人生初のCDは妖精のアルバムだった  STEVIE NICKS   -    ROCK A LITTLE

人生初のCDと妖精との出会い





高校2年生になって、ついに念願のCDプレイヤーを購入することになる。

 

これまでは友達にレコードから録音してもらったカセットを、マイラジカセで聴くのが僕のAVライフだったわけだが、ついにCDの登場だ。
といってもCDミニコンポを買うお金はなく、ミニコンポサイズのプレイヤーを買って、ラジカセにLINE接続したというわけだ。

 

ラジカセはナショナルRX C-45のガンメタ。
メタルテープ対応、5バンドグラフィックイコライザー。
スピーカーは取り外し可能。
など、なかなか機能満載のラジカセだ。

LINE入力端子まで装備していたので、今回はCDプレイヤーの購入のみで収まったということである。

 

結局、迷った挙句型番はもはやわからないが、SONYのCDプレイヤーを選んだ。

 

で、記念すべき最初のCDを何にすべきか迷ったが、当時ちょうどTALK TO ME(トーク・トゥ・ミー)という曲がチャートを上がっていた。
STEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)という女性ヴォーカリストだ。
ポップでキャッチーな曲だったが、何よりPVが強烈だった。

 

ちょっと時代錯誤かと思わせる、ひらひらの服にロングドレス、そして不思議な魅力をもつおばさんがダミ声で歌い、踊っているのである。

 

なんか惹かれた。

 

この声と容姿、何か理由はわからないが僕を惹きつけるものがあったのだ。
言葉では説明しにくい、今までに見たことのない風貌と世界だったのだ。

 

続いて2ndシングル、I CAN’T WAIT(アイ・キャント・ウェイト)がリリースされ、これもPVを見るに同じ不思議な世界を表現していた。

 

気になって仕方ない僕は、ついに人生初のCDはこの人のアルバムにしようと、意を決した。
1985年リリースのスティーヴィー・ニックス3枚目のアルバム、ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)だ。

 

アルバムジャケットも僕をひきつけたスティーヴィーのロングドレスの全身ショットである。
そうそう、これだ。
裏ジャケットも彼女の不思議な魅力を切り取った写真が使われている。

 

ジャケットだけでおなかいっぱいだが、ついに初のCDの初聴きの時間だ。

 

I CAN’T WAIT!!♪♪

 

CDから聞こえた最初の音である。
なんとクリアなん
LPを聴くときのような盤のこすれるノイズはゼロで、全くクリアな音が飛び出してきた。

 

感動である。

 

そのイントロだけでお小遣いをはたいてCDプレイヤーを買ったことは報われた。
これは僕のAVライフを格段にクオリティアップすることに間違いないと確信した。

 

というわけで、人生初のCD、1985年リリースのSTEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)の3rdアルバム、ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)をご紹介したいと思います。

ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、I CAN’T WAIT(アイ・キャント・ウェイト)。

 

あの、衝撃的なクリアなサウンドを聞かせてくれたイントロではじまる、ロックな楽曲です。
そして、スティーヴィーのダミ声で華々しく幕を開けます。
ドラムは、デジタルっぽくいかにもCDの時代の音になっています。

 

非常に激しいギターリフにからむきれいなシンセの音が美しいです。
このころの彼女の声は以前よりハスキーで鼻にかかるものとなっているようですが、これはコカインの摂取のしすぎだというのが大方の見方のようです。
ただ、当時の僕はそんなこと知る由もなく、魅力的なハスキーヴォイスとして受け取ってました。

 

とにかく、ギターリフやソロもかっこよく、デジタルビートの上で華麗に歌い踊る妖精のイメージで、非常にかっこいいロックソングです。
女性ロックヴォーカリストとしての本領発揮のような楽曲です。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第16位、同誌Mainstream Rockチャートで第6位、同誌Dance Club Songsチャートで第26位を記録しています。

 

2曲目はROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)。

 

アルバムタイトル曲になっている楽曲です。
静かに進む歌の中で、彼女はロック・ア・リトル(少しだけロックして)と歌っています。
このタイトル曲が示すように、このアルバムはバリバリなロックではなく、大人なロックが多く収められています。

 

それにしても、このダミ声で切々と歌い上げるのが、非常に合うのです。
全くの独自の世界を彼女は作り上げています。

 

3曲目はSISTER HONEY(シスター・ハニー)。

 

これは、まさに当時のダンスチューンですね。
デジタルなビートが80年代っぽい楽曲です。
AメロBメロはメロディがあるのかないのかわからないような、自由奔放なスティーヴィーのヴォーカルを楽しめます。
しかし、サビはきれいなメロディアスなものになってますね。
楽曲にちょいちょいはさまるエレキの音が効果的に盛り上げています。

 

4曲目はI SING FOR THE THINGS(シング・フォー・ザ・シングス)。

 

美しいイントロではじまるこの静かな曲ではか細く、消え入るように歌っています。
このダミ声と楽曲とのギャップがたまりません。
ささやくように静かに歌い上げるのは、彼女の強烈な個性といっていいでしょう。

 

地味なのに、とても印象的で美しい楽曲になっています。

 

5曲目はIMPERIAL HOTEL(インペリアル・ホテル)。

 

この曲の共作者としてクレジットされているのはMike Campbell(マイク・キャンベル)です。
これはTHE HEARTBREAKERS(ザ・ハートブレーカーズ)のギタリストですね。
この曲ではギターも弾いてます。
また、ザ・ハートブレーカーズから、Benmont Tench(ベンモント・テンチ)もキーボードで参加しています。

 

それゆえでしょうが、TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERSのような、アーシーなロックなサウンドを聴かせてくれています。
こんなサウンドにもバッチリ合うのは、やはり彼女がロックヴォーカリストだからでしょう。

 

6曲目はSOME BECOME STRANGERS(サム・ビカム・ストレンジャー)。

 

この曲はミドルテンポの、優しいロックソングです。
非常にメロディアスな素敵な楽曲を、ギターのアルペジオやシンセが優しく彩っています。
僕のツボを刺激する、名曲となっています。

 

7曲目はTALK TO ME(トーク・トゥ・ミー)。

 

この曲こそ、僕が初めてスティーヴィー嬢と出会った楽曲です。
イントロのゴージャスなサウンドから、たんたんと進むミディアムロック。
その上に歌う妖精スティーヴィー。

 

完璧ではないでしょうか。(個人の感想ですが。)

 

この適度を通り越したダミ声には中毒性があります。
そしてメロディアスと自由奔放の行ったり来たりで、飽きさせないヴォーカルになっています。
80年代テイストもしっかりと楽曲に振り掛けられ、文句ない素晴らしい楽曲だと思いますね。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで第4位、Mainstream Rockチャートで2週連続No.1、Adult Contemporaryチャートで第14位を記録しています。

 

8曲目は、THE NIGHTMARE(ザ・ナイトメアー)。

 

アルバムの中ではロックっぽい方の楽曲です。
しかし、ドラムとシンセたっぷりのアレンジが、非常に80年代らしくてとても聞きやすいです。
少しダークな世界がある曲ですが、キラキラしたシンセが程よく中和して、なかなかいい曲に仕上がってます。

 

9曲目は、IF I WERE YOU(イフ・アイ・ワー・ユー)。

 

イントロが秀逸の、スリリングでキャッチーなかっこいいロックソングです。
この曲はとてもメロディアスで、超好みですね。
スティーヴィーがこんな曲を歌うと、非常にかっこいいです。
女性ヴォーカリストでは1,2を争うのではないでしょうか。

 

10曲目は、NO SPOKEN WORD(ノー・スポークン・ワード)。

 

ロックっぽいギターリフで始まる、80年代ロック的楽曲です。
こんな典型的な曲でも、スティーヴィーが歌えば、彼女のオリジナルな作品に変わりますね。
やはりヴォーカル力ではないでしょうか。
彼女のハスキーヴォイスが、唯一無二の世界を創り出していて、そして、僕はその中毒になってしまったというわけです。

 

アルバムラスト11曲目は、HAS ANYONE EVER WRITTEN ANYTHING FOR YOU(誰かあなたに)。

 

このバラードは秀逸ですね。
あのダミ声でバラード?っとイメージはわかないかもしれないが、スティーヴン・タイラー(エアロスミス)のエンジェルでもわかるように、ヴォーカルが特別な個性を持ってれば持っているほど、それは強力な武器となり、強烈な印象を残すことができるものです。

 

実際、この曲でも同様のことが起きてます。
美しいピアノのイントロに彼女のダミ声が入ってきます。
これが、なんともうまく調和しているのです。
たしかに、水と油のような感じではあるかもしれませんが、いったん曲が始まると、美しい演奏と、個性的な声、これが互いを引き立てあっているのです。
そして、楽曲の合間にシンセもちょうどよい感じで楽曲を盛り上げています。

 

この美しいバラードで静かにアルバムは幕を下ろします。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第60位、Adult Contemporaryチャートで第31位を記録しています。

まとめとおすすめポイント

1985年リリースのSTEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)の3rdアルバム、ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)はビルボード誌アルバムチャートで第12位、アメリカで100万枚を売り上げました。

 

僕は、スティーヴィー・ニックスが何者か全く知らずに1stと2ndシングルのPVを見ただけで購入したので、アルバムの内容は全く予想がつきませんでした。
ふたを開けると、1曲目こそ、ちょっとロックなアレンジになっているが、2曲目以降はゆったり、ゆっくり聴かせるものがほとんどでした。

 

ロック少年にとって、最初は退屈しそうな内容に感じてしまいましたが、聴き込むほどにスティーヴィーの世界に引き込まれていきました

 

ゆったり大人なロックといってもなかなかヴァラエティに富んでいましたね。
静かな曲からノリのよいアップテンポな曲まで、気持ちよく聴けるアレンジで満ちているアルバムとなっています。
その一つの要因はプロデューサーの一人Jimmy Iovineジミー・アイオヴィン)かもしれません。

 

彼はU2DIRE STRAIGHTSTOM PETTY AND THE HEARTBREAKERSなどのプロデューサーとして知られています。
曲を80年代っぽく洗練する音作りだけでなく、カントリー調だったりアーシーな部分も時代にあった形にして聞きやすくしてるのは彼の手腕ではないでしょうか。

いやいや、たった2曲しか聴いたことなく、アーティストの背景も何も知らずに買った人生の初のCD
これは大成功だったと今でも思えます。
その後、彼女が既にFLEETWOOD MAC(フリートウッド・マック)の歌姫として大成功を収めていたこと、そしてソロ・アルバムも2枚ヒットさせていたことを知ります。

 

そんな大物だったんだ、と後から知ることになったわけですが、そのような事前情報抜きに、なんの偏見もなくただ素直に聴いてみて、このアルバムは素晴らしいと感じました。

 

楽曲の、やはりあの80年代洋楽のきらきらした感じがアルバム全体にあふれていますし、何と言ってもあの強烈な個性を発するヴォーカルです
彼女の魅力はまず、あの声にあるに違いありません。
そして、ただのダミ声で曲をなぞるのではなく、表現者として曲を完成させるためにこの声を最大限のツールとして使っています。
ソングライターとしてもスティーヴィーは一流だが、ヴォーカリストとしてもやはり一流なのだ、と感じさせてくれるアルバムでした。

 

そしてあと、あの容貌。

 

当時のライナーノーツにはこのような言葉があります。

物憂げで、力強く、小悪魔のようでコケティッシュ・・・・
米国ロック界に美しくも華麗に輝くミステリアスな“妖精”スティーヴィー・ニックス
ああ!!魔力のような女の魅力。

 

高校生の僕をひきつけた理由はこのように言葉で表せるんだ、と思いました。

 

物憂げ小悪魔コケティッシュ、こんな言葉は当時の僕のボキャブラリーには存在しませんでした。
これが彼女の魅力の答えだったのです。

 

そして、彼女は妖精だったんだ

 

人生で初めて買ったCDが妖精のものだったことを僕は誇りに思いたい。
そしてCDで僕は彼女のクリアなダミ声(!)を堪能し続けることができるのです。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:STEVIE NICKS(スティーヴィー・ニックス)

3rdアルバム、ROCK A LITTLE(ロック・ア・リトル)

ビルボード誌アルバムチャート第12位 アメリカで100万枚のセールス

1stシングル TALK TO ME(トーク・トゥ・ミー) ビルボード誌シングルチャート第4位、同誌Mainstream Rockチャート2週連続No.1、同誌Adult Contemporaryチャート第14位

2ndシングル I CAN’T WAIT(アイ・キャント・ウェイト) シングルチャート第16位、Mainstream Rockチャート第6位、Dance Club Songsチャート第26位

3rdシングル HAS ANYONE EVER WRITTEN ANYTHING FOR YOU(誰かあなたに) シングルチャート第60位、Adult Contemporaryチャート第31位

 

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