヴ・ビックラーの声がジミのヴォーカルに声質が似ている、ということでした。
結局サバイバーのヴォーカル、というのはジミ加入で一気に良くなったというわけでなく、最初からこのハスキーなハイトーンヴォイスというイメージが出来ていたわけですね。
まあ、後のジミに比べれば、ちょっと荒削りな面も否めませんが、サバイバーのイメージどおりの声で安心しました。
バンドサウンドは、ソリッドなギターリフを中心にシンプルでハード目のポップロックを披露しています。
ジミ期に比べれば、当然ながら時代が違うので音の洗練具合が違うのですが、僕が想像していた以上によく出来てると感じます。
曲展開も、シンプルとは言え工夫されていて、一本調子というわけでなくちゃんとメリハリのついた作りになってますね。
曲は、ジム・ピートリックによる楽曲です。
やはり彼のメロディメーカーとしてのセンスが、バンド結成の最初から輝いてると思います。
アルバム中の他の作曲すべてにジムがからんでいて、間違いなく彼がバンドの中心人物であると言えるでしょう。
この曲は、アルバムからの唯一のヒットシングルとなり、ビルボード誌シングルチャートで第70位を記録しています。
2曲目は、CAN’T GETCHA OFFA MY MIND(お前に首ったけ)。
キャッチーさ全開の、爽快ポップロックです。
ヴォーカルのデイヴは、ヴォーカル兼キーボードとしてクレジットされてます。
70年代末期ということで、キーボードの音色もちょっとチープですが、軽快な楽曲にピッタリのメロディが奏でられてます。
また、思った以上にベースが動き回り、グルーヴィーに楽曲を彩っています。
サビではデイヴの歌メロに、コーラスや掛け合いが入ってて、なかなかいい雰囲気です。
ジムも歌えますから、このコーラスもサバイバーの魅力の一つとなっていますね。
軽快で、とても楽しめるポップソングです。
3曲目は、LET IT BE NOW(レット・イット・ビー・ナウ)。
これは非常にかっこいいです。
ちょっとアダルティな雰囲気で、ソリッドなギター、グルーヴィーなベース、シャッフルリズムのはねたドラムスが、デビューとは思えない大人びた演奏を聴かせてくれます。
ギターリフもシンプルでかっこいいですし、ソロもいい感じです。
楽曲優先のギタープレイは、この初期の頃から一貫していたことに気付かされます。
デイヴのヴォーカルは、高音はちょっときつそうですが、なかなかパワフルでくせになりますね。
4曲目は、AS SOON AS LOVE FINDS ME(めぐり愛)。
続けて、さらにシリアスっぽいハード目の曲が続きます。
これもまた、ソリッドなギターリフが特徴で、とてもかっこいいです。
サビ前のバンドサウンドでの盛り上がりなどもとても効果的です。
クイーンを思わせる、ピアノの連打の上に響くコーラスも印象的なパートですね。
そして、この曲では、けっこうギターソロが弾きまくられています。
やればできる、ってのちょいアピールを感じます。
でも、ただ弾ける、ってのではなくて、曲調にピッタリ合ったハードなソロですね。
見事に曲に溶け込んだプレイです。
存在的に地味かもしれませんが、僕はとても好きですね。
5曲目は、YOUNGBLOOD(ヤングブラッド)。
ささやかなブリッジミュートに、切り裂くようなギターリフとベース音が切り込んできて、そしてドラムスも参加、どんどんバンドサウンドとして完成していくイントロが秀逸です。
これは、完全に後のアイ・オブ・ザ・タイガーのヒントになったイントロになってますね。
しかしAメロから始まる歌メロは、まったく後の曲とは異なった展開を見せています。
サビは意外にも明るい雰囲気に変わってます。
しかし、後半は、デイヴが大きな声を張り上げるちょっとしたドラマティックな展開まで準備されていてなかなか凝ってます。
意外とキャッチーで、耳に残る佳曲だと思います。
6曲目は、REBEL GIRL(レベル・ガール)。
これは日本盤のみの収録になってるようです。
曲自体は、アルバムが出た1年後にレコーディングされ、そのため遅れてリリースされた日本盤には収録された、ということのようです。
非常にキャッチーで典型的なサバイバー節でもあるハードポップソングですね。
やはり、この爽やかなメロディを作り出せるのがサバイバーの大きな魅力となってますね。
アメリカンロックの王道をいく楽曲ですね。
この爽快さ、爽やかさ、これはアメリカンバンドならではだと思われます。
とはいえ、アメリカ盤には未収録ということで、これは日本盤を聞くべし、といった感じですね。
この曲は外せない、かなり強力な楽曲と思います。
7曲目は、LOVE HAS GOT ME(ラヴ・ハズ・ガット・ミー)。
ここからB面に入ります。
これは、ジムの曲で、唯一彼がヴォーカルを取っているようです。
決して悪くないですが、やはりデイヴのヴォーカルの方がサバイバーにはしっくりきます。
ジムも以前のバンドではヴォーカルもやっていたので、一曲くらいは歌いたかったのでしょう。
まあ、ものすごく個性的であまりにもデイヴと違う、ということはないので、一曲くらいは歌わせてあげてもいいかもです。
でも1曲でいいです。
曲は普通に良いです。
地味ですが、悪くありません。
8曲目は、WHOLE TOWN’S TALKIN’(粋なウワサ)。
アコギのイントロから始まる、哀愁感漂う楽曲です。
Aメロで、デイヴのハスキーな声が聞こえた瞬間、やはりヴォーカルはこっちだろう、と思ってしまいます。
サビの歌メロがメロディアスで切なくていいです。
そのメロを追っかけるソロギターもかっこいいですし、歌メロを盛り上げるコーラスもバッチリです。
渋かっこいい楽曲です。
9曲目は、20/20(20/20)。
これもキャッチーなハードポップソングです。
軽快な歌メロを、かっちりとしたバンドサウンドが支えて、サバイバーらしい1曲になってます。
歌メロのメロディが素晴らしいです。
ギターソロのバックでベースがクリアにはっきり聞こえます。
こんなシンプルで無駄のないサウンドはさすがです。
これまた佳曲だと思います。
10曲目は、FREELANCE(フリーランス)。
ゆったり王道のロックサウンドです。
これも、悪くないできだと思います。
11曲目は、NOTHING CAN SHAKE ME (FROM YOUR LOVE)(ナッシング・キャン・シェイク・ミー)。
ここでドラマティックな楽曲登場です。
静かなアルペジオの中で、デイヴが優しく歌い始めます。
ささやかなベースも聞こえ始め、ハイハットが刻まれます。
2番では、ドラムが加わり、そしてサビではデイヴの熱唱と共に、重厚なバンドサウンドへ。
サビでの絶唱は、ちょっとデイヴには高音すぎて辛そうですが、熱は強く感じられます。
ギターソロは優しいロングトーンのメロディで楽曲に華を添えます。
再び静かなところから、ぐんぐん盛り上がっていきエンディングへ。
これは、なかなか叙情的でドラマティックな楽曲ですね。
さすが、経験者、熟練者の集まりなのだな、と唸らせられるいい出来です。
12曲目は、WHATEVER IT TAKES(チャンスを逃すな)。
ちょうどよい感じのノリのポップソングです。
シリアスっぽいけども、ギターリフの使い方のせいか、暗いのにキラキラしてます。
中盤では、デイヴと恐らくジムのヴォーカルの掛け合いもあり、おもしろいです。
ベースも効いてて、僕はけっこう好きです。
ラストのギターソロのアウトロも、とてもかっこよくきまってます。
まとめとおすすめポイント
1980年にリリースされた、SURVIVOR (サバイバー)の1stセルフタイトルアルバム、SURVIVOR (サバイバー)はビルボード誌アルバムチャートで第169位を記録しました。
まあ、これはバンドの期待していた成功とは程遠いものだったに違いありません。
では、内容が悪かったから売れなかったのでしょうか。
僕にはそうは思えません。
もちろん、ジミ時代からさかのぼって聴いたアルバムで、そんなに期待せずに聴いてみたからかもしれませんが、かなりの完成度ではないでしょうか。
先代のヴォーカルのデイヴ・ビックラーの声は、まさしくサバイバーというバンドのイメージを遵守した、ハスキー&ハイトーンの声質です。
バンドも、さまざまなバンドの生き残りたちが集まったこともあって、演奏自体も非常によいと思います。
楽曲は、ジム・ピートリックを中心にメンバー全員で作っていった曲たちですが、メロディアスハードロックの名に恥じないクオリティを保っていると思います。
時代が1980年代の超初期ということで、確かに音質などの点でチープなところもあるとは思いますが、当時では、かなりの力作、売れてもおかしくない作品ではなかったか、と感じられます。
僕の想像以上に、サバイバーは最初からサバイバーだった、と思えます。
彼等のルーツをたどると、かなりのメンバーがブラスロック系の経験者だったことがわかりましたが、このサバイバーでは、そんなこと全く感じさせない、正統派のアメリカンロックを披露しています。
この時期は、フォリナーやジャーニー、REOスピードワゴン、スティックスといった同系統の(仮に大雑把に言ったとして)バンドたちが活躍を始めてた頃で、そんな中で、特に材料のなかったサバイバーは目立たなかったのかもしれません。
そのため、結局2年後のあの映画主題歌によるカタリスト(触媒、きっかけ)によるブレイクを待つ必要があったのかもですね。
とはいえ、時代がまさに1980年代に入ったばかり、エイティーズサウンドが全盛になっていくのと共に、サバイバーは時代の音にアジャストしていきます。
成功までは少し時間がかかったとは言え、すでにデビュー時からクオリティの高い作品を生み出しています。
後に雨後のたけのこのように出てくる、メロディアスハードポップ、という新たなジャンルを築きあげたバンドたちの一つと言っても過言ではないでしょう。
この作品は、聴いて良かった、と思える好作品でした。
ジミ時代のサバイバーしか聞いてない方も、一聴すればこのデイヴ時代もやはり同じくサバイバーだと感じ取ってもらえるに違いありません。
チャート、セールス資料
1980年リリース
アーティスト:SURVIVOR(サバイバー)
1stアルバム、SURVIVOR (サバイバー)
ビルボード誌アルバムチャート第169位
1stシングル SOMEWHERE IN AMERICA(サムホェアー・イン・アメリカ) ビルボード誌シングルチャートで第70位