WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)

WHITESNAKE(ホワイトスネイク)との出会い




1987年、一つのバンドがチャートを上がってきた。
名前はWHITESNAKE(ホワイトスネイク)。
曲名はHERE I GO AGAIN(ヒア・アイ・ゴー・アゲイン)。

 

PVでは、ハードロックバンドはこうあるべき、という模範のようなかっこいい姿にあふれていた。
また楽曲もキャッチーなロックで、魅力たっぷりである。

 

早速アルバムを聴くことにしてみた。

WHITESNAKE(ホワイトスネイク)とは

PVで見た、マイクスタンドをつかんでかっこよく歌っていたのはDAVID COVERDALE(デヴィッド・カヴァデール)というヴォーカリストだった。

 

ホワイトスネイクは1977年にカヴァデールの作ったバンドだ。
その前に彼は、なんとDEEP PURPLE(ディープ・パープル)の3代目のヴォーカリストだった。

 

僕はディープ・パープルにはあまり関心はなかったが、エレキギターをやってたのもあって、スモーク・オン・ザ・ウォーターやハイウェイ・スター、ブラック・ナイトなどのギターリフなどは馴染みのフレーズだった。
だからといってディープ・パープルに、はまることはなかった。

 

このブログを見る限り、僕は節操なくいろんな音楽を聴いてたと思われそうだが、どうもディープ・パープルは、肌に合わなかったようだ
やっぱり一番好きなのは80年代の音楽で、70年代はそこまで思い入れのあるアーティストは少ない。
エアロスミスにしろ、スコーピオンズにしろ、70年代から活躍しているバンドでも、やはり80年代になってからのアルバムのほうが性にあってしまうようだ。
あと、リッチー・ブラックモアに対しても偏見があって、ギタリストとしても、世間の評価ほど高く見れない自分がいる。
理由はよくわからないが、どうも彼のプレイスタイルが、なんとなく合わないっぽいのです。

 

そんなわけで(どんなわけだ?)、ディープパープルのアルバムは、正直言って聴いたことがない。
食わず嫌いかもしれないが、なんとも仕方がない。
で、カヴァデールが元ディープ・パープルと言われても、いまひとつピンと来なかった。
ただ、BURN(紫の炎)のときのヴォーカルと聴いて、なかなかいいんじゃない?とかすかには思った。

 

で、1974年から1975年にかけてディープ・パープルの3枚のスタジオアルバムでヴォーカルをとった後、バンドを脱退。
ソロ活動に転じ、2枚のソロアルバムを制作。
その後、1977年に自身のバンド、ホワイトスネイクを結成するのである。

 

1978年から1984年までにホワイトスネイクとして6枚のスタジオアルバムを制作、本国イギリスではコンスタントにヒットを続け、6枚目のアルバムSLIDE IT IN(スライド・イット・イン)ではアメリカのアルバムチャートで、第42位を記録し、200万枚を売り上げ、さらにアメリカでの成功を拡大しようとしていた。

 

それにいたるまで、カヴァデールは結構な感じでバンドのメンバーチェンジを繰り返している。

 

で、1987年の今回紹介するアルバム、WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)制作時には、

・ギター、元シン・リジーJohn Sykes(ジョン・サイクス)

・ベース、ホワイトスネイクを出たり入ったりしてきたNeil Murray(ニール・マーレイ)

・ドラムス、元ジャーニーAynsley Dunbar(エインズレー・ダンバー)

・キーボード、元レインボーDon Airey(ドン・エイリー)

という豪華なラインアップだったが、アルバムリリース時にはなんと全員解雇されていた

 

で、ふたを開けると、

・ギター、元ヴァンデンバーグAdrian Vandenberg(エイドリアン・ヴァンデンバーグ)

・もう一人ギター、元ディオVivian Campbell(ヴィヴィアン・キャンベル)

・ベース、元クワイエット・ライオットRudy Sarzo(ルディ・サーゾ)

・ドラムス、元オジー・オズボーン・バンドTommy Aldridge(トミー・アルドリッジ)

という、これまた豪華なラインアップで新生ホワイトスネイクは活動を開始した。
冒頭で述べたヒア・アイ・ゴー・アゲインのPVに出演していたのはこのメンバーである。
まあ、カヴァデールのワンマンバンドという印象は拭えないが、これだけのメンバーが集まるのだから、やはり元ディープ・パープルの肩書きは伊達ではないようだ。

 

アルバム制作のための曲作りは、1985年からカヴァデールと主にジョン・サイクスによって行なわれた
今回のアルバム作りのアプローチは、よりモダンな、80年代のサウンドに磨き上げることだ。
前作スライド・イット・インは70年代のブルースに根ざしたサウンドだったが、それを今風に変えようとしたのだ。

 

制作途中でカヴァデールは喉のポリープの手術を受けることになったが、6ヶ月のリハビリを経て無事復帰。
むしろ高音が良く出るようになった、という奇跡の復活を遂げた。
しかし、そのヴォーカル待ちの間、サイクスは辛抱できず、他のヴォーカルを入れてカヴァデール抜きでことを進めようとした結果、両者の間の関係が壊れ始める。
結局、アルバムが完成したときには、このアルバムの立役者であるサイクスは解雇されるという悲劇が。
人間関係って難しい。
でも、さきほど述べたように、首になったのはサイクスだけでなく全メンバー総入れ替えになったことを考えれば、やはりカヴァデールの性格や個性を含む、ワンマン体制に問題があったのではと考えるのが自然だろう。

 

まあ、そんなこんなでニューアルバムは完成。

 

今日は、1987年リリースの、WHITESNAKE(ホワイトスネイク)の7thアルバム、WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)をご紹介したいと思います。

WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)の楽曲紹介

アルバムのオープニングを飾るのはCRYING IN THE RAIN(クライング・イン・ザ・レイン)。

 

この曲は1982年の彼らのアルバム、SAINTS & SINNERSに収録されていた曲のセルフカヴァーだ。
オリジナルのほうはブルースっぽいもので、再録品よりゆったりしていてテンポが少し遅い。
イントロではスローなブルージーなギターソロがあったが、今回はばっさりとカット。
テンポを速め、よりハードなものへと変化した。
アレンジも非常に80年代風であり、ブルース色が雰囲気として残りながらも、メリハリが利いたハードロックチューンへと変貌を遂げた。

 

後のインタビューで、カヴァデールは「ジョン(サイクス)はブルースを嫌っていた」と語っており、若きギタリストの意向が汲まれた変化だったようだ。
この曲は疾走感のある感じの出だしからスタートし、懐の深いブルージーなリズムに乗って繰り広げられる、ハードロックの様式美を思わせる楽曲で、とてもいい曲だと思う。
また、オリジナルと比較して、ギターソロもたっぷり収められていて、当時の流行のHR/HMサウンドが繰り広げられている
加えて、手術を行なったとはとても思えないカヴァデールの迫力あるヴォーカルも魅力にあふれている。
アルバムのオープニングにふさわしい、ドラマティックで優れたハードロックソングだ

 

2曲目は、BAD BOYS(バッド・ボーイズ)。

 

疾走感あふれる爽快ハードロックソングです。
イントロの16ビートのギターリフがスピード感を演出し、非常にかっこいい楽曲になっている。
出だしのカヴァデールの犬の遠吠えのようなシャウトも決まっている。
またジョン・サイクスの鬼気迫るギターソロにも注目だ。
非常にノリの良い、気持ちよく聴ける名曲である。

 

3曲目はSTILL OF THE NIGHT(スティル・オブ・ザ・ナイト)。

 

これまた迫力のロックソングになっています。
イントロやリフがLED ZEPPELIN(レッド・ツェッペリン)のBLACK DOGに似ていると話題になった曲でもある。
確かに雰囲気は似ているが、また別のバリエーションとして、全然ありだと思う。
ホワイトスネイクはツェッペリンとは違う、また別の魅力があふれている

 

いやいや、これもかっこいいフレーズ満載だ。
やはりサイクスのギターリフは、非常にかっこいい。
80年代っぽいギタープレイで、やはりツェッペリンのジミー・ペイジとはまた別のよさが感じられる。
ギターソロも、一気に高揚感を与えてくれるうまいソロだ。
また、展開もドラマティックで、それを見事に歌い上げているカヴァデールのヴォーカル力には脱帽である。
後半盛り上がってからも、彼の高音域が良く伸びていて、シャウトも非常にかっこよく決まっている。
これまた様式美と言える、ハードロックの手本のような楽曲だ。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャート第79位、同誌Mainstream Rockチャートでは第18位のヒットとなっています。

 

4曲目はHERE I GO AGAIN(ヒア・アイ・ゴー・アゲイン)。

 

僕が初めてホワイトスネイクに出会った名曲だ。
この曲もクライング・イン・ザ・レインと同様、SAINTS & SINNERSに収録されていた曲のセルフカヴァーである。
オリジナルに比べて、この曲も非常に洗練されて生まれ変わりました。

 

もともと、メロディもとてもいいものだったが、アレンジが80年代サウンドになっていてとてもかっこよくなっている。
イントロのシンセも80年代風のキラキラした感じが満ち満ちている。
このアルバムヴァージョンのギターソロはサイクスではなく、エイドリアン・ヴァンデンバーグのものに差し替えられています。
短いが、きっちりとまとめられたいいソロだ。
とにかくキャッチーで80年代を代表する一曲に違いない。

 

そして、PVも冒頭で述べたとおり、非常にバンドと、ヴォーカリストであるカヴァデールをフィーチャーしたハードロックバンドのPVの見本のようである。
新メンバー紹介のような雰囲気もただようし、やはりカヴァデールのかっこよさが際立っていますね。



この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートでNo.1、Mainstream Rockチャートで第4位を記録しています。

 

B面1曲目は、GIVE ME ALL YOUR LOVE(ギヴ・ミー・オール・ユア・ラヴ)。

 

シャッフルのリズムが心地よい正統派のロックンロールです。
非常にノリが良くて、大人な雰囲気を漂わせる、優れた楽曲だ。
サイクスのギターソロが、これまた素晴らしい展開を見せてくれる。
結構長いソロだが、起承転結のはっきりした素晴らしいソロだ。
後半の盛り上がりも、カヴァデールが見事に歌い分けていて聞き終わって爽快感しか残らない

 

この曲はアルバムからの4曲目のシングルとしてカットされ、シングルチャートで第48位、Mainstream Rockチャートでは第22位を記録している。

 

2曲目はIS THIS LOVE(イズ・ディス・ラヴ)。

 

これは超のつく名バラードですね。
これはカヴァデールのヴォーカリストの能力が余すところなく発揮された名曲だと思う。
もともとティナ・ターナー用に曲を作る依頼を受けたところから出てきた曲のアイディアらしいが、それもうなずけるほど、カヴァデールのソウルフルな歌がはまっている。

 

もはや文句なく80年代のサウンドによるバラードだ。
一つ目のツインギターソロも美しい。
しかし、やはりメインのギターソロは、もううっとりしてしまうほどの究極のメロディだ。

 

だが何よりも楽曲を完全なものにしているのはカヴァデールの強力なヴォーカルに違いない。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、ジョージ・マイケルのFAITHに阻まれNo.1は逃したものの、シングルチャートで第2位、Mainstream Rockチャートでは第13位を記録している。

 

3曲目はCHILDREN OF THE NIGHT(チルドレン・オブ・ザ・ナイト)。

 

またまた疾走感あふれるハードロックチューンである。
サイクスのお得意の16分のギターリフが映える楽曲である。
また、ギターソロもサイクスは弾きまくっているが、やはり曲に合わせた見事な展開を見せてくれる。

 

4曲目は、STRAIGHT FOR THE HEART(ストレイト・フォー・ザ・ハート)。

 

これまた疾走系のハードロックだ。
とてもイギリスのバンドと思えない、「アメリカン」で陽気なロックを聴かせてくれる。
シンセが前面に出て、いかにも80年代のハードロックを作り出してくれた。
キャッチーで、爽やかなこの曲は、アメリカでの成功を狙うこのアルバムにおいて、一番アメリカナイズされたものかもしれない。
とにかく、聴き心地は最高である。

 

アルバムラストは、DON’T TURN AWAY(ドント・ターン・アウェイ)。

 

振り返るな、というメッセージソングだ。
ゆったりとしたリズムの中に、熱いカヴァデールのヴォーカルが映える
楽曲的には、一番弱い気がするのだが、サイクスのギターソロは非常にここでもうまく作られている。
エンディングはフェイドアウトになっていてちょっと物足りない気がするが、アルバムはここできれいに幕を下ろす。

まとめとおすすめポイント

1987年リリースの、WHITESNAKE(ホワイトスネイク)の7thアルバム、WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)はビルボード誌アルバムチャートではマイケル・ジャクソンのBADに首位の座は阻まれたものの、全米第2位を記録。
アメリカだけで800万枚のセールスを記録しました。

 

アメリカでの成功を目ざして洗練されたこのアルバムは確かにその目標どおり、アメリカにおいて大成功を収めたのです。

 

もうヒットの要因はやはり80年代のサウンドにバンドの音を合わせたことで間違いないでしょう。
ヒア・アイ・ゴー・アゲイン(第1位)、イズ・ディス・ラヴ(第2位)のヒットがそれを証明していると思いますね。

 

また、若い技巧派のギタリスト、ジョン・サイクスの貢献も忘れてはならない。
彼がブルースを好まなかったおかげで、アルバムは80年代HR/HMに合わせた新たなステージへと進むことができました。
またほとんどの楽曲の曲つくりにも参加、優れた楽曲をアルバムに含めることに成功しました。
加えて、彼のギタープレイは、ツボを得た80年代にぴったりの16分のリフや、メロディを見事に構築したすばらしいギターソロをも生み出しています。
制作後、すぐに解雇されたのは残念だが、サイクス抜きではこれほどの名盤は世に出ていなかったとさえ思えます。

 

そして、なによりも、このホワイトスネイクの設立者であり中心人物である、デヴィッド・カヴァデールのヴォーカリストとしての魅力がアルバムを名盤と呼べるにふさわしいものとしたことも間違いないでしょう。
元ディープ・パープルのヴォーカル、という肩書きは伊達ではなかったのだ。

 

人間関係にはやや難があるようだが、アーティストとしては一流の人物であることは否定できないだろう。

 

ホワイトスネイク結成から10年、見事に生まれ変わった80年代ハードロックのバンドサウンドを多くの人にも味わって欲しいと思います。

チャート、セールス資料

1987年リリース

アーティスト:WHITESNAKE(ホワイトスネイク)

7thアルバム、WHITESNAKE(白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)

ビルボード誌アルバムチャート第2位 アメリカで800万枚のセールス

1stシングル STILL OF THE NIGHT(スティル・オブ・ザ・ナイト) ビルボード誌シングルチャート第79位、同誌Mainstream Rockチャート第18位

2ndシングル HERE I GO AGAIN(ヒア・アイ・ゴー・アゲイン) シングルチャートNo.1、Mainstream Rockチャート第4位

3rdシングル IS THIS LOVE(イズ・ディス・ラヴ) シングルチャート第2位、Mainstream Rockチャート第13位

4thシングル GIVE ME ALL YOUR LOVE(ギヴ・ミー・オール・ユア・ラヴ) シングルチャート第48位、Mainstream Rockチャート第22位

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