名実ともにキャリア最高傑作 Mötley Crüe(モトリー・クルー) – DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)
前作からの流れ
1987年にリリースされた、Mötley Crüe(モトリー・クルー)の4thアルバム、GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)は、ビルボード誌アルバムチャートで第2位を記録しています。そしてアメリカで400万枚を売り上げる大ヒットアルバムとなりました。
そしてWHITESNAKE(ホワイトスネイク)、GUNS N’ ROSES(ガンズ・アンド・ローゼズ)等をサポートに従え、勢いに乗ったままワールドツアーが敢行されます。
年末には来日公演も行われ、まさに人気絶頂状態が始まりました。
とはいえ、アルバムは前述のとおり、第2位でとどまってます。
ちょうど、こちらも人気絶頂のWhitney Houston(ホイットニー・ヒューストン)の2ndアルバム、Whitney(ホイットニー)によってNo.1を阻まれたわけですね。
とりわけバンドの中心人物のベーシストNikki Sixx(ニッキー・シックス)はそれが悔しかったようですね。
後々のインタビューで、ホイットニーのレコード会社にNo.1を横取りされたと、述懐しておられます。
その悔しい気持ちが、次のアルバムをより良いものにするために大きく寄与したことは間違いないでしょう。
こんな大成功の陰では、デビュー当時からバンドをむしばんでいたドラッグ使用の問題で、大事件が勃発します。
その年の暮れの12月、ラットのロビン・クロスビー、ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュらとのドラッグ・パーティーを楽しんでいる中、なんとニッキーはヘロインの過剰摂取により病院送りになってしまったのです。
そして、病院へ運ばれている途中、心臓が一時止まってしまう、という大ごとになってしまったのでした。
ところが、救急隊員の一人がモトリー・クルーのファンで、救命に尽力、結局アドレナリンを2発撃ち込んで、見事ニッキーは蘇生した、とのことです。
別にファンじゃなくても最善を尽くしたと思いますが、たまたまそこに居合わせたのがファンだってのは確かにミラクルを感じますね。
きっと、この救急隊員は自分のアドレナリンもMAXだったのではないでしょうか。
この2分間の心停止体験は、楽曲になり、このアルバムにKICKSTART MY HEART(キックスタート・マイ・ハート)のタイトルで収められています。
結局、この死にかけた体験が、この名曲、またこの名アルバムを作り出すのに最も寄与した出来事だったのでは、と思われますね。
それとともに、彼らのドラッグ漬けの体をクリーンアップするきっかけともなったに違いありません。
と言うのも、彼らのこんな退廃的なライフスタイルはバンドを崩壊寸前まで追いやっていたようです。
そのため、マネージャーはその後のヨーロッパツアーをキャンセルさせます。
なぜなら、このまま行かせたら、バンドの誰かが遺体袋に入って帰ってくることをマジで恐れたからです。
そして、メンバーは(ギタリストのMick Mars(ミック・マーズ)を除く)薬物中毒からのリハビリ治療を受けることになりました。
結果として、全員無事にドラッグ中毒から抜け出ることに成功したのです。
ちなみに、ミックは、自力で更生したと言われていますね。
1989年の8月には、旧ソビエト連邦のモスクワで開催された、Moscow Music Peace Festival(モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル)に出演。
シンデレラ、スコーピオンズ、スキッド・ロウ、オジー・オズボーン、ボン・ジョヴィ等、多くの西側のビッグネームに名を連ねています。
ところが、このフェスのヘッドライナー、いわゆる主役アーティストがボン・ジョヴィになったことに、モトリー・クルーは激怒したと言われています。
けっこうこのフェスの裏ではバンド間のゴタゴタがあって、決してタイトル通りのPeace Festival(平和の祭典)とはいかなかったようですね。
また、このフェスの目的は世界平和とともに、麻薬撲滅、が掲げられていましたが、ここまでのキャリアでドラッグ漬けだったモトリーがよく出演できたな、ってのも感じます。
タイミング的には、この時点までには、完全にリハビリが成功して、クリーンな体になっていたということになるでしょう。
さて、ドラッグ三昧の日々を過ごしていた彼らが、ついにクリーンな体になって次のアルバムを制作します。
初期のころからアルコール&ドラッグ漬けの彼らが、初のシラフでのアルバムを発表したわけです。
今回は、Bob Rock(ボブ・ロック)をプロデューサーに迎え、前回横取りされたNo.1を奪取すべく、気合の入った楽曲作り、レコーディングがされています。
ところが、ボブ・ロックによると、この4人は手が付けられなく、大量のワインを飲み、互いに殺したがってるような奴らだった、とのことです。
それで、争いごとを最小限にするために、4人のパートを別々に録音していったようです。
やっぱり彼らはドラッグは卒業したとは言え、根っからのバッド・ボーイズなんですね。
しかし、ボブはうまいこと彼らを操って、見事な作品を作り上げることに成功したのでした。
では今日は、1989年リリースのMötley Crüe(モトリー・クルー)の5thアルバム、DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)をご紹介したいと思います。
DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)の楽曲紹介
オープニングトラックは、T.N.T. (TERROR ‘N TINSELTOWN)(TNT)。
42秒ほどのインストゥルメンタルです。
ドラムとギターの短いソロに、ドラマ仕立てのイントロです。
救急車のサイレンと、その後のカークラッシュ音。
なんか、1984年の、ヴォーカルのVince Neil(ヴィンス・ニール)による悲惨な自動車事故を思い出してしまいますね。
ちなみに、TINSELTOWNとはハリウッドのことで、次の曲のドクターの暗躍してる場所になってます。
2曲目は、アルバムタイトルトラック、DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)。
今回も楽曲はニッキーが全曲担当、この曲はニッキーとミックの共作曲です。
前トラックからの流れが非常にかっこいいです。
グリッサンド一発から入るヘヴィなギターリフがたまらないですね。
シャッフルビートにのせて、非常にグルーヴ感たっぷりのリフになっています。
やはりミックはリフが良いとかねがね思ってますが、この曲も超絶にかっこよいリフですね。
また、ベーシストのニックとドラマーのTommy Lee(トミー・リー)によるリズム隊も、ヘヴィ&グルーヴィーなサウンドを生み出しています。
プロデューサーのボブ・ロックはいいバンドサウンドを聞かせてくれてますね。
そして、いつも通り、ヴィンスは艶のあるハイトーンを聞かせてくれます。
この悪~い感じのヴォーカルも、彼独特で非常にかっこよいですね。
サビのテンションの高い歌メロも最高度の出来栄えではないでしょうか。
この曲ではミックのギターソロもかなり良いですね。
これまでは、あまり彼のソロはいまいち感があってリフの良さだけ目立ってたのですが、ヴィンスの“ギター!!”の掛け声に応じて繰り広げられるソロはかなり良いです。
ユニゾンチョーキングのロングトーンからの速弾き、高速スライドと開放弦トレモロ、ピック位置をずらしながらのハーモニクス効果音、そして最後は流行りのタッピング奏法でエンディングです。
いやいや、こんなにソロがうまくなっていたとは驚きました。
みんながドラッグのリハビリに行っている間に一人だけしっかり練習してたのかもしれません。
僕の中では、彼のベストのソロだと思いますね。
とにかく、このオープニングを聞けば、彼らがドラッグから解放されて本気で作ってきたことに気付けると思います。
ちなみにDR. FEELGOODとはFEELGOOD(いい気持ちにさせる)を専門にしてるドクター(医師)ってことで、ドラッグで気持ちよくさせてくれる、まあ彼らがどっぷり浸かっていた世界の元凶のようなものでしょう。
そんなドクターをタイトルに持ってくるところにも、彼らの本気が逆に表れているのかもしれません。
いずれにしてもアルバムは最高の盛り上がりでスタートとなりました。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第6位、同誌Mainstream Rockチャートで第7位を記録しています。
キャリア初のトップ10ヒットとなり、幸先のよいスタートとなりました。
3曲目は、SLICE OF YOUR PIE(スライス・オブ・ユア・パイ)。
これも、ニッキーとミックの共作品です。
いきなりのカントリーブルースっぽいアコースティックな音色。
前曲がすごかったため、肩透かしを食らいますが、すぐさまヘヴィなノリのどっしりしたアメリカンハードロックに変貌します。
やはり今回はヘヴィネスがかなり強調されてて、ますますバッドボーイズのワルに磨きがかかった感じです。
そして、ギターソロは今回もミックが堂々と弾きまくってます。
彼のソロプレイの成長具合を感じるのは僕だけでしょうか。
ちなみにイントロ部分には、AEROSMITH(エアロスミス)のSteven Tyler(スティーヴン・タイラー)がクレジットされてます。
あの声がおそらく彼のものでしょう。
ラストがちょっとサイケデリックな雰囲気となります。
彼らがLSDを使ってる話は聞いたことがないので、まあ直接関係はないと思いますが、ちょっと異色の世界を見せてくれてます。
4曲目は、RATTLESNAKE SHAKE(ラトルスネイク・シェイク)。
これは、ニッキー、ヴィンス、トミーによる共作となっているロックナンバーです。
軽快なギターリフに乗って始まるのは、ハードでファンキーなロックンロールです。
この曲ではミックはいつもどおりクールなリフを聞かせてくれます。
ソロは短めでそんなに特筆すべきではありませんが、全編を貫くリフで見事な仕事をしています。
珍しくホーンセクションも加わり、ファンキーさが倍増しています。
ラストにはホンキートンクピアノも合わさって、さらにご機嫌なノリとなってます。
中盤のベースをフィーチャーするところも非常にグルーヴィー感をアップしていますね。
加えて言えば、バックヴォーカルでプロデューサーのボブも参加しています。
5曲目は、KICKSTART MY HEART(キックスタート・マイ・ハート)。
この曲は前述のようにニッキーの心停止からの復活の体験をもとにして作ったニックの楽曲です。
でも、元々はこのアルバムのために作ろうとしたわけではなかったようです。
この5thアルバムの制作期間中に、ニックは自宅でアコースティックギターを持ちながら、歌詞を走り書きしていました。
そこにいた前マネージャーがそれを読んだとき、ぜひとも他のメンバーとシェアするようにニッキーを促します。
乗り気ではありませんでしたが、ニッキーがメンバーに見せると、あっという間に楽曲が出来上がっていったというわけです。
ちなみに、ガンズ・アンド・ローゼズのSteven Adler(スティーヴン・アドラー)は、この話の真実性に異議を唱えています。
彼によると、救急隊員が来る前にニッキーを蘇生させたのは自分だ、との言い分です。
まあ、ラリっているもん同士の主張なんで、どっちが正しいかなんてもはや誰にもわかりませんね。
ただ、「ニッキーの心臓が止まったのに、再び動き出した」、それだけは間違いない真実なのでしょう。
さて、楽曲は非常にスピード感とヘヴィなグルーヴとが相まって見事な作品に仕上がってますね。
イントロの音は、フロイドローズのギターで、アームダウンした状態で開放弦を鳴らし、じわっとアームを戻していく作業を3本の弦でやっています。
結果として、バイクのギアシフトのような音が見事に演出されていますね。
オープニングからミックのグッジョブです。
そして始まるのは疾走感あふれるシンプルなロックンロールです。
楽曲を引っ張るミックのギターリフがこれまた、超絶にかっこよいです。
問答無用の、ノリノリの楽曲ですね。
ライヴでのサビの「oh! yeah!」の大合唱が聞こえてくるようです。
後半にはミックがトーキング・モジュレーターを使用しています。
絶対にライバルのボン・ジョヴィに倣ったわけではないでしょうが、効果的に使ってます。
ラストはおそらくトーキング・モジュレーターを口にくわえたまま、「キックスタートマイハ~~ト」で終わりですね。
タイトルトラックと合わせて、モトリー最高峰の楽曲となったと思います。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第27位、Mainstream Rockチャートで第17位を記録しています。
6曲目は、WITHOUT YOU(ウィズアウト・ユー)。
これはニッキーとミック共作の美しいパワーバラードです。
これまでも、モトリー・クルーは美しいバラードを生み出してますが、今回もそれに並ぶ作品に仕上がってます。
今回は、完全に毒気の抜かれた、本物のバラードのような感じですね。
ヴィンスの声は、やっぱり艶があっていいですね。
毒々しい声もぴったりですが、キレイに歌おうと思えば歌えるんです。
ドラッグも抜けて、完璧なヴォーカルを聞かせてくれてます。
また、この曲のイントロとソロではミックがスティール・ギターを鳴らしてますね。
スライドバーを揺らしながら、丁寧できれいな音を加えてます。
また、曲全編でアルペジオも軽やかに響かせてます。
この人も、バッドボーイズでありながらも、やっぱりちゃんとしたミュージシャンなんだなと改めて感じさせられます。
ラストにもう一ひねりあったらよかった気もしますが、とてもいいバラードであることは間違いないです。
この曲は、トミー・リーの2番目の奥さんのHeather Locklear(ヘザー・ロックリア)さんとの関係が元になった歌だそうです。
残念ながらこの4年後にはお別れされていますねw
この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第8位、Mainstream Rockチャートで第11位を記録しています。
7曲目は、SAME OL’ SITUATION (S.O.S.)(セイム・オール・シチュエーション)。
バンドメンバー4人の共作のまさにパーティロックです。
完全にライヴ映えするための楽曲と言っても過言ではないでしょう。
わかりやすいアメリカンロックンロールサウンドに乗ったキャッチーなメロディ。
軽快でコンパクトなミックのギターソロもイケてます。
サビはドラムトラックのみをバックに全員で合唱できるパートもあり、絶対盛り上がる系の曲になってますね。
典型的なLAメタルソングとも言えるのではないでしょうか。
ちなみにNIGHT RANGER(ナイト・レンジャー)のJack Blades(ジャック・ブレイズ)がバックヴォーカルで参加してます。
この曲は5thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第78位、Mainstream Rockチャートで第34位を記録しています。
8曲目は、STICKY SWEET(スティッキー・スウィート)。
ニッキーとミックの共作のグルーヴィーなハードロック曲です。
やはりこの曲の要となるのは、ミックの秀逸なギターリフでしょう。
イントロから、非常にクールなリフをキメてますね。
途中で入るオブリも、ギターソロも、ミックのプレイに非常に引き込まれます。
サビではタイトルの連呼で、当然ながらライヴで盛り上がる箇所となっています。
この曲にも多数バックヴォーカルで数名のアーティストが参加しています。
スティーヴン・タイラー、ジャック・ブレイズ、そしてBryan Adams(ブライアン・アダムス)までが名を連ねています。
おそらくプロデューサーのボブ・ロックがカナダ人なので、そのつながりでHM/HRとは関係のないブライアンが参加したのかもしれません。
9曲目は、SHE GOES DOWN(シー・ゴーズ・ダウン)。
ニッキーとミックの共作のアメリカンロック的楽曲です。
ちょっと猥雑な雰囲気のミックのギターリフが印象的です。
ソロもアメリカンな雰囲気から、なかなか弾きまくってて非常に良いです。
この曲も、前の2曲から引き続きで疾走感はなくともどっしりとしたハードロック作品になってます。
アルバム内の位置的にあまり目立ちませんが、佳曲だと思います。
この曲のバックヴォーカルにはCHEAP TRICK(チープ・トリック)のRobin Zander(ロビン・ザンダー)、Rick Nielsen(リック・ニールセン)の二人が参加しています。
10曲目は、DON’T GO AWAY MAD (JUST GO AWAY)(ドント・ゴー・アウェイ・マッド)。
ニッキーとミック共作の、アコースティック感あふれるメロディアスポップロックです。
毒気のない、名曲の誕生と思いましたね。
ミックのアコギのストロークが全編で広がり、軽めのギターリフが曲を飾っています。
歌メロは非常にいいメロディで、爽やかな爽快感で満ちています。
中盤以降の、4つ打ちのリズムが入ってきての軽い加速感も曲の魅力を増していると思います。
ドラッグとは無縁のすがすがしい気持ちにさせてくれる楽曲に仕上がってますね。
ヴィンスも、この曲をとても気に入っていて、歌うのが大好きみたいです。
それどころか、彼はこの曲について“It’s kind of a feel-good song”と言っていて、FEELGOODという言葉を使っています。
このアルバムのタイトルのドクターは、ドラッグでいい気持ちにさせる(FEELGOOD)人でしたが、ヴィンスは、この楽曲自体がいい気持ちにさせる(FEELGOOD)と言っているわけです。
これは完全にリハビリが成功した証と言えるかもしれませんね。
ハチャメチャで狂暴だったイメージを覆す、爽快なポップチューンとして秀逸な出来になっていると思います。
この曲は4thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第19位、Mainstream Rockチャートで第13位を記録しています。
ラスト11曲目は、TIME FOR CHANGE(タイム・フォー・チェンジ)。
ニッキーとDonna McDaniel(ドナ・マクダニエル)との共作バラードです。
ドナとは、前アルバムのツアー以降ライヴに同行している女性バック・コーラス・チーム Nasty Habits(ナスティ・ハビッツ)のメンバーです。
もう、とっても健全な美しいバラードになっています。
あまりにもいい曲なので、後にB’zのALONEという曲で再登場!?してます。
パクリ疑惑でよくでてきますが、確かに曲の構成はほぼ同じですね。
でも、僕はどっちも好きですけどね。
今こそ変化の時だと、ポジティヴな内容を歌い上げています。
まさに、彼らの今の状況にぴったりですね。
ドラッグ漬けだった日々から変化し、今やクリーンな体でこんなに美しいバラードを作っているのです。
そんな流れも踏まえると、いっそうこの曲の価値は増すと思います。
ミックのギターソロもエンディングソロも、非常にいいメロディを奏でてますね。
アルバム全体で彼のテクの向上を感じましたが、ラストもいいプレイでしめてくれました。
この曲では、ニッキーはベースをボブ・ロックに任せて、彼はオルガンとピアノをプレイしています。
イントロのピアノも非常に印象的です。
この曲のバックヴォーカルにはSKID ROW(スキッド・ロウ)が参加しています。
とても美しいバラードでアルバムはエンディングを迎えます。
まとめとおすすめポイント
1989年リリースのMötley Crüe(モトリー・クルー)の5thアルバム、DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得、アメリカだけで600万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
もう、この大成功の要因は、間違いなくドラッグ漬けの日々からの脱出ではないでしょうか。
クリーンになった彼らは、前回とれなかったNo.1を目指して必死に努力したとニッキーは語っています。
作詞作曲の点でも磨きをかけ、プロデューサーにボブ・ロックを迎えることで一段と曲の良さがアップしています。
前作でも、アルバム内のトータルの楽曲の良さが上がってましたが、今回はさらにその上をいくクオリティを築き上げたと感じます。
また、演奏能力も確実に向上しています。
ニッキーとトニーのリズム隊は、グルーヴ感たっぷりで、ボブのプロデュースにより、いっそうクリアなサウンドで収められています。
また、僕的にはミックのギターテクの向上がすさまじく感じましたね。
リフの良さは前から評価していましたが、今回はリフはもちろんのこと、優れたギターソロを連発しています。
やはりこれはきっとシラフ状態のクリーンな肉体のなせる業でしょう。
このアルバムはファンの間で高く評価されたのに加えて、数々の賞にノミネートされています。
収録曲の、ドクター・フィールグッドとキックスタート・マイ・ハートは共にグラミー賞のBest Hard Rock Performance(最優秀ハード・ロック・パフォーマンス賞)に受賞は逃しましたが、ノミネートされています。
また、American Music Awardsでは、アルバムがFavorite Heavy Metal/Hard Rock Albumにノミネートされましたが、1990年にはガンズ・アンド・ローゼズのAppetite for Destructionに負けましたが、翌年1991年にはエアロスミスのPumpやポイズンのFlesh & Bloodを抑えて、見事栄冠を勝ち取っています。
こうして、過去最高の大成功を収めたわけですが、それにふさわしい内容の伴ったアルバムだと思いますね。
脱ドラッグで、楽曲、演奏のクオリティは確実に上がってますし、良プロデューサーのおかげで、良質のアルバムに仕上がっています。
これまでは、バッドボーイズロックなどと言われイメージ先行でしたが、今回はまさにミュージシャンとしての評価を確実に上げたと感じています。
この時期は、HM/HRシーンでは数多くの名盤が生み出されていますが、それらの中でまったく見劣りしない優れたアルバムだと思います。
捨て曲など見当たらない、まさにキャリアの絶頂期に生み出されたこのアルバムは、間違いなく名実ともに彼らの代表作と呼ぶにふさわしいと言えるでしょう。
チャート、セールス資料
1989年リリース
アーティスト:Mötley Crüe(モトリー・クルー)
5thアルバム、DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド)
ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで600万枚のセールス
1stシングル DR. FEELGOOD(ドクター・フィールグッド) ビルボード誌シングルチャート第6位、同誌Mainstream Rockチャート第7位
2ndシングル KICKSTART MY HEART(キックスタート・マイ・ハート) シングルチャート第27位、Mainstream Rockチャート第17位
3rdシングル WITHOUT YOU(ウィズアウト・ユー) シングルチャート第8位、Mainstream Rockチャート第11位
4thシングル DON’T GO AWAY MAD (JUST GO AWAY)(ドント・ゴー・アウェイ・マッド) シングルチャート第19位、Mainstream Rockチャート第13位
5thシングル SAME OL’ SITUATION (S.O.S.)(セイム・オール・シチュエーション) シングルチャート第78位、Mainstream Rockチャート第34位
モトリー・クルー関連アルバム
3rdアルバム THEATRE OF PAIN(シアター・オブ・ペイン)
4thアルバム GIRLS, GIRLS, GIRLS(ガールズ、ガールズ、ガールズ)