きらめく名曲たち JOURNEY ー ESCAPE




大ブレイクの超名作エスケイプ

 

僕はジャーニーの最高傑作はFRONTIERS(フロンティアーズ)と別の記事で書きました。

 

しかし、それに勝るとも劣らない、もはや同率首位と言ってもよいくらい名盤だと思うのは前作ESCAPE(1981年リリース)です。
個人の主観、好みで言えば一番にFRONTIERSを挙げるが、他の人にジャーニーをお勧めする、という観点で言えば、このESCAPEに軍配が上がります

 

FRONTIERSは、前作で大ブレイクした後で、その勢いがそのまま重厚なバンドサウンド、一体感につながった傑作です。
それに対し、ESCAPEは、スティーブ・ペリー加入後の3部作(1978年のInfinity、1979年のEvolution、1980年のDeparture)、そしてそれに続く1981年のライブアルバム、Captured(ライブ・エナジー)と立て続けに出したアルバムにより、人気が右肩上がりに上がっていったまさにそのタイミングに満を持して出されたアルバムになっています。

 

満を持して、と書いたのは、このアルバム前に脱退した初期主要メンバーのGregg Rolie(グレッグ・ローリー)に代わってJonathan Cain(ジョナサン・ケイン)が加入したためです。
The Babys(ベイビーズ)というバンドのキーボーディストだったジョナサンが加入して、その優れたメロディーメーカー、ソングライターとしての才能を遺憾なく発揮し、このアルバムの優れた楽曲製作に多大の貢献をしたのです。
別の記事でも書きましたが、ジャーニーの世界的な大ブレイクの鍵の一つがジョナサンの加入であったことは間違いないでしょう。

 

アルバムのジャケットも象徴的なものとなっています。
スカラベが星から脱出(ESCAPE)してるところですね。
スティーブ・ペリー加入以降、次第に曲が洗練されていき、アメリカンハードロック路線へ向かいつつあったけど、このアルバムで一気にsophisticated(洗練された)され、レベルがというよりステージが上がった気がしてます。
これまでのカラを破ってそんな大きな変化を遂げた、という自信がこのジャケットに表れてると思いますが、どうでしょう。

 

では今日は1981年にリリースされた、ジャーニーの7thアルバム、ESCAPE(エスケイプ)をご紹介したいと思います。

 

ESCAPEの楽曲紹介

さて、アルバムのオープニングを飾るのは、glee(グリー)というアメリカのドラマで使われて再び有名になったDON’T STOP BELIEVIN’(愛に狂って)。

 

キーボードのイントロが始まり、その音にベースが絡まり、歌が始まり、そしてエレキギターが入ってきて少しずつ早くなり最速になったところでドラムスが入ります。
このイントロからAメロの部分だけで、もうこのバンドはこれまでとは違う、確かに過去から脱出して飛躍を遂げたのだ、という強い確信を持つことができます。
このミドルテンポのロックはこれ以降、ジャーニーのお家芸になったと言えるでしょう。
この気持ちいい感じのテンポが多くの人の心をつかんだのではないでしょうか。
そして、ニールはこの曲のソロでは、非常に抑えて、曲に貢献することに専念しているようです。
この辺のバランスが大ヒットにつながったのではないかと思います。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第9位、同誌Mainstream Rockチャートで第8位を記録しています。

 

2曲目のSTONE IN LOVE(お前に夢中)。

 

これは片方のチャンネルだけからギター音が聞こえてきて数フレーズ後に一気にステレオになり歌メロが始まるという、非常に気を引く効果的なイントロで始まる。
この曲の良さはやはり、スティーブの伸びやかな声と交じり合うメンバーのコーラスワークでしょう
全体をとおして曲にさわやかな印象を与えることに成功しています。
それに加えて特筆すべきは間違いなくニールのギタープレイです。
かっこよいフレーズが随所にちりばめられているうえ、曲の後半からアウトロにかけてたっぷりとソロを聴かせてくれます。
このように出るところは出て、引くところは引く、というニールのギターの取り上げ方がいい意味で顕著に現れている良い曲になってます。
付け加えれば、後半のニールのギターにからむロス・ヴァロリーのベースがしっかりと聞こえるところが好感が持てます。
次の作品FRONTIERSではバンドサウンドが強調されて、それにベース音が埋もれてあまりこちらに届いてこない、という弊害が生じています。
一方、この作品では全編に渡ってベース音がよく聞き取れ、そういう意味でも5人編成のバンドの一体感を感じさせてくれる。
もし聴く機会があれば、ぜひベースのグルーブだけでなくメロディーも感じながらアルバム全体に耳を傾けて欲しいと願います。

 

3曲目は全米4位まで上ったWHO’S CRYING NOW(クライング・ナウ)。

 

このイントロのキーボードも今までにはないですね。
ジョナサンの影響を強く感じられる美しい名バラードです。
が、バラードといってもやはりミドルテンポの感じもあり、繰り返し聴くに耐えうる名曲となってます。
切なく歌い上げるスティーブの歌声がこの曲の最大の特徴のように思えるが、僕はそれ以上に後半のニールのギターソロが一番の聴き所ではないかと思ったりしてます。
前半、少しのアルペジオくらいしかほとんど出番のないニールが、後は任せろ、とばかりに後半すべてを担当することになるわけですが、このソロが泣いてます、聴かせます
しかし、弾きまくるわけではありません、切ないメロディーをまさにギターで歌い上げるんです。
テクニック的には複雑なメロディーではありません。
ちょっとエレキをかじっている僕でも、そのメロディーをギターでなぞることが出来るほど、シンプルなメロディーです。
なのに、あのようには弾けません。
弾きまくろうと思えばできるのにそうせずに、美しいメロディーで、そして魂を込めて曲の後半を盛り上げる、これこそニールの職人業だ、と思いますね。
このニールの技術が、アルバム全体を輝かせるのに大きく貢献している、と強く感じさせてくれる素晴らしい曲ですよ、これは。

 

この曲はアルバムからの1stシングルで、シングルチャート第4位、Mainstream Rockチャートでも第4位を記録しています。

 

4曲目のKEEP ON RUNNIN’(キープ・オン・ランニン)は走り続けろ、というタイトルのメッセージのとおり爽快な疾走感のあるロックチューンになってます

 

イントロ、アウトロもまた2曲目同様、ステレオを十分に活用したかっこいいギターリフが聴けます。
ハードなロックなんだけど、ハードになりすぎず、絶妙な爽快感とノリを味わえます。

 

そしてA面ラスト(カセットの場合)はSTILL THEY RIDE(時の流れに)。

 

4thアルバム、INFINITY収録のLIGHTS(ライツ)で聴かせてくれたようなニールの渋ウマなギタープレイと、スティーブの見事なヴォーカルを堪能できる名バラードである。
聴き所はギターソロ。
このスローバラードにあったメロディーをゆったりと奏で始めるがソロ後半は弾きまくって泣きまくってます
だが最後の大サビへは盛り上がりを保ったままスムーズにつながっている、という絶妙なソロです。
この辺が百戦練磨のニールの腕の見せ所なんでしょう。

 

この曲は4thシングルとしてリリースされ、シングルチャート第19位を記録しています。

 

そしてB面1曲目はタイトル曲ESCAPE(エスケイプ)。

 

この曲では夢を持った少年がそれに向かって自分の道を進みだすことをThis is my ESCAPEと表現している。
タイトル曲にふさわしい、かっこいいギターリフ、コーラス、堂々たるギターソロが装備されている。
この手の曲になるとうるさすぎることになりがちだが、そうならないのはプロデューサーの手腕なのだろう。
このようなロックチューンさえも聴きやすい、というのがこのアルバムの魅力なのです。

 

続くLAY IT DOWN(レイ・イット・ダウン)、DEAD OR ALIVE(デッド・オア・アライブ)もその魅力を証明する楽曲です。

 

激しいようでありながら、キャッチーで聴きやすい
どちらもギターリフがかっこよく曲の全体を貫いています。
その安定したかっこいいリフの上にうまいヴォーカル、絶妙なコーラスが乗っています。
加えてギターソロも弾きまくっているとはいえ、見事に楽曲の中で分をわきまえ、曲の良さに貢献してます。
このバランス具合が僕の好みにピッタリなのです。

 

そしてこの3曲でテンションがあがったところで、そろそろアルバムは終わりに近づく。

 

次のMOTHER,FATHER(マザー・ファザー)はアルバムの終焉を感じさせる、物悲しい雰囲気を見事に醸し出している

 

ここでもスティーブは見事に歌い上げている。
曲の静かなところから盛り上がるとこまで、バンド全体で雰囲気を作り上げているところは、やはりこのバンドの成熟度5人のメンバーの技術の確かさに依存するものだと感じられます。
ちなみに後にドラムスとして加入したディーン・カストロノヴォがこの曲をドラムを叩きながら見事に歌い上げたのを見たときは度肝を抜かれました。(アルバムREVELATIONについてきた特典DVDにおさめられているライブより。)
下手したらスティーブより高音が出てるのではないか、というくらい余裕のある歌声と、同時に行なわれるドラムの演奏。
機会があればぜひとも見て欲しいものです。

 

で、ラストは超名曲であり、ジャーニーの代表曲の一つでもあるOPEN ARMS(翼をひろげて)。

 

この曲は映画「海猿」で使われてたり、マライア・キャリーにカバーされたり、と多くの人にもなじみのある曲ではないでしょうか。
この曲はスティーブとジョナサンの共作で、バラードとはこうあるべき、という一つのスタンダードとも言えるような出来だと思います。
たった3分20秒で、これだけの心地よい時間を提供してくれます。
究極のラブソングです。
メロディーの良さはさることながら、サビの部分ではしっかりバンドの曲であることもアピールされています。
そしてやはりスティーブの優しく伸びやかな声、これがあって初めてこの曲は完成を見たと言ってもいいと思います。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで6週連続第2位、Adult Contemporaryチャートで第7位を記録しています。
ちなみに、首位を阻んだのは、J Geils Band(J・ガイルズ・バンド)のCenterfold(堕ちた天使)と、Joan Jett & The Blackhearts(ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ)のI Love Rock ‘n’ Roll(アイ・ラブ・ロックンロール)という大ヒット曲だったとか。
不運である。

 

こうしてESCAPEというアルバムの旅(JOURNEY)はしっとりと終わりを迎えます。

 

まとめとおすすめポイント

1981年にリリースされた、ジャーニーの7thアルバム、ESCAPE(エスケイプ)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得、全米だけで1000万枚のセールスを記録しています。

 

僕は20代後半のころ、無人島に持って行くならこのアルバムだと言ってきました。

  • 激しい曲は爽快であり、バラードは美しい
  • バンドの一体感と一人ひとりの高い技術が随所にちりばめられている。
  • 演奏の録音のバランスが絶妙ですべての楽器、声、コーラスをクリアに堪能できる。
  • 曲順も計算されていて、飽きることがない。

いろいろ挙げると理由はもっとあるのかもしれないが、これだけの条件を備えたアルバムに出会うことはそうそうないでしょう。

 

こんな素敵なアルバムに出会えたこと、そしてこんな素晴らしいアルバムを作り上げてくれたジャーニーに心から感謝したい。

 

そして多くの人にも同じ感動を味わって欲しいと心から思います。

チャート、セールス資料

1981年リリース

アーティスト:JOURNEY(ジャーニー)

7thアルバム ESCAPE(エスケイプ)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで1000万枚、世界で1200万枚セールス

1stシングル WHO’S CRYING NOW(クライング・ナウ) ビルボード誌シングルチャート第4位、Mainstream Rockチャート第4位

2ndシングル DON’T STOP BELIEVIN’(愛に狂って) シングルチャート第9位、Mainstream Rockチャート第8位

3rdシングル OPEN ARMS(翼をひろげて) シングルチャート6週連続第2位、Adult Contemporaryチャート第7位

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