おしゃれなポップアルバム FLEETWOOD MAC - TANGO IN THE NIGHT

FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)との出会い





1985年、僕はCDプレーヤーを購入し、人生で初めてCDなるものを購入した。
その初CDはSTEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)のROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)だ。
妖精のような姿形に惹かれ、購入したのだが、そのアルバムは高校生だった僕に、非常に大人なロックを教えてくれた。

 

コケティッシュな魅力あふれる彼女のアルバムを楽しむと同時に、彼女が実は歴史深いロックバンドのヴォーカリストであることがわかった。
そのバンドはFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)。

 

なんかバンド名からして、すごくおしゃれな雰囲気が漂っている。
そうしてるうちに、何とこのフリートウッド・マックが5年ぶりの新作を発表するという情報が入ってきた。

 

アルバムタイトルはTANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)。
このタイトルもまたまたおしゃれだ。
また、スティーヴィーの声が聴ける、という期待、また、そのバンドがいったいどのようなサウンドを聴かせてくれるのか、期待がふくらんだ。

 

そして先行シングルがリリース。
タイトルはBIG LOVE(ビッグ・ラヴ)。
どんなでっかい愛について聴けるのか楽しみにしてラジオで聴いた。

 

それはさりげないギターフレーズとともに繰り広げられるおしゃれなポップソングだった。
とてもかっこよかった。
のだが、一つだけ期待はずれのことがあった。

 

スティーヴィーの声が聞こえないのだ。
誰か知らない男が歌っている。
フリートウッド・マック初体験の僕は、「何だ何だ、スティーヴィーはどこだ、スティーヴィーを出せ!」って思ってた。
後で、このバンドは3人のヴォーカル、Lindsey Buckingham(リンジー・バッキンガム)、Christine McVie(クリスティン・マクヴィー)、そしてスティーヴィー・ニックスを擁していることがわかった。
そのカラフルな3種のヴォーカルが、フリートウッド・マックの最大の魅力の一つであることにも次第に気付いていくのである。

 

では今日は、1987年リリースのFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の14thアルバム、TANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)をご紹介します。

TANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、BIG LOVE(ビッグ・ラヴ)。

 

メイン・ヴォーカルはリンジー・バッキンガムだ。
ギターの使い方が非常に洗練されていて、気持ちよく聴ける。
リンジーは、スティーヴィーの元恋人で、同時にこのバンドに入ったギタリストだが、声がとても色っぽい。
楽曲もとてもテンポがよく、大人な雰囲気であふれている。
いきなりおしゃれな楽曲でスタートだ。

 

ただ、途中と最後に出てくる男女の “oh – ahh”の掛け合いが、でかい音で聴くと気恥ずかしくなってしまうのが、ちょっと難点だ。
この声はリンジーとスティーヴィーの掛け合いと勝手に思っていたが、wikiを見ると、リンジーの声をサンプリングして作ったものだそうだ。
ああ、まぎらわしい。それでも大人の魅力たっぷりのこのポップソングになっていますね。

 

この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャート第5位、同誌Mainstream Rockチャートでは第2位を記録している。

 

2曲目は、SEVEN WONDERS(セヴン・ワンダーズ)。

 

不思議な雰囲気のシンセで始まるこの曲はスティーヴィー・ニックスがヴォーカルをとっています。
やっと出てきた、妖精スティーヴィー
相変わらずの素敵なダミ声で聴かせてくれる。
ポップな楽曲に彼女のヴォーカルが光る。
やはり彼女の魅力は癖になるその声質だろう。
ただ、彼女の曲にしては、ちょっと普通すぎる気もしなくもない。

 

このアルバム制作時には彼女のソロアルバム、ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)のリリース後のツアーもあり、満足にアルバム制作に関わらなかったらしいが、ちゃんとこうして形にしてくれて非常にうれしい。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第19位に終わったものの、Mainstream Rockチャートでは第2位まで上昇した。

 

3曲目はEVERYWHERE(エヴリホエア)。

 

これはもう一人のヴォーカルであり、キーボーディストでもあるクリスティン・マクヴィーによる楽曲だ。
クリスティンについては、少し前にソロシングル、GOT A HOLD ON ME(恋のハート・ビート)がチャートに上がっていたのは知っていたが、食わず嫌いの僕はスルーしていたので、名前だけは知っていた状態だった。
まさか、フリートウッド・マックの一員であるなどとは露知らず。

 

彼女の曲はとても良質なポップソングだ。
この曲も、のんびりした雰囲気で、クリスティンの優しい歌声が心地よい。
スティーヴィーとは真逆なヴォーカルの魅力だ。

 

この曲はアルバムからの4thシングルで、シングルチャート第14位、Mainstream Rockチャートでは第22位を記録、Adult ContemporaryチャートではNo.1を獲得している。

 

4曲目はCAROLINE(キャロライン)。

 

リンジーのヴォーカルソングだ。
リンジーらしい不思議な楽曲だ。
イントロではドラムが、未開の土地のような雰囲気をかもし出している。
そこに繊細なギターのアルペジオが入ってくる。
全体としてエスニックな香り漂う楽曲だ。

 

80年代のHR/HMばかり聴いていた僕にとって、リンジーのギターの音色や演奏が非常に新鮮に感じられた。
味のある、効果的なフレーズをさりげなく曲に含めている。
とかくテクニックをひけらかす空気の蔓延する中で、彼のギタリストとしての立ち位置は貴重だと思える。

 

5曲目はアルバムのタイトルソング、TANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)。

 

これもリンジーによる曲だ。
もともとこの曲と、ビッグ・ラヴ、キャロラインはリンジーのソロアルバム用に作られたものだった。
シンプルな楽器の間に、リンジーが個性豊かに歌い上げる。
ギターリフも、時に鋭い。
ギターソロも他の曲からは際立っていて、長く、強い感情のこもったものとなっている。
後半は、多少狂気じみたギタープレイでフェイドアウトしていく。
この曲はアルバムの中で一番ロックな楽曲といえるかもしれない。

 

6曲目はMYSTIFIED(ミスティファイド)。

 

これはクリスティンとリンジーの共作で、クリスティンがメインヴォーカルをとっている。
前のロックな楽曲のあとにゆったりとした静かなポップスを聴かせてくれる。
やわらかい雰囲気のいい曲だ。
リンジーのギターも正気を取り戻して、ささやかな美しい旋律をなぞっている。

 

B面1曲目はLITTLE LIES(リトル・ライズ)。

 

メインヴォーカルはクリスティンだ。
非常に爽やかなポップソングである。
イントロのシンセが魅力たっぷりだ。
そしてドラムと共に始まるクリスティンの美しい歌声。
派手さはないが、非常に気持ちよく聴ける

 

そしてサビでは、クリスティンのヴォーカルにリンジーとスティーヴィーのコーラスが入り、そして、スティーヴィー、リンジーが合いの手をいれる。
やはりこのサビパートが、この曲の一番の聴き所だと言えよう。
80年代を代表する1曲と認定してもよいだろう。
またPVでは緑あふれる農場のようなところでのメンバーの様子がフィーチャーされているが、クリスティンとスティーヴィーが姉妹のように歩いている姿がとても微笑ましい。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第4位、Adult ContemporaryチャートではNo.1を獲得する大ヒットとなった。

 

2曲目は、FAMILY MAN(ファミリー・マン)。

 

この曲のメインヴォーカルはリンジーだ。
非常に楽しいリズムあふれる楽曲だ。
ギターソロとアウトロのギタープレイでは、リンジーはアコースティックなプレイで、曲の魅力を高めている。

 

この曲は5thシングルとしてカットされ、シングルチャート第90位、Adult Contemporaryチャートでは第23位を記録している。

 

3曲目は、WELCOME TO THE ROOM… SARA(ウェルカム,セーラ)。

 

この曲はスティーヴィーによるものだ。
スティーヴィーの魅力いっぱいの楽曲だ。
が、内容はというと、結構シビアだ。
前年、コカイン中毒のためにスティーヴィーは、リハビリ施設に入所していたが、その時の体験がこの曲になったのである。
なかなか日本では考えにくいエピソードだが、まあ、復活してくれてほんとに良かったと思います。

 

アレンジも素敵で、セヴン・ワンダーズが普通すぎたのを十分取り戻す出来になってます。

 

4曲目はISN’T IT MIDNIGHT(ミッドナイト・ラヴ)。

 

かっこいいギターリフから始まる、ロックな楽曲だ。
メインヴォーカルはクリスティンである。
シンセの使い方がとてもよく、80年代サウンドとしても十分にいけてる楽曲だ。
サビのクリスティンのヴォーカルに続く、リンジーの低音ヴォイスがなかなか生かしてます。
ギターソロも、楽曲にぴったり合ったシリアスなメロディを奏でてます。

 

この曲は6thシングルで、Mainstream Rockチャートで第14位を記録してます。

 

5曲目はWHEN I SEE YOU AGAIN(ホワッツ・マター・ベイビー)。

スティーヴィーによる静かなバラードだ。
静かなリンジーのアルペジオに乗り、歌い上げている。
やはりスティーヴィーのヴォーカルは独特だ。
僕は大好きである。
曲の後半、リンジーがヴォーカルを入れている。
また、この人の声も魅力的だ。
元々二人でユニットとして活動していたバッキンガム・ニックスの再現ともなっているしんみりとしたバラード曲である。

 

アルバムラストはYOU AND I, PART II(ユー・アンド・アイ(パート2))。

 

これも楽しいリズムの楽曲で、リンジーがリードヴォーカルを取っている。
コーラスが美しいポップソングで、このアルバムは幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1987年リリースのFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の14thアルバム、TANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)はビルボード誌アルバムチャートで第7位、アメリカでは300万枚を売り上げています。

 

このアルバムは、前作から5年ぶりの作品となっています。
その間に、メンバーはソロ活動に花を咲かせてました
ドラマーのミック・フリートウッドと3人のヴォーカリストの計4人は、それぞれこの5年の間に5枚のソロアルバムを制作(スティーヴィーは2枚)。
それがどれも成功しているものだから、常にバンドには解散の噂が付きまとっていました。

 

しかし、何とか5人集まり、無事に制作されたアルバムでしたが、以前の成功ほどの結果は得ることは出来ませんでした。
とはいえ、アルバムは、アメリカで第7位、本国イギリスではNo.1を獲得しています。
さらに、アメリカでは300万枚、イギリスでは250万枚を売り上げるなど、以前ほどはないとしても大ヒットとはなっています。

 

残念ながら、リンジーはこのアルバム制作後、バンドを脱退、全盛期は終わりを迎えます

 

このように、彼らの期待ほどの成功を得られなかったかもしれませんが、僕的には非常に良くできたアルバムだと思っています。

 

要となっているミック・フリートウッドのドラムと、John McVie(ジョン・マクヴィー)のベースは安定したリズムで、アルバム全体を支えています。
また、3人のヴォーカルもそれぞれの持ち味を出して、カラフルな魅力を振りまいています
クリスティンのキーボードも、楽曲を彩って引き立ててますし、リンジーのギターも、時に美しく、時に狂気を交えて熱く楽曲を飾っています。

 

フリートウッド・マック初心者の僕からすると、これは完璧なアルバムだといえます。

 

5人の強い個性がまとまった、極上のポップアルバム、タンゴ・イン・ザ・ナイトをぜひお楽しみください。

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:FLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)

14thアルバム、TANGO IN THE NIGHT(タンゴ・イン・ザ・ナイト)

ビルボード誌アルバムチャート第7位 アメリカで300万枚のセールス

1stシングル BIG LOVE(ビッグ・ラヴ) ビルボード誌シングルチャート第5位、同誌Mainstream Rockチャート第2位

2ndシングル SEVEN WONDERS(セヴン・ワンダーズ) シングルチャート第19位、Mainstream Rockチャート第2位

3rdシングル LITTLE LIES(リトル・ライズ) シングルチャート第4位、Adult ContemporaryチャートNo.1

4thシングル EVERYWHERE(エヴリホエア) シングルチャート第14位、Mainstream Rockチャート第22位、Adult ContemporaryチャートNo.1

5thシングル FAMILY MAN(ファミリー・マン) シングルチャート第90位、Adult Contemporaryチャート第23位

6thシングル ISN’T IT MIDNIGHT(ミッドナイト・ラヴ) Mainstream Rockチャート第14位

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