外見を気にしなければ絶妙なポップアルバム CULTURE CLUB - COLOUR BY NUMBERS

CULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)との出会い





1983年、僕が洋楽にはまり始めた頃は、MTVのPV(プロモーション・ビデオ)が一気に盛り上がっている時期で、様々なアーティストがMTV経由で世界に羽ばたいていった。

 

その頃はMTVだけでなく、ベストヒットUSA、ナイトジャック福岡(福岡のローカル番組)など、PVを見る機会があふれていました。
まあ、そのほとんどが深夜にあってたし、当時ビデオデッキも無かったので、必死で遅くまで起きてPVを見まくってたのを思い出します。

 

そんな中、一つの風変わりなPVを発見した。
一人の女が歌っていて、群集が一緒に歌ったり踊ったりしてるものだ。
何が風変わりかって、その声が男の声に聞こえたのだ。
柔らかい声ではあるが、どうしても女の声に聴こえない。

 

結局、その声の持ち主の正体が判明する。
その人の名前はBoy George(ボーイ・ジョージ)、れっきとした男だったのだ。
そしてその男はCULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)というバンドのヴォーカルであり、楽曲のタイトルは KARMA CHAMELEON(カーマは気まぐれ)だった。

 

しかしその女が男であるかどうかに関わりなく、この曲は何と全米No.1を獲得してしまう。
僕が中学生だった時代は、もちろんマツコ・デラックスさんを初めとしたオネエ、と呼ばれる人は非常に希少だった。
せいぜいカルーセル麻紀さんくらいしか知らなかったと思う。

 

そんな中で現われたボーイ・ジョージは、いい意味でも悪い意味でもセンセーショナルな存在であり、人々の注目を集めたのである。
また、その女装という外見と裏腹に音楽的にはとてもすばらしい、というギャップも彼の狙いだったに違いない。

CULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)とは

ボーイ・ジョージはロンドンのナイトクラブなどでシンガーとして活動をしていた。
そうした中、彼の中性的ないでたちが注意を引き、Sex Pistolsの元マネージャーにより、イギリスのニュー・ウェイヴバンドのBow Wow Wowで歌うことになった。
その契約が終わる頃、ジョージは自身のバンドを結成することを決意、メンバーを集める。

 

そうして集まったのが、

アイルランド出身のゲイ、ボーイ・ジョージ(リード・ヴォーカル)
黒人で、ブリトン人(恐らくケルト系)のMikey Craig(マイキー・クレイグ)(ベース)
金髪の英国人、Roy Hay(ロイ・ヘイ)(ギター、キーボード)
ユダヤ人のJon Moss(ジョン・モス)(ドラムス)

の4人であり、バラエティに富むメンバーの出自から、バンド名をカルチャー・クラブと呼ぶようになったのだ。
こうしてバンドは1981年に結成されることになりました。

 

早速バンドはデモテープを作り EMI Recordsに売り込みますが、契約には至りません。
しかし、Virgin Recordsはデモを聴き、契約成立。
ヨーロッパでのアルバムリリースが決定、アメリカや他の地域ではEpic Recordsが販売を担当することになりました。(Virginは当時まだ、アメリカなどではビジネスを行なっていなかったため)

 

1982年、シングルWHITE BOY(ホワイト・ボーイ)でデビュー。
続いてI’M AFRAID OF ME(アイム・アフレイド・オブ・ミー)をリリース。
どちらもイギリスではTOP100前後のチャートにとどまります。(順に114位100位

 

しかし、次のシングルで全ては一変します。
DO YOU REALLY WANT TO HURT ME(君は完璧さ)と題するこのシングルは、何と全英No.1を達成。
アメリカや他の国ではこの曲がデビューシングルとなりましたが、アメリカビルボードシングルチャートで第2位を記録。
他にも多くの国でNo.1やNo.2を達成する大ヒットとなったのです。

 

その後デビューアルバム、KISSING TO BE CLEVER(キッシング・トゥー・ビー・クレバー)も大ヒット。
ついに大ブレイクとなったわけです。

 

おりしもイギリスではニューロマンティック、というブームが来ていて、中世ヨーロッパ的な衣装や化粧など、ヴィジュアルに重きが置かれたバンドが流行っていた頃だ。
その流れに乗って、カルチャークラブはシーンの先頭へと躍り出たわけです。

 

そんな中、僕はMTVで彼らと出会ってしまいました。

 

今日は、1983年リリースの、CULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)の2ndアルバム、COLOUR BY NUMBERS(カラー・バイ・ナンバーズ)をご紹介します。

COLOUR BY NUMBERS(カラー・バイ・ナンバーズ)の楽曲紹介





オープニングを飾るのはKARMA CHAMELEON(カーマは気まぐれ)。

 

まさに僕が初めて出会った曲だ。
やはりこれはサビが最も強烈だ。
カ~マカマカマカマ・・・って。
ボーイ・ジョージがゲイとわかると、どうしてもこのフレーズとオカマとの関連性を当時は考えてしまったものです。
まあ、そういう意味はないのでしょうが、誰もが口ずさめる印象的なサビであることには間違いはありません。

 

しかし、それにしても、この曲はポップスとしてはとんでもなくクオリティが高いと感じられます。
当時の流行のシンセをたっぷり使うのではなく、シンプルな楽器とコーラスで、見事なアレンジがなされています。
ところどころに入るハーモニカがまたいい味を出してますね。
ジョージの声も、あの外見抜きに聴くと、とてもソフトで聴き心地がいいです。
サビで裏を彩っているコーラスとの絡みも最高度に美しいです。
楽曲は少し古めのモータウン系の雰囲気たっぷりですが、楽曲はキャッチーで、コンポーザーとしての彼らの実力も窺い知れます。

 

ジョージのことをブルーアイド・ソウルとも言われてましたが、それも十分に理解できるソウルフルな優れたポップス作品だと思いますね。

 

この曲はアメリカでは2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで3週連続のNo.1、 Adult Contemporaryチャートで第3位を獲得しています。
他にも世界の16カ国でNo.1を達成した世界的な大ヒット曲となりました。
80年代を代表する楽曲の一つといっても良いでしょう。

 

2曲目はIT’S A MIRACLEイッツ・ア・ミラクル)。

 

これも軽快なラテン系のポップソングです。
イントロの軽く軽快なシンセの音色がとても気持ちいいです。
この曲ではバッキングヴォーカルのHelen Terry(ヘレン・テリー)がいい味を出してます。
ジョージのヴォーカルと渡り合うソウルフルな女性ヴォーカルです。
このアルバム全体でヘレンは大活躍していますが、まろやかなジョージの歌声と対照的に迫力ある彼女のヴォーカルは非常に楽曲を高めていると思います。
間奏のサックスソロもダンサブルな軽快な楽曲に華を添えてます。

 

この曲はアメリカでは4thシングルとしてカットされ、第13位のヒットとなってます。

 

3曲目はBLACK MONEYブラック・マネー )。

 

これもちょい古めのタッチの楽曲で、ムードたっぷりの曲です。
ヘレンのヴォーカルが随所で聴かせてくれてます。
ゴスペルシンガーのような迫力ある声です。
サックスソロも、雰囲気たっぷりです。
この曲も、非常にメロディが優しくフックのあるものなので、歌ってるのがあのキワモノってことを全くもって忘れさせてくれるいい曲に仕上がってます。

 

4曲目はCHANGING EVERY DAYチェンジング・エヴリ・デイ )。

 

イントロの軽快なピアノが素敵な、ジャズっぽい雰囲気をたたえた楽曲です。
ゆったりから少しスピード感がアップする感じもグッドです。
間奏のサックスも軽やかで、心地よいものになってます。
非常に大人の雰囲気のいい曲になってます。

 

5曲目はTHAT’S THE WAY (I’M ONLY TRYING TO HELP YOU)ザッツ・ザ・ウェイ )。

 

ピアノ一本の伴奏に、ジョージとヘレンの二人のデュエットがのっかってます。
こうして聴くと、ジョージのヴォーカルの上手さが目立ちます。
ほんとに、あの女装の人?と思えるあったかいバラードになってます。
それにヘレンもやはり上手いです。
見事にジョージとの掛け合いを聴かせてくれます。

 

6曲目はCHURCH OF THE POISON MINDチャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド )。

 

これも軽快なアップテンポなポップソングです。
4つ打ちのリズムがなんとも楽しくなるノリを生み出してます。
加えてこの曲でも、へレンがいい味を出してます。
ソウルフルな楽曲にヘレンのパワフルなコーラスが華を添えてます。
また、間奏のハーモニカや、ホーンセクションもいい感じで曲を彩っています。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートでは第10位を獲得しています。
ちなみにイギリスでは第2位です。

 

7曲目はMISS ME BLINDミス・ミー・ブラインド )。

 

これも軽快な楽曲です。
メロディはあくまでキャッチー、覚え易く親しみ易いものです。
間奏が、ちょっとハードなアレンジが加えられてます。
少し歪みを大きめにかけたギターリフに、後半は軽快なクリーンカッティングストロークです。
でも、曲の雰囲気を壊すことなく、適度なアレンジというのがミソです。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートでは第5位を記録してます。
ちなみにイギリスではカットされてません。

 

8曲目はMISTER MANミスター・マン )。

 

レゲエっぽいポップソングです。
普通に良曲です。

 

9曲目はSTORMKEEPERストームキーパー )。

 

ちょっと雰囲気が変わって、陰のあるポップソングです。
それでもフックのあるメロディなので、聴き易さは変わりません。
ベースが結構しっかり動き回ってるのが目立ちます。
サックスソロも、雰囲気にぴったり合ったもので、上品に聴かせてくれます。
サビの裏でのうっすらと聴こえるコーラスもとてもいいです。
最後は大銅鑼の音で締めです。

 

アルバムラストはVICTIMSヴィクティムズ(いつもふたりで) )。

 

最後はバラードで締めくくります。
中盤の大仰なアレンジはアメリカナイズされてる感じですが、イギリスのポップバンドがやるにはあまり似合わないかもしれません。
それでも、ジョージのヴォーカルが上手いのは間違いなく、しっかりと聴かせるバラードとなっています。

 

この曲はアメリカではリリースされてませんが、イギリスでは第3位のヒットとなっています。

まとめとおすすめポイント

1983年リリースの、CULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)の2ndアルバム、COLOUR BY NUMBERS(カラー・バイ・ナンバーズ)はビルボード誌アルバムチャートで第2位、全英チャートではNo.1を獲得しています。
また、アメリカだけで400万枚、全世界では1600万枚を売り上げた大ヒットアルバムとなっています。

 

この成功にはMTVの果たした役割が非常に大きいと考えられます。
PVで見せるボーイ・ジョージの奇抜なファッションとスタイル、まずこれが人々の注意を引いたのは間違いありません。
女装、ゲイの善し悪しはここでは扱いませんが、彼らはいろんな意味で注目を集めました。

 

そして、やがて気付きます。
外見はキワモノだが、音楽は本物だと。
バンドの見せる、センスあふれるポップソングは耳障りがよく、誰もが口ずさめる良質のポップスです。
それも単なるポップスと言っても、そこにはジャマイカンレゲエ、カリプソ(カリブ海圏内で見られるレゲエのルーツのような音楽)、ラテン音楽、ソウル、モータウンサウンド、など数多くのジャンルをうまくミックスしたものとなっています。
それをまたうまいことアレンジして、極上のポップスを作り上げているわけです。

 

アルバムを聴けば、彼らがただのキワモノではなく音楽的には優れたセンスを持っていたことに気付けるに違いありません。

 

まあ、キワモノだったがゆえに、人々の注目を集め、ヒットしたとも考えられますし、もし、ジョージが普通のおっさん姿で同じアルバムを出してもこれほどのヒットはなかったかもしれません。
というわけで、ジョージが女装して出てきたこと自体は、痛し痒しな面があります。
ですが、外見を抜きにすれば、間違いなく80年代を代表するポップアルバムの一つに数えられることでしょう。

 

80年代のフレイバーたっぷりの極上のポップアルバムとなっています。
いまだに色あせないメロディをお楽しみください。

チャート、セールス資料

1983年リリース

アーティスト:CULTURE CLUB(カルチャー・クラブ)

2ndアルバム、COLOUR BY NUMBERS(カラー・バイ・ナンバーズ)

ビルボード誌アルバムチャート第2位 アメリカで400万枚、世界で1600万枚のセールス

1stシングル CHURCH OF THE POISON MINDチャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド ) ビルボード誌シングルチャート第10位

2ndシングル KARMA CHAMELEON(カーマは気まぐれ) シングルチャート3週連続No.1、同誌Adult Contemporaryチャート第3位

3rdシングル MISS ME BLINDミス・ミー・ブラインド ) シングルチャート第5位 

4thシングル IT’S A MIRACLEイッツ・ア・ミラクル) シングルチャート第13位